転生!!奇妙な冒険   作:パス太郎

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本日3話連続投稿


しばしの別れ

突然だがここでイタリアの教育制度について説明させてもらいたい。まずイタリアにも、もちろん日本と同じで義務教育がある。そして、これもまた日本と同じく小学校、中学校に分かれているのだが、日本との大きな違いが2つある。

 

まず1つめは、中学にも留年の制度があること。

 

もう1つは、義務教育が8年制であることだ(1998年当時)。

 

義務教育が終了している時点で俺は、どの国の高校にも入学することができる。だが俺はそれをしなかった。俺は中学を卒業してからの1年を、じいさんと波紋の修業を行い、その技術を高めるのに使った。最初じいさんは俺が高校に行かない気かと思って、苦い顔をしていたが、俺の考えを聞いて、すぐに納得してくれたようだ。

 

俺が中学校卒業と同時に高校に入らなかったのは別に高校に行く気がないという訳ではない。ただ俺は、同い年に先輩と呼ばれたくなかっただけだ(波紋の修業がしたかったという考えも、もちろんあったが)。

 

そして、1999年3月24日現在。俺が入学する高校は既に決まっていた。ぶどうヶ丘高校。そう、あの物語の1つの舞台である杜王町にある高校である。

 

 

 

 

「今日も平和だな~」

 

俺はしばらく見ることのないであろう街の景色を見ながらそうつぶやく。少しじじ臭いなと思ったが、精神的には32年も生きているんだから仕方のないことだろうと、テキトーに理由をつける。

 

「(ここの街にもだいぶ慣れたもんだな~)」

 

そんなことを考えながら、俺は街をぶらぶらする。思えば、あのバスでの出来事から約7年をこの街で過ごしてきたんだ。そう考えると、ここを去っていくのは寂しい。今では街で店を出している人のかなりと顔見知りだし、親しい友人も大勢いる。そして何よりも、じいさんがここにはいるのだ。俺を助け、波紋を教え、そして家族として扱ってくれたじいさん。それらのすべてに別れを告げ、日本へと行くということに躊躇がないと言えば嘘になるだろう。さらに行くのは、物語の主人公たちが今年、戦いを繰り広げる舞台となる杜王町だ。最悪の場合俺は死んでしまうかもしれないだろう。しかし、俺は行かなくてはならない。杜王町に行けば、あの男の手掛かりがつかめるかもしれないからだ。今年あの町には、念写の能力を持つ人間がやってくる。その能力を使えば、もしかしたらと俺は思っているのだ。そしてそれだけではなく、あの街に行けば、波紋以外の能力を手に入れることができるかもしれないのだ。…命の危険を冒すことになってしまうが。

 

「よ!サカエ!まだこっちにいたのか!!」

 

「うわ!!」

 

いきなり後ろから話しかけられ俺は素っ頓狂な声を上げる。そこにはなんだよ、そんなにびっくりしなくてもいいじゃないかとつぶやきながら立つヴィクターの姿があった。

 

「いきなり大声で話しかけられたら誰だってびっくりするわ!!!」

 

「すまんすまん」

 

ヴィクターは特に悪びれる様子も見せずに言う。

 

「で、サカエ!あっちにはいつ行くんだ?」

 

「……明日だよ」

 

そんな様子のヴィクターに少し怒りながら俺は答える。するとヴィクターは、そうかそうか、それはラッキーだったと言いながらポケットを探り出す。

 

「ほれ!これやるよ!持ってけ!」

 

「ヴィクターなんだこれ?」

 

「何ってお守りだよ!お・ま・も・り!!ジャパンではこういうの渡すんだろ?」

 

「…まあそうだな。ありがとよ」

 

俺はヴィクターにもらったお守りをポケットに入れようとするが、いまいちデカくて入りそうにない。ヴィクターはどうやってポケットに入れていたんだろうか。そんな俺を見ながらヴィクターは去っていく。「じゃーな現在無職!俺はこれから帰って課題だ!!」という捨て台詞を残して。俺はそんな友達の背中を見ながら帰路に着いたのだった。

 

 

 

 

俺は荷物の最終確認をしている。大体の物はあちらで買いそろえるつもりだが、とりあえず必要最低限の物は持っていく必要があるだろう。

 

「着替え良し。歯ブラシ良し。財布良し。チケット良し。鍵良し。これくらいかなあ?」

 

教科書とかそこら辺の物は、じいさんが用意してくれた家の方に送ってもらっている。2つ返事で家を用意してくれたじいさんを改めてすごいと感じた。

 

「ほれ栄。忘れ物だぞ」

 

じいさんはその手に俺のパスポートを持っていた。

 

「あ。サンキューじいさん」

 

危ない危ない。パスポートを忘れちゃ飛行機には乗れない。じいさんに感謝だ。

 

「なあ栄」

 

「なに?じいさん?」

 

じいさんの顔を見るとなんだかいつもより強張っているような気がした。

 

「日本はお前さんの祖国だが、ここはお前さんの家だ。何かあったらうちに帰ってきていいんだぞ」

 

「うんわかってるよ。じいさん」

 

俺は荷物を持つそして、目の前に立つじいさんを改めて見た。じいさんは少し真面目な雰囲気で立っている。

 

「どうしたの?じいさん?」

 

「…栄。ちょいと手を出してみろ」

 

「ん?こう?」

 

俺はじいさんに向かって右手を出す。じいさんはその手を自らの右手で握手するように握った。相変わらず暖かい手だ。じいさんはしばらくそうしていた後、手を離し、俺を見た。

 

「…栄。今からわしが言うことを、ほんの少しでいい。お前さんの心にとどめておいてはくれんか?」

 

「う、うん」

 

俺は背筋を伸ばす。じいさんの雰囲気はいつか感じた時と同じ戦士の雰囲気になっていた。

 

「仇を討ち、自らを縛る鎖の戒めからその身が解き放たれた時。己の意思を突き通すために、深い深い眠りにつく事となるだろう」

 

「っ!!?」

 

これは知っている。あの物語でも行われていた死の予言だ。その予言によるとあの男を殺せば俺も死んでしまうらしい。じいさんは優しく、そして、強い顔で俺を見ている。

 

「いいか栄。無茶はするんじゃないぞ」

 

「…わかったじいさん」

 

「お前はわしの家族なんだからな」

 

「うん」

 

俺は少しだけ曖昧に答える。一度死んだ命だ…仇を取れば死んでしまうとわかっていても、俺はそれをやめないだろう。

 

「よし!!いってこい!!」

 

じいさんにそう言われて俺は歩き出した。じいさんは笑顔で俺を送り出してくれた。

 

これはただのしばしの別れなんだ。絶対にここに帰ってくる。それがわずかな間の慰めだったとしても。そう誓って俺は歩き出す。身体的ではなく、精神的にも、俺は歩き出したんだ。




~キャラ図鑑~
吉崎栄
性別:男 血液型:O型 年齢:15歳 誕生日6月19日 身長:182㎝ 体重:88kg 趣味:手帳に何か書くこと。修行。釣り。 好きなもの:家族(じいさん含む)。友達。ピザ。飴。固めの白米。 嫌いなもの:逆手の男。ムカデ。バス。ビターチョコレート。 夢:家族の仇を取ること
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