Re:村長ってマ? 作:初めてのERUHU2
突然だが、俺は転生した。普通の転生ではない。
……エルフだった。
耳を触った時、最初は新手の病気かと思っていたが、ファンタジアな世界観を目の当たりにしエルフだと確信した。
そして女だった。TS転生やんけ……
けどもエルフは作品によるが、長生きなのが特徴。
前世でやりたかったことを、いつでも、自由にできるのだ!ウンSUVAらしい!
そんなフレッシュ盛り合わせのような種族。
そして深い深い森林や魔法に囲まれたファンタジアな世界。
勝った……!これからは俺の時代だ……!
――――そんなことを思っていた時期が、俺にもありました。
というか最近までそうでした。
「あぁ……やることねぇ……」
俺は占有地(自称)の日陰で天然芝の地面に倒れこむ。
一瞬だった。あまりにも呆気なかった。所詮人間だった俺のやりたいことなんて、あっという間に終わった。
他に何かないかと血眼で探した。それはもう周囲にビビられるくらいに。
……何にもなかった。スマホは勿論、ゲームもない。かといって周りはエルフばっかだし、いっつもボーっとしてほぼヒキニートみたいなもんだし。
毎日老人ホームにいたおじいちゃんみたいな暮らししてんのよあいつら。
仲間入りだけはしたくないので探しまくった結果、辿り着いた。魔法というファンタジーの温玉特盛に。
難しいが、めっさ面白いことに気付いた。ということで即断即決、魔法探しの旅に出た。
古代ローマみたいな町を訪れてみたり、魔法使ってくる動物(魔物とかいうらしい)に追っかけられたりしたり……色々放浪した。
現代みたいに方位磁石とかないので苦労した。服装だって絵画で神が着てた布だったよ。邪魔だから全部取っ払ったろうかと思ったが、社会人としてやばいと思いやめた。
服の名前なんだっけか。マトンだったかミトンだったか、まぁ忘れた。ボケたわけじゃないぞ?
そんなこんなで続いた旅。結構長いことそうしてたはずだ。時計?何それ美味しいんか?
流石に少しホームシックを拗らせたので、久しぶりの我が故郷イン。森の中で、しかも同じ景色ばっかだから迷ったのはここだけの話。
どこもかしこも大分景色が変わっている。しかし悲しいかな。いるメンツはほぼ一ミリも変わっていなかった。顔さえもそこまで変わってない。おい老化仕事しろ。
エルフには恋愛のきゃっきゃうふふもあまりないらしいので、子供もほぼいない。
「あら、お帰りなさい」
母親もなんも変わらず美女。これが永遠の美貌とやらなのか。
「旅は終わったの?」
「まぁ粗方」
色んな魔法に触れれた。とにかく覚えにくかったの一言に尽きる。全部横文字のバーゲンセールだ。
けどなんか見覚えのある魔法体系だったんだよなぁ。例えばそう、なんかのアニメの。
「そういえば」
「どうした?」
「今村長の席が空いてるんだけど、興味ない?」
「え?村長?」
「そうよ。ちょっと前に魔族に殺されてしまって、そこから誰もやりたがらないのよ」
「で俺がやれと?村長だぞ?」
「別にいいわよ。村長なんて面倒くさいから押し付け合いなの。それに、魔族に狙われる
かもって。あなた魔法使えるんでしょう?ちょうどいいじゃない」
何がちょうどいいだよ。
「いやだよ!なんで俺がやんなきゃならないんだよ!帰ってきたばっかだぞ!」
「……ねぇ、村から出るとき無言で去っていったのは誰かしら」
「え……」
「私心配したの。まだ小さな娘が旅に出たもの。それも一人で、何も言わずに」
「心配?いやさっき普通にお帰りって」
「?帰ってきたときはそう言うものでしょう」
本当に分かっていないように首を傾げる母。最早ボケているのかもわからないのでツッコミもできない。
「やっぱり心配させた分、ちゃんと働いてもらう必要はあると思うの」
「く……分かった。村長やればいいんだろやれば」
「それでいいの」
これが亀の甲より年の劫ってやつか……!
果たして意味分からん言いがかりで村長になった俺。
しかし特に村長としてやることはなかった。おかげで魔法の研究を日中からゆっくりすることができる。これは思ったよりええ役職につけたかもしれへんね。村長宅も俺のものとして貰えたし。ありがとう、ほとんど話したことのない前村長さん……
「あ、村長。おはよう」
「ああおはよう」
今挨拶を交わしたのは俺のちょっと年上の男エルフ。旅に行く前はたまに喋っていた。決してたまに、が一年に一回とかではない。二日に一回くらいだ。
「あ、そういえば」
「ん?」
「俺、子供作った」
ふんふんなるほど、子供ができたってことか。
「――――って、え?子供ができた?」
「ああ」
「マジ?」
「ああ」
「はああああああ?!お前がか?!」
「ああ」
俺は驚きで目を見開きながらそいつを見る。すまし顔だった。
「ちなみに相手は……?」
「幼馴染」
「うわぁ……凄いな」
「ふ……」
すまし顔が一瞬自慢げになる。クッソ、腹立つ。こいつの方が結婚早いのかよ。腹立つわぁ。いや別に俺は結婚したくないが。男を恋愛対象に見るとか絶対できん。
「ちなみにもう名前も決めてある」
「へぇ、どんな名前?」
「フリーレン」
「そうかそうかフリーレンか。……フリーレン?」
「あぁそうだが、その名前に何かあったか?」
「フリーレンで間違いないんだよな?フラーレンとかじゃなくて?」
「フラーレンとは何だ?フリーレンだ」
「ただの同素体だ気にすんな。それよりも俺、ちょっと家戻るわ」
「?どうぞ」
挨拶して別れ、足早に自宅に入るや否や、自室のドアを勢いよく閉める。
俺は頭を抱えた。
……葬送のフリーレンかよ。魔族だらけじゃねぇか。俺エルフだよ?
死んだわ、これ。オワタ。
俺は村長宅に拵えたベッド(独自開発の素晴らしい寝心地を提供)に寝そべりながら考える。
寝たい。今すぐに考えることを放棄して寝たい。
だが逃げる→死ぬという素晴らしい一方通行が出来上がってしまう。
この世界は葬送のフリーレンが元になっている。
でここで重要なことがある。
まず今はいつの時代か、ということだ。
原作のメインは勇者ヒンメルが死に、フリーレンが過去を追いかけ旅をする物語。
しかしだ。しかしである。
フリーレンは最近生まれたのだ。おばあちゃんの真逆だ。
おかしいだろ。原作の1000年以上前じゃねぇか。
そしてもう一つ。
何なら俺個人ではこっちの方が大事だ。生命に関わる。
もし今が本当に1000年前だとするならば、エルフは魔族に狙われている。
原作通りなら、この村は魔王軍将軍、玉座のバザルトによって滅ぼされる。
マズい。マズいマズいマズい。
俺村長なんだが。え殺されるの?
どうにかしなければ。どうにかしなければ死ぬ。
背中をヒヤリとしたものが通った。
「けどどうする?」
魔法で戦うか?
いや相手は将軍だ。
それに俺は魔族と戦ったことがほとんどない。
この世界の敵ちょれ~とか思っていた俺が馬鹿だったわ。
しかも俺は魔力が多くない。知識はあるが強くはないのだ。
マジでどうしたらいいんだよ?!
……いや待て。待てよ?
原作ではフリーレンが勝っていたはずだ。正面からのゴリ押しで。
ならそれで良くね?
フリーレンに魔法を叩きこんで、いつかやってくる玉座のバザルトをぶっ殺して貰う。
将来村一番の魔法使いになるはずのフリーレンだ。
俺より強くなる。
叩き込まなくても原作通り倒せるだろうけど、念のため叩き込む。
で玉座のバザルト倒してもろて、俺はひっそりまた旅に出る。
決まりじゃん。キタコレ。
俺は人知れず安堵の溜息をついた。
けどもう一つあるのはあるんだよなぁ。
この村のエルフ達をどうするか、だ。
将来死ぬんだ。できれば助けてやりたいけど、未来で君たち魔族に殺されるよ、なんていっても笑われるだろうし、何より助けてもその後はどうしようもない。
やっぱり個人個人に頑張って貰うしかない。
今やることは、フリーレンに魔法を叩き込むことだ。
ひとまずベイビーフリーレンのご尊顔拝みにいくか。
この村には、変わった村長がいる。
私が少し育ったころ、初めて出会った。
「やぁフリーレン。初めまして」
鮮やかな火の色。
オレンジ色の髪を首辺りまで伸ばした、朱色の目をしたエルフの少女だった。
少女といっても、私達エルフでいえば悠久の時間を経ている。
目の前の彼女も例に漏れることはないだろう。
「フリーレン、君は魔法に興味はないか?」
開口二番、そう問いかけてきた。
そんなことを問われるのは、初めてだった。
「魔法?」
「そうだ。魔法は俺達の世界を変えてくれる存在だ」
「噓でしょ」
「嘘じゃない」
「どうして?」
「学べば分かるだろうな。俺が教えてやる。だから魔法を学んで強くなってみろ」
「どうして強くならなければならないの?」
「自然の摂理だ。それに、いざって時に力は必要だ」
村長は懐から一冊の古い本を取り出した。
魔導書。魔法を学ぶための本。
「さぁフリーレン。本を手に取れ」
「……」
特にやることもなかった私は、ほんのちょっとした興味のままに、本を手に取った。
「それでいい」
気づけば私は魔導書を読むのが日課になっていた。
ある時は村の人から借り、ある時は村長の家に借りに行った。
そこそこ好きのはずだったのに、読んでいた。
エルフは長生きだ。
だから魔力も比例して多くなる。
暫く経てば、私は村でも随一の魔法使いになっていた。
けど私はずっと疑問に思っていることがある。
「ねぇ村長」
「何だ」
「どうして村長は魔法を知っているのに魔力が少ないの?」
「……さぁな」
村長の魔力は少なかった。
私より魔法を知っているのに、少なかった。私より長く生きているはずでもなるのに。
だから魔力を隠しているとしか考えれなかった。
けど最後まで答えが分かることはなかった。
「魔族だ!!」
村を魔王軍が襲ったのだ。
玉座のバザルト。
重厚な鎧に身を包んだ戦士のような見た目の魔族に、村は焼き尽くされた。
火の粉が舞う中、村長は悲しむでもなく、絶望するでもなく、ただ私の背中を押した。
「さぁ行けフリーレン、お前ならやつを殺せるはずだ。」
私は玉座のバザルトを殺した。殺せた。
けど気づいた時には、村長の姿も消えていた。
全てが幻だったかのように消えた。
燃え尽きた村の灰の上にただ座って地面を眺める。
その時、不意に気配がした。
「ひでぇ有り様だな。エルフの集落か」
僅かに視線を上げる。
そこには、赤みがかったオレンジ色の髪をした人間の女が立っていた。
少し離れた森林の陰からフリーレンを観察していると、一人のオレンジ髪の女性が元村へとやってきた。
「あれがフランメか……やっぱホノモンめっちゃ強者オーラ出してるわ」
やっぱ物語上のキャラクターを生で見れるのは感慨深い。
「玉座のバザルト、魔王軍の将軍の一人だな。軍勢を率いて集落を潰しにきたってところか」
フランメが辺りを見回しながら言う。
ギリギリ聞こえる距離でよかった。え?魔法使えばいいって?魔法なんて使ってみろ。
飛ぶぞ、俺が(物理)
「こいつを殺したのはお前か?そこの三角座り」
フランメが地面で三角座りをしているフリーレンを見る。
なんと今回、俺が魔法ビシバシ叩き込んだからか、割と余裕そうにバザルトを殺しているのである。主人公補正怖っ。
「すごい魔力だ。お前、強いだろ? 魔族と正面から戦ったのか」
フランメが呆れるように笑う。
「くだらねぇ。とんだ馬鹿だな」
フランメが使う魔力を隠蔽し相手を騙す戦法。
魔法使いにとってセコいのは間違いないが、魔族にピッタリフィット戦法なのも間違いない。
まぁ某無名の魔族が事前に見破っていたりしたけど。
「強い魔法使いの気持ちは分からねぇ」
フランメがフリーレンに背を向け帰ろうとしている。
「……わかるはずだ」
フリーレンが下を向いたまま、ポツリと呟いた。
「は?」
フランメが振り返り、フリーレンを見る。
「……あなたには私の気持ちが分かるはずだ……あなたのほうが遥かに強い魔法使いだから」
「へぇ……どうしてそう思った?」
「……なんとなく」
「お前、名前は?」
「……フリーレン」
「フリーレンか……よし、今日からお前は私の弟子にする」
そんなことを言いながら笑うフランメがフリーレンを背負い去っていく。
あちょっと待て。俺フランメの家がどこにあるかは知らねぇんだ。
極力魔力を抑えながら、俺は茂みの中を進んでいく。
前世で気配の薄さ随一と言われた俺を舐めるべからず。
やべっ……この服動きにくっ。マジで脱いだろうかな。
フランメと名乗った人間の魔法使いは強かった。
村一番と言われた私よりも、きっと強い。
そして何より、魔族を殺す術を熟知していた。
魔力を誤差で欺いて殺す。卑怯な戦い方だ。
魔法は互いの素直に技量勝負。
戦いはかくあるべき、それが魔法使い同士の暗黙の了解。
だけど、魔力の隠蔽はとても理にかなった戦法でもあった。
「お前は一生を掛けて魔族を欺くんだ」
魔力の制限は続ければ続けるほど疲れる。
隠蔽し続けるには、膨大な時間がかかる。
けど、不思議とやらないという意思は生まれてこなかった。
なぜかは分からない。
けど一瞬、村長の姿が脳裏に浮かんだ。
「今改めて思うと、やっぱり村長も隠蔽していたのかな」
「へぇ、そんなエルフがいたのか?変わったやつだな」
そう言ってフランメは笑う。
「うん。私の村の村長。とても変人だったよ。私よりもはるかに魔法に詳しかった。けど魔力より少なかった」
「……またエルフってのは変わったやつが多いみたいだな。いつか会ってみたいくらいだ」
「きっとまだどこかで生きていると思うよ」
「そうか。なら近々会えるだろうな」
その日の昼下がり。
フランメは弟子であるフリーレンに食料調達を任せ、一人家の外に立っていた。
「ずっと私らに付いてきてたよな?」
少し先の森の茂みに向かって口を開く。
「……やはりバレていたか」
「そりゃあな」
誰もいなかったはずの茂み。
そこから一人のエルフの少女が姿を現した。
フランメと似た色の髪をした、朱色目のエルフ。
予めバレているのが分かっているかのような様子でフランメの前に立った。
「何か用か?村長さんよ」
「そこまでわかっていたのか」
「それくらいしか思い付く存在がいないもんでな。それで、何か用か?」
「用って訳じゃない。ただフリーレンの心配みたいなものをしていただけさ」
「今は私の弟子だがな。それに私が師匠をしているんだ。何か心配することがあるのか?」
「……そうだな。これ以上の邪魔は無粋みたいだ。失礼するとしよう」
そう言って踵を返すエルフの少女。
フランメは彼女から立ち上る魔力を見た。
確かにフリーレンよりも少ない。
だが、フリーレンよりもかなり長く生きているであるはずにしてはおかしいのだ。
「なぁ、村長さんよ」
「?何かな」
「随分精密な魔力隠蔽だな」
その言葉に、エルフの少女の目が一瞬見開かれる。
「……気のせいさ」
そう言い捨てて、逃げるように姿を消した。
「……面白いエルフだな」
フランメはそう思いながら、フリーレンの教育をどうするか考えることにした。
「……は?何アレ。え?なんで俺魔力隠蔽してることになってんの?怖っ。フランメ怖っ」