時にUC0098年12月、714部隊はジオン残党狩り任務を受けていた。旗艦”レナウン”のブリーフィングルームには多くの将兵が集まっている。そして前には714部隊司令官の白根ハルナ准将や幕僚が立っている。そしてハルナによる説明が行われていた。
「敵はエンドラ級重巡洋艦を旗艦として輸送艦2隻を含めた計3隻。モビルスーツも20機ほどは居ると推定される」
スクリーンには撮影された敵艦艇と雑多な種類のモビルスーツが映し出された。
「哨戒艦隊との小競り合いのあと、敵は廃コロニー群に引き篭もっているようだ」
艦隊参謀のヘンス中佐がここで口を開く。
「ここで我々第5任務部隊は艦隊及び52戦隊で圧力をかけつつ、反対方向より51戦隊による奇襲を敢行する」
第5任務部隊とは714部隊を基幹とし、合流したモビルスーツ隊を含んだこの任務のために編成された任務部隊の名前だ。そしてそのうち、MS隊を2つに分けて51、52各戦隊としている。そしてMS隊の編成が映るが、レナウン艦長のエイレン・ユーリ大佐は眉をひそめる。
「以上が今作線の概要だ。質問はあるか」
「ではよろしいでしょうか?」
手を上げたのはエイレンであった。
「君から来るとはな」
「この51戦隊の編成はなぜ714部隊MS隊単独でなく、コンペイトウ守備軍の”ギャプラス戦闘小隊”が含まれているのでしょうか?単独の方が連携に支障が出ないように思えます」
その指摘に邪魔者とされた”ギャプラス戦闘小隊”の隊長、レナード・プリスガン大尉が軽く睨見つける。ギャプラス戦闘小隊は10月の模擬戦にて714部隊のMS隊に敗れていることから、このように扱われることを悔しく思っているようだ。
「それについては奇襲の爆発力をあげるために可変機を多く51戦隊に回したためだ。それにギャプランの優秀さは君も知ってのとおりだろう?」
「意図は理解しました。しかし、技量についてはプリスガン大尉はいいのですが、あとは…」
ギャプラス戦闘小隊のうち、ティターンズ時代の部下でもあったレナードは兎も角、他は信用ならないようであった。
「それについては俺…私が保証します!部下達は決してこの前のような恥を晒すことはしないでしょう!」
我慢ならないのかレナードが立ち上がりエイレンに向け弁明する。
「とのことだ、そう疑わないでくれ。私の采配でもあるんだ」
ハルナが熱くなるレナードを抑えるために彼の側に立つ。それにはエイレンも流石に従わざるおえなくなった。
「…了解しました」
そして、ブリーフィングルームから解散していった。
レナウンの戦闘指揮所(CIC)にはハルナや幕僚、エイレンらが詰めている。エイレンがMS隊に指揮を出す。
「モビルスーツ隊発艦完了10秒後より艦隊による牽制射を実施する。各機巻き込まれないように、以上」
その言葉と共にレナウンのカタパルトにゼータプラスC1型がセットされる。また随伴する軽空母”インプラカブル”の方ではギャプラス戦闘小隊がカタパルトにセットされる。ギャプラス戦闘小隊の可変モビルアーマー”ギャプラス”はギャプランの小改造機であり、各機のモノアイにはカバーが付けられている。そしてMS隊が発艦していく。
「霧島アリス、出ます!」
ゼータプラス隊の霧島アリス少尉は2度目の実戦であったが、以前よりは実戦による緊張が和らいでいる。他のゼータプラスと隊列を組む。
「レナード・プリスガン、出るぞ!」
インプラカブルからはギャプラスが発艦、他のカタパルトからもギャプラスが発進していき、それらはアリスのゼータプラスを追い抜いていった。
「速いわね…ギャプラン」
少し経ち、夏野エミ中尉のジム・カスタムMk-IIも発艦していく。またインプラカブルからは52戦隊のジェガンA2型が発艦していく。
「夏野エミ、出るよ」
エミを含むジム隊は可変機隊の支援が今回の主任務となっていた。そしてその発艦が終わるとともにレナウンと僚艦のグラップ級2隻からの砲撃が始まる。それは浮遊するデブリ群を破壊しながら、遠くに映る廃コロニーへと命中していき、遅れて爆発が発生する。そして51戦隊は回り込む。
「プリースト1より各機へ、これより攻撃を開始する。スマートガン発射せよ」
51戦隊指揮官とされたプリースト1より指揮が飛ぶ。アリス機を含むビーム・スマートガン装備のゼータプラスがその主砲を放つと、艦砲射撃により落ち着きを失っていた敵艦隊を完全に混乱に陥れた。被弾し炎上した三角形の輸送艦の1隻はモビルスーツを発艦させながら、制御を失い廃コロニーの壁と衝突し爆沈する。
「突撃部隊、出るぞ。援護を頼む。」
通常装備のゼータプラスとギャプラスが最大速度で突撃を開始する。スマートガン装備機は中速で、ジム隊はそれに続いて微速前進していく。
「敵モビルスーツ視認!」
先頭に立ったレナードが早速攻撃をしかけようとするも、その機体はアリス機の放ったビーム・スマートガンにより撃墜された。
「…墜とした…!」
「なっ…!ゼータか…!」
アリスは前回よりも落ち着き払っているが、それでも人を殺したことには変わりなく額に汗を流す。レナードは自分の役割を喰われて苦虫を噛み潰したようにゼータプラス隊を睨む。
「なんかあの人から感じる…こわっ」
アリスはそれを感じ取ったのか肩を震わせる。
「ギャプラスはこんなもんじゃ…!」
さらにレナードとその僚機は突出していき、敵MS隊と交戦していく。その動きは素早く鋭角的であり敵MSは翻弄され、手始めとばかりに1機が撃墜される。
「これがギャプラスの力だ!」
「速いし強い…」
「やるね…でも」
アリスはそれを素直に評価するも、エミは違った。それは…
「調子に乗りすぎだね。突出しては…」
「ゼータなんかより…!なにっ!少尉!」
一緒に突撃していたシールド・ブースター装備のギャプラスが被弾、そしてデブリに突っ込む。レナードは兎も角やはり部下はついていけなかったのだ。
「言わんこっちゃない…私達も出ます」
「了解したわ」
エミと僚機の久保ニイナ少尉機がギャプラス隊の援護に向けて前進する。僚機を失ったもう1機のシールド・ブースター装備機もたちまち被弾。レナードのフォローにより命は助かっているものの、上半身と下半身が断裂し機体は動けない。
「クソッ!こんなはずじゃ…ジムか!」
「バカな味方でも…助けないとね」
エミ機のビーム・ライフルによりマラサイの1機が撃墜される。さらにエミは接近しビーム・サーベルを抜く。そしてガザCの1機を素早く一閃、すかさず機体を反転させながらハイザックを蹴り飛ばしたのち、接近してきたガルスJを串刺しにした。
「…すまない」
「謝ってる暇があったら、その雪辱を晴らしましょう…冷静にね」
残ったハイザックをビーム・サーベルで斬りながらエミはレナードを鼓舞する。
「ニイナ少尉は残ったギャプランと共に大破したギャプランを守って。私はプリスガン大尉を援護するから」
「はーい」
ニイナが大破したギャプラスをシールドで守る。レナード機が飛び立ち、それにエミが続いた。
「ふたつ…来るよ、プリスガン大尉」
「了解!」
エミ機がハイザックをビーム・ライフルで牽制、それをレナード機が撃墜していく。
「やるな…夏野エミ…!」
「ふふ、それほどで…も」
デブリに隠れて奇襲しようとしたリゲルグを、エミは逆に接近しビーム・サーベルで切り裂いた。そして輸送艦にレナードが肉薄、ビーム・ライフルでエンジンを1基破壊した。エミもそれに続きビーム・ライフルで攻撃する。
「即席にしてはやるな!俺達!」
「だね、プリスガン大尉」
「凄いなぁ、エミさんにギャプランの隊長…」
アリスは2人の連携に見惚れていた。
「レナード中…大尉もうまくやってるようね。よかったわ」
エイレンも満足気に微笑んでいた。そして、旗艦のエンドラ級が大破し敵は降伏した。
「…俺の隊に来てほしいもんだな、夏野エミ」
「いや、遠慮します。私にはお気に入りの後輩がいるこの隊を離れるわけにはいかないので」
「エミ中尉…(かっこいいなぁ…)」
アリスはついエミのその言葉に惚れてしまうが…
「でもヨミが本命だから…!」
「なにか言ったかな?」
「な、なにも!」
「2人とも、私語は慎んでちょうだい」
エイレンに注意されながらも、こうしてエミとアリス達は艦に帰還していった…
続く