騎士学校首席の騎士が辺境領主に「妻を孕ませてくれ」と頼まれるまであとXXX日 作:ネイウ
ガタゴトガタゴト馬車に揺られに揺られて早1日、景色は見慣れた王都近郊の麦畑から牛の鳴き声が聞こえる
「騎士さん騎士さん、そろそろロンダンに着くよ」
そう声をかけて来てくれたのは一昼夜の付き合いになる馬車の御者
「お、そうか、見た所ブドウがよく実ってるな」
「はい、それはもう、ロンダンは美食の里、そんな所に配属されるなんて騎士さんはついてますねぇ」
「ハハッ、そうだな、だが一度は夢見た剣での立身出世は
「それはそうですね、ロンダンで戦働きは望むだけムダって奴です、騎士さん腕が立ちそうなのに勿体ないねぇ」
「まあ、若い血の暴走やら若気の至りやらの報いって奴さ」
それでも騎士として見逃せなかった、というのは心に秘める
「なぁに、悟ったような事言ってんです、騎士さんまだまだ若いじゃあ無いですか、今年でいくつになるんで?」
「今年で18だな」
「ならまだまだ若造も若造じゃないですか、コレから色々経験する事になるのにそんな悟った風じゃ人生楽しめないですよ」
「酒飲んで女の子口説いて恋仲になって、ゆくゆくは祝言、そんな人生設計をしてもいいじゃないですか」
「それも、そうだなありがとな」
「いえいえ、礼には及びませんよ」
と、話してるうちにロンダンの門へと着く。
「っと、あっしはココまでですな、騎士さん忘れ物は無いようにしてくださいよ」
「うん、世話になったな御者、これはお代だ」
「はい、ひのふの···こんなに貰っても良いんです?」
「ココまでの旅路を会話で彩ってくれたからな、それの色彩分として貰ってくれ」
「はい、ありがとうございます、それでは、お元気で」
「そちらも達者でな」
遠ざかる馬車に手を振り別れる。
「さて···」
出迎えの人は居るかな、とロンダンの門をくぐり周囲を見渡す、すると
「おや、君が今日赴任する騎士ファルケンかな?」
と、メイドを伴って聞いてくる金髪の仮面の女性
「あ、はい、今日付でロンダンに赴任しました、ファルケン·バルクです、貴女は···?」
「ああ、申し遅れた、私はこの地で騎士をしているヴィクトル·ヴォッツだ、よろしくな」
「あ、はい、よろしく、お願いします」
平静を保って敬礼をするも内心汗がダラダラだ、あのやらかしの時の騎士見習いって確かヴォッツ家だったよな···
「所で···」
「ひゃい!」
うっ、緊張で声が裏返ってしまった、ヴィクトル卿の後ろに控えているメイドさんがクスクス笑っている。
「フフッ、取って食べたりしないからそんなに緊張しなくても良いよ、ちょっと領主様に面会させる前に聞いておきたい事があるだけだから」
「な、何でしょうか···?」
「君は騎士学校卒業前にとあるやらかしをしたらしいね」
「うぐぅ···」
やっぱり耳に入ってるっぽいー!?
「え、えーと、えーと···もしやカマセ·ヴォッツと言う名に心当たりが···」
「勿論、あるよ、なんせ弟だから」
「す、すすす、すいませんでしたー!」
「おっと、何を謝っているんだい?むしろ私は感謝を伝えようとしたのだが」
「はい?」
え、感謝?なんで?
「騎士に上がる前に心を折ってくれて感謝している、なんせカマセは両親に甘やかされて育ったせいでこう、色々と未熟でね、そんな未熟者が我が家から輩出されなくて良かったと思っているよ」
そう言うヴィクトル卿の顔は少々哀愁が漂っている気がした。
「っと、身内の恥の話はココでおしまい、領主の館に案内するよ」
「あ、はい」
こうして俺のロンダン領での暮らしが始まったのだった。