貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
貞操逆転世界において、じゃないか。この世界においてモンスターは強い。
「な、かなか、堪えるわね」
「あぁ。流石に最前線と言えるが……」
「少し、異常とも言えますわね」
リリアが拠点周りの結果を点検に行っている間にテント内にてシアとアリーシャ、エリアナによる情報交換が行われていた。
中でもシアの消耗が激しい。
リリアのバフ抜きで戦うことつまり、基本的に
「シア、周辺のモンスター数は?」
「……正直、掴み切れないわね。今こうして小休憩が取れるくらいには、削れたと思うけれど」
「完全なこの周辺の安全確保には程遠い、ということですわね?」
「そう、ね。もしかすると、この近くにダンジョンがあるのかもしれない」
シアがスカウトに徹して周辺の情報を集めてくれているおかげで、何とか対応できている。
逆説的に言うのであれば、シアがスカウト出来ない状態になってしまえば一時撤退を視野に入れなければならないと言う事だ。
「ダンジョン、か」
「繁殖力の高いゴブリンやオーク……亜人種がこの周辺に多いってところからの推測、だけどね」
「ですが、頷けますわ。安全確保を目指すなら、ダンジョンの発見と処理を優先すべきですわね」
「だが、割ける余力はねぇぞ。オレはまだ我慢が効くが、エリアナの魔力消耗はどうにもならねぇ」
どことなく挑発的な言い方だね、どうしたの急に? お仕置きしとく?
「あら、我慢と言う割には昨日の情けない雄たけびが耳に残っておりましてよ?」
「うぐっ……てめぇ」
「癪ですが、まだお互い様としておきません? 癪ですが」
「二回も言わなくていいんだよ、ちぇっ」
あぁ、発破かけってところか、仲良きことは美しきかなよ。
「ジリ貧、か」
「……そう、ですわね。消耗するだけで突破口がありませんわ」
「乾坤一擲ってのも悪かねぇが……どこでヤるかっつー話だな」
こういう時黙って聞いて、お茶のお代わりを注ぐしか出来ない俺の情けなさよ、よよよ。
しっかし、まだ会話の中に笑いが入っている分マシだけど、マシな内になんとかするべきなのかもしれない。
アリーシャが言っていたように背水の陣はダメだ。乾坤一擲がやぶれかぶれになるのは避けるべきだろう。
それくらいは俺にもわかる。わかるが、ならどうすればそこまでになってしまうのを避けられるのかと言う話で……うん?
「シア、良いですか?」
「え? うん、どうしたのカイト? あ、ごめん。私たちばかりで……カイトは大丈夫? 疲れてない?」
「おかげさまで疲れても辛くもありませんよ」
「そっか、良かった。なら、どうしたの?」
そも、何故対応しかできないのかという話なのだ。
こうなった経緯は、シアが予定を早めてここの安全確保がきっちりできない状態で来ざるを得なくなったから。
その原因は俺である。俺が未だによくわかっていないが、レナスさんとのやり取りでやらかしてしまったからなのだ。
ならば、だ。
「俺を、使えませんかね?」
「反対だ」
「右に同じく、ですわ」
「我が主を捧げるなど、あってはなりませんっ!!」
「わーお。じゃなくて、話を最後まで聞いてもらえませんか?」
言った瞬間場がすんってなった、怖いです。
困りましたね、話を聞いてくれません。
なんかみんな揃いも揃って何言ってんだこいつみたいな顔してさ、確かに俺は戦えたりするわけじゃないけどさ。
「……カイトを、使う? 良いわ、話を聞かせて?」
「シアッ!?」
「……あなた」
「わたし、こればかりは待つつもりはありませんよ?」
そんな中、シアだけがどういうことだと聞いてくれた、シアさんマジシアさん。
「現状がジリ貧なのは間違いない。別にカイトの意見を採用するとハナから言っているわけでもないし、私だってカイトを利用するのは……気持ちの上では、当たり前に反対してる」
「我が主の意を問うこと自体が間違いなのですっ!!」
おおう、過激派。
それでこそリリアだよ、心配してくれて嬉しいけど、落ち着きなさって。
「カイトの意見を聞けばその通りにしたくなるって? それは私が許さない」
「っ……」
皆の意見を丸く収めるタイプのシアにしては強硬的な姿勢だが、今はそれがありがたい。
リリアの扱いが上手いよね。言われて思ったが、確かに俺が何か言えばそれこそがと意見を寄せてくるリリアだから、間違いでもない。
「アリーシャも、エリアナも、いいわね?」
「……っち」
「確かに、現状の継続は翻ってわたくしたちの危機に繋がることを否定できませんわ。戦闘に参加していないという意味で、カイト様の意見とは別角度の判断材料となることも認めます。ですが」
「わかってる。重ねて言うけど、私も聞く前から気持ちの上では聞きたくない、反対の立場よ」
悲報、俺の味方がいない件。
や、まぁいいや。
シアの言ってみてって視線に甘えておきましょ。
「この付近にダンジョンがある可能性が高い。これは俺もそう思います。なんたって戦闘頻度が高すぎるし、エリアナの魔力急速回復も今まで以上の頻度です。戦闘難度は別にしても、ダンジョンがあるという推測に確度を与えると言って良いでしょう」
「……続けて」
ダンジョンとは言葉を変えるならモンスターの繫殖所だ。
シアが言ったように亜人種なんて呼ばれている繁殖力お化けなモンスターのダンジョンであったのなら、それこそ一回の戦闘で倒した分のモンスターが一日そこらで補充されていてもおかしくない。
「俺を孤立させれば、アイツらの目標は俺に寄るでしょう。そして、繁殖しか頭にないモンスターなら俺を殺すのではなく、連れ帰る可能性が高い」
「カイトッ!!」
そこまで言った時、アリーシャがいきり立った。
何を言わんとしているのか理解できたのだろう、それはアリーシャだけならずだったが。
「アリーシャ、気持ちは嬉しいです。あなたの誇りを傷つけることを言っているとも自覚しています。ですが」
「カイト様。そのお考えはまさしく正しいかと思いますわ。ですが、正鵠を射ているだけに、決してわたくしたちは――」
「――それしか、ないわね」
エリアナが優しく、俺を慮るかのように言っていた途中で、シアが言葉を遮り立ち上がった。
「ええ、それしかない。現状の打破を考えるのならね」
そんなシアをみんなは目を点にして眺めていた。まるで何を言っているのかわからないと言っているかのような顔で。
「重ねて言うけど、私は今の話を聞いて尚カイトの意見を採用するのは反対よ。だからこそ、みんなで決めましょう。その手を使わないのなら、一時撤退を検討する。それすなわちハートレスへ戻り態勢を整えると言う事」
……あぁ、やっぱり上手いなと思う。
「自分を棚に上げて言うけれど。少なくとも、カイトの護衛にリリアを割いている以上……私はスカウトという仕事以外にできることがない。それはつまり、アリーシャとエリアナ、それにリリアの消耗をカイトに押し付け続けると言う事よ。個人的には、一時撤退のほうが良いかもね? 私たちが自身が負担にならない、そういう意味で」
そもそも、あの集落にいるのがダメだからを理由でこっちにやってきたのだ。
その理由を俺は理解していないが、その前提を翻すということは、危惧していたことを受け入れると言う意味で。
「さぁ、どうする?」
どの嫌を、受け入れるのか、選ぶのか。
シアはそう言っているんだ。
そして、その問いに、皆は。