ソードアート・オンライン~死神の背を追う蒼炎~ 作:畜生ペンギン
それではどうぞ!
「シン・・・しょうがないからそう呼んであげるわよ。」
「ったく、よろしくなフィリアちゃん!」
「よろしくね、この死神追っかけシン!」
2人の出会いは最悪なものだった。
だが、ここがどこなのか分からない以上、これ以上言い合っていても仕方がない。
そう判断したシンは、フィリアに問いかけた。
「なぁフィリア、ここは一体どこなんだ?」
「・・・・・・分からないわ。私も1ヶ月前にここに飛ばされて来たの。」
「1ヶ月!?そ、その間どうしてたんだ!?」
「生きるのに精一杯で探索出来てないのよ。だから、詳細なマップとかは一切分からない。」
「まぁそうだよな・・・生き残らなきゃ始まんないし・・・あ、でも転移結晶なら・・・・・・ってそうじゃん、アイテムバグってんじゃねぇか・・・・・・」
「使えない男ねアンタ。死神なら、こういう時颯爽と助けてくれるんじゃないの?」
「う、うるせぇな!俺は死神じゃねぇし、ただのしがない攻略組だ!」
フィリアとの言い合いの最中、とあるアナウンスが2人の耳に入った。
『"ホロウ・エリア"データ、アクセス制限解除。』
「な、なんだ?ホロウ・エリア?」
「シン、貴方の手に浮かんでるの、何?」
「俺の?」
フィリアに言われて自身の手を見ると、そこには見たこともない模様が浮かんでいた。
「な、なんだこれ!?アクセス制限ってやつと関係あるのか!?」
「シン・・・アンタ一体何者よ。ただの死神追いかけてるウザったいファンって訳じゃ無さそうね。シン、その手の模様と同じ物がある場所を知ってるの。付いてきて。」
「え?」
「何よ、人殺しは信用出来ないって言いたい訳?」
「そんなんじゃない。でも良いのか?」
「アンタの真っ直ぐすぎる馬鹿みたいな目にやられたことにするわ。行くわよ、シン。」
「了解。道案内頼むぞ。」
こうしてシンとフィリアは、未知の世界《ホロウ・エリア》を探索することとなった。
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「ね、ねぇショウ君、一体どうしたの?わざわざ2人で話したいなんて。」
76層、アークソフィア。
エギルのカフェに併設された宿屋に、ショウと渚・・・いや、リナがいた。
リナとは渚のプレイヤーネーム。
彼女はあることがきっかけでSAOに無理やりログインしたらしく、ショウからキリト達への紹介は既に済んでいた。
だが、肝心の本題をショウは未だに切り出せずにいた。
「あの・・・リナ・・・いや、渚さん・・・テツヤの話・・・聞きたいですか・・・?」
「当然よ!アイツ一発ぶん殴るためにログインしたんだから!それで、テツヤは?」
「・・・・・・結論から言います・・・・・・あいつは・・・・・・」
そう言いながらも、なかなかその先を口に出来ないショウ。
リナは、これまでショウがこんな姿を見せるところを見たことがなかった。
不思議そうに見つめる彼女を前に、ショウは遂に重い口を開いた。
「・・・・・・"死にました"・・・・・・」
「・・・・・・え・・・・・・?」
リナの手から、水の入ったグラスが落ちる。
ガラスの砕ける音だけが、部屋の中に響いていた。
「経緯は・・・・・・75層でラスボスと戦って・・・・・・謎の異空間にアイツが吸い込まれそうになって・・・・・・ユウキ・・・・・・テツヤの彼女がそれを止めようとしたんです・・・・・・でもアイツ、自分で彼女が掴む左腕を切り落として、それに吸い込まれて・・・・・・」
「ちょ、ちょっと待ってよショウ君・・・・・・わ、私に嘘つこうとしてない?て、テツヤのやつも見ないうちに成長したわねぇ~。まさかこんな大それた嘘を・・・・・・」
「嘘じゃないんです・・・・・・渚さん・・・・・・」
「・・・・・・怒るわよ・・・・・・幾ら君でも・・・・・・!」
「俺がこんな嘘つく奴ですか!?テツヤは死んだんです・・・・・・それを仲間にも確認してもらいました・・・・・・テツヤはもう・・・・・・!!!!!」
「・・・・・・う・・・・・・うそじゃ・・・・・・ないの・・・・・・?」
「・・・・・・正直、俺達は仲間からの報告だけです・・・・・・でも、あいつにとって俺以外の親友とも言える女の子が、泣きながらそれを報告してきたんですよ・・・・・・あんな嗚咽混じりの声で泣いたリズ・・・・・・見たことがない・・・・・・俺はそれで確信したんです・・・・・・テツヤがガチで死んじまったんだって・・・・・・!」
ショウが悔しそうに拳を握り、顔を顰める。
その姿を見たリナは、まるで糸を切られた人形のように、その場へ崩れ落ちた。
「な、渚さん!」
ショウが急いで駆け寄る。
彼女の瞳から、一粒の涙が零れていた。
「・・・・・・私・・・・・・謝りたかったの・・・・・・テツヤがログイン前にした大喧嘩の件・・・・・・それに・・・・・・あ・・・・・・会いたかった・・・・・・テツヤに・・・・・・会いたかったの・・・・・・!!!!」
ショウは中学時代、死神と渚が仲良くしているところを見たことがなかった。
そのため、てっきり渚は死神を嫌っているのだと思っていた。
だが、真実はまるで違っていた。
渚は本心を語る度に涙を零し、次第にそれは一粒や二粒では抑えきれないほどになっていく。
「本当は・・・・・・誰よりも・・・・・・大切で・・・・・・誰よりも・・・・・・大好きな弟に・・・・・・また・・・・・・会いたくて・・・・・・だから・・・・・・私、無理やりSAOにログインして・・・・・・来たのに・・・・・・!」
「渚・・・さん・・・」
「ねぇ・・・ショウ君・・・テツヤを・・・哲也を返して・・・哲也に会わせて・・・哲也に・・・あの子に会わせてよぉ・・・・・・!!!!!!!」
涙混じりの懇願に、ショウの表情が曇る。
渚の瞳には一途な願いが浮かんでいた。
だが、ショウには何も出来ない。
出来るはずがない。
一度は奇跡的な生還を遂げた。
だが、奇跡は二度起きないから奇跡と呼ぶ。
死んだ人間が生き返るなんて、普通はありえないのだから。
「なんで・・・・・・なんで私あんなくだらないことで哲也のこと叱っちゃったんだろう・・・・・・もっと・・・・・・もっと哲也に寄り添ってあげられれば良かった・・・・・・それなのに私・・・・・・私・・・・・・!!!!!」
「・・・・・・すいません・・・・・・」
「ねぇショウ君・・・・・・私、何のためにこんな所に来たの・・・・・・?哲也がまだ生きてるからってSAOに来て、哲也に会いに来たのに・・・・・・なんでこんな時にあの子は死んじゃうの・・・・・・私・・・・・・あの子の死に目にも会えないの・・・・・・!?」
「・・・・・・渚さん・・・・・・!!」
ショウ自身も、大切な友を亡くしたことが悲しくて、悔しくて、怒りに任せて街中の物を壊してきた。
そんなショウの目からも、初めて涙が零れた。
堪えきれず、渚を抱きしめる。
「ショウ君・・・・・・哲也・・・・・・哲也ぁ・・・・・・!!!!!!!!!」
渚は声を上げて泣きながら、ショウを強く抱きしめ返した。
ショウも声を押し殺しながら、彼女の身体を支えるように抱きしめ続ける。
2人がこんなことをするのは、初めてのことだった。
そう。
死神は死んだんだ。
それを改めて自覚させられる日だった。
そして、そんな2人のやり取りを偶然聞いてしまった者がいた。
この世界の来訪者である、レイとシノンだった。
「・・・・・・ねぇ・・・・・・シノン・・・・・・」
「何・・・・・・レイ・・・・・・」
「・・・・・・何故かな・・・・・・2人の話を聞いてたら、僕まで胸が疼くんだ・・・・・・テツヤなんて人知らないのに・・・・・・」
「・・・・・・奇遇ね・・・・・・私もよ・・・・・・」
原因不明の胸の痛みに襲われていた2人は、その場を離れ、皆のいるエギルのカフェへと戻っていった。
唐突な転移先である、ホロウ・エリアの探索を始めたシンとフィリア。
そして、弟に会いたいがためにログインしたにも関わらず、その願いが叶わなかった渚。
死神が残した皆の悲しみは、果たして今後どうなっていくのか。
次回もお楽しみに!