貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
貞操逆転世界におけるエロ本の価値は高い。
これがまだ都会というか、国の中心都市だとか王城のお膝元とかなら少し話は違うけれども、基本的に前世のように流通インフラが発展していない地方なんかじゃ特にそうだ。
その上おファンタジーならではのと言うか、製紙技術もなければ写真なんてものもないし、コピー印刷なんてもってのほか。
一冊一冊手書きで男の裸体が描かれていて、それを握りしめて、あるいは舐めしゃぶってくたくたになってもまだ夜のお供として大事に大事に使われるわけだ。
「やっべ……鎖骨やっべ」
「腹チラ、腹チラ……あー、生きててよかった」
オカズを持っていることすなわち裕福である証明ではあるが、肝心の生モノ……実在する男以上にはなり得ない。つまるところそう言った技術的問題が背景にあることで、相対的により一層男の価値が高まるわけだ。
「どうしましたか?」
「な――なんも、ねーし? 胸チラとかガン見してねーし?」
「じゅるっ……涎、とか? で、でてねーし? 汗が口から出ただけだし?」
これ見よがしにシャツで汗を拭えば、ぬほほ囀りおるわちょろメスどもめ、可愛いね!
「そうですか? 皆さんにはこうして沢山手伝ってしまって申し訳ないと思ってます。俺にできることがあれば何でも言って下さいね?」
「な、なんでも」
「イって、いい……」
「はい。出来ることなら、お礼させてください」
サービスサービスゥッ!
やー、たまんないよね。
ぶっちゃけその辺で立ってるだけできゃーきゃー言われるとか最高かよ、黄色い声もっと聞かせてもっと。
別に前世が恵まれない人生だったとか言うつもりはないが、モテるとはこういう事かと天狗鼻が伸びてしまう。
……まぁ。
「男であるってだけが理由なのが、なんとも言えないが」
「え? なんか言った?」
「いいえ。皆さんのおかげで大分早く形になったなって」
「む、むしろやってもらってる側だし。役得って……じゃねーや。ほんとなら、うちらがやらねーとならないこと、だろうし」
誤魔化しながら言えば、恥ずかしそうに田舎ギャルたちはそっぽを向いた。愛いやつらよ。
結局俺は世界の仕組みでモテているだけで、カイトとしてモテているわけじゃない。
手当たり次第に食って靡かせて都合よく利用してってのが出来ないのは、意気地がないのかそれとも割り切れないからなのかという話だ。
確かにこの集落を拠点化するための手伝いはしたが、そのほとんどをパーティの皆がやってくれたし、集落の女の人が下心は別にして率先してやってくれた。
俺がやったことなんて簡単な木材の加工程度だ、誰でもとは言わないが簡単にできることしかできていない。
……やはり真面目に戦闘学か何かを本腰いれて勉強するべきでは? 俺は訝しんだ。
「ん?」
「あ、長だ」
「珍し。どしたんだろ?」
田舎ギャルたちの視線を追えば、そういや俺は挨拶したことなかったな、俺と同じくらいの身長で、この世界であっても大柄だと言えるがっしりめな、40代くらいの女の人がいて。
「カイト殿、だったな?」
「あ、はい。カイトです、この度は滞在を許していただき、ありがと――」
「よい。それよりも来い、聞きたいことがある」
「はい?」
ずんずんと近寄ってきた集落の長は。
「あちょっ、ずりーし!」
「職権乱用はんたーい!」
「うるさい。お前たちは作業を続けておけ」
「ぶーぶー!」
問答無用に俺の腕を掴もうとしたが、触れる直前で止めた。
「む……すまない。それで、来るのか、来ないのか」
「無理やり押し倒されると言ったことが無いのであれば」
「約束しよう」
「では、伺います」
さてさて、何気に可愛いねとか言うべきなのかもしれないが、何のご用事でしょうかねっと。
「随分と遅くなってしまいましたが、カイト・リザレクティスと申します。勇者シア率いるパーティでは皆様の性的な部分を含めたお世話を担っております。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「……レナス・フィルメントだ。この集落を預かっている」
問答無用に近いご案内とは裏腹に、想像していた以上の丁寧なおもてなしだった。
自己紹介に対して頭を下げてくれたし、預かると言う表現を使ったあたりにも好感を持てる人と言えるだろう。
いかめしい表情に変わりはないし、なんだかんだこの世界では長身と思われる俺と同じくらいの背丈だから威圧感は変わらずあるが。
……熟女、アリかもしれない。結構ゴツめなのに、色気ががが。
「改めて、唐突な呼びかけにも関わらず、感謝する」
改めてもクソも今更過ぎるが? や、そういうもんだって知ってるけどさ。
「自分たちの立場を忘れたわけではありません。あなたが呼んだのなら俺だけではなく、パーティの皆が応じるでしょう」
当たり前だよなぁってなもんである。
俺たちはあくまでも部外者であり、異邦人。
自分たちの都合で集落の片隅を間借りしていて、住んでいる人たちに迷惑をかけている側だ。
問題は何故俺を呼びだしたのかということ。
「……聞きたいこととは他でもない、そこだ」
「そこ?」
え? どこ? めちゃくちゃ真面目な顔されてるけど、マジでわからんぞ。
「シア、と言ったかあの勇者は。ヤツは頭が良い、我らが最早キサマたちを拒めないことを理解しているだろうし、拒めなくなるように立ちまわっていた」
「あまり良いようには聞こえない言い方ですね」
「気に障ったのなら謝ろう。だが、いずれこの身を押しのけ、集落の長というイスにヤツは座ることになるだろう、それくらい、わかる」
「……随分と、悲観的というか、被害的と言うか、ですが」
はー? ちょっと何の話されてるか余計にわからなくなってきたんだが? はー?
え? シアがこの集落の長に?
ならんでしょ、ありえんでしょ、何が悲しくて勇者が集落の統治者なんぞならんといかんのだ。
「重ねて言おう、そこだ」
「申し訳ありません。浅学非才な身で、仰る部分が理解できません」
「どうしてそこまであの勇者を信じられるのか、と聞いている」
「……あぁ。ありがとうございます、ようやくわかりました」
パーティのリーダーを信じられず何を誰を信じるんだよってのは別にしておこうか。
「知っているだろう。男だからこそ我ら以上に。自らを勇者と称する者に信を置けるはずもない」
「言わんとしていることは」
「だと言うのに性処理係? 前代未聞の立場だが、実態はわかる。都合よく搾取されていて当たり前だろうに。どうしてそこまで信を置く、どうしてそこまで支えようとする。我らの集落を……どうして」
「……なるほど」
搾取、搾取ね。
恐らく普通と言うか、当たり前の疑問なのだろう。
実際、俺のように女を怖がらない男なんてそうそういない。
どころか俺だけと言ってもいいかもしれないな。女を利用するか、怖がるか。
凡そはその二択しかないだろうから。
「もしも、もしもキサマが脅されて、その立場を強いられていると言うのなら――」
「そこまでに」
「む……」
そうとも当然の疑問だ。至って普通の心配だ。
だからこれば俺やシアへの侮辱ではない、怒る事では欠片もない。
「まず、感謝を述べます。ご心配頂き、ありがとうございますと」
「なら」
「ですが、ご安心を。俺は、俺の意思でシアの下で性処理係を務めています」
「……何故」
もちろん、少しの不満はある。欲求不満なんですよこちとらさ。
あーありしのずっこんばっこんデイズかむばぁっく。
や、とりあえずそれは良い。
「主観的で、根拠もなく、信憑性もない。それでも構いませんか?」
そう言ってみれば、小さくレナスさんは頷いて。
「それでは語らせていただきましょう。俺がシアを、みんなを信じる理由を」
カイト・リザレクティスの話を。