What Makes You Beautiful! 作:立川南
雪が降った時、駅から近くのスーパーへの坂道は物凄く滑りやすくて、通ることが億劫になる。
寒さ等とんとご無沙汰なのに、この坂を登るとつい思い出してしまう。
今年も、2月には雪が降った。
その頃にはもう生活に支障は無くて、雪にテンションが上がって、それでも照れ隠しに「コンビニ行ってくる」だなんて言って、外に出た。
いつも、そうだ、いつも私は雪をひとりで見ていた。
年に一度雪が降ればいい方のこの街で、奇跡的な確率で友人と雪を見たことがないのだ。
それになんだか、寂しさを感じなくて、これから先の人生を空目してやるせない気持ちになる。
スーパーで頼まれていたものを買って、家路に着いた。
どうにも、5月の空気は気持ちが悪い。
夏だと認めるほど暑くもないが、別に困るくらいには暑い、中学2年の頃、自分の部屋にエアコンが着いてから今まで、5月にはエアコンが仕事を始めるようになっている。
道というのは、それ自体には意味が無くても、それでも意味を持ってしまうものだ。
雪の凍った坂道で転びそうになったこと、誰かが変なサングラスを取り出して皆で着けて遊んだこと、変質者と呼ぶほどでもない、変わり者によく絡まれていた男子たち、季節もバラバラな思い出未満の記憶たちが、道には溢れかえっている。
それでも、イヤホンをつけて、暑さを睨みつけるように歩けば、思い出なんてものは一切が見えなくなるのだから、人間の脳というのは存外単純なんだろう。
光ちゃんは、何を言いたかったのだろうか、私は、何を言いかけたのだろうか。
莉緒は、何を言いかけたのだろうか、私に、何を聞きたかったのだろうか。
この街に引っ越して来たのは、小学一年生の頃だった。
通っていた小学校は駅やスーパーとは反対側にあって、小学校の近くの公園でいつも遊んでいたから、こっちの道に詳しくなったのは中学生になってからだった。
中学から私の家までは、歩いて数分程しか無くて、友達とそれしか過ごせないのを勿体なく感じて、家に荷物を置いて友達の家まで一緒に歩いていた。
あの頃の歩幅が、いつまでも私の中には残っていて、徒歩二十分が家からスーパーまでの距離だと思い込んでいる。
今はもう、十五分もかかれば長い方だと言うのに。
家路には、私が事故にあった交差点がある。
再び歩けるようになった頃、ここを避けようと思ったがどうにも面倒くさくて、結局は何も感じなくなった。
落し物は、落とした場所がわかったところで、そこに落ちてなければ意味がないのだから。
「ただいまー。」
家に着いて、玄関を開ける。
「おかえり、送ったやつ、買ってきてくれた?」
母親が、キッチンに立っている。
「ここ、置いとく。」
「うん、ありがとう。」
「じゃあ、私上行くね。」
「うん、ねえ沙也加、今日、話があるんだけど。」
「え、こわ、何?」
「別にそんなにビビんなくてもいいわよ、また後でね。」
「おっけ、まあとりあえず後で。」
手を洗って、服を着替えて、2階の自室へと向かう。
タイマーをつけて出たので、計算通りに快適に冷えた部屋の優越感を感じながら、ベッドに倒れ込んだ。
どうでもいい動画をスワイプして、天井をボヤけさせていれば、存外にも考え事はしなくて済む。
それでも、脳みそは1ミリでも動いているのだから、いつかは形を得て、言葉になってしまう。
「私って、性格悪いのかなぁ。」
スマホを枕元において、適当な音楽を、適当な音量で流し始める。
いつもイヤホンで聴く音楽は、スマホのスピーカーから流れるとちょっと物珍しく聴こえて、それが少し好きだったりする。
いつだって、頭の中には楽しかった頃の記憶がある。
本当のことを言えば、今も苦しい、苦しさは増すばかりだ。
商店街も、ゲームセンターも、ファストフードも、音楽室も、廊下も、教室も、暗くなったバス停も、野球部も、夜も、朝も、昼も、祭りも、正月もクリスマスも、音楽も、全部、思い出があるから。
私には、それをどうにかする方法が思いつかない。
"卒業"と呼ばれるそれを、卒業証書無しに出来るほど器用な人間じゃない。
卒業証書を貰えた中学の頃は、つまりはこの街は、いい思い出ばっかりだ。
歩いていると、昔の自分と誰かを思い出して、愛おしく思う。
でも、高校は違う。
そもそも私はあと1年高校生だし、吹奏楽部だって、引退だなんて華々しい事は出来ていない。
車とギプス、松葉杖、手の震えが私の卒業証書だったというのなら、私はそれを認められてはいないのだろう。
だから、自分の選択で部活を辞めた光ちゃんが羨ましかった。
今日言っていた、"勿体ない"という言葉は、どこまでも持ってる側の後悔だと、そう思ってしまった。
光ちゃんは、私が部活を続けることも出来たと言っていた。
そのことについては、今は少し考えたくなかった。
莉緒は、どうなのだろうか。
光ちゃんは自分のことを性格が悪いと言っていたが、やり取りや聞いてきたことで言えば莉緒の方がよっぽど悪かっただろう。
思えば、私はなんで莉緒を避けていたのだろう、部活が無ければ、クラスが違えば、それで無くなるような関係だと、そう認めたかったのかもしれない。
それでも、今年莉緒とまた話せるようになって嬉しかった、それは本心だと思う。
思考は、まるで沼みたいで、水みたいだった。
時間はどこまでも素直で、ただぼーっと、数分に1回の寝返りと思考を繰り返していれば、直ぐに母親に夕食に呼ばれた。
食卓には、2人分の食事が並んでいる。
父親は仕事のシフトが特殊で、弟は部活の友人と食べてくるらしい。
母親とこうやって2人並んで食事を食べるのは、何も珍しくは無かった。
いつからかバラエティでは無くサブスクリプションの映画が流れるようになったテレビを無心で眺めて、母親が何かを切り出すのを待っていた。
「沙也加、進路は決めたの?」
「え、大学じゃない?普通に。」
「まだ塾も入ってないのに?推薦でも狙えるの?」
「いや、去年結構休んじゃったし。」
「でしょ?専門学校に行くんだったらそれ用の塾や参考書も用意しなきゃだし、進路、ちゃんと考えなさいよ?」
「話ってそれ?」
「うん、あんま考えてなさそうだったから。」
確かに、高校生活の終わりというものに固執して、その先についてを深く考えるのを、私は避けていたかもしれない。
「大学、だと思う。」
「思うって、」
「塾、ちょっと自分で探してみる。」
「いいけど、高校三年生の六月なんて、本来遅すぎるくらいなんだからね?」
「わかってるって。」
そうだ、大学に行きたい。
他に、目指すものも無い。
都心にある大学が良い、ビルは好きだし、映画に困らない。
「それで、身体はどう?」
「どうって、別に。」
「もうすぐ衣替えでしょ、夏服、新しいのあるから後で持ってって。」
前の夏服の制服は、当たり前だが着れるような状態じゃなかった。
「それ、どうする?」
母親は、横並びで見えない方、私の右腕をちらりと見る。
夏服だから、半袖だった。
至ってシンプルな理由だけれど、事故にあった時、吹き飛ばされて転がる時に酷く打ち付けて擦られた私の腕には、多少の傷跡が残っていた。
「別に、、いや、ちょっと悩ませて。」
「うん、わかった。」
母親はそれだけ言って、また普段の風に戻って行った。
元々、暑いのが嫌いだった、長袖もカーディガンも、正直に言えば冗談じゃない。
それでも、別に気にしないと心で思うのは、気にしていることの現れな気がして、思考は纏まらなかった。
「ごちそうさま。」
「ん、そこ置いといて。」
「うい。」
先に食べ終わり、食器を洗っている母親の所に行って、食器を渡した。
「じゃあ、私上行くから、多分降りてこない、おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
部屋にいるのが好きなのは、別に昔から変わらない。
夕食を食べ終わったらそのまま部屋でダラダラとして、眠りに落ちることは珍しくなかった。
リビングより快適に保たれた自室のベッドにまた倒れ込んで、目覚ましだけをセットして、無駄な時間を過ごしながら眠りについた。
♢♢♢♢
月曜日は嫌いじゃない、体力は比較的余っているし、時間割が悪くない。
それで言うならば1番ダルいのは火曜日で、なんとなく楽しいのは木曜日だ。
学生の身分の月曜日というのは、特段暗いものでもない。
バスも、電車も、2日ぶりか、あるいは昨日も会っていたのか、誰かと通学している学生は少しだけ色めき立っている。
「おはよ。」
「おはよう、今日早いね?」
「なんか早く起きちゃって、てゆうか、声、変じゃない?」
「別に?」
「エアコンつけっぱで寝ちゃって。」
「もうエアコンつけてるの?暑がりだよねぇ。」
「そこはね、もうしょうがないから」
朝練を終えて席に着いていた莉緒に話しかける。
いつも通りの会話だ。
どうでも良くて、心地いい。
「あ、今日午後オフなんだけど、どっか行く?」
「お、いいね。」
「光にも聞いとく?」
「あー、えっと。」
「ん?」
「しばらく、別々に帰ろうってことになった、光ちゃんと。」
「え、それって、私のせい?」
少し、ほんの少しだけそうではあるけれど、肯定するほどなにか思うところがあるでもない。
「いや、別にそういう訳じゃないけど、でも、ちょっと話したいかも、あの日のこと。」
「うん、私も。」
「そっか。」
よく分からない顔と空気が満ちかけて、少し急ぎ気味にその場を引くことにした。
「じゃあ、また後で。」
「うん。」
こうして、また1日が始まる。
窓際から少し離れて、教室の真ん中のあたりの3列目、つまりは教室のど真ん中が今の私の席になる。
そんなことは関係なく眠気は来るもので、誰かファーストペンギンを待って、待てずにうとうとしだして、眠りについた。
5月も末にかかろうとしている中、授業中の睡眠というのは何故か大量の汗をかく。
メカニズムは未だわかっていないが、とにかく不愉快だった。
そんなことを繰り返して、移動教室の授業もこの教室のものを選んでいるから、席だけ移動して、また授業を受ける。
他人の机はなんだか冷んやりしていて、寝心地は違和感を除けば悪くない。
あっという間に、放課後になった。
「行こ、沙也加。」
「おっけ、どこ行くの?結局。」
「とりあえずいつものでいいんじゃない?」
いつもの、最寄りから2駅先の駅にある大きな商業施設で、この高校や周辺の高校の学生はだいたいそこで放課後を過ごす。
「わかった、行こ。」
2人並んで、教室を出る。
隣の教室に、光ちゃんを見つけた。
なにやら友達と話している様子で、身勝手な安心と寂しさに一瞬襲われた。
階段を下って、靴を履き替え、バス停に向かう。
「あっつい。」
「そんなに?」
「じめじめしたの、マジで嫌いなの。」
「ほら、来週から夏服じゃん、我慢我慢。」
そういえば、莉緒は腕の痕を知らないことに気づいた。
「あー、」
「どうかした?」
「いや、夏服かぁ、って思って。」
「あー、あれ、ダメになっちゃったんだっけ。」
「いや、新しく買ってもらったんだけど、ちょっと。」
「ちょっと?」
「見えるところに、痕、あって。」
別に、おかしな話でも無いし、莉緒がそれをどうこう言う性格では無いのだってとっくにわかってる。
それでも、口の中は乾いていた。
「そう、なんだ。」
「うん。」
莉緒は、なにを思っているのかわからない、それでも暗い顔でそれだけを言った。
私の口の中は、未だに乾いていて、喉から変な音が鳴りそうで口を閉ざした。
映画だったら、こういう告白をするのは帰り道で、私の傷は受け入れられて、前へ進むのだろう、だけど私たちはまだ目的地に着いてすらいない、この気まずい空気をどうにかしようとして、いらない口が回った。
「まあ、別に気にしてないんだけどね。」
「....」
「莉緒は、どう思う?暑いの嫌いだから、半袖着たいなってのが本音なんだけどさ。」
「……気にしてないの?」
莉緒の声が、少し低く聞こえた。
数刻、沈黙が続く。
私の言葉が、待たれている。
「わかんない。」
言葉はすんなりと漏れた。
「そっか。」
気づいたら、莉緒は数歩先にいて、顔を見ることは出来なくて、そこから数分間、沈黙が続いた。
学校最寄りのバス停は並ぶから、出来れば座りたいよね、なんて理由でバス停を一駅歩くようになったのは何時だったろう。
人と少しでも一緒にいたいと願うのは、私の癖だろうか。
いつしか、私が一個駅を跨ぐのは、座れないと不安だからになった。
生活に不便がある訳じゃないけれど、吊革に掴まって、手に意識が行ってる時に震えを感じるのは不快だったから。
「莉緒ってさ、」
会話が無いと気まずいし、今の自分たちは"あの頃"じゃないのだから、沈黙は毒だった、だから、話を切り出した。
「進路考えた?」
「進路?」
「うん。」
「うーん、志望校はあるし、とりあえず一般かなぁ、推薦も無理じゃないと思うけど。」
「うわ、思ったより考えてた。」
「思ってたって、そっちはどうなの?」
「推薦は出席日数的に無理だし、一般かなぁ。」
「塾とかいくの?」
「それ、お母さんにも言われた。」
「そりゃあね、私も一応塾通ってるし。」
「そうだったっけ?」
そんなこと、言ってただろうか。
「うん、2年の冬から、言ってなかったっけ?」
「うーん、ない、と思う。」
「まあ、そりゃそうか。」
あっけらかんとした返事には、乾きを感じた。
あの話をした日からしばらく、莉緒は時折乾いた声を出す事があった。
「お、ちょうど来たよ、バス。」
バス停に着いた頃、ちょうどに来たバスに乗り込んで、2人並びの席に並んで座って、駅へ向かった。
バスが学校前のバス停に着くと、バスはあっという間にすし詰めになった。
それでも必死に、友人と会話が出来る姿勢を維持しようとする人や、流れに身を任せる人が、殺伐とした戦場みたいにヒリついた空気を作っている。
「あれ、沙也加ちゃんと莉緒ちゃんじゃん。」
「あれ、えりちゃん、今日1人?」
「弟が風邪ひいちゃって、部活休んじゃった。」
「弟いたんだ。」
日畑絵里ちゃん、人の雪崩に流され、丁度私たちの席まで流されてきた彼女は、結局始業式以降も話しかけてきてくれて、私と莉緒も話すようになった。
「莉緒ちゃん、今日吹部休み?」
「うん。」
「珍しい、それで沙也加ちゃんと帰ってるの?」
「うん、これからちょっと。」
「やっぱり、仲良いよね。」
「まあ、うん。」
「え、なにそれ微妙な反応、沙也加ちゃんどう思う?」
どう思えば良いんだろうか。
本当に、何も気づかない程、鈍感なつもりも馬鹿なつもりも無い。
莉緒が、私に対して思うところがあるのはわかっていて、でもそれがどういう感情に起因しているかも、なんとなくわかっていた。
それでも、それは自惚れな気がした。
それで、なんだか酷く的はずれな、空っぽなジョークが口を滑った。
「あー、ほら、一回別れたカップルみたいな、あー」
「え、そういう感じ?」
「ちょっと一時期喧嘩みたいなのしてて、それで。」
「あー、ごめん、そっか、ごめんね。」
「いや、謝んなくていいって、本気で。」
莉緒は、また沈黙している。
始業式の日からこういうことは何回かあった、莉緒と私の間には、少し気まずい空気が流れていて、それを知ったこっちゃない他の子たちに、気まずい思いをさせてしまう。
私の目線からは、彼女たちが悪者に見える。
そんな自分の醜さも滑稽だ。
こうやって、私は周囲の人間から浮いていったんだ、今それに、莉緒を巻き込もうとしている。
申し訳なくて、安心があって、でも私と莉緒の間にすら、溝があった。
次第にどうでもいい話を、いつも通りにして、バスが駅について、絵里ちゃんと別れて電車に乗った。
「ねえ、」
「なに?」
「怒ってる?」
「何が?」
「さっき、変なこと言ったから。」
「変なことって、なに?」
「あー、別れたカップルとか、茶化すべきあれじゃないよね。」
席は埋まってて、それでも混んではいない電車の、開かないドアの方、私はドアに背を預けて、莉緒は目の前に立っていた。
「別に、沙也加、空回ったジョーク言うの前からだし。」
「空回ってるって、」
「事実だし。」
「じゃあ、例えば?」
「空回りすぎて覚えてない。」
「だる!」
とげとげしさが無くなった訳じゃなくて、それでもこうして二人での会話は安心できて、きっと莉緒もそうだと思えた。
電車は、あっという間に目的地に着いた。
そこから少し歩いて、莉緒も段々調子が戻って、買い物をして、時間は、直ぐに過ぎていった。
触れたいことに触れることも、出来ずに。
電車が揺れる、外は少し明るい、仕方なしに掴まった吊革が、少しだけ音を立てた気がする。
電車を乗り継いで、最寄りに着くまではあっという間だった。
改札を出る、莉緒の顔を見る。
「ねえ、」
莉緒に声をかける。
「話、しない?」
莉緒が、静かにうなずいた。
夕方過ぎ、誰かは居て、誰も居ない公園の、ベンチに並んで腰掛けた。
空気を読みあっている、そういう音がする。
それは遠くを走る車の音で、風の音で、鳥の鳴き声だった。
「あのさ、」
先に切り出したのは、私だった。
「あの日、莉緒は、何が言いたかったの?」
莉緒は、その瞳を揺らして、それは疑念や怒りを含んでいるような、悲しみが揺らしているような、そんな瞳だった。
「何って、わからなかったの?」
「いや、多分、わかってる。」
「そっか、それで?」
「それでも、莉緒に言って欲しい。」
私の瞳だって、きっと揺れているのだろう。
それがどのような感情でなのか、自分ではわからなかった。
「部活、辞めないで欲しかった。」
「うん。」
「部活辞めた後も人とあんま話して無いの見て、じゃあ戻ってきてよって、ずっと思ってた。」
「うん。」
「新しいクラス一緒になって、嬉しかった、話せるようになって、それでも壁あるなって。」
「うん。」
「気付いたら、光と仲良くなってて、なんか、繋がりある気がして、不安になった。」
わかっていたことで、突き詰められれば痛いところだった。
私を、きっと好きでいてくれた友達を、私は傷つけていた。
私が、傷付きたくないから。
それでも、私は私が傷付いてまで、友達を守るべきだったのだろうか?
「だから、ごめん、これ以上は上手く言えない、寂しかった。」
寂しかった、その言葉が嬉しかった、自分がまだ、誰かのなにかであることを感じられた。
莉緒は綺麗だった、瞳に涙を浮かべて、私から視線が少し逸れていた。
「私は、」
私は、なにかを返そうと思って、それで。
「わかんないや。」
そう言葉にして、莉緒の手を握った。