UC0100年12月27日、地球連邦軍714部隊は演習に参加しようとしていた。ブリーフィングルームでは司令官の白根ハルナ准将が説明を開始した。
「我々714部隊は明日、ルナツーにて512部隊との演習を行う」
続いて参謀長のオリヴァー・ヘンス中佐が話をする。
「今回の状況としては512部隊の占領したルナツー地表面に置かれた拠点の奪還というものだ。敵の戦力としては以下のものがある」
そう言うとモニターには512部隊の編成表が映される。
アイリッシュ級戦艦×1
クラップ級巡洋艦 ×3
モビルスーツ ×30
ハルナが口を開く。
「我々と艦艇数、MS数共に同数だ…一般的に攻撃は防御側の3倍の戦力が必要とされる。よって苦しいものになると思われる。その覚悟をして欲しい…そして作戦は…」
ここでヘンスが口を開く。
「あとは私が。艦隊とジム隊を二手に分けてSフィールド、Eフィールドより攻撃。そして迂回したゼータプラス隊がNフィールドより空爆を行う…以上だ」
そして細かい作戦内容を話した後ブリーフィングルームから将兵が解散していった。
レナウン格納庫ではパイロットや整備兵達が騒がしくしていた。
「休暇が終わって早々演習だなんて…」
ディアナ・マルセイユ少尉は乗機の調整を進めながらボヤく。
「そう言わないの、私達は軍人でこれが仕事なんだから」
ディアナの隣で調整を手伝っている霧島アリス中尉が宥める。
「むー…というかアリス先輩は休暇で恋人…ヨミちゃんと一日中イチャイチャしてたからそう言えるんですよ」
「なっ…そんなこと…あははー…」
アリスはつい目を逸らしてしまう。確かにこの後輩の言う通りかもしれないとアリスは感じた。
「ヨミちゃんが待ってるからこう呑気なんですよ。2ヶ月すればまた会えるー…って」
その言葉にアリスは目を逸らす。
「…何もなく生き残れれば、ね」
「アリス先輩が死ぬ??ありえませんよそんなの…」
ディアナは不思議そうにアリスを見つめる。
「私を完璧超人みたいに思わないでもらうと嬉しいかな…」
「でもIMPCの調整だとすぐ終わらせるし…やっぱあたしにとっては凄いですよ…!」
IMPCはIntegrated Maneuver Propultion Control、統合起動推進制御という、MSの発進、巡航、空間戦闘、着陸、歩行の5つの基本機動・推進を自動制御するOSのことだ。これは熟練者の操縦データを元にしているプログラムがある、いわばMSパイロット全体の技量向上を目指したものだ。しかし、そのプログラムのデータに不満を持つパイロットも存在し、その場合は自らデータを修整を行う必要があった。アリスもそんなパイロットの1人であった。
「はぁ…まぁいいわ。とりあえず明日の演習を頑張ろっか」
「はーい」
格納庫の隣に置かれたシミュレーションルームでは、2人の男女が対戦を行なっていた。
「やっぱ、無駄が多いね」
夏野エミ大尉はコックピットを模した訓練機械の中で対戦相手の動きを冷静に分析している。
「お姉ちゃん、速いし軽い…!」
その対戦相手、リデル・アンデルソン少尉はエミの軽やかな戦闘機動に翻弄されていた。彼は強化人間であり速い反応速度などの戦闘に特化した人間であると言えたが、それだけでは長年戦ってきたエミの経験や振り絞る知恵には追いつけなかった。そんなリデルは今日で5回目の撃墜判定を下された。
「ここまでにしよっか」
「うん…お姉ちゃん…」
そうしてエミとリデルは訓練機械から出る。リデルはしょんぼりとした表情をしていた。
「お疲れ様、アンデルソン少尉」
エミはそう言いリデルの元へ歩いて来る。
「お姉ちゃん…僕って弱いのかな…」
「そんなことはないと思う」
「でも、この前の敵も旧式ばかり…って聞いたし…」
リデルは今にも泣きそうな顔でエミに話していた。
「…あなたは強いよ。敵だった時、私を相手にシールドを奪ったりしてみせたじゃない」
そう言いエミはリデルの隣に立ち、優しく肩を撫でる。
「アレは僕の機体のほうが強かったからじゃ」
「それくらいで私がああなると思う?確かに性能では劣ってた…とは思うけど」
反論するリデルにエミは笑ってそう返す。
「だから自信を持ちなさい。アンデルソン少尉」
「…うん…お姉ちゃん」
「そう、その調子」
リデルはエミに微笑み返した。
翌日、12月28日。714部隊はルナツー宙域にて演習に参加している。
「…目標宙域に到達、モビルスーツ隊発艦開始!」
ハルナの命令の元、各艦よりMSの発進が始まる。
「プリースト6、霧島アリス行きます」
「プリースト8、ディアナ・マルセイユ行きまーす!」
2機の”MSZ-006C1 ゼータプラスC1型”が発艦、そうしてゼータプラス隊単独で目標地点へと向かっていく。
「ウィザード1、夏野エミ出るよ」
「ウィザード4、リデル・アンデルソン行きます」
エミとリデルの”RGM-178N1 ジム・カスタムMk-II”が発艦、これは旗艦”レナウン”、巡洋艦”ベルファスト”と共に目標地点へと向かっていく。
「トレボーより敵機捕捉、ウィザード、ウォーリアとの会敵予想30秒後、マジック、タンクとの会敵予想40秒後」
レナウンのオペレーターより512部隊のMS捕捉との通信が入る。レナウンのウィザード隊、ベルファストのウォーリア隊との会敵予想は30秒だった。エミとリデルの機体が接触通信で話す。
「会敵したらバズーカで牽制。私が突っ込むよ」
「わかった、おね…夏野大尉」
「うむ、よろしい…って、相手からか」
光が見えた瞬間、味方の…ウォーリア隊のジム・カスタムMk-IIが被弾する。敵機の狙撃らしい。
「ウィザード各機は散開!…じゃ、私は突っ込むから援護を頼むよ、アンデルソン少尉」
エミはウィザード隊を散開させると共に敵部隊へと向かっていく。リデルもその一歩後と言えるような位置に着いてきている。
(あちゃ、援護って後ろでしてても良かったんだけどね)
そう思いながらエミはビーム・ライフルでジェガンD型の1機を貫く。
「流石お姉ちゃん…っ」
リデルがスターク・ジェガンにバズーカを撃つも回避され、逆にハイパー・バズーカの反撃を受ける。これは躱すもさらに別の機体からのビーム・ライフルがシールドに被弾する。リデルの動きは大胆で無駄が多く、これを先のシミュレーションでもエミに突かれていた。
「っ…この!」
リデルは反撃としてバズーカを撃つも、これは躱される。
「冷静に、アンデルソン少尉」
「…うん」
エミのひと言にリデルは神経を研ぎ澄ませる。そして、バズーカを放つとジェガンD型に命中、その右腕を爆砕した。
「やった!」
さらにバズーカを連射しジェガンD型の頭部、胸部に命中させ撃墜判定を出した。
「やるじゃない、アンデルソン少尉…リデル少尉」
「うん、お姉ちゃん…!」
その頃ゼータプラス隊は目標宙域に到達し反転、敵拠点の空爆へと向かっていた。
「…目標捕捉しました!」
アリスの機体のセンサーが敵拠点の仮構造物を捕捉した。
「了解、各機物干し竿を撃て」
プリースト隊指揮官ネヴィル・カニンガム少佐の指揮のもと、ビーム・スマートガンを装備したゼータプラスが射撃を行う。これはルナツー地表面に設置された仮構造物に甚大な損害を与えたとの判定が下る。
「やりましたね!アリス先輩!」
「そうね…来るよ!迎撃!」
敵艦艇からの艦砲射撃が飛来、これを散開してプリースト隊は回避する。
「これが艦砲射撃の弾幕…!」
ディアナは艦砲射撃を躱しながらそれに感嘆していた。そこへ…
「ディアナちゃん!上昇!」
「え?」
ディアナ機が上昇すると、先程まで居た場所へとミサイルが飛んでくる。
「ミサイル…アレか!」
それは地表面に設置されたスターク・ジェガンのものを転用した防空ミサイルであった。アリスはそれを大腿部ビーム・カノンを連射して破壊していく。
「アリス先輩ありがとうございます!」
「どういたしまして…っと!」
敵迎撃機をアリスは狙撃しこれを撃墜した。さらに敵機が接近するが…
「…はぁぁ!」
アリスがビーム・スマートガンと大腿部ビーム・カノンを同時に射撃、一気に3機を撃墜した。
「凄い…」
その後、敵旗艦をネヴィルとその僚機が撃沈したことにより演習は714部隊の勝利となった。
帰還した714部隊各機からパイロット達が降りてくる。ウィザード隊の整備エリアではエミとリデルが話していた。
「お疲れ様、リデル少尉」
「うん、お疲れ様…です。お…夏野大尉」
エミがリデルにリンゴ味のチューブを渡す。
「お姉ちゃん?」
「私の好きな味だったけど、リデル少尉は嫌いだったかな?」
「そんなことない…そうだ。なんでリデルってファーストネームで…」
リデルがチューブを飲みながらエミに質問した。
「…呼びやすいから、かな」
エミは宙を眺めながらそう言った。
プリースト隊の整備エリアではアリスとディアナが話していた。
「ディアナちゃんお疲れ様」
「アリス先輩こそお疲れ様ですー!」
ディアナはそう言いながらアリスの腕に抱きつく。
「…アリス先輩、私の匂いは?」
そう言いながらディアナはアリスに身体を寄せる。
「ちょ、私がなんでも反応する変態みたいに言わないでくれる…?」
アリスはそんなディアナを振り解きシャワールームへと向かった…
続く