貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
エリアナがリリアとテレパスで連絡を取って、教えてもらった集合地点へ二人でやって来てみれば。
「り、リリア? なに? これ、何?」
思わず敬語が崩れてしまったよね。
だってさぁ、なんだっけ? あのギリシャだったかローマだったかの……そう、パルテノン神殿?
あれの小規模版みたいなのがおったってんだもん。
「主様が快適にお過ごしできるよう結界にて準備いたしました。本来であればもっと大きなものを用意したかったのですが……申し訳ありません。最前線近くですので、あまり目立つわけにもいかず」
うん、そう言う事じゃない。
ここで寝るの? いつものテントじゃダメ? むしろテントが良いんだけど?
「リリア」
「はい、どうされましたかエリアナ様」
「悔しいですが、いい仕事ですわ。流石です」
「ふふっ。煌めきの魔女様にお褒め頂けるなんて、光栄ですっ」
グッジョブじゃなぁああぁいっ!!
え? 結界? 結界ってこんな使い方できるの!? 意味わかんねーんですけどっ!?
い、いかん。
流石にここで過ごすのは嫌だ、一晩だけってことにはならんだろう、だからシアが集落の長に話をつけにいったんだ。
こんな拠点じゃあ落ち着くもんも落ち着かん。
「り、リリア? この集落に宿はなかったんですか?」
「一応、宿に近い機能を持つ場所は存在しています。ですが……」
「前線兵、ですわね?」
「……はい。ここまで前線を下げることが想定されているのでしょう、差し押さえられていました」
……あー、なるほどね?
前線は旗色が悪いようで。だからこその勇者シアパーティ召喚って意味もあるのか。
なら逆にここを使う必要がないくらいに戦線を安定させることがひとまずの目的、って感じかね。
「……なら逆に、テントのほうがいいのではないでしょうか? 苦しく窮屈な生活を送っている人が多い中、ここまで立派な建物で過ごすのは、いらない反発を受けてしまうと思います」
「っ!!」
でもだからと言ってここで過ごしたいとは思わないのでなっ! ごめんねリリア! サービスするから許してっ!?
「申し訳ありませんっ!!」
「いやちょ」
とか冷や汗かきながらお断りしてみれば、リリアは勢いよくジャパニーズ土下座した。やめてくれ。
「まったくもってその通りかと思います! 主様の御心に見合わぬモノを!! 直ぐに撤去致しますっ!」
「え、あ、あー……き、気持ちは、すごく嬉しいん、ですけども」
「あぁっ! 寛大な御心、感謝致します……! 申し訳、ありませんでした!」
「は、はい……こちらこそ準備してもらっておいて、申し訳ないです」
リリア怖い、過激派怖い。
どうして彼女はこうなってしまったんだろう、ほんとにわけがわからない。
聞いてもいまいちわかんないんだよね。なんか、救済自体であるカイト様が云々かんぬんで神とかなんとか。
「……そう、ですわね。わたくしも、申し訳ありませんわ。カイト様のことばかりを考えているようで、自分のことしか考えていなかったようです」
「エリアナも、よしてください。俺はただ、あの慣れたテント生活が気に入ってるだけですから」
「もう。わかりましたわ、そう言うことにしておきます」
「そういうことも何もほんとにそうなんですって。さ、俺たちはテントの準備をしましょう」
露出プレイはまだ俺に高度過ぎるって話な? ていうか、きんぴか神殿よりテントのほうが落ち着くでしょ常識的に考えて。
頷いてくれたエリアナと一緒にテントを設営する。
結界を解除しているのだろう、徐々に消えていく神殿の前にいるリリアの様子を伺えば。
「……一刻も早く、主様の教えを広める組織を準備しないと」
聞こえてる、聞きたくなかったよそんなの。
ぶつぶつ言ってるなーとか思ってたけど、つい熱がはいっちゃったのカナ? やめてくれ。
カルトにもほどがあるぞ? 教祖様なんぞ俺はなりたくない。怪しい壺なんぞ売りたくないのだ。
「はぁ……どうしてこうなったのやらなぁ」
俺を大事に想ってくれているのはわかる。それこそパーティで一番露骨に想ってくれている。
それだけに、怖い怖いと遠ざけたりはしたくないが、一番意味不明が過ぎるのもリリアだから。
おっとり金髪シスターさんの声を聞き流すためにも、固定杭をガツガツ金槌で強めに打ち付けた。
「――とりあえず、滞在の許可は得たわ。私たちは基本的に、ここと最前線現地を行き来しながら前線の支援を行う」
戻ってきたシアによる報告をもとにパーティ会議が開始された。
とりあえず、って言葉を使った所を見るに集落の長さんから両手放しの歓迎を受けられたとは思わない方が良いんだろう。
ここを拠点とするって部分も加味するのなら、何らかの交渉によって一部分、つまり活動拠点としてって部分位を認められたと思うべきか。
「と言いますと……武力的な介入はしない、と言う事ですの?」
「場合によるけれど、戦える人間としての支援は控える方針にしたいわ」
「アリーシャ?」
「オレとしてはまぁ……仕方ない、と言うべきかな。前線の消耗具合や敵の規模、そう言った情報を支援しながら集める。集めた上で判断するって意味で納得してる」
エリアナの言葉に、テントへ入ってきた時から少しむすっとしていたアリーシャが答えた。
自分の力を証明したいと言う考えがあるアリーシャだ、その場が少し遠ざかってしまっていることにいまいち納得できていない、のかな?
「わたしは、ひとまず良い形になったのではないかと思います」
「リリア?」
「差し出がましく申し訳ありません。ですが、我々がここを拠点としたいと打診すること、それすなわちまだ表だった被害を受けていないこの集落を戦いに巻き込むと言っているようなもの。そういった不安を和らげ、安心し、信じていただく時間を作れたと思うべきではないかと、思うのです」
普段聞き役に徹することが多いリリアが意見を言った。
自惚れていいなら俺とのやり取りでそう思った、見えたからだろう。直ぐに自分の考えに昇華できるところ、素敵だね。そういうところだぞ。
「……そうね、村長も私とアリーシャを見てまず武器や食料、人材の供出は出来ないと言っていたし。そういう部分をまず心配していたからでしょう。リリアの考えが筋に沿ってる」
「恐れ多いことです」
「やめてよ、私も違和感はあった。確信に変えられたわ、ありがとうね」
仲良きことは美し気かなだよね。こういう雰囲気頂戴、もっと。
こういう時、会議の中に居ても、意見を言うわけではなく、聞き役でもない俺はほっとする。
このパーティが有名になった、力をつけたってのと一緒に不和というか、ギスることが増えてきたように思えてたから、胃の安全が守られたって思えるんだよね。
「そう言う事で、だけど。前線の状態確認とこの集落の安全確保は並行して行う。前線の情報収集が終わるころを目標に、この集落の防衛的発展を目指しましょう。アリーシャとリリアは前線へ、私とエリアナはこっち。ある程度の期間を設けた上でのローテーションを考えてるけど、そこは必要に応じてでいくわ」
そうシアが締めくくれば、皆は頷いた。
無難な所、って感じなのかもしれないな。
事実として位置関係上この集落は前線に近い補給拠点として考えられる。
ここの防備が固まれば、万が一下がってくることがあっても余裕を持って構えられるだろう。
んー、もうちょっと参謀的な勉強は早くからやっておくべきだったかな? これ以上のことはまだ見えない。
「あぁ、それとカイト」
「はい」
「あなたは積極的に集落の人間と関わって頂戴」
「なっ!?」
そんなシアの要望へ声を真っ先にあげたのはエリアナだった。
「エリアナ、言いたいことはわかるわ。けど私は関われと言ったの。身体を売れとも、媚びを売れとも言っていない」
「ぐ……あなたと言う、人は……!」
すまし顔のまま、シアはエリアナのよくわからない怒気を流した。
別に、言われるまでもなくそうするつもりだったんだが? むしろなんでわざわざみんなの前で言うかね。
おかげさまでちょっと胃が締め付けられたよ、きゅっとした。責任取って。
「他にはないわね? じゃあ、今日はここで解散。明日から忙しくなるから、ゆっくり休んで頂戴」
……ま、そうだよな。
シアはこのパーティのリーダーだ。
まとめる人間がぶれてちゃまとまるものもまとまらない。
そういうところ、格好いいぞ、俺は応援してるからな。