貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
「シアさん、あなたはいずれ裁かれるでしょう」
「誰に?」
「神に」
「カイトに裁かれると言うのなら……ええ、願ってもない話ね」
リリアのまるで神敵を見るかのような視線へとシアは軽く笑って返事をした。
「っ! あなたはっ!」
「声を抑えなさい。いくらエリアナの
「っ~~~!!」
あなたは、その先に何と言おうとしたのか。リリアは自分でもわからなかった。
違うと信じていた? それは何と?
こんな決定を受け入れる人間だとは思っていなかった? いやまさか。
ならば、自分の理想をシアに押し付けていただけでしかないのだろう、そうだと思わなければこの激情を抑えきれない。
「謝罪は、しないわ。結局、カイトの案を採用する、受け入れる他にないと判断してしまった自分の足りなさに反吐が出そうだけどね」
「……いずれと言わずとも、今、この場で裁いてもよろしいのですよ」
「あら? 謝って欲しかったの? それならいくらでも謝ってあげるけれど」
いや、違った。
リリアはシアのことを同類のように思っていたのだ、この人はカイトのためにならなんでもできるしする人だと。
そう信じていた、思っていた自分を自覚した。
だが明確に違う部分があった、己はカイトのために何でもするしできるが、カイトを利用しよう犠牲にしようなどとは露とも思わない。
しかし、シアはカイトのためにならカイトすらも犠牲にできる人間なんだと。
「そう睨まないでよ、あそこで一人囮になっているカイトの献身を無駄にしかねないわ」
「っ……過ぎた、思いでした。謝罪、致します」
「誰に向けての謝罪よ」
「……」
同時に、見抜かれているともリリアは理解した。見抜かれているが故に、己の信仰すらも利用する者だと。
最早リリアにとってシアは信じるに値しない……いや、信じてはならない人間だ。
だが、それでも。
「我が主の座する場所を創るため。それだけは、裏切らないでください」
「ええ、元よりそのつもり。私を信じなくていい、信じるべきじゃない。けど、カイトのためを想う私だけは、信じなさい」
「はい……改めて、謝罪致します。申し訳ありません、勇者様」
いらないわと言わんばかりにシアは手を軽く振り、テントの近くで息を潜めなおす。
続いてリリアもまた、深呼吸の後ようやく気配を消し、作戦へ集中し始めた。
「……改めて、作戦を確認するわ」
「はい」
「テントの防衛を薄くした上で、アリーシャがヘイトを集めて下がってくる。エリアナはアリーシャを救援する体で、その場から離脱」
「我が主が発見された時、その場で襲おうものならわたしたちが対応する」
「そのままダンジョンへ拉致するようなら、追跡しダンジョンの在処が掴め次第合図を出す」
そしてその場で、ダンジョンへ連れ去られない内にカイトを奪還。
二人はしっかりと頷きあった。ここで感情を表に出して異を今更唱えるなどそれこそカイトの献身を無駄にすることだと理解しているから。
「しかし、不明な点が多いです。それだけが懸念ですか」
「悪いわね、ちゃんと筋書きを描ききれなくて」
「……責めてはいます。ですが、モンスターの反応など誰も見通すことはできませんから」
シアにしては珍しくと言うべきだろう、余白が多い作戦は。
今までカイトを危険に晒すことを絶対に許さないとしていた弊害とも言えるだろう。
正直カイトを前にしたモンスターたちがどういった反応を示すかがわからないのだ。
「モンスターは生殖可能なオスへの鼻が効く」
「ある意味、最近の戦闘が激化し続けている理由とも、今なら思えます」
「違いないわね。そういう意味では……ここにカイトを連れてくるなんて、初手を間違えたとも言えるか」
「そう、かもしれません。やはり、あの集落……いえ、ハートレスを我が主にお任せすべきだった」
俄かに再びリリアが怒気を立ち昇らせる。
シアからすれば言葉もない。
あの後行ったレナスとのやり取りで、尚更ハートレスにカイトを置いておけないと確信した。
故に、判断としては間違っていないだろうが、そもそも見誤ったという点は揺ぎないシアの驕りであり過失と言えたから。
「……何も、言わないのですか」
「言える言葉がないわ」
「っ……!」
「だから落ち着きなさい。ただ、この作戦が目論見通りに運べたのなら……それは懸念すらも解消できる。結果を持って、もう一度私を評価なさい」
突き放したかのような言い方に、リリアは小さく息を吐いた。
わかっている、つもりなのだ。
リリアとて、全てが全て順調に運ぶことなどあり得ないと理解している。
ただ、アリーシャやエリアナのように感情で納得できないと言うわけではない。
「わたしは、カイト様の使徒です」
「……」
「誰よりもカイト様の傍で、誰よりも深くカイト様の意を解し、実行し、障害を排除するものです」
「……ええ、そうなのかもね」
あってはならない、のだ。
己の神は、絶対的な主であり、その御心は全てを照らし、遮るものなどあってはならない。
「もう一度評価しろと、あなたは言いました」
「言ったわ」
「では、覚えておいてください」
「何を、かしら?」
シアを信じられないとリリアは判断した。
最早リリアがシアに向けるものとは、カイトのためになるか否かしかない。
「あなたがまさしく我が主の神敵となった時……わたしは、あなたに審判を告げる執行者となることを」
「……はっ。上等、ね。私を裁くことができるのはカイトだけ。あなたなんかに裁かせて、やらないわ」
さもすれば、今。
ようやくシアとリリアは本当の意味で手を取り合えた。