貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
「普通ではないこと。それは異常であると言えるでしょう」
「言わんとしていることは、わかる」
「勇者シア率いるパーティで、誰が一番普通ではないかと言えば間違いなく俺です」
「……ふむ」
そう、俺だ、俺こそが何よりも誰よりも異常であり異端なのだ。
「そんな俺を受け入れてくれたなんて恩はありますが、大きい理由ではありません」
「違うのか」
あぁ、そういう話の繋ぎ方を想像していたか?
シアを頭が良いって言える人だし、レナスさんも大概見た目に似合わず頭の回る人らしい。
これなら少しだけでも理解してもらえるかもね。特別何が何でも理解して欲しいとは、思っていないけれど。
「搾取されると言う意味を、レナスさんはご存じでしょうか?」
「それは、もう。我らとて搾取された側の人間だ。痛いくらいに」
「いいえ、間違いなく理解されてないと断言させて頂きましょう。搾取とは、その人の人格を無いものとして扱う事だ。同時に、相手の意志を問わないと言う事でもある。少なくとも俺をこの場に連れられると前提に動いたあなたに、知っているという権利はない」
「なん――だとっ!?」
怒ってないって、大丈夫だいじょーぶ、ちょっとトゲがあったね、ごめんね可愛いね、償えよ。
あ、俺じゃない? 自分たちは正しく苦しんだ側だって? 知らんがな。
「レナスさん。あなたは路地裏で女が男を襲おうしている光景を前にしたら、どうしますか?」
「くっ――どう、とは?」
お、偉いね、ちゃんと冷静だね、よしよしする? 撫でポだよ?
「助けますか? いや、ありえない。見て見ぬふりをしますか? 多いのはこれでしょうかね。しかしながら俺が経験した多くは、一緒になって襲われること、でした」
「う……」
さて、レナスさんはどのパターンだったかね? 色気のある今も良いけど、少し前ならもっとやべぇ美人だったんだろう。一緒になって襲われていたら、気持ち良かったんだろうな。
「搾取という言葉に納得できないのなら、消費という言葉を使いましょうか。この世界の男は女の何かを満たすため、解消するためのモノだ。そこにモノの意志や想いなど関係ない。事実として、この集落にも他の村にも、男を問答無用で使うための魔法陣は存在している」
それでも自分は使っていない、とでも言うのだろうか?
少し間をおいて様子を伺えば、俺の言わんとしていることが理解できたのか苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
もちろん極めて少数ながらもその仕組みを逆転させ、女を都合よく支配する男だっている。
仕方ないとかそういうことは言わないし、そういう男こそまさしく消費だ搾取だという言葉が似合う、クソ野郎だと思うさ。
「勘違いして頂きたくないのですが、それで傷ついたとかを言いたいわけではありません」
「……何?」
「あるいは感謝すらしていると言えるかもしれない。この世界では、そうなんだと理解できた、教えてもらった。歩いているだけで女に薄暗い場所に連れ込まれるのだと、道に迷えば善人の顔をして案内を申し出て来て、まず連れ込み宿へ案内される。それが普通なんだと。十分に理解できましたから」
や、女性上位も悪くないとかすら思ったよね。ベッドの上ではオラつきがちな俺でも。
マグロで気持ち良くなれるの最高かよとか思ったよ、だから傷ついてなんか本当にない。
ただ、そこには俺の意思が必要なかった。
男がいたから、それだけだ。たまたまタイプだったのか、ムラつきが限界だったのかはどうでもいいが。
俺こと、カイト・リザレクティスだからと言う理由はそこに欠片もなく、必要なかった。
「そうとも、それが普通。少なくとも俺が実感して理解した普通はそうです。重ねて言いますが、その常識から救ってくれたのがシアだからという恩はありますし、恩を返したいとも思う。しかし、それが理由で彼女を、彼女たちを信頼しているわけではありません」
「……では、なんだと言うのだ。もしや勇者だから、勇者を名乗られたからなどではあるまい」
「物珍しさ、みたいなものはありましたが……違います」
もしかしなくとも、俺を誘った理由は、女に嫌悪感を示さなかったなんてのはあるだろう。
都合が良い、利用できる、そんな思いがあったとしてもおかしくない、それが普通だ。普通なのだから何とも思えない。
何ならレナスさんも察するくらい頭がいいシアだ。
下心があって、それを表に出さないまま、俺をその気にさせて操作するなんて、簡単なことなのかもしれない。
「勇者シアパーティは、異常で異端な俺が、普通で居られるところだからです」
「普通」
「そう、普通です。シアを信頼しているから、あるいは皆を信用しているから。それは前提ではなく、重要なことでもない。俺にとって一番重要なのは、俺が俺の普通で居られる場所がそこにあるか否かであり、居られると信じられるからみんなを信じている」
パーティの皆は美人だ、俺が好きになれる人だ。
それが居心地の良さの一つであることは間違いない、間違いないけれどもパーティが存続するための手伝いをしたいと思うのは、極めて自己中心的な理由である。
「遠慮なくラッキースケベを堪能できて、どうすりゃスケベを満喫できるかを考えられて。それでいいと、そうだから良いと思えるから、許してくれるから。俺は勇者シアパーティという居場所を守り、維持できるようにと考え、行動できるのです」
「……」
わかるかな? 逆転世界の人間にはわかんねぇと思うけどさ、ちょっとでも、ちょっとだけ、先っぽだけでもいいから。
俺はこの上なくわがままで、自己中なんだよ。
少し自己嫌悪しなくもないけれど、そう言うのはもうとっくの昔に済ませている。
その上で。
俺は貞操逆転世界を楽しみたいんだよ、出来ればスケベにさ。
ちょろくてエッチで、なぁんの気苦労もなく美人ハーレムを楽しみたいのさ。
「俺は彼女たち自身を信じているわけじゃないのかもしれない。それでも彼女たちが創るものは信じられる、心の底から信じたいと願っている。シアが、皆がここを拠点として間借りしたいと言った、その理由の中身を俺は理解できないでしょう、でもだからこそ信じてる。それが実現するためになら……ええ、たとえこの集落全員の女を快楽に落とせと言われても、躊躇なく口説き落として俺に沼らせましょう」
むしろそう言ってほしいけどね! パパがんばっちゃうぞってなもんだよほんとに。
「はは……理解は、できんな」
「理解して欲しいとは思いますが、理解されたら困りますね」
「はははっ! そうか、そうだな、そう、だろうな」
「あ、でもでも俺がこんなこと思ってるなんて内緒にしてくださいね? 胸襟広げなきゃならんかと思ったから言っただけで、誰にも言うつもりなかったんですから。内緒の費用は一晩どうです?」
「はははははっ!!」
お、ウけた。
捨てたもんじゃないね、下ネタ最高かよ。
「わかった、わかった」
「はい?」
「我らもキサマに倣おう、学ぶことにしよう、確かめることにしよう」
そう言ってレナスさんは立ち上がり。
「この集落の名を、今決めた」
「無かったんですか。そっちのが驚きです」
不敵な笑みを浮かべた後。
「ここはハートレス。今ここより始まった心無き集落だ。どうか我らに、キサマの求める心を、教えてくれ」
胸を張って、言い切ったのだった。