漂流する宇宙船と地球の命運について   作:紫 和春

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第1話 始まり

 2032年8月中旬。それは小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)により発見された。全天をカバーしている最新鋭宇宙電波望遠鏡のCUBE衛星が異常な電磁波を発見したのだ。それはりゅうこつ座方面から発せられていることが分かった。

 あまりにも異常な事態であったため、小惑星センターが緊急で仮の符号を設定し、関係各所で観測を行うように指示した。

 数日もしないうちに、その電磁波の方向からガスを噴出させている天体があることが判明した。天体は小惑星センターが仮符号を設定する前に、非公式にカリーナ彗星と命名される。

 さらに翌日。暫定的な軌道計算によって、圧倒的な速度で月軌道内側に接近するという不確定な情報がSNSに投稿された。それを煽るように様々な情報媒体で情報が拡散され、大手新聞や報道番組が報道合戦を開始。NASAやJAXAを筆頭とした宇宙機関は弁明に追われることになる。

 そうこうしているうちに、最初にATLASがカリーナ彗星を発見してから10日が経過する。すでにカリーナ彗星は地球まで2000万kmを切っており、いまだ真っ直ぐ地球に接近しつつあった。地球は混乱に陥る暇もなく滅亡すると思われた。

 その時不思議なことが起きる。カリーナ彗星が減速を開始したのだ。速度を落としていくカリーナ彗星は、そのまま制御されたように地球の軌道上へと落ち着く。そして最終的に、静止衛星軌道上で見かけ上停止したのだった。

 それをチャンスと見たアメリカのベンチャー宇宙企業は、サンプルを回収するためのロケットを打ち上げる準備を始めた。NASAはそれに待ったをかけ、その隙に中国が衛星を打ち上げようともしていた。

 そんなイザコザを1ヶ月ほどしていると、カリーナ彗星から小さな物体が地球に落ちてきた。それは通常の物理法則を無視した軌道を描きながら地球に降下し、そして大気圏を突破してくる。

 世界中が恐れおののいた。その物体の軌道から、明らかに地球の技術ではない何かを使っているからだ。そして、そんな技術で作られた物体が、人類では太刀打ち出来ない兵器だとしたら……。もはや世界は絶望という感情に飲み込まれていく。あらゆる人類の活動が停止しかけ、一瞬だが死者数が跳ね上がったと言う。

 その物体は日本の南硫黄島にゆっくりと着陸した。そして周辺に向けてラジオ電波を使い、日本語(・・・)で呼びかけたのだ。

 

『私たちを難民として認定してください』

 

 10月19日のことである。

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