追加戦士だと思われている銀騎士くん   作:シラヌイ321

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第3話 変身できない日のヒーロー

痛いところを動かさなければ、痛くない。

 そんな立派な発見をしたところで、人間の身体は一か所だけ都合よく休ませてくれなかった。

 

「肩を上げないで。ここまでで大丈夫です」

 

 療法士の指が、俺の右肘の少し下を支える。

 ゆっくり動く腕に、頭の中だけが先回りした。

 このくらいなら、もう少し。

 

「今、『これくらいなら、もう少しいけそうだ』って思いましたね?」

「……顔に出てました?」

「肩に出ています」

 

 そっちか。

 余計なことを考えると、身体の方から告げ口されるらしい。

 

 オメガとの戦いから二週間が経っていた。

 胸の痛みは、最初の頃よりずっと薄い。ベッドから起きる時に人を呼ばなくてもよくなり、短い距離なら自分の足で歩ける。

 右肩だけは、まだ俺の予定に付き合ってくれなかった。

 着替える時には右袖から通す。先に左を着ると、あとから右腕の逃げ道がなくなる。

 階段では手すりを左で持ち、急ぐ人に道を譲る。足には三階まで駆け上がる力が残っていても、上半身を揺らすだけで痛む。

 動かす範囲を決められ、負荷をかけるなと言われ、調子がいい日にこそ欲張るなと念を押される。

 毎日、少しずつだ。

 変身して装甲を着れば、この腕だって持ち上がるのかもしれない。

 そんな考えが浮かぶたびに、固定の跡が残る肌を見る。

 動かしてもらうのと、治るのは違う。

 父さんの声が、頭の中できっちり言った。

 

 療法士に礼を言って、休憩用の椅子へ座った。

 壁際で待っていたブルーが、卓上の台に端末を立てる。

 

「先輩、自分の映像って見たことある?」

「ない。戦って、帰って、寝るので精いっぱいだったから」

「二年近く、ずっと?」

「うん。何かまずい映り方してた?」

 

 ブルーは少し考え、俺の右腕ではなく顔を見た。

 

「まずは、座ったまま見て」

「今、座ってるけど」

 

 画面には、黒騎士が映っていた。

 オメガ戦ではない。まだ三人が現れる前、俺も別の地区を走っていた頃の配信の記録だ。黒い拳が迫る敵を押し返し、巨体が画面の外へ消える。

 その下を、当時のコメントが流れた。

 

『あっ』

『来ちゃった』

『怪人逃げてえええええ』

『おい今一歩下がったぞwww』

『さっきまでの威勢はどうしたwww』

 

「言い方……いや、分かるけど!」

 

 息が漏れた。口元を押さえても、次の行でまた笑ってしまう。

 あの黒い拳が頼もしいのは分かるけど、怪人の心配までしなくてもいいだろう。

 

「肩、動かさないでね」

「分かってる。あいつにこれ、見せたらどんな顔するんだろ」

 

 顔を知らないので想像できない。それもおかしかった。

 ブルーが、三人が現れてからの別の日の配信へ切り替えた。

 今度は、三人についての書き込みが並んでいた。

 

『レッド、今日もチミドロブラッドだったな』

『正義の味方の呼び名だぞ、それ』

 

「いや、レッドにその名前は……」

 

 ひどいだろ、と言いかけて止まった。

 前に一緒に戦った時、俺が避難路を確かめて戻ると、レッドの剣が怪人を押し込んでいた。装甲に跳ねた返り血も気にせず一歩。相手が下がれば、もう一歩。

 さっきまで威張っていた怪人の方が、間合いを取りたがっていた。

 

「何か思い出した顔」

「……助かったなって」

「否定は?」

「本人には、俺が黙ったところまで言わないで」

 

 頼もしいのは本当だ。だからこそ、呼び名を笑うだけで済ませられない。

 自分だけは関係ない顔で画面を眺めていられたのも、そこまでだった。

 

◀ 銀騎士・救助と戦闘の記録 ▶
銀騎士 名場面集
二体を撃破。銀の剣先が、静かに下がる。
この銀の装甲、ギャバンみたいで好き
避難する人の方へ一発も通してない
「剣を下げてるの、余裕ありすぎ」
この背中を見たら安心する
勝 利 確 定
Ⅱ 音量 ▰▰ 00:18 / 02:46

 

 映ったのは、銀色の俺だった。

 映像の俺は、敵の突きを剣の根元で外へ逃がし、その腕を戻させずに胸を斬り抜いていた。さらに足元へ伸びた尾を踵で止め、振り返りざまの一太刀で二体目を倒す。

 そこで初めて剣先を下げ、崩れた壁の奥へ顔を向けた。逃げ遅れがいないか、確かめていたのだ。

 覚えている。別の通りでも戦ったあとだった。安全を確認してから、建物の角まで行って座った。

 

「……これ、息が上がって、剣を持ち上げてられなかった時だ」

「余裕、なかった」

「座りたい、とは思ってた。あそこまで終われば座れるって」

 

 さらに別の日。銀の仮面がゆっくり横を向く。

 

『振り返らず次の敵を待つの、強者の貫禄』

 

「違う。帰る方向が分からなくなって、案内板を探してる」

「待っていたのは道案内」

「俺の必死な二年が、すごく落ち着いた人の記録になってる」

 

 さっきまで笑っていた口が、閉じた。

 動画の題名には銀騎士名場面集とある。一本ではない。続きが何本もあり、再生数の桁を数え直すうちに、ブルーが古い掲示板の記録を開いた。

 

『黒の拳派』

『銀の装甲と電子音派。武器換える音まで入れてくれ』

『ライダー派とメタルヒーロー派、今日も平行線』

 

「派閥あるの!?」

 

 少し大きな声が出た。療法士に目を向けて、すみません、と小声で謝る。

 日付は、三人と初めて会うよりずっと前だった。

 俺たちは別々の場所で必死に戦っていたのに、知らないところで対決までしていたらしい。

 

「こっちは最近のまとめ。私たちが出てきてから」

 

『黒騎士は別枠。銀騎士は正規追加戦士』

『並んだ時の収まりがよすぎる』

『三人より先にいたのに追加とは』

『先行実装』

 

「俺、いつ入隊した?」

「してない」

「正規って書いてある」

「掲示板に人事権はない。あったら怖い」

 

 治療と整備だけでは入隊にならないと、この前ちゃんと確かめた。

 その間に、画面の俺だけ採用されていた。

 

「黒騎士のこと、笑ってる場合じゃなかった……」

 

 端末の銀騎士は、俺の都合など知らず、堂々と剣を下ろしていた。

 その下には、助けてもらった、ありがとう、という短い言葉もあった。

 そこだけは、読み飛ばせなかった。

 嬉しい。でも、嬉しいのと、ずっと余裕だったことにされるのは別だ。

 

 ブルーは、動画の下から三人の投稿を開いた。

 公開されているのは、戦っている俺への言葉ばかりだ。顔も、名前も、今どこで何をしているかも書かれていない。

 

RED
 レッド@戦隊ヒーロー
@AKARED_JCAKR ・ 少し前
銀騎士さんの映像を見返してた! 私たちと会う前から、こんなにたくさんの人を助けてたんだね。今度、直接ありがとうって言おう。
#銀騎士 #いつもありがとう
返信 128 共有 2,406 ♡ 18,752

YELLOW
 イエロー@戦隊ヒーロー
@Huthu_JCYE ・ 少し前
返信先:レッド@戦隊ヒーロー
あの人、助けたあとにちゃんと顔見てくれるんよな。「もう大丈夫」って言われると、ほんまに大丈夫な気がする。……並んだ写真、銀だけ貫禄ありすぎへん?
#銀騎士
返信 76 共有 1,382 ♡ 12,904

BLUE
 ブルー@戦隊ヒーロー
@Rikei_JCBE ・ 少し前
返信先:レッド@戦隊ヒーロー
銀騎士さんは私たちより先に活動していたので、「追加戦士」は正式な所属名ではありません。先行実装の助っ人です。強い。
#銀騎士 #説明になっていない
返信 193 共有 3,618 ♡ 21,530

 

「最後の説明で、また所属が増えてない?」

「助っ人は所属じゃない。便利な言葉」

「便利に使ってる側が言うんだ、それ」

 

 指を止め、もう一度、最初の投稿へ戻してもらった。

 ありがとう、と書いたのはレッドだ。いつも誰かを助けているあの三人に、俺の方がそう言われている。

 画面越しなのに、どんな顔で返せばいいのか分からなくなった。

 

「これ、全部は見きれないな」

「見きらなくていいよ。休む時間だから」

 

 俺は頷いた。書き込むこともせず、画面を閉じてもらう。

 銀騎士の中の人として訂正を始めたら、余計に休めなくなる。

 知らないところにいた、やけに格好いい俺。その正体を知っているのは、今のところ、この部屋の俺たちだけで十分だった。

 

 そこへ、レッドが覗きに来た。

 

「終わった? 今日、社長が見てもらいたいものがあるって」

「新しい検査?」

「装置の方。先輩は座って見るだけでいいって、三回言ってた」

「前にも三回、注意されたことあるな」

「今回は私も聞いたから、忘れたことにはできないよ」

 

 笑ってから、レッドは俺の歩幅に合わせた。

 廊下を早く歩かせないように、というより、早く歩く必要がないように。

 こういう気の遣い方をされると、礼を言うタイミングを逃す。

 

「……ありがと」

「ん?」

「なんでもない。あとで説明する」

「それ、気になるんだけど」

 

 結局、隣を歩いてくれていることだと説明した。

 今さら、なんでもないとごまかすのは無理だった。

 

     *

 

 作業室の画面には、銀色の俺が映っていた。

 今の俺より、ずっと元気だ。

 赤い線が入った肩を振り、長い剣を引いている。

 以前、商店街で戦った時の映像だった。店の防犯カメラと、道の向こうから撮られた動画が、同じ時刻に揃えてある。

 

「映像と、装置内の動作記録を合わせた。身体を使った試験ではない。今日は仕組みを知ってもらう」

 

 持参したプロトジャスティスチェンジャーを、点検のために机へ置いてもらった。

 外縁の大きな傷は浅くなっている。それでも完全には消えていなかった。内部に影響しない部分は、削りすぎず残したのだという。

 

「ありがとうございます」

「礼は、話を聞いてからでも遅くない」

 

 レイマが椅子を引いた。

 俺が座ってから、画面を動かす。

 

 映像の俺は、左手首へ右手を伸ばした。

 ダイヤルを回す。中央を押す。

 赤い線が消え、青い光が胸を走る。

 

『TYPE CHANGE!』

『SCOPE!』

 

 録音の電子音が、小さく部屋へ流れた。

 右手にあった長剣が光の粒へほどけ、代わりに銃の輪郭が組み上がる。

 何度もやってきた動きだ。

 その途中で、映像が止まった。

 

「ここだ」

 

 俺は身を乗り出しかけ、右肩をかばって戻った。

 銀の前腕に、細い隙間が見える。

 いつもの可動部とは違う。装甲が開いて、次の形に噛み合う直前の状態だった。

 

「武器だけではない。出力の振り分けも、装甲の配置も変わっている。切り替えは一瞬に見えても、完全に繋がったままではない」

「どのくらいですか」

「今の構成では、およそ一秒」

 

 一秒。

 短い、と思った。

 次に、あの車の陰で膨らんだ光を思い出した。

 短いかどうかなんて、誰が何をしている一秒かによる。

 

「武器が消える時間は、相手の踏み込み一歩分で見てました。装甲のどこまで開くか、そこを知りたいです」

 

 俺は画面の肘と肩を指した。

 次の映像では、敵の腕を払い上げてから切り替えている。別の映像では、相手を角の向こうへ蹴り戻してから。武器が使えなくなる間に攻撃されないよう、敵が体勢を立て直している隙に切り替える。

 ずっとそうしてきた。ただし、中身の仕組みまで見えていたわけではない。

 

「主に肩の外縁と前腕だ。君が間を作ってきたことは記録にも出ている。問題は、その間へ飛び込める相手だ」

「この破片、剣で防げないだけじゃなくて、装甲の継ぎ目まで通ってる」

 

 ブルーが、商店の庇から破片が飛んだ場面を止めた。

 敵の腕は届いていない。だが、肩板の閉じる直前に破片が挟まっていた。

 

「なるほど。相手を止めるだけじゃなく、周りから飛ぶものも遮る必要があるのか」

「こっちの援護を入れるなら、その肩側だね」

「頼む。俺が前なら、そっちの死角を潰す」

 

 実戦で一秒ほどだと感じていた間隔が、図面でも確かめられた。

 経験がなくなったわけではない。知らなかった穴を、今なら埋められる。

 

 オメガ戦の映像も、短く確かめた。

 紫へ切り替え、跳び出している。

 肩に被弾した時には、切り替え自体は終わっていた。

 それを見て、ほっとした自分が情けなかった。

 原因が一つ見つかれば、そこを直せば済む気がしていたのだ。

 

「あの負傷を、切り替えの隙だけで説明することはできない。紫の構成は軽く、速い。その分、正面から受け止めることには向いていない」

 

 止まった画面の銀色が、こちらを向いていた。

 右腕を伸ばし、黒い背中との間へ入ろうとしている。

 

「速く行かなきゃ、間に合わないと思ったんです」

「そう判断したことと、そこからどう受けるかは、別に考えなくてはならない」

 

 静かな声だった。

 俺は膝の上の左手を開いた。

 あの時、黒騎士が本当に間に合わなかったのかは分からない。

 俺には、間に合わないように見えた。

 だから動いた。

 そこまでは、今でも間違いだったと言い切れない。

 けれど、同じことを同じやり方で繰り返していいとは思わなかった。

 

「受け流す角度まで足りなかった。次は、進入する線から変えます」

「うん。戻ってくるところまでね」

 

 レッドが、画面から俺へ目を移した。

 俺は頷いた。

 

     *

 

 レイマは、三つの小さな模型を並べた。

 赤い剣。青い銃。紫の短い刃。

 ひとつの武器の、三つの姿だという。

 

「同時に全部を握ることはできない。型を変えて使う。映画のように剣を地面へ置いて銃を取り出すと、置いた剣の方が消えるので気をつけたまえ」

「最初の頃、やったことあります」

 

 レイマの指が止まった。

 

「足場にしようとして」

「えっ、乗った?」

「乗る前に消えた」

「未遂でよかった」

 

 あの時の俺は、とても賢いことを思いついた気でいた。

 乗っていたら、足場を自分で消して転ぶところだったらしい。

 

 赤は、エッジ。

 長いエッジブレードを振るために、腕と胴を支える。殴られて平気になるわけではないが、踏ん張って刃を通す時には頼もしい。

 青は、スコープ。

 スコープライフルで遠くを狙う。ただし、見えないものが見えるようになるわけではない。照準を追い続けると頭が重くなるのも、気のせいではなかった。

 

「高出力は続けて三発まで。その後は、最低でも二十秒の冷却が必要だ。熱が逃げない場所では、もっと待つ」

「三発撃つ前に止めれば?」

「余裕は残る。ただし、前の戦闘で何をしたかにもよる。弾数だけ数えて熱を忘れないように」

 

 紫は、シフト。

 足を押し出す速さは頼りになる。でも、止まる地面も曲がる距離も必要だ。

 強く加速できるのは最大八秒。

 その先で無理をすれば、膝と平衡感覚が先に悲鳴を上げる。

 

「最初に八秒近く使った時、足元がふらついたんです。それからは六秒で切り上げてました。さっきの上限の話、あれだったんですね」

「その記録も渡してほしい。今の身体に合わせた安全域を測り直そう」

「説明を受ける相手が、道端で倒れそうになってたので」

 

 沈黙。

 

「今のは、先輩の勝ちかな」

「勝ち負けの問題ではない! 今、説明している!」

 

 その通りなので、俺は素直に続きを聞いた。

 身体で覚えた限界を、数字と照らし合わせる。

 二年使ってきた俺の記録と、作った人の知識が、ようやく同じ机に揃った。

 

     *

 

 最後に、装置を左手首へ戻してもらった。

 右手が使いづらいので、今度も留め具はレイマに頼んだ。

 中央が短く明るくなる。

 手首に、熱というほどではない温かさが戻った。

 

「ただいま、でいいのかな」

「戻ったのは、そっちだけど」

「おかえりか。そうだな」

 

 言い直すと、レッドが小さく笑った。

 

 変身の動作はしない。

 俺は左腕を膝へ置き、固定の外れた時間だけ動かせる右肘を、身体のそばに寄せた。中央へ指を伸ばす代わりに、少し手前で止める。

 押すだけなら簡単だと思っていた。

 今は、そこまでの姿勢にも意味がある。

 指を伸ばすために肩を捻らない。手首の方を低く近づける。痛いなら、やめる。

 

「実際に操作するのは許可が出てからだ」

「分かってます。今日は、届く場所を見るだけ」

 

 レイマが頷く。

 

 そのあと、避難路の図面を見せてもらった。

 商店街の裏に、狭い段差がある。現場へ走っていた頃は何でもなかったけれど、今の俺ならそこで足を止める。

 車椅子なら、もっと困る。

 

「こっちの通路、迂回した方がいいです。荷物が積まれてる時もあるので」

 

 係の人が印をつけ、現地確認の欄へ書き込んだ。

 続いて、本部の地図と俺が現場で使う呼び方を照合する。同じ裏口でも、車が通れる側と人だけが抜けられる側がある。俺が二つを分けて伝えると、係の人は地図の記号を変えた。

 変身していない俺の声で、誰かが迷わず動ける。

 それを確かめる仕事なら、今日もできた。

 

 帰り際、レッドが作業室の扉を押さえた。

 

「一秒、どうする?」

 

 俺は廊下の先を見た。

 開いたままの扉。

 曲がり角。

 人が立っていたら、向こうからは見えない場所。

 

「今まで通り、先に相手を崩す。飛んでくる破片もあるなら、壁の位置まで使う」

「誰かに守ってもらうのも、ありだと思うよ」

 

「なら、合図を決めよう。俺が敵の腕を押さえてる間に、そっちが斬り込む時も使える」

「いいね。そこまで開けてくれるなら、私も思いきり行ける」

 

 レッドが、空いた手で短く剣を振る真似をした。もう、斬り込む場所を決めているような顔だった。

 

 一人で切り抜ける方法は持っている。

 並んで戦えば、一人では作れない攻撃する隙も作れる。その相談だった。

 

 廊下へ出たところで、胸の傷がわずかに引きつった。

 歩幅を小さくする。

 レッドも同じだけ遅くなった。

 

 今も、もう頼っていた。

 気づくのに、一秒どころではなかったけれど。

 

 その日の夕方、現場の回収記録が追加された。

 職員の人が、部材の数が合わないと言っていた。

 端末で映像を確認していたレイマが、一度だけ再生を止めた。

 瓦礫の下に、細い腕のようなものが映っている。人の腕にしては、関節の位置がおかしかった。

 

「……回収用の機材か?」

 

 画面を進めると、粉塵の向こうへ消えた。

 その時はまだ、それが何かを見ていたことまでは、誰にも分からなかった。

 




今日も読んでくださり、ありがとうございます。
浮かんだことがあれば、まとまった文章でなくても気軽にどうぞ。
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