What Makes You Beautiful! 作:立川南
「ほら、私って空飛んだことあるわけだし?」
ああ、まただと思った。
"ああ、まただと思った。"
以前の私は、どんなふうに話していたっけ、いや、そんなことを考えずに話せていたから、私は莉緒といたのが楽しかったのだろう、今、私に残っているのは、それは、何だろうか。
"以前の沙也加は、冷めた言葉を発することはあっても、それが本心だからで、悪趣味なことを言うことは無かった。長袖を着て、最近見つけたが、おでこに残っている傷のために前髪を下ろして、それで、何を思っていまの言葉を発したのか、私には、分からなかった。
「....」
沈黙が、向かい合っているから痛い。
ああ、何か言って欲しい、私の言葉に慣れていると、莉緒は確かに言っていたじゃないか。
だから、何かを言って欲しかった。
私の言葉で、傷付いてなどいないって笑って欲しかった。
私の罪悪感をどうか拭って、私の事を、愛おしそうなあの目で見つめて欲しかった。
どうか、どうか。
"沈黙が、どこまでも心を冷ましていった。
別に、怒りが湧いてくる訳じゃない。
それでも、沙也加は変わってしまったと私は思う。
きっと本人にとっては、どこまでも残酷で、受け入れ難い事実なのだろう。
私は、ああ、私はきっと、これから彼女を傷つけなければならない。
これは、罰なのだろうか、傷付いた少女を肯定せず、過去を追い求めた私への。
どうか、どうか"
この時間が、それでも出来るだけ続けばいいと思っていた。
"この時間を、早く終わらせなければと思っていた。"
♢♢♢♢
空は、大きくて広くて、なんか凄い。
子供の頃、漠然と思っていたことで、正直今も思っていることだ。
それでも、この時期だけははっきり違うと言えるだろう。
そもそも、空を見上げない。
傘を差してるし、上を向けば雨が目に入って不愉快だし、それはもういい事がない、いい事が無いのだ。
「あ、江島じゃん、莉緒呼んでくれる?」
私がお手洗いから教室に戻ろうとした時、吹奏楽部の部長の弥生ちゃんに話しかけられた。
私は、教室を見渡す。
莉緒は、いなかった。
「あー、なんか居ないわ。」
「え、マジ?どこいったかわかる?」
「いやー、わかんない。」
「そっか、最近莉緒と仲良いんでしょ?」
「あー、うん?」
「なにその疑問形、莉緒、クラス一緒になったの喜んでたから。」
「そっか。」
「江島、その、部活さ、辞めたの後悔、してない?」
「なんで?」
「いや、その、あたしにだけ、辞めるの言いに来た時の顔、忘れられなくて。」
「やめてよ。」
「え?」
「やめて。」
「....ごめん。」
「ううん、こっちこそ、莉緒帰ってきたら、呼んでたって伝えとくね。」
そう言って、教室に戻った。
本当は、トイレにでも戻って一思いに吐きたいくらい、胃の中に酸っぱいものが込み上げていた。
ああ、自分が醜くて嫌になる。
なんでこうも、上手くいかないんだろう。
「あれ?どうかした?」
「いや、別に。」
「そう、顔色死ぬ程悪いけど。」
「あ、弥生ちゃん、呼びに来てたよ?」
「ほんと?ありがと、次の休み時間行ってみるわ。」
「うん。」
「ねえ、何かあった?」
「え?」
「なんか、泣きそうな目してるけど。」
「うーん、いや、なんでもない。」
授業が始まる、チャイムがもうすぐ鳴るだろうという頃には、もう席に戻って、教科書を用意して、腕が震えていることに気づいて、まだエアコンのつかない教室の、じんわりとした汗が気持ち悪くて、重りをつけるように、震える手に頭を乗せて、眠りについた。
♢♢♢♢
1年の頃も、沙也加は授業中に寝ていることが多くて、名前順の時には気づけなかったそれに、席替えをしてから初めて気づいた。
別に他所に聞こえはしないけれど、それでも寝息が深いタイプみたいで、背中が膨らんでは萎んでいくのが面白かった。
沙也加は寝る前、少しだけ周りを見渡してから頭を伏せる。
それは周りでも誰かが寝てるのを確認して安心したいからだと、昔言っていた。
実の所、人からどう見られるかを気にしがちな彼女らしいと、当時の私は心の中で思っていた。
だから、今はきっと、眠いわけじゃないんだろう。
授業が始まるよりも前に、その顔を伏せるように眠りについた沙也加の背中はそれでもいつものように上下して、それだけが今の私に安心を与えた。
どうかこのまま、眠っていてはくれないだろうか。
結局、授業はそのまま緩やかに終わって、沙也加を起こさないままで、私は弥生のクラスに向かうことにした。
四時間目と三時間目の間の休み時間は、外に雨が降っているのもあって、廊下に出てくる人も少ない。
廊下に出て歩きだそうとしたとき、ふと視界に入った隣のクラスで、光と目が合った。
光は、友人との話を切り上げてこちらに歩いてきた。
「おつかれ、沙也加ちゃんは?」
「寝てる。」
「そう、まあいつも一緒にいる訳じゃないか。」
「あー、うん。」
「何その反応、仲直り出来たんでしょ?」
「あっと、まあ?」
「疑問形だ。なに、上手くいってない?」
「なんか、ぎこちないっていうか。」
「せっかく友達が身体張って話してあげたんだから、もうちょい上手くやってよ、もう。」
「いや、ほんと、ごめん。」
部活を辞めたあと、一瞬だけ私と光はギクシャクしたけれど、すぐにそんなことも無くなった。
友人として積み重ねた時間が無くなる訳じゃなかったし、なにより彼女は私の相談相手だったから。
沙也加が私や部活から離れていってから暫くは、光にずっと話を聞いてもらっていた。
3年になってからも、少しギクシャクしがちな沙也加との関係を、急に沙也加と仲良くなった光に相談を繰り返していた。
光が、話の切り出し方を少し急にしすぎて、私との仲直りの為に身を切ってしまったと、微妙な顔で報告してきたのも、この間のことだった。
「沙也加ちゃん、大丈夫かなぁ。」
「そんなに気に入ったの?沙也加。」
「いや、いい子だと思うんだけどなぁ、なんか、真っ直ぐだよね、純粋。」
「あー、それはそうかも、そっか、純粋か。」
「うん、だからちょっと守りたくなっちゃうのかも。」
純粋という言葉に、私はスっと何かがハマるような感覚があった。
「ま、相談あったらなんでも聞くからさ、結局どこ行く予定だったの?」
「あ、やば!ごめん、また後でね!」
「おっけー。」
話を切り上げて、廊下を足早に進む。
幸いにもまだ休み時間は5分以上も残っていて、話を聞いて戻る時間は十分にあった。
「で、話って?」
「なんか、怒ってる?」
「別に、で?」
「うーわ、だる、いや、3-1今日練習使えないから、場所変えるよって。」
「スマホで良くない?」
「聞いた帰り道に教室あったから寄ってこうと思ったの、江島も伝えてくれるっていうから、ならお願いしようかなって。」
「あー、そっか。」
「あー、江島?話したの、なんか不味かった?」
「いや、わかんない、なんか死にそうだった。」
「はあ、なんか苦労してんね。」
「別に、」
「めんどくさいよねえ、あいつ、でもなんか変に素直だから嫌いになれないっていうか、」
「素直?」
「素直。」
純粋で素直、僅か6分間の間に2人から出た沙也加を評す言葉は、それはきっと私も知ってたことで、きっと好きだった部分のはずなのに、忘れていた事だった。
「まあ、言うこと言ったし、そろそろ戻りな。」
「うん、また後で。」
「ういー。」
何かが、自分の中でクリアになっていくのを感じていた。
教室に戻れば、次のチャイムが鳴るまでに、もう2分も無かった。
沙也加はさっき起きたばかりみたいで、眠そうな目をしながら机の中をまさぐっていた。
お昼を食べ終わったら、沙也加に話しかけよう、きっと、伝えなきゃいけないことがある気がした。
♢♢♢♢
自分で選んだことの対価は、選ばなかったものへの憧憬だと、私は思う。
それはつまり、文系を選んだ結果として理系科目も楽しかったなと思うとか、そして他の人生の全てにおいて変わらないのだと思う。
だから、世界史はまあ楽しいのだけれど、それが化学や生物を恋しく思わない理由では無いのだ。
そして、先生には悪いけれど、こんな無駄なことを思考できてしまうくらいには、火曜四限の世界史は退屈だった。
雨が入らない程度に開けられた窓から、雨音と、バスと、母親に手を引かれる子供の声が聞こえた。
時間は、何をしないでも過ぎていった。
考えることが沢山あった、優先順位の高いものからどかしていって、考えるのは結局映画のことだ。
そして、映画を見に行けば、考えることが無くなって、そして大事なことを考える。
今まで繰り返して来たそれらが、今は恐ろしい。
「ねえ、今度さ、暇な日ある?」
莉緒は、お昼を食べ終わると、向き合っていた私に向かって、少し真剣な顔で話しかけた。
「あー、いや、忙しいのそっちじゃない?」
「空いてる日、教えるから。別に1日空けなくてもいいし、ほんとに、少しでもいいの。」
「あー、えっと、土曜は、映画見終わったあとなら暇だと思う。」
「何時くらい?」
「ちょっと遠くの映画館行くから、帰ってきたら18時くらいかな。」
「わかった、そうだな、沙也加の家の近くの公園で良いよ。ほんとに、話がしたいだけだから。」
心臓が変な動きをしている。
嫌な予感なんて言葉では生ぬるい、確信のような何かがあって、それを維持しながら土曜まで過ごすことすら酷く憂鬱だった。
「うん、わかった。」
「そ、ありがと。」
口の中が乾いて、舌がどこかに張り付いたみたいで、言葉が出なかった。
楽しいこと、一個も無いじゃん。
言葉が、漏れそうになる。
誰が好きでもなく、私はきっと昔のような生活が好きだった。
平日を18時まで浪費して、たった1時間、友達と夢のような時間を過ごす。
それを無限に繰り返して、1年が終わる。
それを繰り返して、3年が終わって、過去を存分に惜しんで大学生になる。
私が夢見ていたそれは、呆気なく崩れ去った。
もう、事故のことも憎いとすら思えないほどに、私は私に呆れていた。
莉緒と仲直り出来たと思ったのに、光ちゃんとはあれ以来話せてもいないのに、私は全部失うのだ。
それから、空虚な無駄話が苦しくて、時間は過ぎて、その日は終わって、次の日もその次の日も終わっていった。
「君は、自分の事を愛せないんだね。」
「私も、昔はこんなじゃなかった。」
「何が、君を変えてしまったの?」
「わからない、もう覚えてもいない、ねえ、私を愛してよ、生きている意味を教えて。」
「無理だ、僕は、自分のことが好きな君が好きだった。」
「酷い!ねえ、名前を呼んでよ、好きっていってよ、誰もいなくて寂しいの!苦しいの!」
「君はきっと、いつか君自身の愛おしさに気づけるよ、だから、さようなら。」
正直に言えば、大失敗だった。
評判が良いかと言われると、そこまで真面目に調べてはいなかったし、正直に言えば怖いもの見たさで、たまにはこういう映画も面白いしとか、そういう事を思っていた。
恐ろしほどにつまらないその映画の、それでも自分の何かを引っ掻くようなセリフが、気持ち悪くてたまらなかった。
気持ち悪い、醜い、自分を見てるみたいだ、こんな映画に自分を投影することすら、気持ち悪くてたまらない。
シネコンの広い映画館なら、エンドロールで立ち上がって今すぐ逃げているのに、人の詰まったミニシアターでは、そうもいかない。
粘っこいエンディングテーマを聞かされて、心はどん底だった。
どこにも行く気になれないけれど、約束には遅れてしまいたい。
そもそも、まだ向かうには早すぎる時間だった。
思っていたより遠くて、でも憂うほどでは無いくらいに近い。
私の街から都市の中心はそういう位置にあって、行きよりも帰りが億劫なのが定番で、それはつまり、今日の自分の足がどれだけ重たいかを、自分でも計り知れないくらいだった。
それでも、人の多い電車に座っていれば、サイネージを塞がれて、イヤホンから聞こえて来る音楽はアナウンスすら遮って、自分が降りる場所が分からなくて、ただ、不安を募らせた。
こういう時、明るい歌を聴けたら良いのに、それでも逃げるように、英詩に逃げて、理解を避けて、時間を待った。
街を走る電車には、所々に思い出があって、あれは中学の時だったか、友達と、今ではそこまで遠出とも思えないような距離を、それでも冒険かのように出かけた。
高校に入れば、通学に電車を使うことも相まって、世界の広がりというのは凄まじかった。
私の広がって行く世界には、いつも莉緒がいた。
別に、手を引いてくれた訳じゃないし、世界を広げてくれた訳でもない。
それでも、ずっと傍にいて、ただ話して、笑って、喧嘩はあまりしなかったから、覚えていないけれど。
とにかく、私の手にはあの日の、それより前の温もりがずっと残っているような気がして、もう痛まない傷よりずっと熱いのに、それが冷めていくことが何より恐ろしかった。
例えば、きっと莉緒と普通に卒業して、たまに連絡をとって、遊びに誘おうか迷っているうちに会話が終わってしまって、後悔して、でも変わらないことが嬉しくて、そんな関係で居られたなら良かったのに。
電車からは人が引いてきて、もうすぐ私の降りる駅になる。
時間は、16時50分。
まだ、少し早かった。
乗り換えで家の最寄りについて、それで、30分くらい前には着いてしまうだろうか。
莉緒は、もういるかもしれない。
珍しく雨が降っていないと言っても、曇りなことに変わりは無くて、時たまに見える薄明の光が、眩しくもなく綺麗だった。
川沿いを歩く、連日の雨で川の水は濁っている。
いつも曲がる角を曲がらずに、坂道を少し登る。
公園に入る、まだ、莉緒はいなかった。
10分ほど待って、莉緒がやって来た。
制服を着ていて、荷物は持っていない、一回家に帰ったのだろう。
「おまたせー。」
「ううん、そんな待ってない。」
「そっか、映画面白かった?」
「いや、全然。」
「うわ、マジの顔じゃん。」
「ほんとに、いや、良いよ別に、映画の話。」
言ってから後悔した。
早く話せと言っているようなものじゃないか。
今のはきっと莉緒の温情で、温い会話で私に心の準備をさせてくれていたのに、私は切り捨ててしまった。
莉緒は、まだ数週間前のあの日みたいに、私の隣に腰掛けた。
「ねえ。」
「うん。」
「この前のこと、もう一回聞いていい?」
優しさと、何かわからない感情と、それでも時に感じていた乾きは感じない、そんな声だった。
「あの時って。」
「部活、なんで辞めたのかなって。」
「あれは、その。」
「ねえ、優しくされたの、嫌だった?」
少し、声が冷えた。
「辛かった?優しくされて、皆から浮いたみたいで、自分が前と違うみたいで?」
「あ、いや、」
「それは、きっと私が謝らなきゃいけないことだから、だからまずは一回謝る、ごめんなさい。」
「あ、えっと?」
よく、分からなかった。
「私は、沙也加が昔のまま、変わらないって思ってた。事故は辛い事だったけど、根っこの部分は変わらなくて、だから、私と一緒に居てくれて、部活が好きで、楽器出来なくなったんだから、辞めるのはしょうがないなって思った。でも、沙也加はその後、私も、皆も、どんどん突き放して1人になっていった。」
「あれは、」
「わかるなんて言えない、けどきっと辛かったよね、自分が変わってしまったって思い込んで。
でもさ、友達みんな、あの頃の自分に戻って欲しいって思ってるって?あの頃の自分より、今の自分の価値が低いって?本気で思ったの?」
やめてくれ、何でそんなことを平然と言えるんだ、莉緒の瞳は揺るがなくて、揺れていて、それは悠然と心を語って、でも私にも余裕がなかった。
「ねえ、沙也加、私、沙也加のこと好きだよ。ずっと、ずっと好きだった。」
「え?」
「自分でも、どういう好きなのかってわかんないなんて、つまらないこと言うけどさ、ほんとに好き。ずっと傍にいて欲しいし、居てくれると思ってた。」
「いや、」
「自分勝手だけどさ、沙也加が事故のこと、気にしてないみたいに話すの、ムカついた。
私は苦しかったのにって、沙也加だって苦しんでるの丸わかりなのに、なんでそんなに見栄張ってるのって。」
気づかない間に、雲は引いて、夕暮れが見え始めていた。
「私だって、私だって、私だって!じゃあどうすれば良かったの!?苦しくて部活辞めたのに、毎日部活行く莉緒を見送って一人寂しく帰れってこと?そんなの苦しいよ、じゃあ一人の方が楽だって、考えたっていいじゃん、私、私がどれだけ苦しかったかわかる?未だに腕震えるんだよ?ねえ、勉強すら碌に出来なくて、ご飯だって食べづらくて、なんかもう全部無くしちゃったって、思ったっていいでしょ!」
言ってから、初めて気付いた。
私は、私のことが嫌いじゃない。
でも、だから苦しかった、失くしたものは、私が好きな私の大きな割合を占めていたから。
「好きって何?傍にいたいって、ならもっと上手く優しくしてよ!腕の震えだって、一人で抱えなくていいよって、手を握ってくれるだけで良かったのに、腫れ物みたいに扱わないで!」
八つ当たりだった、自分が剥がれていって、全部無くなって、消えてしまいそうなのがわかった。
「もう、どうすればいいのかわかんないよ、ねえ、私はどうするべきだったの?」
「それは、」
「わかんないよね?ねえ、結局その程度じゃん、逆に聞くけどさ、私が辞めてって言ったら、部活辞めてくれた?他の友達捨ててって言ったら捨ててくれた?」
論点がまるでズレてるのが、自分でも良くわかった。
「光ちゃんに言われたの、私は何を優先して部活辞めたのって、心だよ心!辛かったから、痛かったから、ダルかったから!」
ああ、今私は本当の意味で、自分を嫌いになれそうな気がした。
今すぐ、この場から去ってしまいたかった。
心は、あの時のリフレインだった。
風が吹いて、急に心が覚めるような感覚があって、私は熱を失ってしまった。
「ごめん、今日もう帰るね。」
「あ、まって....」
「いいよ、もう、こんなやつめんどいでしょ?」
「そんなこと、」
莉緒が、立ち上がった私に手を伸ばそうとしたのがわかる。
「触らないで!」
私は、それを叩き落として、そして、それをやった自分の手を見つめた。
手は震えている、いままでよりずっと酷く、莉緒が、それを見ている、酷く目を見開いて。
「じゃあね。」
いつか、また明日と言ったのはもう遠い昔の事みたいだ。
私は走って坂を下って、家に逃げ込んで、布団の中で泣きわめいた。
何も、解決しなかった、私が私を、莉緒を壊してしまった。
夕日はもう沈んでいて、部屋は真っ暗で、中途半端な曇り空が、月も星も隠していた。
私は、もう私が嫌いだった。