貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!? 直ぐに治療を行いますので服を、ふ、ふふふふ服ををををっ!! お召し物をお召しにっ!?」
「はいはい、ちょっと落ち着きなさいな、リリア。ゴブリンレンジャーの矢はカイトにかすりもしてないから」
さて、モンスターの群れに後詰は無いかを確認していた勇者とヒーラー役のリリアが戻ってきた。
「で、ででで、ですがっ! わたし! カイト様に何かあったら! い、いいい、生きていけませんっ!」
「お、大げさな」
「大袈裟なんかではありませんよカイト様っ!? わたしは、もうあなたの温もりを感じられない世界など考えられませんからっ!」
「ひぇっ」
ちらりと勇者こと、シアの方へと顔を向ければ黙って処置なしと首を横に振られた。
いつからこうだっけ? 多分リリアと初夜った次の日くらいからだと思う。
もう自分のことを全て棚上げして言うが、リリアはカイト過激派である。
「リリア? 大丈夫、皆のおかげで俺は怪我一つもないですよ。ちゃんと異常があれば言います、それとも俺のことを信じられませんか?」
「う……そのような、ことは。すみません、取り乱しました。我が主であるカイト様のことを信じられなかった未熟なわたしをお許しください」
はい、そういうところです。
俺に向かって膝をつき祈りを捧げ始めたリリアから視線をもう一度シアのほうへ向けてみれば、やっぱり首を横に振られた。ぴえんである。
「それで、シア? 後詰の方は大丈夫でしたか?」
「ん? ええ、想像していた通り多少は居たんだけど……安心しなさい、根切にしてきたから」
「根切って」
「当たり前じゃない。伏せてあなたをどうにかしようと考えていたんでしょうね、後詰と言う名のメス系モンスターばかりだったんだから、滅殺、全滅させても足りないわ……!」
……あのあの、ちょっと台詞の後半部分に熱がこもり過ぎです。
シアさん? あなた婚約者の幼馴染がいるって話ですよね? だから俺を使わないって、操を立ててるんだって。
なら、その熱量は幼馴染さんに向けてはどうでしょうか? 俺、アンチ寝取り寝取られなんで怖いです。
「あ、ごめん。ちょっと思い出しムカツキで、雰囲気悪くしたわね」
「い、いや、そんなことはないですよ」
「そう? けど、覚えておいて? 私たち全員の総意だからね? カイト、あなたを害しよう、犯そうとするメスは誰であれ何であれぶっ殺しっていうのは」
「あ、あはは……ありがとう、ございます?」
ハイライトオフはやめて? ここ貞操逆転世界だよね? ホラー世界でもヤンデレ蔓延る世界でもないよね?
ジャンル勘違いは解釈違いの元ですよ? 俺の情緒めちゃくちゃになっちゃう。
「と、とりあえず。あっちでアリーシャとエリアナが先にお茶をして休んでいます。お茶を淹れていくので二人も先に一休みしていてください」
「ん、ごめんね? ありがとう。お言葉に甘えるわ。ほら、リリア、あんたも」
「はっ……! は、はい。我が主の思し召しに感謝致します」
体よく追い払って、二人の背中を見送る。
「はぁ……なんぞこれ」
改めて、思う。
確かにここは貞操逆転世界だ、このパーティに参加するまでにイヤほどそれは思い知った。
街中で見かける男のほとんどが女に言い寄られる光景を見てきたし、なんなら俺もあわや襲われみたいなこともあった。そのままラッキースケベに喜んで楽しみたかった所をシアに救出されてしまったが。
だからこそ、ではあるのだろう。
俺と言う女に対して抵抗をまったく示さない男は、希少価値が高く過保護と言って良いような扱いを受けてしまうのだ。
「そういう意味では、理解できるんだけどなぁ」
こぽぽと湧き出した水を見つめながら、勝手にため息がまた出てくる。
あるいは俺が、性的な意味以外でも役に立てる男であれば違ったのだろうか?
それこそ転生特典として選べた戦闘技能に関するチート、そんなものを選んでいれば今頃彼女たちと肩を並べられていて、要らぬ余計なお世話を焼かさないで済んだのだろうか。
「とはいっても、魔力なんてものもないし……今から戦闘技能を学んだところで、パーティの戦力になれるビジョンは全く思い浮かばないわけで」
茶葉にお湯を通して、蒸らす。
勇者パーティと言われるだけあって、いい茶葉を使ってるおかげか漂う香りはすこぶる良い。
こんな雑用とも、召使いとも呼ばれる事ばかりが上手くなっていって。
まんまチートのスケベに関する腕は最近になってから全然振るえてなくて。
「出来ること、増やすにしても何になら役に立てるのやら……ん?」
茶器を用意しようとストレージを漁っていれば、ふと目に留まった本があった。
背表紙に書かれているタイトルから想像するに、戦闘技能ではなく戦略や戦術に関する学術書のようだけど……シアかアリーシャの持ち物だろうか?
「……ふむ」
ぱらりと開いて中身を見てみれば、なるほどわかりやすい。
これなら俺でも学べると言うか、腕じゃなくて頭を使うことなら……そうか。
「そうだ、性処理係兼、パーティの参謀役なんていいんじゃないか?」
特別出来が良い頭じゃなかろうが、シアや、あれで戦いに関するIQはめちゃ高いアリーシャの相談に乗れるくらいになら、行けるかもしれない。
ぶっちゃけ今まで俺がやって来たことってのは、彼女たちを否定しないってだけ。
いわゆる意見や考えを尊重するというムーブだ。要するに、どしたん? 話聞こか? うんうん、そりゃ彼氏クンが悪いよ、じゃ挿入るね? っての。
間違いだったとは思わない、そりゃあもうこの世界で無事に生きてこられたってので証明済みだ。
つーか、そういう立ち位置に居てた方が、貞操逆転世界をおねショタばりに楽々過ごせる秘訣であり、処世術なのである。
「このままだったら胃に何個穴が空くかわからない……」
だが、どうあがいてもそれは一夜の男か集うの良い男にしかなれないムーブでもあったのだ、竿役終わりは嫌だ。
むしろそんなムーブを取っていたから、今まさに飽きられてポイ寸前状態になっているのではなかろうか。
「よし、よぉし……!」
前世の知識が役に立つかどうかもわからんが、ありがちな知識チートっぽい何かにはなれるかもしれん。
まずはやってみよう、勉強してみよう、そして。
「そうだ、俺は遠慮も憂慮もなくスケベを満喫するんや……!」
性処理係という名目じゃなく、ただの男と女として、ド健全純愛スケベハーレムを満喫してやる……!