UC0101年1月9日、地球連邦軍714部隊は低軌道連絡ステーション”ペンタ”にて新部隊増設のための人員補充を行なっていた。714部隊旗艦”レナウン”艦橋では2人の女性が話していた。
「ずれ込んだが、ようやく714がフルで稼働できるようになるな」
「まずレナウンへの陸戦隊小隊増設…これでインプラカブルの小隊と合わせて1個中隊分の陸戦隊を確保、というわけですね」
714部隊司令官の白根ハルナ准将とレナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐が話す。
「といっても1個中隊なんで必要最低限である感は依然として否めませんがね。いっそのことインプラカブルにもう一個中隊増設して…いや、インプラカブルの部屋が足りませんかね。ふふ」
「だな。それによほど陸戦隊が必要なときは別部隊を使う…それが楽であろうな」
「そうでしたね…あのシャトルバスがおそらくそうですかね?」
エイレンの視線の先には無重力空間用の連絡車両が見え、そこには将兵約30人程度の姿があった。
「それに、遅延してた新装備の開発も終わった」
「ですねぇ…別で余剰となったジム・カスタムMk-IIと共に配備されるものですよね」
連絡車両の後ろから大型のコンテナ車が迫る。
「ああ。いっそのことEWAC装備のジェガンにでもしてくれればよかったんだがね」
「機種統一の都合…ですなぁ」
ハルナが席を立つ。
「ま、いいとするか…それじゃ、挨拶とでも行こうかね」
「ですね」
エイレンも席を立ち後に続いた…
レナウンの格納庫に将兵が折り立つのを夏野エミ大尉と霧島アリス中尉は見つめていた。
「彼らが…まぁ悪い奴らではなさそうだね」
「はい、良かったです」
そしてハルナとエイレンがやってきて、新パイロットや陸戦隊の小隊長、分隊長クラスの人間との挨拶を済ませていった。
「私達もパイロットに挨拶に行こっか」
「そうですね」
エミとアリスがパイロットの元へ向かおうとする。しかし…
「居た居た…!」
そんな二人の前に一人の女性下士官がひょいっと現れた。
「え?あなたは…?」
女性下士官は姿勢を正しながら喋り始める。
「っと、まずは名乗らないとですね。私は原田マキ軍曹、新設されるレナウン陸戦小隊所属。よろしくお願いします」
「原田軍曹ね…私は夏」
「っと、知ってますよぉ、夏野大尉」
女性下士官…マキはエミの言葉を遮った。アリスが口を開く。
「エミ大尉はエースですからね、それでかな?」
「いえいえ…実は私の母は貴方の父に助けられました」
マキは嬉しそうにその事を話し始める。
「貴方の父、夏野マサユキ曹長の参加した捕虜奪還作戦…そこで囚われていたMSパイロットである私の母、原田アキノ中尉を助け出した…そして、その時アキノ中尉のお腹に居たのが私です」
「父のおかげであなたが…」
「そう、だから私は命の恩人の娘である貴方に感謝を伝えると共に、その身をお守りすることを誓いましょう」
マキがエミの前に跪く。
「はは…気持ちは嬉しいよ。でも軍隊だし、そこは私の命より命令を優先して欲しいかな」
「はっ。夏野大尉の命なら心に刻んでおきましょう…しかしホントに危ないときはわかりませんよぉ。つい貴方を助けに…」
そう言いマキはエミに近づく。
「お姉ちゃん?」
「っと、リデル少尉…?」
「この子は…?」
そこにリデル・アンデルソン少尉が現れる。
「紹介するよ、彼はリデル・アンデルソン少尉…っと、そしてさっきから隣に居るのは霧島アリス中尉だよ」
「へぇ…霧島アリス中尉、噂のニュータイプエースの」
アリスにマキが顔を近づける。
「な、なにかな…?」
「ふふふ、夏野大尉と一緒に居る人なんでつい…ですねぇ」
マキがアリスから離れてクスクスと笑う。
「そ、そう…よろしくね(エミ大尉への執着…いや、敬意?が凄い子が来たなぁ…)」
「にしてもこの子…じゃなくてアンデルソン少尉は夏野大尉とはどういう関係なんですかなぁ?」
マキは不思議そうにリデルのことを見つめる。
「今の僚機だよ、リデル少尉は」
「だけじゃない…僕は昔、過激派に使われてた時にお姉…夏野大尉に助けてもらった」
リデルがそう言うとマキは微笑んだ。
「へぇ…つまり、私と同じで夏野家に恩があるわけですかぁ…よろしくお願いします、アンデルソン少尉」
「うん、よろしく…えっと…?」
エミはそういえばリデルは名前を聞いてなかったなと思い返す。
「マキ…でいいですよぉ」
「わかった。マキ…ん」
リデルが掌をマキへ向ける。
「…握手かな?」
「うん」
2人は握手をし、エミはリデルを微笑ましげに見つめた…
UC0101年1月10日、レナウンのトレーニングルームはそれまでより多くの将兵で賑わっていた。白兵戦を行う陸戦小隊の増設によるものか、彼らは他の兵士よりも人一倍努力をしていた。そして利用する将兵の中にはパイロット達も混じっていた。
「アリス、大丈夫…?」
「はぁ…は、ぁ…なん…と、か、ぁ…」
「は、ぁ…アリス、先輩…はぁ…体力…ないん、ですね」
エミとアリス、そしてディアナ・マルセイユ少尉がトレーニングに励んでいた。エミはスポーツブラのようなトレーニングウェアの下の腹部を見ると、腹筋が綺麗なシックスパックになっていた。ディアナは薄く腹筋が浮いていた。しかし、アリスはそれすらなくすらっとしていた。またそこ以外でも劣っているようであった。
「はぁ…は、ぁ……終わったあ…」
規定時間になったのかトレーニングを終えるとアリスは息切れを起こしていた。
「…水だよ、アリス」
エミが優しくアリスに水を差し出すが…
「ヨミ…?なんでレナウンに…?」
アリスはエミの妹であり交際する女性、夏野ヨミとエミを見間違うほどに疲労していた。
「やっぱ今日のトレーニングはキツすぎたかぁ…」
「はぁ…は、ぁ…こんな時もヨミちゃんを思い浮かべる…ぐっぬぬ…」
「そこかい」
そうしている所に一人の女性が近づいてきた。
「やぁやぁこんにちは。皆さん」
「あ、マキ軍曹ね。こんにちは」
それはマキであった。
「トレーニングですか?ふふ…流石夏野曹長の娘。夏野大尉は筋肉質で素晴らしい…」
マキはエミを褒め称えるが…
「あ、それは…」
「まず…」
エミとアリスはそれに固まる。そう、エミの実父は夏野マサユキではないからだ。
「…あはは、ありがとね…」
エミはそれを往なすように流した。そんな所へ一人の男性が来る。
「こん…にちは」
それはリデルであり、彼はもじもじとしていた。また彼の腕や脚は体毛もなく綺麗でかつ細いものだった。それはまるで…
「女の子みたい…」
ディアナがそう言った。それにリデルは頬を膨らませ抗議する。
「違うもん。そうできて…されただけ…」
「…ごめんなさい、アンデルソン」
「ん…別にいいよ、ディアナ」
それは強化人間故にそうされたものであったのだ。それにはディアナも頭を下げて謝る。
「ん…」
リデルはあいも変わらずもじもじとしていた。それにアリスが察した。
(もしかして…思春期…?)
そのアリスの予想は的中していた。筋肉質で引き締まりながらも尻の大きなエミ、高身長でスタイル抜群のアリス、乳房が一際大きなディアナ、エミ以上の筋肉質なマキ。そして、そんな彼女達が薄いトレーニングウェアで汗をかく…それはリデルへ強い刺激を与えていた。
「特訓したいのに…僕…なんか変で…」
(もしかして…知識も禄にない!?)
アリスが察した通り、リデルは幼い頃に強化人間とされたためにその辺りの知識が欠如していた。そして、エミに察した頃を耳打ちする。
「…なるほどね、私がなんとかする」
エミが優しくリデルに近づく。
「お姉ちゃん…?」
「大丈夫、リデル…よし、よ~し…大丈夫」
エミがリデルを優しく抱き、甘い声色で囁きその背中を擦る。そうするうちにリデルは落ち着きを取り戻していった。
「…ありがとう、お姉ちゃん…なんか大丈夫になってきた」
「ふふ。良かったよ」
「ふぅん…まるで姉弟…いや、歳の離れた幼馴染のようだねぇ」
マキがそう呟くもエミは否定する。
「まさか…まだ出会って1ヶ月くらいだしそこまでは仲良く…はは」
そうしてリデルもトレーニングに参加していった…
続く