貞操観念逆転異世界で勇者パーティの性処理係やってるんだけど、仕事してたらみんな勝手に拗らせる 作:ベリーナイスメル/靴下香
エリアナ大活躍だったモンスターパレードからで考えれば、二か月くらい経ったか。
通常、勇者パーティであろうが冒険者パーティであろうが、モンスターパレードの処理とは規模にもよるが基本的に困難なものだ。
困難だけに得られる名声は大きい。勇者シア率いるパーティは元々人材の割には成果がと言われていたが、その評価はパレードを処理したことで実を得た。
「――よし。皆無事ね? カイト? 大丈夫? 怪我はない?」
「ええ、おかげさまでかすり傷一つありませんよ。ありがとうございます」
「ほんと? ……ん、良かった」
更に言うのならパレードが二つ重なる、通称デスマーチと呼ばれる、生還は絶望的なんて言われるものを全員無事で処理しきったんだ。
今では勇者シアパーティの実力を疑問視する人間はほぼいない。
新進気鋭、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで名を高めたと言って良いだろう。
しかしながらに違う面を見て言うのであれば出る杭は打たれると言うべきか。
名が広まって二か月、結成当初から考えれば一年未満のまだまだ一般的に見ればルーキーと言って良い俺たちの鼻っ面をあかすために、魔王領との戦い最前線の支援なんて言う仕事が回されたって部分もある。
「じゃ、そうね。私はこの集落の長に滞在の許可を貰いに行く。アリーシャ、悪いけど護衛として来て」
「おう、わかった」
「リリアはあれば宿か教会へ直接交渉。無ければセーフゾーンの構築を進めておいて」
「畏まりました、我が主。カイト様のお導きのままに」
……うん、俺は何も聞いてない、いいね? 過激派怖いです。
ともあれ、平たく言うのであれば俺が性処理係として参加しているパーティは有名なのだ。
元より実力関係なく、男をパーティで囲っているという噂もあったせいだろうが、今となっては俺たちへの協力を拒む人間は少ない。
あるいはだからこそ、なのかもしれない。
俺が戦闘に出ないことを良いことに、戦力を削って保護の名目で俺を横取りしたいなんて言う。
はー、お偉いさんはどこのどいつも頭ん中まっピンクだよ、やだやだ戸締りしとこ。
「エリアナ? いつも通りだし、わかってるわよね?」
「承知、しておりますわ。心の底から、イヤではありますが」
「それは私も……いえ、皆そうでしょう。でも、初っ端から躓くわけにはいかないのよ」
「……ええ。そう、ですわね」
意味深なエリアナとシアのやり取りではあるが、俺のやることはわかっている。
集落へと入っていったシアに続くようにアリーシャが俺を何度も振り返りながら進んでいくのを見送って。
「我が主よ、どうぞこちらを」
「……毎度ながら、ではありますけど。ちょっと心配しすぎじゃないでしょうか? 毎度のことだし、同じような形で上手く行きますよ」
「主の導き、齎される幸福と救済へ疑いは御座いません。ですが、それはそれ。もしも万が一の場面でわたしの力及ばずと言ったことがあれば……本当に、わたしは生きていけません」
ぐっと俺に押し付けるようにリリアが渡してきたのはエリクシルと呼ばれる、命さえ落としきらなければ完全に回復すると言う霊薬だ。当然、クソ高い逸品である。
「エリアナ様」
「わかっておりますわ。こういった形で、皆様の信頼を裏切るつもりは毛頭ございませんもの」
「それ以外なら?」
「保証は致しかねます」
意味深って言えばこっちのが意味深だよね、何のことを言っているのやらで、怖いです。
「では、カイト様? お足元にお気を付け下さいまし。どうぞ、わたくしの手を」
「……早速、です」
「おほほ。これくらいの役得、お目こぼしくださいませ」
「むぅ」
僅かに漂った修羅場的な空気をまるっと気づかないふりをして、エリアナが差し出してくれた手を掴む。
演出、と言えばそうだが。
実用的とでも言うのか、こうしていたほうが安全であり、乱れていると言われているエレノーラ領だ、お言葉に甘えて頼りにさせてもらうことにしよう。
「乱れている、ね」
「醜いと、思われますか?」
「どうでしょう? ある意味、生きることに一生懸命って思えなくもないですよ」
「左様、ですか」
集落は然程大きくない感じで、100人もいれば多いと思える規模だった。
街のように道が整備されているわけじゃあないが、それでも裏路地と言うか、薄暗い場所というものはあって。
「ええ、生存本能とは理性を食い破る。極限状態だから許される、とは言いませんけど。一方的な正義感か何かで相手を責めることはできないでしょう」
「……お優しく、現地に寄り添った意見だ、と思いますわ」
大なり小なり、だろうが。
こういった薄暗い場所では決まって既に効果を喪っている魔法陣が描かれている。
ただ、乱れているという言葉通り……数が中々に多すぎるけれどもね。
「魔法を使えば、か」
喪われているが、魔法陣の効果は強壮というものだ。
魔法陣が描かれた範囲でなら、男は強制的にオスとして在ることが出来る、そういうもの。
こういった裏路地ではもちろん、男娼館なんかではデフォルトで構築されている。
そのおかげで、モノが役立たずな男でも使えるようになるって仕組みだね。副作用もあるわけだが。
「わたくしは……やはり、言い訳を元にこういった行為を強制することは、醜く思いますわ」
「そうですか? 少なくとも俺は、エリアナに無理やりされた、なんて欠片も思ってませんよ」
「あう……ずるい、ですわ」
「何がずるいやら」
うーん、今のは我ながらナイスな言葉のチョイスだったんじゃなかろうか。
貴重なエリアナの赤面シーンがこちらです。かーっ! ちょっと前までよく見れてたのになー! かーっ!
「と、とにかく、ですが」
「わかってます。準備を始めましょう」
改めて俺がこの場にいる目的は現地にいる人間の慰安だ。
勇者シアパーティが多くの場所で歓迎される、その理由の大きなものが俺による慰安が行われるからなのだ。
「もちろん、不届きものがいれば……!」
「始める前からそう殺気を出さないで下さいって。それじゃあ、俺は物資を広げるんで、セッティングをお願いします」
「……ふぅ。心得、ましたわ」
エリアナを宥めれば心の整理が出来たのか、魔法を行使し始めてくれた。
間を置かずにポンポンと用意されていく簡易的なソファだなんだを確認して、荷物の中から食料を取り出す。
「さて、何を作りましょうかね」
「やはり身体が温まるものがよろしいかと存じますわ」
「じゃあ、スープ……いや、リゾットなんかが良いですかね」
「よろしいかと」
エリアナが創造魔法で大きめのツボ鍋を用意してくれた。
何? これに材料入れて、いーっひっひっひとか言いながら混ぜた方が良い?
んなわけないよね、慰安なのに不気味にしてちゃ話にならない。
あー、ぶっちゃけなぁ! 身体を温めるならもっと効率よくしかも気持ちいい方法があるのになー!
「どうされましたの?」
「なんでもないです。やっぱりエリアナの魔法を使ってる姿はキレイだなーって思っただけです」
「っ……もうっ」
ぷいっと赤くなった頬を膨らませながらそっぽを向かれた、可愛いね。
エリアナはもっと自分の美貌を意識して誇るべきだよ、悔い改めて?
「なん、だ?」
「あれ、あ、あれ? おと、こ……?」
ぞろぞろといい感じにぼろを着た人たちが男女問わず集まって来た。
鍋はいい感じに煮えて来たし、頃合いか。
「どうぞ、いらっしゃいませ。俺は勇者シア率いるパーティの性処理係であるカイトです。今日は、皆さまと親睦を深めたいと思いこの場を用意しております。怪しいものではありませんが、怪しくないと思えた方から、どうぞこちらに来てください。今ならふーふーしてあーん付きで、慰安致しますよ」
ホストクラブ、じゃなかった。女の子を癒し隊……でもないか。
何にしても、慰安開始、だな。