ソードアート・オンライン~死神の背を追う蒼炎~ 作:畜生ペンギン
「あ、あんた閃光・・・」
「アスナで良いよ、シン君。隣いい?」
「あ、あぁ・・・」
シンが許可をすると、アスナは彼の隣に座った。
「やっぱり怖いでしょ、戦うの。」
「・・・怖いさ・・・なんであんたらあんな平然と戦えんだよ・・・!?」
「きっとテツヤ君のこと聞いたと思うから、私も応えるね。彼と同じ、仲間がいるから。」
それは死神だけの強さではない。
アスナも、キリトも、クラインも。
皆、それぞれ支えてくれる仲間がいるから戦えていた。
「仲間・・・・・・?」
「私にはキリト君やショウ君、クライン達がいる。テツヤ君にはユウキにショウ君、キリト君って。1人でも仲間がいれば、きっとその人は強くなれると思うんだ、私。」
「1人・・・でも俺は・・・」
「ねぇシン君、なんで今まで1人で攻略組に参加してたの?」
「・・・・・・単純な答えだよ・・・・・・仲間がいないからだ・・・・・・例え出来たとしても・・・・・・俺のビビりに呆れて皆離れていく・・・・・・」
「そっか、きっとその人達はいい仲間とは言えなかったんだね。」
「・・・・・・アスナは違うのか・・・・・・?」
「さっきも言ったように、キリト君達がいる。彼らを守りたい。守ろうとすると怖さなんてどこかに消えていくんだ。さっき言ったように、本当はテツヤ君も怖がってるんだよ?」
「なんでわかるんだ・・・?」
「・・・・・・本当は止められてるけど・・・・・・死んじゃったから許してね、テツヤ君・・・・・・あのね?」
その日、私初めてテツヤ君と2人で過ごす日だったの。
キリト君も予定があって、ユウキも予定があって。
何となく、テツヤ君ともっと話してみたいなと思って誘ったの。
『ねぇテツヤ君、聞いていいかな?』
『ん?どうしたんだ?』
『テツヤ君ってユウキの為になると、それこそ俺は死んでもいい位の覚悟持って戦うでしょ?その・・・怖くは無いの?もしユウキを守れて俺が死んだらとかは思ったことないの?』
『うーん・・・・・・・・・アスナ、これは俺の独り言だ。だからアスナも独り言で返してくれ。』
『え?う、うん・・・』
テツヤ君は少し考え込んだ後に、私の事を見て言ったの。
『本当は、怖くて怖くてたまらねぇよ。』
初めてかな。
テツヤ君が怖さで顔を歪ませてるところを見たのは。
『えっ!?て、テツヤ君が!?』
『死んだらもう終わりだぜ?死んだら終わるんだ。夢も希望の何もかもをな・・・でも、ビビってたら何も出来ねぇしさ。そう思ったら恐怖は二の次になるんだ。ユウキ守るためなら、その位腹くくんねぇとさ。』
『そ、それは・・・』
『それでも怖いさ。もしキリトが死んだら、アスナがいなくなったら、ショウが消えたら、ユウキを失ったら。そう思うと怖くて怖くて堪らない。それがドツボで眠れない日もある。俺はその度に実感するよ。ただの臆病者だって。』
その時初めて思ったの。
彼は死神と呼ばれ、周りから恐れられていても、彼も1人の人間なんだって。
『なぁアスナ、1つ頼めるか?』
『な、なに?』
『俺に何かあったら、ユウキの事は頼むな。』
『そ、そんな縁起でもないこと言わないでよ!テツヤ君は私達と生還するの!これは血盟騎士団副団長として、血盟騎士団団員のテツヤ君への命令です!団長命令と受け取って貰っても構いません!』
『お、おいおい・・・でもわかった。承りますよ、鬼の副団長さん。』
『テツヤく~ん?』
『じょ、冗談だよ!?い、いつものキリトに甘えてる可愛いアスナに戻って欲しいな!?』
『もう!でも、改めてお願いするね。これは私、アスナからテツヤ君へのお願い。死なないで、生きて帰って会いましょう。』
『・・・・・・あぁ、その為にもアスナもキリトも、ユウキだって俺は守り抜くさ。』
「ってね、今に思えば・・・あれがテツヤ君と2人きりで話した最初で最後の会話だったなぁ・・・・・・」
そう言うアスナは膝を抱え込み、少し寂しそうに俯いていた。
まただ。
ここでも死神は生きている。
そう思ったシンは、アスナに聞いた。
「なぁアスナ、やっぱりいるのか。アスナの心にも死神が。」
「・・・・・・勿論・・・・・・」
そう答えるアスナは、自身の膝を更に深く抱え込んでいた。
「キリト君といつも馬鹿やって・・・・・・ユウキのことが死ぬほど大好きで・・・・・・誰よりも勇敢で・・・・・・誰よりも臆病で・・・・・・でもやっぱり勇敢で・・・・・・そんなテツヤ君が大好きだった・・・・・・!」
そう語るアスナの目には涙が浮かび、2人の座る草原がその涙の受け皿になっていた。
「・・・・・・シン君、男の子から見たテツヤ君は、きっとただ強くて、皆を守るために戦うだけに思えるかもしれない。けれどね、彼も怖がってたんだ。だから君のその考え方に間違いはないの。ただ、君とテツヤ君の差は・・・・・・」
「俺と死神の差・・・・・・分かるのかアスナ!?」
言おうとしているアスナに詰め寄るシンだったが、彼女は涙を拭い、笑っていた。
「やっぱり、それは君が見つけないとね。私が言って教えたのとじゃ、きっと君の成長に差が産まれちゃうもの。」
「でも・・・・・・それを見つけたら良いんだな、アスナ。」
「君がテツヤ君をどこまで知れるかも鍵になるはずだよ。その為に頑張ってシン君。私、応援するよ。君のこと。」
アスナはそう言うと立ち上がり、シンに何かを手渡した。
「これは?」
「私の作ったパンだよ。朝からあまり食べられてないでしょ?本当はキリト君の夜食用だけど、それ食べて元気だして、またショウ君を見返せるよう頑張れ、シン君!」
その一言を告げ、アスナは去っていった。
シンは呆然としながら、アスナがくれたパンである、サンドウィッチを頬張った。
「・・・・・・うめぇ・・・・・・」
1口、2口と食むほどに、シンの目からも涙が零れていた。
「良かった・・・・・・俺はおかしくなんかない・・・・・・あの人も人間だったんだ・・・・・・!」
シンは涙と共に食事を終えると、涙を拭いながら立ち上がり、イージスを構えた。
「・・・・・・見つけるさ・・・・・・死神と俺の差を・・・・・・それまで攻略組は引退だ!まずは・・・・・・ホロウ・エリアで徹底的に腕を磨く!待ってろよ死神!」
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「・・・・・・ったく、こんな時間に呼び出すってどういう神経してんのよ・・・・・・」
ホロウ・エリアでは、フィリアが1人管理区で愚痴をこぼしていた。
その数分後、転移門が光ると同時に現れたのは、シンだった。
「フィリア、久しぶり。」
「まだ3日しか経ってないわよ、バカシン。」
「い、良いんだよ。俺にとっては久しぶりなんだから。それより何か進展は?」
「ううん、でも、あんたがいれば何かしら見つかるはず。行くわよ、バカシン。」
「あぁ、行くかフィリア。」
「えぇ、そうしましょ。バカシン。」
「さっきからバカバカ付けんな!?このバカフィリア!」
「何よ!こんな真夜中2時に起こしておいて、バカじゃないならなんなのよ!!!」
「うるせぇ!盗みを働く奴に言われたかねぇ!!」
「トレジャーハンターをその辺の盗っ人と一緒にするな!この死神オタク!」
「オタクじゃねぇ!俺は・・・」
シンはそう言うと、フィリアの横に立った。
「アイツを超える男だ。そうだろフィリア。」
「知らないわよ、アホシン。」
「バカの次アホ!?この・・・えと・・・か、可愛いフィリア!」
「褒めてくれてありがとう、マヌケシン!」
こうして、2人は言い合いをしながらも、いよいよホロウ・エリア本格的探索を始めることとなった。
アスナから告げられた、死神の抱えていた真意。
それを聞いたシンは攻略組の仮引退を決め、フィリアと共にホロウ・エリアを進むことを決める。
シンの目標である、死神越えを成す日は来るのか。
さて、これにて長かった物語のプロローグも終わりになります。
次回以降は基本的にはホロウ・エリアの冒険譚となります。
また、予定通りプロローグを終えたのでキャラクター紹介もこの後すぐ投稿予定です。
簡単なおさらいとはなりますが、見ていただけますと幸いです。
次回の第8話もお楽しみに!