火の手が弱まり始めるより先に、第一報は届いた。
ダンゾウは、一つきりの油皿が放つ淡い光の下で巻物に目を通した。煙の臭いが染みついている。使者が血に濡れた親指でつかんだ端には黒い染みが残っていたが、走り書きの文字はまだ読み取れた。
東部では今なお火の手が広がっている。病院はとうに収容限界を超え、安否の知れない者は数百人に上っていた。そして、四代目火影は死んだ。
部屋の石壁の向こうでは、根の者たちが無言で地下道を行き交っていた。交差路に仮面が現れては消え、次々と部隊が送り出されていく。それでも、走る者はいない。取り乱しているのは地上の者たちだけだった。苦痛の叫び、通りに飛び交う命令、自らの重みに耐えかねた建物の軋み。それらが通気口を伝い、途切れ途切れに降りてきた。
ダンゾウは巻物を伏せた。
波風ミナトが火影の座にあったのは、一年にも満たない。ヒルゼンが後継者に選んだ男は、才気にあふれ、人々に慕われ、この先何十年も木ノ葉の力となり得る若さがあった。その名は慰霊碑に刻まれることになり、現実より理想を選んだ代償をヒルゼンが引き継ぐことになる。
机を挟んだ向かいには、若い根の忍が膝をついていた。兎の仮面が顔を隠し、長い茶髪には灰が点々と降り積もっている。前腕に巻かれた応急処置の包帯は、染み出した血ですでに黒ずんでいて、制服も煤と埃にまみれている。
「封印には成功したようです」キュウナは抑揚のない声で言った。「生まれたばかりの赤子に」
「器は?」
「生存しています」
ダンゾウは片目を細めた。
「ミナトの息子か」
キュウナは一拍置いた。
「息子ではありません。娘です」
沈黙が部屋を満たした。うずまきクシナの妊娠について、ヒルゼンは意図的に情報を絞っていた。まさに今夜起きた事態を防ぐため、可能な限りの警戒を重ねていたのだ。
「報告では男児のはずだった」
「誰かが誤ったのでしょう」
ダンゾウは巻物を灯火のそばへ置いた。「ほかに誰が知っている?」
「出産に立ち会った者は全員死亡。三代目は知っています。封印後の子供を目撃した暗部が数名。ほかにも、事情に勘づく程度の情報を耳にした者がいる可能性があります」兎面の奥で、キュウナの視線がわずかに下がった。「たった一夜で、ここまで追い込まれるとは」
「尾獣の力を侮ってはならん」ダンゾウは静かに言った。灯火が、露出した片目の端に映った。
キュウナの隣に、もう一人の忍が膝をついていた。顔を覆う猪の仮面は、丸みを帯びた白い鼻先に二本の黒い線が入っている。地上の戦闘をくぐり抜けたキュウナとは違い、その制服にはほとんど汚れがなかった。
「次の火影に名乗りを上げるおつもりですか」シグレが尋ねた。
「そのつもりはない」声に滲んだ苦さに、ダンゾウ自身がわずかに驚いた。
名乗りを上げたところで意味はない。ヒルゼンはダンゾウを根深く疑っている。先の後継者選びでも、ダンゾウが推した候補を退けたほどだ。大蛇丸はヒルゼン自身の弟子だったにもかかわらず。まして今、ダンゾウ本人に里を託すはずがない。フガクも同じだ。これほどの事態の後で火影の座を求めるなら、正気を疑われるだけだろう。
いや。今の木ノ葉が何より必要としているのは、安定と結束だ。その両方をもたらせる男は一人しかいない。隠居暮らしをどれほど気に入っていようと、そのことはヒルゼンもダンゾウと同じように分かっている。
「ヒルゼンが火影の座に戻る」ダンゾウは立ち上がり、杖の柄を握る指にわずかに力を込めた。「だが、奴の甘さが里を危険にさらすことは許さん」
「我々に何をお命じになりますか」キュウナが尋ねた。その声は完全に平静だった。ダンゾウの教育は行き届いている。
「木ノ葉を守る。これまでと同じだ」
右半身に痛みが走った。過ぎた戦いを思い出させ、これから訪れる戦いを告げる古傷の痛みだった。ダンゾウはそれを無視し、壁に掲げられた地図へ歩み寄った。赤い印がいくつもの区画を横切り、九尾に蹂躙された地域を示している。
また、鈍い崩落音が天井越しに響いた。石の隙間から埃が落ち、地図の上に降り積もる。すでに存在しない道が、その下へ隠れていった。地上のどこかでは、救助隊が新たに崩れた建物を避けて、早くも経路を変更しているはずだ。
一夜にして、あまりにも多くが失われた。家は建て直せる。道も復旧できる。真に恐れるべきものは、その先にあった。敵は今も外にいる。木ノ葉を見張り、攻め込む機をうかがっている。ダンゾウは、その機会を決して与えない。
「第一に、これは事故ではない。何者かが封印をこじ開けた」ダンゾウは杖の先で地図の東部を叩き、木ノ葉を横断する印をなぞった。「九尾は解き放たれた途端、真っすぐ里へ向かい、最も被害の大きくなる経路を選んだ。九尾を操り得る一族は、木ノ葉に一つしかない」
「うちは」キュウナが言った。「それで、戦闘から外したのですか」
猪の仮面の下で、シグレが身を乗り出した。「ご命令どおり、うちはを監視しました。襲撃の最中、うちはの一人が持ち場を離れ、避難活動から離脱しました。追跡しましたが、煙が立ち込め、街路が崩れる中、身元を確かめる前に見失いました」
ダンゾウは地図からシグレへ振り返った。「調査に踏み切るには十分だ。うちはは常に、木ノ葉より一族を優先してきた。一人が関わっているなら、ほかの者たちも結束してそいつをかばう」ダンゾウは杖を地図から離した。「下手人が明らかになるまで、全員を監視下に置く。これにはヒルゼンも譲歩せざるを得まい。証拠を見つけろ」
「了解しました」
「第二に、娘をここへ連れてこい」
「根へ入れるおつもりですか」キュウナの声に、かすかな驚きが混じった。根でさえ、生まれたばかりの赤子に目を付けることはめったにない。
「母親を里のために使えるようにするまで、何年もかかった」ダンゾウの口元が固く結ばれた。「この娘に、それだけの時間を浪費する余裕はない」
「三代目が反対するかもしれません」シグレが言った。
「反対する」ダンゾウは机へ戻り、片手を縁についた。「だが、この判断が理にかなうと理解させればよい」
二人の忍は何も答えなかった。
夜が明ければ、木ノ葉は死者の数を突きつけられる。家族は病院や避難所を捜し回る。忍たちは瓦礫の下から仲間の亡骸を見つける。ヒルゼンは哀悼と結束、そして火の意志を語るだろう。
それも必要なことではある。だが、それで迫り来るものを止められるわけではない。
「第三に、国境の哨所すべてに斥候を送れ」ダンゾウは命じた。「他国の者にはすべて見張りを付けろ。国境付近に不審な動きがあれば、すべて報告させる」杖の柄を指で一度叩いた。「根の目を逃れて、この里を出入りする者があってはならん」
シグレは頭を下げた。「直ちに」
シグレは一瞬で姿を消した。
キュウナは膝をついたまま残った。数秒の間、油皿の灯がかすかに爆ぜる音だけが、部屋の静寂を乱した。
「戦争に備えるべきでしょうか」
「当然だ。今日や明日に始まるとは限らん。来年も始まらんかもしれん。だが、常に備えておかねばならん。弱さは争いを招く。遅かれ早かれ、木ノ葉がどこまで弱ったか試そうとする者が現れる」
地上に残った最後の火の手がなお燃え続ける中、ダンゾウは地図の前に立っていた。朝になれば、ヒルゼンはダンゾウが長年焦がれ続けた火影の笠を再びかぶる。その不本意な事態に手を打つ時間は、後でいくらでもある。今の木ノ葉には、これまで以上に強い根が必要だった。キュウナは立ち上がり、退出しようとした。
「もう一つ」キュウナが一歩も踏み出さないうちに、ダンゾウが呼び止めた。
「はい、ダンゾウ様」
ダンゾウは振り返り、彼女を見た。
「娘の名は?」
「うずまきツユです」