ソードアート・オンライン~死神の背を追う蒼炎~ 作:畜生ペンギン
「っ・・・・・・どこだ・・・・・・ここ・・・・・・?」
あの後、俺が転移されたのは見たこともない謎のエリアだった。
周囲を見渡せば、木々が生い茂る樹海のようだ。
辺りを見渡していると、何者かがこちらに近づいてきていた。
「お、おいアンタ!?前見ろよ!!」
俺の声にようやく気づいたのか、目の前の人物が方向転換しようとしたが、俺との衝突は避けられず、勢いよくぶつかった。
その衝撃でソイツが被っていたフードが捲れ、オレンジ髪のショートヘアをした女の子が姿を現した。
安心したのも束の間、少女は俺を見るなり攻撃してきた。
「なにっ!?」
かなりの瞬発力で短剣を振るうその動きは、並大抵のプレイヤーじゃない。
そう思った俺は、背中に背負う片手剣"イージス"を抜き、彼女の攻撃を防いだ。
「やめろ!俺は敵じゃない!」
「黙れ!」
彼女の攻撃を防ぎながら一度距離を取り、改めてその姿を見る。
彼女を示すマーカーはオレンジ。
つまりは、犯罪者だった。
「オレンジ!?なら話は別だ!!!!」
彼女を殺す気で斬りかかるが、その一太刀はいとも簡単に止められた。
この鍔迫り合いで一歩でも引いてみろ。
俺は殺られる。
そんなのごめんだ。
俺は死神のようには・・・・・・
「英雄と同じ末路は御免だ!」
「英雄・・・!?何言ってんのよこの・・・!」
その時だった。
俺と彼女のすぐ傍で強い衝撃が走り、土埃が舞い上がった。
それが収まった先にいたのは、デカイ骸骨の敵だった。
それを見た瞬間、先程まで軽快に動けていた俺の足は地面に縫い付けられたように動かなくなり、それと同時に身体の震えが止まらなくなった。
「な・・・なんだよあいつは・・・」
「アイツから逃げてたのよ。アンタのせいで・・・」
少女は悪態をつくが、俺だってこんなところで死ぬわけにはいかない。
そう思い、彼女に呼びかけた。
「なぁ君、一時休戦だ。まず、あのデカイのをやる。」
「はぁ?」
「死にたくないのは、この世界じゃ誰だって一緒だろ!」
「・・・・・・別に・・・・・・」
「何言ってんだよ!?ほら、やるぞ!!!」
改めて敵を見ると、名はスカルリーパーと表記されている。
強そうな敵だが、ここでビビってちゃあの人に笑われちまう。
「よし!行くぞイージス!」
~~~~~~~~~~
少年と少女が、突如現れた本来75層のボスであるスカルリーパーと戦っている頃、76層では様々な異変が起きていた。
「な、なんじゃこりゃ!?お、おいキリト!?」
「あぁ・・・スキルが何個かロストしてるな・・・」
プレイヤー達の間で起きていた、スキルのロスト現象。
更に、死神の死を確認しに行こうとした際には、下の層へ移動できないことも発覚していた。
「転移!リンダース!」
リズベットが何度試してみても、転移することは出来ず、76層に留まったまま。
──更に。
「なんだ?文字化けしたアイテムが光ってるぞ?」
76層到達と同時に、アイテム欄にもバグが生じていた。
その中でも一際輝く、文字化けしたアイテムを取り出す。
すると、現れたのは──
「ふぅ・・・やっと出られました!お久しぶりですパパ!ママ!」
「ゆ、ユイ!?」
「ユイちゃん!?な、なんで!?」
2人にとっての愛娘、ユイ。
彼女との再会も、その異変の1つだった。
──そして。
「・・・・・・クソ!!!!!!!」
ショウは76層付近の森で、今日も1人荒れていた。
親友の死を、一日や二日で忘れろという方が無理な話だ。
だが、これ以上皆に自分の怒りを押し付けるのは良くないことだと、彼自身も分かっていた。
だからこそ森の中で1人、消失したスキルの分も鍛え直そうとしていたのだが、そこで2人の少女に出会う。
1人は、黄色い髪をポニーテールで纏めた可憐な少女。
もう1人は淡い緑髪のショートヘアで、ショウにとってはどこか見覚えのある顔付き。
2人は妖精のような見た目をしており、淡い緑髪の少女がショウを見つけると、一目散に駆け寄ってきた。
「あ、あの!もしかしてだけど・・・翔・・・君?」
「あ?それがなんだ・・・」
「やっぱり!!私よ私!!えと、
「っ!?な、渚さんが・・・なんでSAOに!?」
そう、テツヤの実の姉、渚と出会ったのだ。
「良かった、知り合いに出会えて!ねぇ翔君、哲也は?」
「っ・・・・・・あいつ・・・・・・は・・・・・・・・・」
渚に、本当のことを語れないショウ。
──街中でも、不審なことが起きていた。
ある2人の少女が突如空から落下してきて、アスナとキリトが2人を保護したのだ。
1人は、先程の渚達と同じく妖精のような姿をしているが、紫色の装備が特徴的な黒髪ショートのプレイヤー、レイ。
もう1人は、渚やレイとは違い、剣士というよりガンナーや狙撃手のような防具を身につけたプレイヤー、シノン。
突如76層に、原因不明の介入者が4名現れたのだ。
そして、勿論・・・・・・
『あ、あのユウキ、これだけは聞いて欲しいんだ。恐らくアイテム欄が文字化けしてるだろうから、それを開いて欲しい。きっと今の君の助けになるはずだから。』
そう言って、キリトはユウキのいる部屋の前から去っていった。
ユウキは何かと思いながらアイテム欄を開く。
確かに文字化けしていたが、その中に一際輝くアイテムがあった。
それに手を触れてみると、目の前に現れたのは──
「やっほーお母さん!元気だった?」
「っ・・・ユキ・・・!?」
そう、ユウキと死神の愛娘、ユキの姿だった。
「あれ、お父さんは?もしかして愛想つかれちゃったり~?」
ユキはからかうようにそう言った。
そんなことはありえない。
それを誰より分かっていたユウキは、彼女を泣きながら強く、強く抱きしめた。
「わわっ!?え、も、もしかして本当!?ちょっとどういうこと!?お父さんに言いつけて・・・」
「・・・・・・ユキ・・・・・・テツヤが・・・・・・テツヤがぁ・・・・・・!」
「・・・・・・どうしたのお母さん、何があったの?」
76層にいる者達も、それぞれが悩みを抱えていた。
~~~~~~~~~~
「あんた!スイッチ!」
「俺はアンタじゃねぇ!!!」
先程の少年と少女は、スカルリーパー相手にかろうじて応戦できていた。
だが、少年がアイテムを使おうとした際、ほぼ全てのアイテムが文字化けしていることが発覚。
アイテムに頼った立て直しは望めなかった。
2人は上手く連携を組み、なんとか応戦しているといったところ。
これ以上もつれ込んだ時のことは考えたくない。
刹那、敵を襲うように謎の閃光が放たれた。
見たこともないその一撃は、スカルリーパーのHPを一気に削った。
「な、なんだか分からないけど!」
少年は生まれた隙を逃さず、ソニック・リープを叩き込む。
その一撃で、無事スカルリーパーの撃破に成功した。
「ふぅ・・・無事生き残れた・・・」
「今のあんたの仕業?」
「そういう君の方じゃないのか?」
「私は短剣よ?あんな攻撃出来るわけないじゃない。」
「まぁ良いか、とりあえず倒せたんだし。んで?次は君とか?」
少年は改めてイージスを構え、少女もそれに応えるように短剣を構えた。
だが、少年の方が先に武器を下ろした。
「やめだ。多分、死神ならこんなことしない。」
「死神?あの攻略組の?」
「あぁ、俺の憧れで・・・・・・目標だった。」
「じゃあアイツらの仲間では無さそうね・・・」
「アイツら?誰だ?」
「・・・・・・ねぇ、見えてるのなら分かるでしょう?私がどんなやつか。」
「オレンジプレイヤー。犯罪者だろ?」
この世界では一般的に、プレイヤーカーソルは緑。
だが、罪を犯せばオレンジになる。
即ち、彼女は何らかの罪を犯した証となっている。
「そのオレンジになんで話しかけるの?」
「え?いや・・・・・・なんとなく?理由は無いけどさ、俺さっきも言ったけど死神に憧れてたんだ。俺も攻略組の端くれだから、どんな人なのかはなんとなく分かってはいる。死神なら、例え相手がオレンジであろうと見た目では判断しないって。」
「何それ、あんた自分ってもの、持ってないの?」
「う、うるせぇな。憧れてる人がやってることをやってたら、自ずと近づくと思ってやってんだよ。んで?何やらかしたんだ君は。」
「ったく・・・・・・良いわよ。死神様に憧れてるガキに言ってやるわ。私は人を"殺した"のよ。」
「なっ!?こ、殺し!?」
「死神なら、きっと私なんて直ぐ殺すのでしょうね。ほら、あんたもやればいいじゃない。そう簡単にはやらせないけど。」
少年の言う通り、確かに彼にとって死神は、この世界においての全てだった。
だけど、死神ならそうすると思っていても、目の前にいる少女を追い詰めることはしなかった。
「いや、それはやめよう。短い時間とはいえ、共に戦った仲間だ。」
「随分ご都合的なのね。あんたの憧れってのは。」
「つうか!さっきからアンタアンタって、俺には名前があるんだ!まず君の名前を聞かせろ、このオレンジ女!」
「失礼ね!私には"フィリア"って名前があるのよ、この赤髪男!」
「誰が赤髪だ!」
そう言うと、少年はイージスを手にしたまま親指で自分を指し、フィリアという少女に向けて告げた。
「俺の名は"シン"!いつか死神を超える男だ!!!」
少年・・・・・・いや、シンは真っ直ぐな瞳でフィリアを睨みつけながら、高らかに宣言していた。
謎の世界で偶然遭遇したオレンジ髪の少女フィリアと赤髪の少年、シン。
はたして、二人に待ち構える運命とは。
次回以降の投稿スケジュールとしては
第3話~第7話までは3日毎の更新。
(7話まではプロローグのような内容なので、投稿頻度を早めます。)
7話更新後、キャラクター紹介を投稿。
8話以降は話の流れで投稿頻度を変えるといった予定になっております。
なので第3話は10/26の投稿予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。