貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
アリーシャ・クワイエットという女はその戦闘技術だけを見るのならば、世界有数、あるいは世界屈指の実力者だった。
猛き心を現したかのような肩口でパツンと切られた赤い髪に、恵まれた体躯。
これで胸が小さければ非の打ち所がない見目の戦士だと言われたアリーシャは、その意志の強さを示したかのような鋭い目をそのままに、苦く笑う。
「何故ダメージを受けようとする? お前ならば回避することもできるだろう」
だが、彼女には一つ悪癖と言えるものがあった。
その悪癖こそがアリーシャを戦闘技術だけ見るのなら世界有数という評価に留めるものだ。
「……申し訳、ありません」
「謝罪は不要だ、もう一度行くぞ」
「はっ!」
己が師によって振るわれる剣。
剣筋も見える、何処を狙っているかも見える、避けられる。
アリーシャの頭脳ではすべての最適解が導き出されていた。
あとは行動に移すのみ、その動きすらも余裕を持って行えると理性が判断している。
「うぐっ」
「……アリーシャ」
だが、無理だった。
師の呆れとも、失望とも取れる声にアリーシャは。
(きもち、いい……!)
失意ではなく、快楽に身を震わせた。
そうだ、彼女は痛みを快楽と捉えてしまう悪癖があった。
見える、見えるのだ、相手がどこをどう狙ってきているのかも、どう避ければいいのかも。
しかし、彼女の本能が邪魔をする。
どう受ければ一番気持ちが良いのかどうかを理性ではなく本能が先に判断し、動いてしまう。
「今日は、これで終いだ」
「っ! お、お待ちになって下さい! オレは、まだっ!」
「終わりだ」
にべもなく背を向ける師に向かって、アリーシャは思う。
(まだ、満足できて、いないのに……!)
そうともアリーシャは世界屈指の戦士である。
単純な戦闘でも、彼女を負かせることができる相手など、そういない。
去って行った師もまた、負かせることができる可能性があるかもしれない程度の人間だったが、少なくともアリーシャの周囲にいる存在の中では一番強くて。
「……なんで、オレはっ!」
がしゃんとライトアーマーが音を立てながら放り投げられた。
強くなる、強くなりたいと願っていた気持ちは、何処に行ったのか。
いつか自分のようなガサツで教養もない女を見初めてくれた男を守るためにと志したものが、いつからこうも欲望に塗れてしまったのか。
「くそっ!!」
満たされない、願いと思い、そして本能と欲求。
じくじくと疼く心が、やがて諦観を宿しそうになったころだった。
「あなたが、アリーシャね? どう? 私と一緒に、魔王を倒さない?」
挑発的な笑みを携え勧誘しに来た、勇者シアと。
「初めまして。勇者パーティの性処理係、カイトです」
「せっ、性処理、係……?」
「ええ。これでも勇者だからね、そう言ったことも必要だろうって与えてくれた一級品の男よ。どう? 私と一緒に来てくれるのから、彼は自由に使い放題だけど?」
「……ん、く」
女と見れば、それもアリーシャほどの強い女を前にすれば怯えだす男が多い中で。
自分を見ても柔和な笑みを崩さないでいた、強いオスであるカイトと出会ったのは。
勇者パーティが結成された、それすなわちカイトとの一夜が解禁されたと言う事だった。
魔法使い、エリアナは男に対して警戒を見せて名乗りは挙げず。
回復術師、神官リリアはそも自分は性交渉を必要としておらず、それを支援するものであると一歩引いた位置にいて。
発起人である勇者シアにしても、幼馴染との約束を理由にカイトを楽しむと言った考えはない様子。
ならば、ではないが。
颯爽と一番槍として名乗りを上げたのがアリーシャだった。
「あ゛ー……」
「どうした? アリーシャ。まだ夜はこれからだぞ?」
「ふぎゅっ!?」
肉体を、心をも蹂躙された、征服されたとアリーシャは認識した。
ベッドで弾む自分の身体はカイトの動きに翻弄され続ける。
時折躾のように繰り出される臀部への張り手など、魂を犯されたとすら錯覚した。
強いオスであると認識してはいたが、なんて言うことはない、自分なぞ足元にすら及ばない猛き者であった。
「ふふ、でも俺にされるがままのそんなアリーシャも可愛いよ」
「か、わいい、なん、てっ」
「愛らしい、なんても言うのかな? すごい、イイぞ」
「ひ、ぅ……っ」
心の臓に届くのではと、命の危険すら感じたモノへと自身のメスが媚びへつらっていることがわかる。
あぁ、そうだ。
理解したと言うのなら、この初夜でアリーシャは理解した。
(この男には……カイトには、勝てないっ……!)
何をしてもどうしても、絶対に勝てないと理解した。
すなわち、自分が負けておかしくない、敗北していい相手だと。
「~~~~っ!?」
「お、おう?」
理解した瞬間と身体の何処かに雷が落ちたのは同時だった。
可愛いと言われる度に自己肯定感が満たされた。
愛らしいと、素敵だと言われる度に自己尊厳が回復した。
何よりも、自分より強い男など存在するわけがないと思っていたにもかかわらず、その男にひれ伏し良いようにされていると言う自分が、たまらない。
そう、アリーシャは。
「か、かいと、かいとっ!」
「どうした?」
普段の柔らかく丁寧な言葉遣いをしているこの男は、ベッドの上ではまるで真逆の様相を見せるこの男こそが。
「おまえはっ! オレがっ! ぜったいに、まもるっ!」
「……
「だから、だか、らぁっ!」
「ああ。もちろん、心の底から満足するまで付き合うよ」
己の半身であると、満ち足りない欠片を埋めてくれる、何をしても守護すべき男だと、己に規した。