ギルガメッシュ(のガワを被った転生者) vs 魔王アノス・ヴォルディゴード 作:お試し投稿
焼かれた森で黄金の鎧を身に纏う男が立っていた。
その男───英雄王ギルガメッシュ───は心底不快そうに言葉を吐き捨てる。
「……貴様、一体誰を見下しているか分かっているのだろうな?」
一つの宝具がゲートのような場所から引き出され、自動的に彼の背後にある物陰へと狙いを定める。
「ふむ、見下していたか?俺としては、突如、俺に気取られずにこの地に突如現れた貴様に最大限の警戒を向けていたつもりだったが───」
宝具の先端を向けられているのにもかかわらず、大した畏れもなく、堂々とした態度で現れたのはこの世界において、魔王と呼ばれる───アノス・ヴォルディゴードであった。
「───ほう、英雄王たる
「はぁ、俺は会話をしにきたんだがな」
「『
古今東西、過去現在未来からありとあらゆる宝具の原典を引き出す
そこから放たれる<ゲイ・ボルグ>は目にも止まらぬ速度で飛来し、目の前の敵を無情にも刺し穿つ───ことはなかった。
「ふむ、纏っている反魔法が削られたな。まぁ、それ自体は大して珍しいものでもないが、根源の持つ力としての作用が此処まで強いのも珍しい」
魔王アノスは放たれた、その槍をあろうことか掴み取り、堂々と値踏みしていた。
「……我が宝物に許可もなく触り、挙句の果てには珍しくないだと?……そこまでして死に急ぐか、この愚物が」
「大事な宝物ならば、ああも雑に投げるな」
「ほう。狗の分際で、この
遠く空の果てで、再び宝物庫の扉が開く───先ほどよりも圧倒的に巨大なゲート。
───そこから引き出されたる宝具は、別の世界でいつかの未来に生み出されることになる、光の速さで動くことのできる巨大な宇宙船『光の船』であった。
加速距離の問題で、最高速度の光速には僅かに満たないもののそれに極めて近しい亜光速のスピードで膨大な質量が降ってくることとなり、それは大気に触れた時点で周辺一帯の
暗雲を切り裂き、駆動する───数秒後には英雄王を除く、辺り一帯が灰燼と化す───筈であった。
「なるほど、確かに面倒だ……。だったら、こうするか。『
刹那、現れた剣の一振りで跡形もなく消滅する『光の船』"だった"もの。
「中々に面倒だったぞ?まぁこれきりでは俺は死なぬが、それでも無視できない程の被害が出ていたはずだ。よってこの魔剣であの鋼鉄の船体ごと、あの船が存在するなどという
「……ほう……」
この剣はあらゆる理を滅することで、硬度に関係なく、触れずとも切り、振らずとも切り伏せる。
その性質は傷跡が斬撃として現れるという理すらも滅し、結果として『光の船』は塵すらも残さずに消滅した。
───謂わば、最強の矛である。
(やっべぇ、絶対Fate世界じゃねーじゃんこれ。どっかの『なろう系』か?理を滅するってなんやねん!チートやろチート!ワイは英雄王RPで無双したかっただけなのに……)
「ほう?貴様……所詮雑種は雑種に過ぎぬ。とはいえ、他の有象無象、塵芥どもの中では上澄みか。───気に入った。その『ゲイ・ボルグ』はくれてやる」
(見逃せ見逃せ見逃せお願いお願いお願い頼む頼む頼む)
「そう逃がしてやるとでも?『動くな』」
「ちっ、
魔力を用いた言霊により硬直した身体を飛行用の宝具を用いて高く浮遊させ、ギルガメッシュを受け取るように突然、現れたインドの叙事詩を原典とする浮舟───ヴィマーナ。
「なるほど、反魔法は脆弱のようだな。そして打開策も尽きていると───」
(確かに慢心王の対魔力はカスだけどな!マジでクソわよ!)
「誰が、いつ、そんなことを言った?射出───『ダインスレフ』」
持てる限りの最大出力で宝具───ダインスレフを放つ。
ゲルマン神話に伝わる魔剣の原典であり、強力な『報復』の呪いを持つ魔剣とされている。
その呪いは人に向かって振るった場合、握り手へと還元され、その宝具を壊した場合は壊したものへと還ってくる。
「なに?」
対処のため、軽く振るわれた
その剣は、思惑通りの恩恵を齎してくれた。
さらに光学迷彩によるステルス機能、思考と同じ早さと謳われた飛行速度を遺憾なく発揮し、魔王アノスとの距離を大幅に稼ぐ。
同時に宝物庫から膨大な魔力の籠もった聖杯の原典───ウルクの大杯、乖離剣エア、そして『天地乖離す開闢の星』の威力を底上げするバックアップの宝具を用いた最大火力を見舞うため、全ての魔力を乖離剣エアへと集約し───
「……止めだ。このような雑種に使うなど、真の王たる
───矛を鎮める。
その視線の先には一向に追ってくる様子を見せないまま猛スピードで離れていく、魔王アノス・ヴォルディゴードの姿。
追ってきているか、もしくは何かしらの殺気や怒気を向けているのであれば、また違ったのだろうが……
少なくとも、魔王アノスにそれを向けるだけの価値は無かった。
───……恐らくはあのまま放たれていれば、辺り一帯どころか空間……いや、この世界全体が大きく欠損していた。
理滅剣の再生成は迂回も含め、何度か試したが、何らかの要因が邪魔しており、解析には時間が足りなかった。
世界全体を根源を元にして再生させるには、そもそも魔力も、時間も、何もかもが足りていない。
時間を遡って何かしらの手を打つにしても、明らかに魔法の発動が間に合っていない。
「───打つ手無し……か。ふ、ふふ────ふははははははっ!!!」
そう、魔王アノスはこの時、生まれて初めて───死んだのである。
評価とお気に入りクレメンス!