貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
貞操逆転世界において、性事情は死活問題である。
や、下ネタとしてではなく、割とこの世界においてはそうだ。
「やっぱり、何処に行ってもモンスターとの争いはそうなりますか」
「何? 魔王直下の軍だけに、違うって期待してた?」
「どうでしょうね? ただ、雑に言えば男って存在の奪い合いをくだらないとは思ってしまいますか」
「……私としてはその感覚が一番わからないわよ、カイト」
ある程度防柵が形になった集落をシアと確認しながら情報共有を行う。
まさに死活問題だろう、魔王側、要するにモンスターたちも種の存続のため、男っつーかオスを求めているが故に人間たちと争っているのだから。
「それ以外に無いのなら、って話ですよ。正直、男を分け合うなりして魔族と共存できるなら無駄な奪い合いをする必要もありませんし」
「共存、ね。出来ないから今を迎えているって言うのは、少しみっともないか」
どうしてこうまでいらんところが逆転しているのかとは思う。
なんなら俺を魔族側に送り込んでアンリミテッドベッドワークスとかしたら平和にならん? ならんか……。
万が一そうしたらモンスターの数がきっと爆増するもんね。
魔族の女に孕めこらして、的中したら的中しただけモンスターが生まれるわけだし、愚策も良いところか。
「人間も魔族も、割と共存の道ってのを無視しがちですよね」
「男は奪い合いが普通だしね。生存競争って言えるんじゃないかしら」
「男性の機能的な問題はあるにしても、そう言う事ではなく」
「うん?」
まったくもってこの世界の女は脳みそピンクだよ、悔い改めて?
「この集落ですよ。少し前に長のレナスに呼び出されたのですが」
「ぅえ˝っ!?」
「うわ、なんて声出すんですか。や、まぁ良いんですけど。ともあれ呼び出されましてですね? シアはやっぱりすごいですね、ああいう人と交渉して、今までもやって来て、改めて尊敬しますよ」
「あ、ありがと……じゃなくてっ! 呼び出されたっ!? ら、拉致っ!? 大丈夫!? 何もされなかった!?」
うわちょ!? に、二回驚かせんなって。
そうだよ、何もなかったよ、ナニもしてくれなかった! ごめーんねっ!!
「だ、大丈夫です、よ? 何もされてません。ただ」
「ただ!?」
「いやそんな詰め寄らなくても……ともあれ、何か集落の名前を今決めたとか、なんでもハートレスとか呼ぶことになったって」
「はいぃっ!?」
え? その反応イズホワイ?
俺、なんかしちゃいました? 重ねてごめーんね?
「え、えっと? シア?」
「……早すぎる。いずれそういう風になるかもしれないとは、思ってたけど……」
「シア? おーい、シア?」
驚くだけ驚いて、急にブツブツ言いだしたんだけどなんぞこれ。
やっぱ俺がなんかしちゃったとか? いやいや、俺ってばただ疑問に答えただけだし、それも俺個人のことだけなんだけども。
「仕方ない、か」
「お?」
何かを結論付けたらしいシアは、携帯ストレージからエリアナお手製のスクロールを一本取り出して。
「テレパス――エリアナ? そっちの状況はどう? ……うん、うん」
込められていた魔法は遠い位置の人間と会話できるテレパスだったらしい。
耳に指をあてながら、どうもエリアナと連絡を取っているが。
「状況が変わった、いや、変わりそうなの。リリアを連れて、一回こっちに戻ってきてくれる? ……わかった、それじゃあそれまでにある程度こっちも片付けておくから、うん。よろしくね」
やけに深刻そうな顔のまま、テレパスを終えたシアは。
「集落長のところへ行ってくるわ。カイト、あなたはセーフハウスでアリーシャと待機。戻ってくるまで絶対外に出ないで」
「わ、わかりました」
そうとだけ俺に告げて、足早に去って行った。
「――と言った感じでした」
数日後、ものの見事にプチ軟禁状態を味わっていればパーティが集合できた。
全員が集まれたのなら、その瞬間、皆の前でレナスさんと話した内容を説明してとシアに言われて、そうしてみれば。
「……くっ」
「これは、あまりにも……ですわね」
シアとエリアナが苦渋の表情を浮かべて。
「す、素晴らしいですっ! 我が主、カイト様のお導きは最早、最早っ!!」
リリアが感極まったように叫んで、ちょっとヘブン状態になり。
「おう?」
何がどうなってんだとアリーシャが首を傾げた。俺も俺も、ナカーマ。
「えぇっと、シア? ちょっと状況が俺にはよく理解できてないんですけど……何か、やらかしてしまったのならすみません」
「ううん、余計なことをしたとか思ってないわ。正直、誰が悪いかと言えば私だし……あぁもう、リリアはちょっと落ち着きなさい」
「で、ですがっ!」
「ですがも何もないわ。急がない、逸らない。前に言ったでしょ」
そんなシアの言葉でリリアは珍しくむすっとしたままその場へと座りなおした。逸らない? 流行らない。
「ふぅ……まず、結論から言うわ。このままカイトをここに置いてはおけない」
「何故ですっ!?」
「リリア、気持ちはわかる。でもね、今の私たちはまだ部外者、部外者であるべきなのよ、指導者になってはいけない、なるのは早い。前線に向かうのが難しくなるからね」
「う……」
おーおー、今日のリリアは浮沈が激しいね。
欲求不満だと思うから今晩どう? ……なーんて言ってお茶らけられたらなぁ、そんな雰囲気じゃなさそうだ。
っていうか指導者? ちょっとシアさん? よくわからないんですけど。
あ、エリアナさんも頷いてないでさ、アリーシャもようやくわかったみたいな顔しないで? ねぇ?
「腰を落ち着けられる状況じゃあないのよ。落ち着けたのならそこから動けなくなる、わかるわね?」
「……はい」
「よし。じゃあ何処へカイトを置くか、だけれども」
「前線しか、ありませんわね」
エリアナがぽつりと言って、苦々しくアリーシャとシアが頷いた。
あれ? 俺ってば前線に行くの? 慰安に? 任せとけってなもんだけど?
「アリーシャ、わかってると思うけど」
「当然だ。モンスターだけならず、前線兵にもカイトは触らせねぇ」
「エリアナ?」
「セーフゾーンは構築済みですわ。ただ、前線拠点とは離れた位置になってしまいますが」
触らせない? なんで?
むしろ俺が出来ることなんて兵の人たちに頑張っててえらいねって言う事くらいなんじゃなかろうか。
「カイト。その疑問の解決は簡単よ」
「と、言いますと?」
そこでシアは俺の目をじっと見た後。
「女は、ケダモノなの、狼なの。前線で詰めてるような女は、特にね」
心底苦々しく、そう言った。