ネコ耳❤アリシアの魔王城日記   作:空創士

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第16章 魔王とピクニック

 魔王城に来てから、3ヵ月経った。

 

 私たちの毎日は、朝6時に起床して7時にダイニングルームで朝食をしてから、午前中はずーっと花嫁修業の講義がある。11時半から昼食を含んだ休憩が2時間あり、午後3時ころに軽食タイムが20分あるほか、午後5時までずーっとまた講義がある。

 お母さまとモナさまは、教師になるための講義を一日中受けている。現在は、午前中が教育理論とか教育法、子ども心理学などの授業があり、午後からはベテランの教師について、実際の授業のやり方を習っているそうだ。

  

 午後7時からは、魔王さまといっしょの夕食だ。

それがすむと、魔王さまと王妃、将来の王妃、恋人たちと大浴場で家族温泉。この、夕食から家族風呂という流れは、魔王さまと家族にとって、大変重要なイベントであるらしく、王妃たちと恋人たちはよほどのことがない限り、全員参加する。

 唯一、魔王さまといっしょにお風呂にはいらないのは、アマンダさまの息子のルファエルとリリスさまの娘のリラインとハウェンさまの娘のエルミーニだけで、ルファエルの場合は、下にもう毛が生えている年だからであり、リラインとエルミーニの場合は、まだ幼い子どもなので、ジオンやキアラと同じく、乳母や若いメイドたちと子ども部屋で遊んで過ごすことになる。そしてそこでお風呂にも入れてもらっている。

 

 お母さまとモナさまは、魔王さまとの最初の取り決め通り、毎週、金曜にヤーダマーの塔に里帰りし、日曜の夜に魔王城に帰って来る。たっぷりと二泊二日にわたって、お父さまから愛情を注いでもらって、顔も肌もツヤツヤになって帰って来る。

 それはそれで、娘としてうれしいんだけど...... 年頃のオンナの子としては、微妙な感じ(汗)。

まあ、お母さまもモナさまも、毎晩、大浴場で魔王さまから胸を揉みまくられて、身体に火をつけられたままで寝ているのだから、その溜まりに溜まったリビドーをお父さまに静めてもらわないと、とてもじゃないけどやっていけないだろうといのうは分かるつもり。モナさまは26歳とまだ若いし、お母さまは女ざかりの32歳だもんね...... 

 

 お母さまとモナさまが、たっぷりとお父さまから愛情を補給してしていただいている週末、私やビアやルナレイラお義姉(ねえ)さまは、どうやって週末を過ごしているかと言うと...... 

 魔王さまやほかの王妃たちといっしょに、観劇に出かけたり、遠出デートなどなどにくっついて行ったりしている(汗)。ビアは、「そんなのタイクツ――!」と言って、マイレィちゃんや同じ年ごろの高官の娘とか将軍の娘たちとつるんでいるみたい。

 まあ、この年頃で二つ年が違えば、やはり“大人の遊び”なんて、全然面白くないだろうしね。私は“おまけ”みたいな感じでついて行くんだけど、いつもエイルファちゃんやエリゼッテちゃんといっしょなので結構楽しい。

 

 

 そんなある週末、「ピクニックに行く」ということになった。 

ピクニックなんて、イヴォール城に住んでいた時以来じゃない? 

これには、ビアまで「ピクニック?ワタシも行く、絶対行くんだから!」と言って週末が来るのを楽しみにしていたくらいだ。もちろん、私も期待していたが、誰よりも期待していたのはルナレイラお義姉(ねえ)さまだっただろう。

 

 ピクニック当日の朝、私とビアはルナレイラお義姉(ねえ)さまから、朝の6時にたたき起こされた。その訳は、イヴォール城にいた頃によくお母さまたちが作っていたお弁当を作って魔王さまに食べてもらうという考えからだ。

 やれやれ...... ピクニックは10時に魔王城を出発するのだから、週末くらいゆっくり9時まで寝かせてよ。こちらは育ち盛りなんだから朝は眠いのよ、と文句を言う訳にもいかない。

 魔王さまにゾッコンとなったお義姉(ねえ)さまには、そんな“他人の迷惑”など眼中にないのだ。(私もビアも他人ではないんだけど)

 

  もちろん、部屋に調理場はないので、マルカに頼んで調理場を(当然、材料も)使わせてもらうことにした。

 お弁当は、ゆで玉子を刻んで調味料を加えてパンの間にはさんだもの、豚モモ肉燻製の薄切りと葉野菜をパンにはさんだもの。それに酢漬けのペポノスと燻製ソーセージの輪切りをパンにはさんだものと言う三種類のお弁当だ。

 

「魔王さまに、ルナレイラは料理もできるってことお見せするのよ!」

ルナレイラお義姉(ねえ)さまは、エプロンをかけて健気に調理場で大奮闘である。

私とビアは調理助手よろしく、お義姉(ねえ)さまにこき使われた。

お弁当より、その甲斐甲斐しいお姿を魔王さまにお見せする方が効果的じゃない?

 

 

 ピクニックの場所には、例の移動魔法で直行した。

だから、魔王城を10時に出発しても余裕で目的地に着くことができたのだ。 ドコデモボードって、本当に便利!

 遥か遠くに雪を頂上に戴いた山々が見えるその場所は、河畔の草原で白い花が一面に咲いており、青く澄んだ川と真っ青な空がとても美しいところだった。

「ここは、ダエユーネフ国の国境に近いところなのよ」

とプリシルさまがみんなに言ったけど、ダエユーネフって魔王国の北方の隣国だけど、魔王城からはすっごく離れているんだよね?

 

 だけど、ダユーネフ国は敵陣営で、目下魔王国とは戦争状態にある...... 

“本当にだいじょうぶなのかしら?” 

 そんな考えが頭をよぎったけど、私たちが川のそばに日よけのテントとかを立て終わった頃に、次々と女性たちが移動魔法で現れた!

 女性たちの顔ぶれを見ると、アンジェリーヌさま、ジョスリーヌさま、アイフィさまの顔も見える。十人ほどのその女性たちは、敵軍がその名前を聞いただけでオシッコをもらして遁走すると言われる魔女軍団、いや、魔王国の魔術師部隊だった!

 

「みなさん、おはようございます!」

「魔王さま、みなさま、おはようございます」

「おはようございます!」

「おはようございます!魔王さま、みなさま!」

「おはようございます。あら、もうテント立てちゃったんですか?」

口々に明るくあいさつをする。

 

「おお。もう来たのか?」

「おはよう、魔術師部隊のみなさん!」

「おはようございます。魔術師のみなさん」

「おはようございます」

「おはようございます」

こちらも返事をする。

 

 

「おはよう。テント立てるのに魔術を使う必要はないわ。そのために来たんじゃないでしょ?」

アマンダさまが、ニッコリ笑って言う。

「ですわね!」

「魔王さまにお見せするために、こんな遠くまで来たんですからね!」

「魔王さまだけじゃなく、ダエユーネフ国軍にも見せつけるためでしょ?」

アンジェリーヌさまやジョスリーヌさまが何だか物騒なことを言っている?

 

「ルナレイラさま、アリシアちゃん、おはよう!あら、今日はビアちゃんも来たの?」

白いトゥニカを着たアイフィさまが、微笑みながら私たちにあいさつをした。

風にマントをはためかせている白い髪と青い目のアイフィさまって、すっごくカッコイイわ!

 

 アンジェリーヌさまは、ピンクのスーツにロングパンツ姿。

下にはスパッツとか言う、足にぴったりした靴下みたいなのを履いているのでおパンティが見える心配はない。

 ジョスリーヌさまは、水色の半袖ブレザーに白いシャツ、そしてブレザーと同色のハイウェストショートパンツの下に白いタイツ。

 ミカエラさまは、パープル色の短いスカートにスパッツ姿。

そして、最近結婚したばかりと聞いたヴァスマーヤさまは、紫色のショートパンツに同色タイツで、上は白い長袖ブラウスだった。

 ほかの魔術師の方たちは名前は知らないけど、みんなすごく若い。

 

 

「魔王さま、お声をかけてくだされば、ご一緒に来ましたのに」

少しうらめしそうな顔で、ぽそっと不満を魔王さまに言うヴァスマーヤさま。

最近では、夕食時でもお風呂でも魔王さまの関心を独占している感じの王妃だ。

 

 エイルファちゃんやエリゼッテちゃんからの情報では、先のダエユーネフ国との戦いの中で、最大の激戦であった『オドグタールの戦い』の折り、ヴァスマーヤさんはダエユーネフ国の“切り札”として送り込まれた魔術師で、靉靆(あいたい)の者と呼ばれて恐れられていた魔術師だったそう。

「ヴァスマーヤちゃんはね、アルドラルビダカの極秘魔法と言うすっごい魔法を使うんだってお姉さまが言っていたわ。その中には『即死魔法』とか言う物騒な魔法もあるんですって」

さすがアイフィさまの妹だけあってエイルファちゃんは詳しかった。

 

 『オドグタールの戦い』で、ヴァスマーヤさまたちのダエユーネフ国魔術師部隊は、アンジェリーヌさまやジョスリーヌさま、ミカエラさま、それにアイフィさまたち魔王国魔術師部隊と壮絶な魔法戦をくり広げたそうだけど、魔王国魔術師部隊の方が一枚上手で、ダエユーネフ国の魔術師部隊はほとんどが捕らえられ、ダエユーネフ国軍は大損害を受け、司令官も重傷を負って捕虜になったのだとか。

 

「そして、“美女に目がないパパ(魔王)は、ヴァスマーヤちゃんをオヨメさんにすることを決めたの!」

まだ9歳なのに、ママ譲りの整った鼻を得意そうにうごめかしながらマイレィちゃんが言った。 「それで、ヴァスマーヤちゃんは16歳で王妃になったのよ!」

エイルファちゃんが締めくくった。

 

 “16歳で魔王さまの妻になった?” 

アマンダさまとかプリシルさまとかリリスさまとか、ハウェンさまとか、かなり若い時に魔王さまの妻、あるいは恋人になったって聞いてはいたけど、やはりつい最近妻になったばかりという若々しいヴァスマーヤさまを見ると、あらためて“現実なんだ”と痛感する。

 16歳って、あと1年ちょっとしたら、私もその年になっちゃうじゃない?

じゃ、じゃあ、私もその年には魔王さまのオヨメさんになっているんだろうか?

 

 

「それでは、みなさん。今から魔王国魔術師部隊のみなさんが、新しい魔法を実演しますので、椅子に腰かけてご覧になってください」

アマンダさまの声で、みんなはテントの下に並べられた折り畳み椅子に座った。

その時になって、テントの中には、魔王国の高官たちや将軍たちが20人ほど来て着席しているのに気がついた。

どうやら、私たちが魔術師たちと話したりしている間に移動魔法で来たみたい。

 

「おお!これから、アルドラルビダカの極秘魔法の中でも、もっとも凄まじいと言う魔法を実演するのですな?」

「その通り。ダエユーネフ国との国境で、この新魔法を使えば、ダエユーネフ国も魔王国に攻め込もうなどとは二度と考えないでしょうからな!ガ―――ッハッハッハ!」

高笑いしているのは...... そう、ギャストン鬼伯爵だった!

 

 

 アルドラルビダカの極秘魔法の実演は― 

結論から言うと、想像を絶するものだった!

 

何と、国境にあった標高2千メートルくらいの山が半分ほど消滅してしまったのだから!!

それも一つではない。続けて10峰ほどの山が中腹から上が消滅した。

 

 そのあとのヴァスマーヤさまの説明では、この魔法はアンジェリーヌさまとかジョスリーヌさま、ミカエラさま、アイフィさま、それに彼女クラスの超絶魔術師が力を合わせないと出来ない魔法なのだそうだ。

 今まで、その魔法は理論的には発動できると分かっていたんだけど、それだけの能力を使える魔術師を必要な人数集めることが出来なかったため、テルースの世界の魔法の歴史上、今日に至るまで一度として使われたことはないのだそう。

 

 高官や将軍さまたちは、忙しいから(魔王さまのピクニックの邪魔はしたくないと言うのが本音だろう)と言って、魔王城に帰って行った。

 新魔法の実演を終えた魔術師部隊のみんなも加わって、楽しいピクニックとなった。

って、これってピクニックじゃないでしょ? 

 

 敵国を威嚇するための魔法実演が主目的で、ついでにお弁当を持って行ったってだけじゃないですか?まあ、私なんか、将来、魔王さまの妻になるというだけで魔王城に居候している身なので、ピクニックであろうが、軍事演習であろうが、新魔法の実演であろうが、文句を言える立場にないことはよく知っているんだけどね...... 

 

 気を取り直して、朝早くからルナレイラお義姉(ねえ)さまといっしょに作った美味しいお弁当でも食べるとしますか。

「みなさん、これは、アマンダさまとプリシルさまとリリスさまとハウェンさまとヴァスマーヤさまが、お作りになられたトリプルビッグバーガーです。たくさんありますので、たくさん召し上がってくださいね!」

 

リエルさまが、可愛い声を上げて、大きなバスケットのフタを開けた。

「もう!リエルちゃんたら。そんなこと言わないで。恥ずかしいわ!」

「いいじゃないの、アマンダさん。あなたも魔王さまのために作ったんでしょ?」

「そうですわ。私たちが朝4時に起きて、愛情をこめて作ったんですもの」

「魔王さまも、みなさんも知るべきですわ」

「宣伝するのなら、マーヤちゃんの名前を大いに宣伝してあげて」

アマンダさまたちの会話...... 

アマンダさま、魔王さまやみんなの分のお弁当作るなんて、けっこう女らしい?

それにしても、朝の4時からですって?!

 

「魔王さま、どうぞ!」

ヴァスマーヤさまが、トリプルなんちゃら言うものをお皿に乗せて魔王さまに勧めている!

「うむ。朝早くからがんばったのだな?」

「いえ。わたしだけじゃなく...... ふぎゅっ!」

ヴァスマーヤさまが、魔王さまに腰を引き寄せられてチューされた?

 

「ま、魔王さまっ、わたくしもお弁当を作りましたので、よろしかったらどうぞ!」

ルナレイラお義姉(ねえ)さまもライバルに負けじと、朝の6時から作ったお弁当をお皿に乗せて持って行った。

「うむ。朝早くからがんばったのだな?」

「は、はいっ...... ふぎゅっ!」

おいおい、ルナレイラお義姉(ねえ)さま、アリシアとビアも手伝いましたって言ってよ?

お弁当を乗せたお皿を持ったまま、ヴァスマーヤさまと同じく、腰を引き寄せられて魔王さまからキスをされて顔を真っ赤にしながらもうれしそうにしている。

 

「二人ともありがとう。そこのテーブルに置いて椅子にもどりなさい」

「はい!」

ペシ!

「きゃっ?」

「はいっ!」

ペシ!

「ひゃっ?」

 

自分の椅子にもどろうと背を向けたところを、二人ともオシリを魔王さまから軽く叩かれて飛び上がってよろこんで元いた場所にもどって来た。

 

 

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