Fate/Zero ゼロに向かう物語   作:俊海

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うし、ギリギリ一月以内に書き終わらせました!
これからは何とかペースを戻していきたいと思います。

あ、ちなみに今回のタイトルはすごくしょうもない駄洒落です。



太陽の下で生まれた者たちは黄金に出会う。

 その家に住んでいる夫婦は悲嘆に暮れていた。

 彼らは共に悲しそうな表情を浮かべ、時折女性の方が泣き出したかと思うと男の胸に縋りつく、と言った行動を繰り返している。

 それもそのはず、彼らは先日から我が子――コトネが行方不明になってしまっているからだ。

 

 ただ行方が分からないだけならいい。それでも十分不安に思うのに足る理由にはなるが、もしかしたら生きているかもしれない。という希望を見ることができる。

 しかしそれは、最近この冬木市を騒がせている『連続殺人および連続誘拐事件』という悪夢がなければの話だ。

 いまだに警察も事件の犯人を見つけられることもできず、その犯行はどんどん広がっていくばかり。

 その上、殺された遺体はどれもが猟奇的な状態で発見されるのがほとんど。そのような事件が起きているこの街で子供がいなくなったというのは、それはもはや死を意味するのと同義である。

 警察には届けたが、いまだに見つかったという通達は来ず、もはや生存していることが疑わしくなってきた。

 そのせいで、二人は深い絶望感を味わっているというわけだ。

 

 まだまだ幼い我が子は、きっともうこの世にはいないのだろう。ならばせめて、どんな姿でも構わないから最後はこの家に帰ってきてほしい。死んだ後も犯人に好きなようにされるのは耐えられない。自分たちのかけがえのない宝であるコトネを、どうか自分たちの手で埋葬させてくれ。もはや、彼らにはそれしか希望は残されていなかった。

 

 殺人鬼に弄ばれ、その尊厳を踏みにじられていく子供の姿を再び想像してしまい、妻が痛哭しそうになる。

 まさにその瞬間、ここ数日鳴りもしなかったインターホンが来客を二人に知らせた。

 今日彼らを訪ねる予定の知人はいない。ならば警察か。

 男性がカメラを覗き込むと、想像の通り警察の制服に身を包んだ青年がそこに立っていた。

 

 

『――申し訳ありません。コトネちゃんについてお伝えしたいことがあってこちらに参りました。お手数とは思いますが出てきてもらえないでしょうか?』

 

「……はい、分かりました。今すぐ伺います」

 

 

 おそらく、娘の死体が見つかった、というようなことだろう。と男は思う。

 警察が自分たちに用があるとしたら、そのくらいしかないのだから。

 今泣きじゃくっている妻が出るわけにもいかないと、そのまま男は幽鬼のような足取りのまま玄関に向かい、扉を開ける。

 

 

「わざわざすみません。コトネちゃんのお父さんでしょうか?」

 

 

 そこに立っていた警察官は、外国人だった。

 さきほどは胡乱気にしか見ていなかったが、その帽子からは少しばかり金色の髪がはみ出てもいる。

 男は、なぜ外人が日本の警察に、とも思ったが、そんなことよりコトネのことの方が重要だ。

 

 

「コトネは……あの子は、どうなったんですか……?」

 

「……そのことなんですが」

 

 

 警察官から伝えられるだろう事実を受け入れるため、男は覚悟を決めた。

 自分たちの愛娘の死を現実のものとして直視する、その時が来たのだと。

 どのような結果を伝えられても耐えるために、最後の気力を振り絞って歯を食いしばり、警官の次の言葉を待っていると――

 

 

「――お父さんっ!!」

 

 

 どこかで聞いたような声と共に、腹部に何かがぶつかってくる衝撃が感じられた。

 その衝撃もまた、彼が常日頃から味わっているものだ。

 仕事から帰ってきたとき、いつもいつも彼に襲い掛かるこの衝撃に癒されてきたのだから。

 そして次第に感じられるぬくもり。もう二度と、この温かさを感じることができないだろうと悲しんでいたはずの、そのぬくもり。

 信じられずに呆けてしまったその表情のまま、男は抱き着いてきた少女に目を向けた。

 

 

「…………えっ? コト……ネ…………?」

 

「うん……! 私だよ、お父さん……っ!」

 

 

 そこには確かに、もう死んだと思っていた自分の娘の姿があった。

 いなくなる前の姿と何ら変わることなく、コトネは父親の目の前に確かにいる。

 唐突に突き付けられた現実にコトネの父は茫然となったが、次第に涙が目の内ににじんでくるのを感じずにいられなくなってきた。

 

 

「コトネ…………っ! ああ、コトネっ! 生きてる……コトネが生きてるっ!!」

 

「お父さん……お父さんっ!」

 

 

 互いに嗚咽を漏らしながら呼び合い、もう決して離さないかのように父親がコトネを抱きしめ返す。

 その声が耳に届いたのか、家の中からコトネの母親が飛び出しコトネの姿を認めると、父親と同様にコトネに抱き付いて一緒になって涙を流した。

 肩を寄せ合い涙まじりで望外の喜びに浸る三人に、ばつが悪そうに警察官が声をかける。

 

 

「その様子だと間違いないようですが、その子がコトネちゃんで合ってますよね?」

 

「はい……っ! この子は私達の娘で間違いないです!」

 

「それは良かった。……それと、誘拐されていたのもあって衰弱しているようなので、病院に連れて行った方がいいと思います。一応こちらでもある程度は検査していますが、専門家に任せた方がいいので」

 

「分かりました……! 本当に……本当にありがとうございましたっ! コトネを助けてくださって、本当にありがとうございますっ!」

 

「……いえ、ある意味僕達のせいでもあるんですから、お礼なんて受け取れませんよ」

 

「そんなことはありません! 貴方がいたから、私はこうやって我が子を抱きしめられるんです! どうか、礼だけでも受け取ってください!」

 

「……分かりました。その気持ちは確かに受け取りましょう」

 

 

 警察官はそう言うと、しゃがみこんでコトネの目線を合わせると、懐から金属のようなものを取り出し、コトネの手に握らせた。

 あまり見慣れない形の金属に、コトネは首をかしげる。

 

 

「お兄ちゃん、これなんなの?」

 

「『蹄鉄』って言って、馬の爪につける金属だよ」

 

「でも、私の家にお馬さんはいないよ?」

 

「それはおまじないさ。それを飾っていると、魔除けになったり幸運を呼び込んだりできるんだ。これをコトネちゃんにあげるよ」

 

「そうなの!? じゃあ大事に飾っておくね!」

 

「これからは、知らない人について行ったらだめだからね?」

 

「はいっ!」

 

「ああ、いい返事だ」

 

 

 コトネの元気のいい返事を聞いて、警官は目を細めながら頭を軽くなでた。

 そして一度コトネの家族全員の顔を見回し、立ち上がる。

 

 

「今回は助けられましたが、まだ犯人は逃走中です。くれぐれもコトネちゃんからは目を離さないようにお願いします」

 

「もちろんです。もう二度と、コトネを危険な目には合わせません」

 

「それでは、他の子供たちを送り届ける仕事があるのでこれで失礼します」

 

「分かりました。お仕事が大変だとは思いますが、どうかお気をつけて」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 警察官は軽く頭を下げると、傍に立てかけてあったバイクに跨りエンジンをかける。

 そしてそのまま、コトネ達の家を振り返りもせず走り去っていくさまを、コトネの父親はその姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。

 

 

「今度警察署の方にもう一度お礼しに行かないといけないな」

 

 

 今は仕事で忙しいとのことだからろくにお礼をすることができなかったが、あの程度でこの恩を返せたとは思えない。

 あの警察官の名前を聞きそびれてしまったが、外国人の警官なんて珍しいだろうからすぐにわかるだろう。

 そんなことを考えていた父親に、コトネは不思議そうな顔をする。

 

 

「え? あのお兄ちゃんお巡りさんじゃないよ?」

 

「何を言ってるんだいコトネ。そんなわけ――」

 

 

 待てよ。そういえば今彼の乗っていたバイクの色は何だった?

 普通警察官なら白バイであるはずなのに、今の彼のバイクは市販されているものと変わらないものではなかったか?

 それに、彼は一度たりとも『自分が警察官だ』とは言っていない……。

 

 

「だって私が助けられた時も普通のお洋服だったし、お泊りしたのもおっきなお家だったもん」

 

「いや、でもあの服は……」

 

「あれは近くに来たから着替えてただけだよ? それまでは別の服だったんだ」

 

 

 それはいわゆる変装と言うやつではないだろうか。

 だとしたら、正体を隠して子供を助けたということになってしまう。

 なぜそのような必要が?

 

 

「お兄ちゃんすごかったんだよ! 悪いお化けを一人でやっつけちゃったんだから!」

 

「…………コトネ、お前を助けたあの人はバイクに乗って戦うヒーローか何かだったのか?」

 

 

 ――これは余談ではあるが、冬木市のあちこちで『行方不明になっていた子供たちがバイクに乗った青年によって親の元に送り届けられた』と言う事態が起きた。

 しかし誰もが子供を帰してきたバイクに乗った青年の顔をはっきりと覚えておらず、子供たちはそろって『お兄ちゃんが悪者を倒して助けてくれた』と証言していることから、しばらくの間、冬木市では、『あの有名なマスクドヒーローが冬木市に実在した』という噂が流れることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これで全員帰らせることができたかな」

 

 

 件の警察官――バーサーカーは警官の制服から元の服に着替えながら一人ごちる。

 ウェイバーに認識疎外の魔術をかけてもらってはいたが、昨夜かけてもらったケイネスのものと比べるとその効果は弱く、せいぜい『朧げな特徴は覚えているけど、なんとなく顔を忘れてしまった』くらいにしかならなかった。

 そこで子供を親御さんの元に帰しても違和感のない格好である警察官の衣装を身にまとって行動していたというわけだ。

 昨日の今日でパトカーや白バイも調達することもできず、元からあったXJR400Rで出前さながら子供たちを送り届けたのだが……。

 

 

「なんというか……疲れた……」

 

 

 サーヴァントは肉体的に疲れることはない。魔力が続く限りは動き続けられるし、そうでなくても十軒ほどの家を回るくらいならバーサーカーにはどうってことはない。

 ただ偏に彼が疲労感を味わっているのは、帰した子供の親から誰一人例外なく涙ながらの感謝をされてきたからだ。

 助けたと言えば助けたがバーサーカーの本意ではないし、ライダーと組んでいることからくる余裕がなければ令呪を切ってまで助けるように雁夜には言わなかっただろう。

 幾度となく感じた居心地の悪さ。だけど、それでも――

 

 

『それでも、気分は悪くないだろ?』

 

『……否定はしないよ』

 

 

 昨日のケイネスとの会話で思わず本音を吐露してしまった影響か、どこか晴れ晴れとした表情でバーサーカーは雁夜との念話に応じる。

 これまでは、自分が善人ぶった行動をとっていることを指摘されたら、すかさず否定し自己嫌悪に陥るバーサーカーであったが、一度口に出してしまえば吹っ切れてしまえた。

 そもそもそんなに悪ぶろうとするつもりはないのだし、偽善だろうと何だろうと、やりたかったからしただけのことなのだから、他人にとやかく言われる筋合いもないか。とバーサーカーは折り合いをつけた。

 

 

『なんだかお前、感謝されることに対してアナフィラキシーショックみたいな反応してたもんな』

 

『まあ、前世が前世だったからなァ』

 

 

 そう言って、バーサーカーは自分の人生を振り返る。

 父親からは兄の身代わりになればよかったなどと言われ、騎手としての栄光を失った時にはバーサーカーの周りから持て囃していた人間がことごとく居なくなり、入院していた時なんか誰一人として見舞いに来る知人さえもいなかった。

 そのせいで、バーサーカーは軽く自分の価値を低く見てしまっていたのかもしれない。

 自分は存在する価値もないような人間ではないのか、と心のどこかで思っていたのかもしれない。

 誰もが、バーサーカーそのものを見てはくれなかったから……。

 

 

『ああ……うん、そうだな。感謝されるっていうのは、こんなに嬉しいものだってようやく身に染みて理解できたよ』

 

『それは……良かったな』

 

 

 でも、この聖杯戦争で出会った人たちは、バーサーカーの行動を評価してくれている。

 それを最初は恥ずかしがっていたが、彼らの感謝を素直に受け入れてみたら、心が温かくなるような気分になる。

 初めて味わう感覚にバーサーカーは軽く綻び、そんなバーサーカーを見て雁夜は、自分たちの恩人が穏やかな気持ちになっているのを嬉しく思った。

 

 

『それはさておき、ウェイバー君がキャスターの根城を突き止めたらしい。場所は未遠川へ流される用水路の注ぎ口だってさ』

 

『へェ、たった一晩でもう見つけたのか。早いじゃあないか』

 

『ライダー達はもう目的地に向かってるけど、バーサーカーはどうする?』

 

『もちろん行くさ。僕のこの目でキャスター達を倒すのを確認しないと安心できないからね』

 

 

 キャスターは早めに始末しておかないと、バーサーカーに何をしでかすか分からない。

 後顧の憂いを払拭するためにも、バーサーカーはキャスターの陣地に強襲することにした。

 それに、あのキャスターのことだ。ライダー達に追い詰められても、姑息な手段を使って逃げ出す可能性の方が高い。

 事実、昨晩は三騎を相手にして、まんまと逃げおおせたのだし。

 

 

『じゃあ、何かあったらまた念話で伝えるよ。サクラをちゃんと見守っておけよ』

 

『そんなの、言われなくったって当たり前さ』

 

 

 そうやって軽口をたたき雁夜との会話を中断すると、バーサーカーは周りを見渡した。

 今バーサーカーがいるのは児童公園。キャスター達の犯行のおかげで、今ここで遊んでいる子供たちの姿はない。

 むしろその方がバーサーカーには都合がいいものではあったが、本来なら少しは幼い子供たちが遊んでいるであろう場所が静けさに包まれているのにはどことなく違和感を覚える。

 こうなったのも聖杯戦争のせいだと思うと、自分が関与していることながら、この戦争を思いついた奴はもう少し一般市民を巻き込まないようにする配慮はなかったのだろうかとバーサーカーは嘆息する。

 ここが霊地として優秀であることは話に聞いてはいるが、彼と敵対したあの大統領でも人的被害は少なくしようとしてはいたのに……。

 

 

「考えていても仕方ないな。さっさと移動しよう」

 

 

 一休みのつもりでここに立ち寄ったが、ライダー達を待たせるわけにもいかないと、数分前に下ろしたばかりの重い腰を上げようとし――

 

 

「――そこのお前、少し話を聞かせてもらうぜ」

 

 

 突如背後からかけられた若い男性の声に呼び止められた。

 声の感じからすると20代半ばほどだろうか。しかし、その低い声には、どこか壮絶な人生を歩んできたような雰囲気が感じ取られる。

 バーサーカーが振り返ると、そこには白い帽子に白いコートを纏った2m近い青年が立っていた。

 黄色人種と白人の間に生まれたハーフのような容姿をしており、長身であることと相まってただならぬ威圧感を放っている。

 このような人物にバーサーカーは出会ったことがない。間違いなく初対面の人間だ。

 

 

「……いったい何の用だ? 僕はこれから行かなくっちゃあいけないところがあるんだ。邪魔をしないでくれ」

 

「なぁーに、そんなに時間はとらせねえさ。もっとも、俺達の質問にてめーが素直に答えるっていうならの話ではあるが……」

 

「そう言うなら、少しはその高圧的な喋り方をどうにかしてくれないか?」

 

 

 いきなり話しかけてきた生意気そうな青年に対し、バーサーカーは冷たい視線で答える。

 明らかに目の前の人間はバーサーカーに『質問』しようとしているのではなく、『尋問』しようとしている。

 ということはつまり、目の前のこの青年は、人にものを尋ねるときの態度を知らない人間なのかあるいは、バーサーカーが青年の欲しがっている情報を持っていることを確信しているかのどちらかだ。

 前者であるならさっさと無視してこの場から退散すればいいのだが、後者だとすればそうもいかない。

 なぜなら、バーサーカーが知っている情報を求めていると言うことはすなわち、それは『聖杯戦争に関して何かしようとしている』人物であることに他ならない。バーサーカーの持っている情報で、現代に生きる人間が欲するものと言えばそれしかないのだから。

 そのような人間を放置していたら、この男の行動が自分にどのような影響があるのか分かったものではない。

 

 

「それに、俺達(・・)ってのはなんだ? 僕の見る限り、ここにはお前しかいないように見えるんだけど……」

 

「てめーがヤケを起こして襲い掛かってくるかもしれねーんでな、大人しくすると約束するならすぐにだって出てくるさ」

 

「そもそもお前は僕に何を聞きたいんだ? そんなに必死そうな態度なんかとって、僕に聞きたいことっていうのは?」

 

「だったら、率直に聞くぜ」

 

 

 サーヴァントであるバーサーカーならば、魔術に関係ないような人間に対して戦闘になろうと負けることはないはずなのだが、ポーカーフェイスを装っている表情の裏で、背中に冷や汗が流れるのを感じた。

 なぜだか分からないが、この青年と戦うことになるのは避けた方がいいと彼の『直感』が頭の中でささやいている。

 この『直感』はスキルのものではない。また別の宿命づけられた何か(・・・・・・・・・)が感じ取った直感だ。

 おそらく隠れているというもう一人の人物も、一筋縄ではいかないのだろう。

 ならば、変に意地を張らずに青年の言う質問とやらに答えてやった方がいいとバーサーカーは判断した。

 どうしても答えられない質問であるならば、たとえ殺し合いになったとしても答えるつもりは一切ないが。

 

 その意図を察したのかはわからないが、青年は軽く帽子を被りなおしながら言葉を続けた。

 

 

「この冬木市での誘拐事件について知っていること全てを話せ、洗いざらい全部だ。どうにも、こいつは普通の連続誘拐とは違って、奇妙な異変(・・・・・)と言うやつらしい」

 

「……それについて話すかどうかを決める前に、もう一つだけこっちから聞きたいことがある。いいか?」

 

「安心しな、『聖杯戦争』については知ってるぜ。俺の連れが聞きだしてきたんでな。俺達に隠す必要のあるものは一切ないと思ってくれて構わねえ」

 

「……オーケー、だったら話そう。別にこのことが他人に知られても僕には不利益にはならないからな」

 

「そいつはよかった……おいじじい(・・・)、出てきても問題ねえぜ」

 

 

 呼びかけられ、青年の背後の壁からまた一人男性が姿を見せた。

 しかし、『じじい』と言われたはずの男性だが、髭のせいで年を食っているようには見えるが、老人扱いするには十年は早い風貌で、体付きもなかなかに逞しい。

 もしも髭をそっていたなら40歳と言っても通じるほどに若々しいその男は、ちらりとバーサーカーの方を眺めると、青年に対して少しあきれたように自分の頭に手を置いた。

 

 

「ハァー……おまえなぁ、もう少し人に聞く態度っていうものを学んだほうがええんじゃあないか? あんな尋ね方をしたら、よっぽど親切な人間でない限り第一印象が最悪になってしまうじゃろうが」

 

「説教垂れる暇があるんだったらさっさとこいつに質問するんだな。どうにも、こいつにはこの後用事があるそうだぜ」

 

「まったく、数年経とうが子供ができようが、お前の性格は治らんようじゃな……」

 

 

 言っても聞かない様子の青年の様子に、男性は心底虚しさを覚えたようだ。

 この知らない内に人を威圧してしまう青年の態度は、どうにもならないらしい。

 そんな様子に、バーサーカーは子供ができたのに落ち着かないのはどうなんだろうかと疑問に思い、なんとも目の前にいるこの男に対して懐かしさを感じてしまう。

 召喚されてからこのかた、かつての自分の人生に現れるような人間には遭遇しなかったが、どことなくこの青年はバーサーカーの生きていた世界にいても違和感がないほどに、不思議なシンパシーを感じた。

 

 

「……質問に答えるのはいいけど、せめてお前らの身元ぐらいは教えてくれないか? 何も知らない人間に秘匿にすべき情報を教えるのは抵抗がある」

 

「むっ……それもそうだな。それでは自己紹介といくかのう。お前さんは何から聞きたい? 趣味か? ちなみにわしの趣味はコミック本集めじゃッ!」

 

「やれやれ……そのてめーのふざけた性格も治ってないようだぜ、じじい」

 

 

 バーサーカーの要望に軽いノリで返してくる男性に、仕返しと言わんばかりに青年があきれ果てる。

 おそらくではあるが、この男性とライダーを会わせたらものすごく意気投合しそうな気がするのはバーサーカーの気のせいではないだろう。

 この二人を足して二で割ったらちょうどよさそうな人格になるのではなかろうかとバーサーカーは途方にくれながら益体もないことを考える。

 

 

「ああ……うん……とりあえず名前だけでいいから聞かせてくれないか? もうこの場はそれだけでいいよ」

 

「なんじゃ、つれないのう」

 

 

 おそらくバーサーカーがこの男性のノリに合わせていたら色々手遅れになりそうだ。

 この二人組、互いが真逆の方向でバーサーカーにとってやりにくい人物だ。

 

 

「まあいいか、わしの名前はジョセフ・ジョースターじゃ。昔はジョジョと呼ばれとったわい」

 

「……俺の名は空条承太郎だ。協力してくれるのには感謝するぜ」

 

「…………嘘だろ?」

 

 

 あまりに聞き覚えのありすぎる名字を名乗られ、呆けてしまったバーサーカーは、かろうじてその一言を絞り出すので精いっぱいだった。




Q

何でこの二人が出てくるんだよ!?

A

さすがにあれだけの不可思議な連続誘拐とかがあったら、この二人は出しゃばってくると思います。
新手のスタンド使いがこの事件を起こしているのかと予想して、この二人はやってきました。



Q

この二人戦うの?

A

戦うかもしれません。今のところは、あんまり影響力の大きい戦闘に巻き込ませるつもりはありませんが。
一応、スタンドによる攻撃は異能の一種と私の小説では判断しますので、サーヴァント相手にもダメージは与えられるものとします。
公式の設定と矛盾があったならばすみません。


Q

タイトルのダジャレってどういうこと?

A

太陽=日

日の下に生まれる



星の白金、つまり空条承太郎と言う意味と

太陽=波紋のエネルギー

生まれながらに波紋が使える

ジョセフ・ジョースターの意味を組み合わせました。

後半の黄金は、ジョニィの代名詞である『黄金の回転』と、並行世界の存在であるジョナサン・ジョースターが起源となる『黄金の精神』と言う意味です。

次にお前は『オメー、こーゆーダジャレいうやつってよーっムショーにハラが立ってこねーか!』と言う!
……すみません出来心なんです。

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