UC0101年1月2日、地球連邦軍714部隊はサイド5イズマコロニーを出港しようとしていた。
「もう出港か…」
「早かったですねぇ…」
霧島アリス中尉とディアナ・マルセイユ少尉は旗艦”レナウン”の舷側の窓からイズマを見つめていた。そんなレナウンに緊張が走る。
『反対ゲートの付近にてミノフスキー粒子の散布を確認、第二種戦闘配置についてください』
「ミノフスキー粒子が…なんで…?」
「行こう、ディアナちゃん」
そうしてアリスとディアナは格納庫へと向かっていった。
レナウン艦橋では714部隊司令官の白根ハルナ准将とレナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐が話していた。
「もしや…資料にあった”クランバトル”とやらかもしれんな」
「非合法の賭け試合…噂によればサイド5の一部が関わってるというやつですね…?」
クランバトル…それはエイレンの言う通り非合法の賭け試合であり、基本はモビルスーツの2対2で行われるものだった。
「だろうな…そして本来は艦隊が出ていったあとに始めるつもりだったのが…」
「インプラカブルのトラブルで我々の出港が遅れて、運悪く同じタイミングで…リーア軍の出てくる前に我々でカタをつけますか?」
エイレンがハルナに提案する。
「それもアリか。モビルスーツを出そう」
「…エミのところが発進可能。行かせましょう」
レナウン格納庫は慌ただしくなる。そして2機のモビルスーツが発艦準備に入る。
「まさか新年早々出撃なんて…」
「お姉ちゃ…夏野大尉、大丈夫?」
夏野エミ大尉とリデル・アンデルソン少尉が発艦準備を完了させつつあった。
「ふふ、心配ご無用だよ。ただちょっとね」
「ん?…まぁ大丈夫そうで良かった。夏野大尉」
2機の”RGM-178N1 ジム・カスタムMk-II”が飛行甲板に立つ。
「ウィザード1、夏野エミ出るよ」
「ウィザード4、リデル・アンデルソン行きます」
そして発艦すると共にレナウンの後方へと飛び立った。そしてクランバトルに明け暮れる4機のMSを捕捉する。
「まずは投降勧告だよ、わかってるよね」
「うん」
エミ機が信号弾を放つとともにオープン回線にて投降勧告を開始した。
「乱闘中のモビルスーツに警告する。こちら地球連邦軍714部隊。直ちに武装解除して投降せよ。繰り返すー…」
クランバトルを行ううちの2機、ジムIIは応じて武装解除したが、ハイザック2機は応じずに逃走を図る。
「逃さないよ…いい、射撃武器は使わずに無力化だよ」
「わかった。おね…夏野大尉」
ハイザックに対し高速で迫る2機のジム、そして追いつくと共にエミ機がビーム・サーベルを抜く。ハイザックはマシンガンをエミ機に向ける。
「遅い」
エミ機の動きの方が素早く構えた両腕を切断した。もう1機がその援護をしようとするが…
「させないよ」
リデル機が両脚を切断、ハイザックの体勢を崩したあとにビーム・サーベルで右腕を破壊した。
「やったよ!お姉ちゃん!」
リデルが嬉しそうにエミへ通信を送るが…
「ダメ!油断しないで!」
ハイザックが残った左腕にヒート・ホークを持ちリデル機に襲いかかる。リデル機は油断したのか完全に反応が遅れており、その刃はコックピットへの直撃コースだった。そしてリデルは…
「え…助け、お姉ちゃ…!」
リデルは恐怖により操縦桿から手を離してしまっていた。股間に生暖かいものを感じていた。そしてリデル機に強烈な衝撃が加わった。
「いや…!……え、生き…て…?」
『…デル少尉!…リデル少尉!生きてるよね!?』
その通信によりリデルは我に返った。そして目の前にはコックピットをビームで貫かれたハイザックの残骸が漂っていた。そしてエミ機がビーム・ライフルを構えていた。どうやら咄嗟にエミがハイザックのコックピットを貫いたようだった。
「…うん、だい、じょう…ぶ…」
「なら返事をしっかりしなさい…!」
モニターに映るエミが心配そうにリデルを見つめていた。
「…ごめん、お姉ちゃん…ありがとう…」
「どういたしま」
『俺のダチを返せよ!!』
そのオープン通信と共に、エミ機へと腕を失ったハイザックが迫りくる。エミはそれを往なし逆にハイザックを抑え込む。
『離せ!この!ブッ殺してやる!!』
「…人、が…死んだ…?」
リデルは改めてコックピットを貫かれたハイザックを見てしまう。そこには虚無が広がっていたが、強化人間故に感受性の高いリデルには死んだパイロットの残思念とでも言うべき、死への恐怖とでも言うべきものを感じた。
「う、ぅ…あぁ…あ…」
『クソ!ちくしょぉ!!』
やがてハイザックのパイロットの身柄はリーア軍に拘束された。そしてエミとリデルはレナウンへと帰艦した。レナウン格納庫ではエミとリデルが機体から降りる。そしてリデルがエミへと近づく。
「お姉ちゃん…僕…」
「…とりあえず油断しちゃダメ、相手を確実に無力化…実践なら撃破しないと。それに、何があっても止まっちゃダメだよ」
エミは優しい声色でそう言うがリデルは怯えている。
「…怖くなって…きちゃった…」
「何が…?」
リデルは弱々しくエミに言う。
「戦うのが…相手にも…友達とか、家族が居るって考えると…僕…」
「そっか…リデル少尉は優しいね」
エミが優しくリデルを抱き締める。
「大丈夫、その優しさを忘れないで戦えば、守りたいものを守れるはずだから…」
「ん…お姉ちゃ、ん…」
リデルは泣き出し抱き締めるエミを抱き返す。
「泣いちゃって…ふふ。大丈夫、よしよーし」
「エミ中尉、お姉さんみたい…というかお姉さんでしたね」
アリスが何処からともなく現れた。
「うん、ヨミも昔はこうやって泣いてたこのがあったけ…」
「へぇ…ヨミも泣いたりしてたんだ…」
「そうだね。剣道で痛かったー…とか。そんなことだったかな」
話してるとリデルがむすっとしてるのにアリスが気づいた。
「アレ?リデル君…?」
「リデル少尉がどうし…たの?」
エミがリデルを放すと、リデルはむすっとしていた。
「もしかしてヨミに嫉妬してる…?」
「…うん、僕ももっとお姉ちゃんとぎゅっとしてたい」
リデルが恥ずかしそうにそう答えるとエミは微笑む。
「ふふ、かわいいね…でも格納庫だし、汗もかいてるからまた後でにしよっか」
「…わか…った…あ…」
リデルは股間の生暖かいものを思い出し顔を赤くする。
「リデル少尉?」
「し、シャワー行って…くる…!」
リデルが床を蹴り急いでシャワールームへ行こうとするが、途中で整備兵と衝突したりしていた。
「?」
「アレは…あぁ…南無」
エミは不思議そうにしていたが、アリスはその理由を察していた。
エミもシャワーを浴びたあと、リデルの部屋へと向かう。
「入っていいかな?」
そう言うと少し経ちドアのロックが解除される。
「失礼するよ」
「ん…お姉ちゃん…」
リデルは緊張したような表情でエミを見つめる。
「どうしたのかな?リデル少尉」
「さっき…あんなダサい姿…見せちゃったから…」
リデルは悶々としている。
「そのことか…大丈夫、気にしてないから」
エミが優しい声色でそう伝えながらリデルに近づく。
「でも…僕は…その…自分が…認められなく…て…」
「大丈夫、大丈夫…」
エミがリデルのことを抱き締め、その背中を擦る。またエミは来るまでの間にリデルの事情を察していた。
「ほん…とに…?」
「新米にはよくあることだよ…アリスだってそうだったから。だから元気出して」
リデルの背中を優しくポンと叩く。
「うん…お姉ちゃん…」
リデルがエミを強く抱き返す。エミは少し痛みを覚えたが優しい表情を崩さずにいた。
「ん…そうそう、今はこうしてていいよ」
「…お姉ちゃん…好き」
「はいはい、お姉さんだよ」
こうして2人の暖かな時間が過ぎていった…
続く