英雄王ギルガメッシュ(のガワを被った転生者) vs 魔王アノス・ヴォルディゴード 作:地霊殿の壁
魔王アノスと英雄王ギルガメッシュの邂逅、それにより持ち出されかけた対界宝具【
ある一つは時間を操り、そのまた一つは空間を支配する。幾重にも重ねられた数々の魔法陣が一瞬の間に無数に生成される。
その全てに共通しているのはそれら一つ一つがその領域において、絶対的とも言える『秩序』を内包しているということである。
───この世界を神ですらないものが、無作為に破壊しかける。それは現状存在し得る限りの全ての『秩序』に背反する行いであった。
己が役目を遂行せんと現れる数千を超える数多の番神達。
全ては神の忌諱に触れ、秩序を乱す異物を抹殺するために。
「───言の葉も交わせぬ愚かな獣風情が。誰の許しを得て
しかしながら、相手の身の丈に合わない不相応な行いに憤りを感じていたのは、何も神々だけではない。
〝人類最古の王〟であり、古代メソポタミアに起源を持つ【ギルガメッシュ】も同様であった。
時間への干渉を対魔術宝具を用いて無力化し、空間への干渉をカラドボルグの原典を投擲することで、魔法陣が描かれた空間ごと抉り飛ばす。
襲い来る神性を纏った虫のような神の使い魔は
不快気な声色を隠そうともせず、そのまま右手を翳した。
数百数千と展開される魔法陣に対し、迎え撃つはこれまた瞬きの間に数百数千と展開される宝具の数々。
───総ては己が往く道を塞ぎ、牙を向ける何千匹もの害獣を駆除するために。
目には目を、歯には歯を、物量には物量だと言わんばかりの一清掃射を始めるギルガメッシュ。
放たれたすぐそばから別の宝具が補充され、それを又放る。
そして、破壊されなかったものは回収し、又同じように放り投げる。
たった数秒で十の番神が殺され、その五秒先には百の番神が殺されていた。
───世界が徐々に、だが確かに崩れていく。
然しながら、番神らは踏みとどまることが出来ない。自らが神であり、秩序であるが故に、目の前の異常を排除する選択しか取ることが出来ないのである。
そして英雄王はその事を感じ取りながらも、我関せずと宝具を投げ続ける。
そうして気付けば、千を遥かに超えていた番神の八割がその機能を停止し、その三割弱は当たった宝具の効力によって半永久的に再生不可となる『死』を迎えていた。
その最中───。
「やめて」
柔らかく、それでいて芯のあるその声は、戦場の中央だというのにしっかりと聞き取れた。
ギルガメッシュは僅かに逡巡した後、攻撃の手を止める。
その少女の声が届いた瞬間、番神たちはこちらを攻撃する様子を見せなくなった。
それは、目の前に浮いている銀髪の少女が下した命令があるからであり、すなわちそれはギルガメッシュによって『愚かな獣』と称された番神たちの上位に位置する存在であることの何よりの証明であった。
「───猶予をやる。名を申せ」
「……わたしは、創造神ミリティア。この世界を創った『秩序』、それがわたし」
「ほう、自らを『秩序』であると自称するか」
「単なる事実。わたしたち『神』は秩序そのもの。ただ秩序として生じて、その役割を実行するだけの存在にすぎない」
「つまらん世迷い言はよせ。貴様はとうに意思を宿しているであろう。すぐそこの言の葉すら交わせぬ獣以下の存在に、ただ神性を持たせただけの雑兵どもとは違う。だからこそ、
「意思を、宿している?」
思いがけないその言葉に銀色の双眸が揺れ動く。
「……それよりも、だ。貴様は何を思い、
「……えっと……」
まるで出す予定だった言葉を見失ったように静寂が訪れる。
ギルガメッシュは意外にも、ミリティアの次の言葉を待ち続ける。
「……あなたは、何者?」
「漸く絞り出してそれか。まあよい───一度しか言わん、聴け。───
傲岸不遜な笑みを浮かべ、自らの真名を言い放つギルガメッシュ。
「……やっぱり。わたしはあなたを生んでいない」
「……は?」
ミリティアは上を指さす。
何時しか、そこには通常の月とともに、二つ目の月、ゾッとするほど神秘的な満月が浮かんでいた。
「<創造の月>アーティエルトノア、あらゆる生命を形成する源泉───対になる<破滅の太陽>サージエルドナーヴェが地上の生命を滅ぼし、<創造の月>アーティエルトノアからの月明かりを受けて、新たな命が生み出され、循環する。それが、この世界の理───
「……」
「でも、その秩序に背く者が現れた───一人目は魔王アノス。そして、もう一人は───」
ミリティアは視線と指先をずらし、目の前にいる英雄王へと移し替える。
「……」
「あなたは創造の月から生まれていない。ある日、突然、元々あったかのように、その場に現れた。……もう一度聞く、あなたは何者?人類最古の英雄王、ギルガメッシュ……それは嘘じゃない、でも何かが致命的に違う。すり替わっている?」
「……ククッ、よもやそこまで悟るか……生憎だが、