転生!!奇妙な冒険   作:パス太郎

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愛と憎しみの引力②

「くそッ!!キリがねえ、あのくそバッタが!!」

 

俺は飛びかかってきた(無生物なのでこの表現が正しいかはわからないが)炊飯器を真っ黒なナイフで一刀両断する。炊飯器は完全に真っ二つにならなかったようで両断されたうちの片方が再び飛びかかってくる。俺は炊飯器をつかみ、同じく飛びかかってきていたポットに叩きつけ、その二つを同時に無力化した。そんな俺に一息つく間も与えず、今度は別の物が襲いかかってくる。さっきからずっとこんな感じで、無生物に襲われ続けているのだ。もっとも、大して強くはないので、めんどくさいなぁとぐらいしか感じないが。

 

だが、ずっと無生物たちを相手にしていて、いくつかわかったことがあった。

 

まず、俺のスタンドは増えるということ。これは別に、二体目のスタンドが現れるとかではなく、ただ単純に、ナイフの本数が増えるということだ。最高で7本。これだけあっても、正直あまり使い道がないのだが……まあ多いに越したことはないだろう。

 

そして、襲いかかる無生物たちが、どういう訳か俺のいる位置がわかるということだ。

 

このことが無生物たちのめんどくささに拍車をかけていた。どこに隠れようとも追っかけてくるし、きっとどこまで行っても追っかけてくるだろう。それに心なしか無生物たちの動きが、だんだんと鋭くなってきているような気がする。

 

「(このまま、ここでこいつらとやりあっていても状況は進まない……やっぱり、くそバッタを直接たたくのがよさそうだ)」

 

俺は無生物たちの攻撃を軽くいなしながら走り出す。

 

スタンドの能力の中には、スタンドが直接手を触れることによって、ほかの物質に何らかの影響を及ぼすことができるものがある。例を挙げるとすれば、ディオの息子にあたる少年の命を作り出す力や、おかっぱのマフィアのジッパーをつける力などだ。おそらく、この無生物たちも、そういうタイプの力によって動いているのだろう。こんなにさまざまなものに触れるということはきっと、くそバッタはゴミ捨て場とか廃材置き場とかにいるのだろう。

 

俺はそう推測し、近くにそういったものがなかったかを思い出す。……だめだ。ひきこもってたせいで、結局この町の構造なんてほとんど理解できていない。どうやら、これは走り回って探したほうが早いらしい。くそバッタに向かって馬鹿でかい声で挑発しながら走り回っていれば、向こうから来てくれそうな気もするのだが……さすがに目立ちすぎるのでやめておこう。

 

後ろから追ってきている無生物たちに警戒しながら、俺は林を抜けた。割と大きな林で抜け出すのに時間がかかったが、この林がなければ、状況はもう少しつらいものだっただろう。とりあえず、俺は心の中で林に感謝しながら、辺りを見回す。少なくとも見える範囲にはくそバッタの姿は無いようだ。

 

「なにが悲しくて、あんな気持ち悪いものをこっちからさがさにゃなんねぇんだよッ!!!」

 

悪態をつきながらも、俺は走ることをやめない。

 

走り続けて、俺は先ほどチラシをもらった通りまで来た。そこではいまだに外国人風の男がチラシを配っている。

 

不意に男と目があう。

 

俺は一瞬、走る速度を緩めたが、それはあくまで一瞬のことで、またすぐに加速し、その場を後にする。

 

「(あほか、何考えてんだ俺は…あの男は確かに怪しい。だが、怪しいっていうだけだろうが)」

 

自分の心に浮かんだ考えを押しつぶしながら、俺は走り続ける。

 

そして、200m程通りから離れたところで、俺は足を止めた。

 

目線の先には奴がいる。

 

「見つけたぜ。くそバッタが」

 

くそバッタは予想していた通り、ゴミ捨て場の前に陣取り、それらをあさっている。まったく、あの姿、言動、行動どれをとっても気持ち悪いなんて、くそバッタの気持ち悪さはもはや感動の域だ。

 

スタンドが発現したことによって、少し心に余裕ができた俺は真っ黒なナイフを軽く握りながら、悠々とくそバッタに近づく。あと10mといったところで、あちらも俺に気が付き、気持ち悪い笑みを浮かべた。

 

そしてお互いが2m程まで近づいたところで俺は足を止める。くそバッタは笑みを浮かべたまま、話しかけてくる。

 

「みつかんねぇからよ~。とりあえず、サクッとくたばってもらうために、あのゴミどもはなってみたんだが…お気に召したかねぇ~」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「でもよ、ホントはこんな事したくなかったんだぜ。テメェの表情も何にも見れずに終わっちまうからな~。必死こいてここまで走ってきてくれたテメェに、俺は今拍手を送りたい気分だよ、本当」

 

「そうかい。じゃあ今のうちにできるだけ拍手しとくことをお勧めするぜ。しばらくはできなくなるだろうからよ」

 

俺を挑発していたくそバッタは、逆に俺の挑発一つで面白いくらい怒りをあらわにした。単純な奴だ。

 

「調子こいてんじゃあねえぞゴミがッ!!!!」

 

くそバッタは先ほどと同じく、ただ単純に突進してくる。後はこれを躱して、ナイフで刺せばそれで終わり。そのはずだった。

 

「うぐッ!!!!」

 

予想外のスピードで俺の腹にくそバッタの拳が突き刺さる。俺はその予想外のダメージに意識が一瞬飛びかけるも、必死にそれを繋ぎ止めた。

 

くそバッタは間髪入れずに俺を殴った方とは別の腕を使い、追撃してくる。これまた先ほどとは比べ物にならないスピードだ。

 

その攻撃に何とか反応し、腕でガードする。しかし、さすがスタンドといったところか、波紋で強化されている腕がみしみしと嫌な音を立てた。

 

「く・・なめんなッ!!!」

 

俺は握っていたナイフでくそバッタを切りつけようとするも、くそバッタはそれを悠々と躱した。

 

くそバッタはそのまま後ろに下がると、余裕たっぷりの表情で俺を見る。

 

「くく…今のテメェの考えてること当ててやろうか?『何でこいつこんなに速いんだ』だろ?」

 

くそバッタに思考を読まれ、俺は少し顔をしかめる。

 

「ヒァアハハハハハハ!!!!今、テメェ『訳わかんねー』ってツラしてるぜーッ!!!」

 

高笑いを続けるくそバッタに気を取られたその瞬間、左腕に鋭い痛みが走った。

 

俺はとっさに左腕を押さえ、痛みの原因を引き抜いた。その正体は包丁。同じ場所にとどまり過ぎたせいで、無生物たちに追いつかれてしまったようだ。

 

「ヒァアハハハハ!!!どこ見てんだよッ!!!!」

 

「うッ!!!!」

 

包丁に気を取られていた俺はくそバッタの攻撃を避けることができず、拳をもろに食らう。

 

その反動で後ろに5mほど吹き飛び、追ってきていた無生物たちに激突する。

 

「波紋ッ!!!!」

 

くそバッタは無生物たちによる追撃を狙ってたのだろうが、俺は逆に波紋で体を強化して、激突した無生物を破壊した。

 

「残念だったな。お前のペットは全部壊れちまったみたいだぜ」

 

痛む体を起き上がらせながら、俺は言う。

 

「ああ、本当に残念だ…なぁ!!!!」

 

全くそう思ってないであろう台詞を口にしながら、くそバッタは俺に突進を仕掛ける。そのスピードはまたも上がっている。

 

今度は俺も反応し、攻撃を避けるように体をねじりながら、ナイフで切りつける。だが、くそバッタはそれを避け、反撃してくる。

 

俺は動体視力が、くそバッタはスピードがお互いのそれを上回っているために、両者攻撃が相手にあたらない時間が少しの間だけ続いた。

 

その短い時間は俺の動きが一瞬止まることで終わりを告げる。俺の左腕に鉄パイプが突き刺さったのだ。鉄パイプは波紋で思いっきり強化した腕に突き刺さったせいか、もはや動くことはなくなっていたが、俺に大きな衝撃を与えた。

 

「(まだ、のこってッ!!!)」

 

そんな風な思考をひねり出すにかかった一瞬の間は今までぎりぎりで保たれていた均衡を崩すには十分だったといえよう。

 

容赦なく顔面に一撃を入れられ、視界が暗転し、俺は地面に倒れる。

 

「無様だなぁ」

 

くそバッタがゆっくりと近づいてくる。おそらくはとどめを刺す気なのであろう。対する俺は地面に倒れ動けずにいる。

 

こんな絶望的であるはずの状態において、なぜか俺の頭はとても冷静に働いていた。

 

今まで気にも留めていなかった事柄が、まるでパズルのようにつながっていき、俺を一つの推測へとたどり着かせる。

 

「そうか…無生物……無生物こそがお前のドーピングだったってわけか」

 

「………気づきやがったか」

 

くそバッタは一瞬固まると、驚いたようにそうつぶやいた。

 

その反応で、俺は自らの推測が正しいことを確信する。

 

「お前のスピードが増す前には必ず俺が無生物を破壊していた………しかも破壊すればするほどお前は早くなる」

 

「いつ気づいた?」

 

「…厳密に言えば、確信したのはお前の言葉なんだが……推測できたのはさっきの一撃。ほんの少しだがまた早くなってたからな」

 

俺は左腕に刺さったままの鉄パイプを見せるように、少し左腕を上げた。

 

その様子にくそバッタは再び笑い出す。

 

「ヒァアハハハハハハハハッ!!!!そうか!!謎が解けてよかったな!!!じゃあ、死「一つだけ忠告しといてやるぜ」

 

腕を振り上げたくそバッタは俺の言葉で停止し、怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「経験則なんだがよ。絶対に勝てる!!って思ったって不用意に近づくのは賢い行動じゃないぜ」

 

俺が推測できたのはくそバッタのスピードの秘密だけではない。そして、先ほどのくそバッタとのおしゃべりはその推測を確信に変えるのに十分な時間だった。

 

俺は形を変えたそれを握り直し、体に力を込める。喋っていた間も波紋の力で回復し続けた俺の体は、俺の動きに反応して動いたくそバッタよりも少しだけ早かった。

 

俺は素早く体を起こしながら、妙に手になじんでいる真っ黒な銃の引き金を引いた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

くそバッタが右足を押さえて倒れこむ。よく見ると押さえている右の太ももには小さな穴が開いていた…もっとも開けたのは俺なのだが。

 

「て、テメェ!!いつの間にそんなもん持ってやがったッ!!!!!…そ、そうか!!確かスタンドっつたか!!?テメェも使えたんだな!!スタンドを!!!」

 

どうやら、くそバッタは今の今まで俺のことをスタンド使いだと理解できていなかったようだ。そのくせ俺の攻撃を避けていたことを考えると、スタンド使いになって日が浅いのかもしれない。

 

どうでもいいことを考えているうちに、激怒したくそバッタがこちらに手を伸ばしてくるが、俺はその手にも穴をあける。くそバッタはまた叫びうずくまった。

 

「……ヘイト・オン・ミーは最強のはずだ…こんなゴミに負けるはずが…」

 

「……命まではとらねぇ。さっさと降参して病院にでもいきな」

 

俺はぶつぶつと何か言っているくそバッタに銃口を向けながら言った。

 

「(これじゃあ、まるでやくざかマフィアだな、いや、俺じゃあせいぜい悪ガキってとこか)」

 

そんなことをふと考えたその時、俺にどうでもいい一つの考えが浮かんだ。

 

「お前のヘイト・オン・ミーじゃ、俺のスタンド…『ボーイズ・タウン・ギャング』には勝てねえよ。あきらめな」

 

ボーイズ・タウン・ギャング。そんな適当に付けた名前は、それを口にした瞬間。すっと俺の頭に馴染んだ。まるで最初からその名前であったかのようだ。認識することでスタンドはその力を確固たるものにできるらしいが、名前を付けたことで、スタンドに対する認識が強まり、少しだけ、より俺に近いもののような気がするようになった。直感で名前を付けたのは案外正解だったかもしれない。…まあ、そのおかげで強くなったのかはわからないが。

 

「スタンドは精神の具現化だとあの男は言った…なのに勝てねえだと?俺が…俺がテメェみたいなゴミよりも精神が弱いわけがあるかッ!!!!!!」

 

くそバッタは隠し持っていたらしいねじを俺に向かって投げつける。破壊するとくそバッタが強くなってしまうので出現させたナイフで壊さないように適当に対処する。

 

「(ナイフを出したら、銃の中の弾が4発から3発に減った?なるほど、ナイフ7本=銃1丁+弾6発ってわけね)」

 

一人で納得しながら俺は引き金を引く。くそバッタを殺さないようにできるだけ急所は避けて打つが、それが仇となったのか、2発を避けられてしまい、1発は当たる前にキャッチされてしまった。

 

「ヒァアハハ!!!見ろ!!やはりテメェの精神ごときじゃ、俺は倒せねぇんだよッ!!!!」

 

くそバッタは笑いながら、持っていた弾丸を捨てる。否、捨てようとした。しかし、弾丸はその手を離れずに、指先にくっついたままだ。

 

「スタンドは俺の精神。つまりは俺の分身だ。俺に波紋が流れないわけないよな?」

 

俺の言葉も、指先に残る弾丸も理解できないくそバッタは、もはや理解不能と、弾丸を見つめたままフリーズしたパソコンのように思考停止したようだった。

 

「いくぜ、味わいな!!!スタンドから流れる波紋!!!!漆黒色の波紋疾走(スタンドブラックオーバードライブ)!!!!!」

 

公園での時とは違い、スタンドから放たれる波紋の為か、くそバッタはびくびくと体を痙攣させた後に倒れ、そして、本体が気絶したのか消滅してしまった。一応、手加減したけど…死んでないよな、本体。俺は祈るように両手を合わせる。

 

俺は一度ため息をついた後、体についていたほこりを払う。

 

「…チラシの奴探しに行くか」

 

少し考えた後、先ほどのチラシの男を探すことにした。ディオのチラシなどここで配られては困るのだ。そのため、俺は軋む体にムチ打って歩き出そうとする。だがしかし、すぐにその必要はなくなった。

 

目の前にはすでに目的の男が立っていたのだ。

 

男の目つきは何か不審者を見るようなもので、その対象は明らかに俺であった。しかも男はちらちらと銃の形をしたボーイズ・タウン・ギャングを見ている。そのことが男がスタンド使いであることを物語っていた。

 

「(これはまずい。まずすぎる!!!完全に危ない奴だと思われてる!!!!)」

 

一難去って、また一難。明らかに俺を警戒している男を見ながら、俺はこの状況にピッタリな言葉を思い浮かべていた。

 

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