コードギアス ~黄昏のルルーシュ~   作:カメル~ン

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DOOR 02 破片 *1

 

 

 

 半年ほど前、Cの世界内よりコードの力を使って全人類の思考を集合無意識へと回帰させ、「嘘のない世界」を作るという『ラグナレクの接続』が行われようとした。

 ルルーシュは当時皇帝であった父シャルルと、過去に死亡し意識体となっていた賛同者の母マリアンヌらの考えとその計画を否定し、人の集合意識体でもあったCの世界そのものへギアスの力を行使して、強制的に両親とその傲慢な計画を葬り去った。

 これはルルーシュに、意識の世界へは逃げず現実の世界にとどまり、正面から諸問題へ向き合ってすべての決着を付けると決意させた出来事でもあった。

 そして数日後の、神聖ブリタニア帝国、皇都ペンドラゴンがまだ兄シュナイゼルの使用した新型兵器フレイヤによって消し去られる以前の皇帝宮内の一画。

 その薄暗い明かりの差す小部屋で、当時日本のトウキョウ租界において己の仕掛けていたギアスの力の為に、フレイヤの爆発で守るべき妹のナナリーをも失ったと思っていたルルーシュは、『ゼロレクイエム』の計画詳細を『王の力』であるギアスを自分へ与えてくれたC.C.、そしてルルーシュによって敬愛するユーフェミア皇女殿下を虐殺皇女の汚名付きで殺された、親友でもある枢木スザクの三人で決めた。

 この時、ルルーシュはもちろん計画通り本当に死んで地上から去るつもりだった。それがスザクも納得する大いなる目的と、これまで行なって来た業と、シュナイゼルら別勢力の急進に対して残された時間を考えれば選択の余地のない自然な流れだったから。

 だが、スザクがその場を去り、C.C.と二人きりになったときにルルーシュは、只一つ心残りな約束―――『孤独に永遠の時を生きてきた魔女へ、笑顔な最後を与えてやる』ことに関する可能性を聞いてみたのだった。

 

「C.C.、ひとつ確認したいことがある」

「なんだ?」

「俺には時間が足りない。言っておくが『生きる』事にこだわりがある訳では無いぞ。やり残したことがあるからだ。だからそれが終わるまで、可能なら『死』を乗り越えたい。……俺を一時的にでも不老不死に出来ないか?」

 

 C.C.は、はっとする。己の命が終わった後も気になる、そのやり残した事とは……。

 

(それは私が遠い昔に、人として思い感じる事をやめた『 』に繋がってる?―――)

 

 彼女は目線を落とし暫しの沈黙の後、顔を僅かに赤らめるような何とも言えない複雑な表情をしながら目線を上げて答える。

 

「……可能だ」

 

 他の者に同じ事を問われれば、きっと『無理だ』と答えただろう。C.C.はコードを渡すことで不老不死化させてしまうこの生き地獄を、誰にも押し付ける気は無くなっていた。

 そして同時に、誰かを共に付き合わせる気も。

 だがルルーシュを前にして、その彼からの真剣な言葉に、期待と希望を乗せて答えてしまっていた。

 

(ルルーシュ……この私の思いは―――)

(C.C.……。俺に世界を変えるギアスをくれた女。永く苦しんで来たこの気難しいやつに笑顔な最後を送らせることが出来るのは、おそらく真の名を知り共感出来た俺しかいない。そのためにはギアスをこの地上からすべて排除しなくては)

 

 しばらく二人は静かにその場で見つめ合っていた。

 

 

 

               ◇ ◇ ◇

 

 

 

 日は傾いてきていたがまだ高い位置にあった。雲は少し増えてきたがまだ十分に晴れと呼べる天気だろう。

 東方向へとのんびり荷馬車で進んで来たルルーシュとC.C.。

 目的地のフランス南東部にある街、エクサン・プロヴァンスの街並みが見え始めた手前で荷馬車を止める。ブーシュ・デュ・ローヌ県にあり、ニール・アルルカマルグ国際空港から100キロ圏内にある街だ。地域の人口は約14万人。

 C.C.を下ろし、カバンとぬいぐるみを抱えて街へ歩いて向かう彼女の姿を無事に見送ったルルーシュ。

 彼は『C.C.を死ねない永遠の牢獄から解放してやりたい』という、そんな色々『熱い』思いで生きながらえ、ギアス討滅に乗り出そうとしているのだが、C.C.との旅の途中に通過したイタリア寄りの街では、食事に立ち寄った店や宿にて相変わらず笑顔でピザを美味そうに食いまくっている彼女を見てしまっていた……。

 手綱を操り荷馬車の方向を変えながら、その生き生きとした彼女の姿を改めて思い出す。

 

(俺は何か……大きな間違いをしているのではないだろうか? いや……しかし……)

 

 そんな交錯する思いが湧いてこなくもなかった。

 ルルーシュは最寄りの届け先で荷馬車から藁と藁の下にあった荷を下ろすと、代わりに頼まれた物を積んで二日ほど掛けて来た道を引き返していく。

 

(さて、戻ったら俺も動き出すとするか)

 

 以前の彼なら車も使わずにこんな非効率的で呑気な仕事はしないだろう。だが、生まれ変わったと言っていい今の境遇の彼に、以前ほど拘るようなものはなかった。

 

 一方、街の手前でルルーシュと別れたC.C.は、街中に広がる石畳みと並ぶネオルネッサンス建築風な趣のある石やレンガ造りな街並みを歩く。そしてその建物の一つである石造りな八階建てのビルへと入って行った。そこには対ギアス国際捜査組織『A-GIIO』のE.U.内にある支局の一つが設けられている。今日はそこへの初の顔出しだった。

 七階まで古めのエレベーターで移動し、降りて右側の突き当たりまで進む。

 表は小さな商社のような仮の装飾がされた部屋の扉を、C.C.は客のような素振りで引いて入る。中には刑事風のコート姿なおやじと、スーツ姿の清々しい青年、可愛く若い少しミニスカ姿の女の子の三人が待っていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 室内に目を向けると、窓側も古風な鉄の窓枠ながら全面のガラス張りだった。それほど広くないが日当たりは良好。そして、アンティーク調の木枠に半透明なガラスの入れられたパーティションにて奥の机群とソファーの場所が区切られ、壁面には整理された書類の棚等が並び、床には大きめな観葉植物もいくつか置かれている。

 落ち着いた雰囲気の小奇麗な場所だ。

 

「お嬢さん、何か御用でも?」

 

 さりげなく一通り見回していた所に、まずコート姿で無精ひげなおやじがC.C.へ話しかけて来た。客商売のセオリーなら若い女性へは青年が対応するところだが、部外者を追っ払うための対応だろう。

 C.C.は気にせずにソファーへ狐色の大きめな『がま口』カバンと大事な『チーズくんぬいぐるみ』を置くと要件を言う。

 

「日本から、変わった探し物の依頼に来たのだが」

 

 その言葉が今日ここへ来る組織の副長としての合言葉だ。

 すると、手前の机の席に着いて書類を見ていたスーツ姿の金髪の青年が、静かに立ち上がると笑顔で出て来た。

 

「C.C.副長官、お待ちしていました。ここの責任者のニルス・ベルモンドです。E.U.情報保安局フランス担当室の者です」

 

 握手を求める所作も含めて、美しい西洋風な礼儀正しい挨拶だった。

 彼らは皆、写真によってすでにC.C.の顔を知っていたが、合言葉が出るまで取るべき慎重な対応をしたのだ。

 C.C.はここには三人いると聞いていたぐらいだったため、責任者がトレンチコートのおやじではなく、この若い青年な事に一瞬意外な顔をしたが、ルルーシュを例に年齢は関係ないなととりあえす納得する。

 

「ふむ。ああそうだ。普段、私の名を呼ぶのに敬称は不要だ。『シーツー』でいい。で、他の者の名前は?」

 

 お飾りとは言え、嚮団のトップをやっていたこともあるC.C.は相変わらず無駄に堂々としている。

 彼女は青年以外へ目を向ける。

 すると、次はベージュ調なコート姿のおやじが、自分の茶色の髪を右手で軽く撫でながら名乗る。

 

「俺は、ダニエル・ラングマン。元警察憲兵隊検査局員だ。よろしくな、お嬢さん」

 

 どうやらこの男は普段、敬語を使ったり、『シーツー』と呼ぶ気はないらしい。C.C.としても、まあどうでもいいことだ。

 

「ああラングマン、先に行っておく。一応、室内は禁煙で頼む」

「そうですかい。仕方ねぇな」

 

 だがどうやらC.C.は、煙たいのは気になるらしい。いや、ピザの味わいが悪くなるからかもしれない。

 最後に可愛いらしい女の子がC.C.の前に進み出て来た。白と水色基調な服も似合っている。

 そして―――敬礼する。

 

「私はドリアーヌ・オージェですぅ。一応、軍では大尉で大隊長やってましたぁ」

 

 姿と共に声も可愛いものだった、が。

 

(この娘、軍人だったのか……おまけに大尉だと? 特有の殺伐感がないが、大丈夫なのか)

 

 そして、立場的にはドリアーヌが一番大物っぽかったのだ。

 C.C.は表情は変えないが内心、少しとぼけたような彼女に些か不安感を覚えた。が、杞憂だったことは後日知ることになる。

 それがC.C.と三人との初の邂逅だった。

 

 たった三人のように思うが、そもそもギアスは公に出来ない事項だ。詳細を知る者は少ないのが望ましい。実際、各方面へ指示する顔の広い信用のある人間だけが真実を知っていれば大きな問題はないからだ。

 さっそくC.C.を加えた四人はソファーコーナーに集まって座り、現在状況の説明に入ったが、彼ら三人それぞれがすでに担当の方面への根回し有りな聞き込みルートの構築や資料を準備し始めていた。

 そう彼らは皆、優秀だった。

 人が良くても玉城のようにハイコストローパフォーマンス(ルルーシュの評価では40。ちなみに黎星刻は400近く、藤堂も300を優にオーバー、かつての黒の騎士団の他の主要メンバーも200越えや近くはある)では困る。

 コート姿のダニエルおやじは、一般の街中と警察関連。おとぼけ軍人娘のドリアーヌは整備兵から陸、海、空軍の実働兵関連。そして嫌みなく自然に歯を白く輝かしている青年ニルスは諜報的な観点から政治、財界、軍上層部関連で不自然な物事が起こっていないかを調査していた。その際、大勢に影響のない不正があってもスルーしている。そうしないと円滑に活きた情報の提供が得られないからだ。

 そして、三人は『平和』のため、真摯に調査へ取り組んでいた。

 

 ここフランス地方は、ポルトガル西海岸から上陸侵攻してきた神聖ブリタニア帝国軍に対して奮戦むなしくパリの東まで占領され一時降伏し、ユーロ・ブリタニアとなっていた。

 フランス降伏占領時にはニルスとドリアーヌは投獄されており、ダニエルおやじはブリタニアの犬にはなりたくないと警察憲兵隊を退職していた。

 そして世界を巻き込んだ争いは『ゼロレクイエム』で終わりを告げ、復興が始まった。

 ブリタニア代表に就任したナナリー総代議長は、E.U.へヨーロッパ地域の占領地をすべて無条件返還した。これを受けて、E.U.側も禁止していたブリタニア勢力域との貿易を全面的に再開し、賠償金等は取らない事を決定している。(日本も同時期に主権を回復。ただ一部租借地は残る)

 まもなくフランス地方でも、投獄されていたE.U.側の諜報や軍関係者も開放の運びとなり、警察も市民を守る役職に戻った。

 そんな彼らの釈放や復職に際して、対ギアス国際捜査組織 A-GIIOは声を掛けたのだ。

 戦争の残り火になり得る特殊な技能(ギアス)を持つ危険な人物らがまだ世界に潜伏しており、その捜査と拘束、排除に協力してほしいと訴えた。

 ニルスら三人には、各自の意思と同意を得て期待できる人材として、A-GIIOに参加してもらっている。

 彼らの他にも各地で同様の理由で協力を要請し、世界中で数十人が組織に加わってくれていた。

 組織メンバーの行動原理として、良く分からないギアスの異常性と脅威の話を強調し広めて伝えるのではなく、ギアスについては最小限の説明に留め、初めは平和への渇望や継続する思いや意志を利用する事が得策で自然だとルルーシュは計画書に記していた。

 確固とした理由や信念がない行動では、排除できないのがギアス能力者達だからだ。

 戦うとき、人には理由が必要なのである。

 

 さて、三人と現状についての確認をしたC.C.だが、明らかに不審という内容は今の報告の中に感じられなかった。強いて挙げれば、KMF(ナイトメアフレーム)が軍の格納庫から複数行方不明になってる件と、異常な死に方が路上で10件ほど確認されている事項ぐらいだろうか。

 政治、財界、軍上層部では復興が大前提で、今の所大きな動きは無い様である。軍の削減やKMFの開発を極秘に進めるべきではという意見等が少数ある程度だ。

 あとは、猟奇的強盗や連続殺人事件に不自然や謎な事故、巧妙な汚職等が資料にまとめられていた。

 まあ、KMFも単に横流しする奴がいるのかもしれない。

 路上での死も、リフレインのような薬物の乱用でくたばったのかもしれない。

 疑えば切りがない所ではある。

 

 現在KMFを初め、その関連兵器及び飛行大型兵器については超合集国最高評議会の決定で、世界各地での開発と製造が半年凍結されている。まずは復興を優先するためだ。大方の予想ではさらに半年延長されるとみられている。

 特にKMFは、治安や復興作業に必要な機体数について、現状でも十分だという結論であり、『戦力の象徴』として戦いの火種にもっともなり得るものでもあるからだ。

 そんな中で、対ギアス国際捜査組織 A-GIIOには優先的にKMFが回されることになっている。

 このフランス支部にも、近くの軍借り受けの隠し倉庫に二機の軍用KMFが用意されているという話が出た。

 一機はドリアーヌのものだが、もう一機はC.C.も使用許可が出ている機体であるという。

 だが、その機種はE.U.のKMFパンツァー・フンメルであり、両手に固定装備されたキャノン砲二門では火力はともかくマニピュレーターがない為、近接戦闘には不安がかなり残る。加えて脚部に車輪補助脚のランドスピナー等も無く、機動性はどんなにプラスに見ても第四世代KMFのグラスゴー辺りかそれ以下だろう。

 C.C.は資料と説明を聞きながら少し考え込む。

 

(ヘタをすると第三世代のガニメデ並みか……いや、華麗にピザ生地を作れる点でそれよりも……。乗るにしても、せめてブリタニアのサザーランド辺りが欲しい所だが)

 

 以前に第七世代KMFの機体であり、飛翔滑走翼をも持ったランスロット・フロンティアに乗っていたことも有るC.C.だが、パンツァー・フンメルは空を飛べない機体でもある。そしてシールドもハドロン砲もない。地表でおぼつき進む機体をまともに操縦できるのかという心配すらあった。

 とはいえ戦争は終わっていることから、KMFを使用する事態はそうないだろう。

 というか、彼女はもはや乗ることが無いことを祈っていた。

 

 要点も話終わりニルスら三人には、今後も引き続き情報収集と捜査を進めるよう指示し、日が落ちた辺りで今日は終了となった。

 その後C.C.はドリアーヌに案内され、用意されていた支局から七、八分歩いたところに建つ白レンガ造りなアパートの四階にある新しい住処に入る。

 余り長い期間この支局へ留まる訳ではないが、ホテル暮らしと言う訳にもいかなかった。

 室内は白い壁、洋室二部屋に加え、バス、キッチン、トイレのある部屋で一人暮らしである。

 そう―――一人暮らしなのである。

 一応、窓に無難な白色のカーテンや、室内には簡単な家具と家電も用意されていた。

 しかし。

 

(…………面倒臭いな。ドリアーヌと一緒に住めないか聞いて見るか)

 

 彼女にとって部屋での生活は、ピザを注文し寝ながら食べる事以外はすでに面倒臭いのかもしれない。

 

「ドリアーヌ、悪いがお前といっしょに住めないか? わざわざ部屋を借りるもの悪いだろう?」

 

 C.C.としては悪いという気持ちは微塵もなかった。ただ、面倒臭いという気持ちだけがC.C.を突き動かしていた。

 

「無理ですぅ。他の人が部屋にいると落ち着かないのでぇ」

 

 あっさりとドリアーヌには断られてしまった。一体どうやってこれまで軍隊生活を送って来たのか気になり過ぎるのだが……。

 ドリアーヌは、C.C.に部屋の鍵を渡すと「ではまた明日ぁ」と言ってC.C.の部屋を去って行く。

 

 C.C.は、部屋の南の窓から見える月を、ただしばらく呆然と眺めていた―――。

 

 そのまま五分ほどが経過。

 さて、気を取り直したのか部屋に一人となっていたC.C.は再び動き出す。

 とんでもない行動に出たのである。

 おもむろに携帯を取り出すとコールを始め、間もなく相手が出る。

 

「あ、ルーク(ルルーシュ)か? 悪いがエクサン・プロヴァンスに住まないか?」

『………C.C.か? お前、いきなりなにを言っている? 俺はまだ仕事の途中で、引き返している所なんだが』

「もちろん、その仕事が終わってからでいいぞ」

『……ふう。なら、まず十日間ぐらいは一人で頑張ってみろ』

 

 当然ルルーシュには、C.C.の考えが御見通しである。しかし、敵もさる者である。

 

「まあ、十日ぐらいなら部屋は二つあるし、我慢できるか……」

『おい……「我慢」するな。ちゃんと洗濯や掃除をしてゴミを捨ておけ。絶対に箱を積むんじゃないぞ』

「……チッ……分かった」

 

 不毛な携帯の会話が終了した。

 

『そこで切るなよ? C.C.、支局で現状を聞いたんだろ?』

「今の所、怪しそうなものは少ないがな」

『当然だ。表立って動いてるやつなんかいるはずないだろう。だが並みのヤツでは動けばすべてを隠すことは難しい。怪しそうなところは全て洗ってみろ。どのみちお前は、ピザを食う以外は暇なんだろう?』

「……失礼なやつだな。チーズくんを抱き締める時間も重要だ」

『要件はそれだけか? じゃあ、十日後ぐらいに』

 

 ぷつり。

 「おい」というC.C.の携帯に向けての声は空振るのだった。

 

(ルルーシュめ、一緒に住まないと意味ないだろう。奴めどうするつもりだ)

 

 ルルーシュの傍にいたころは、ルルーシュ自身が豆に掃除や洗濯、飯の用意までしてくれた。そして『ゼロレクイエム』後、日本ではブリタニアの軍施設に居候していたので、食堂もあるし勝手に掃除され着替えも適当に手に入っていた。なので、結構な期間『身近な明日の心配』をしたことがなかったC.C.だった。

 なので、ある意味不安でいっぱいになる。

 

(ううむ………寝るか)

 

 そこへ携帯にコールが来る。

 コール元の名を見て「うっ」と言う声が漏れた。C.C.はとりあえず出る。

 

『C.C.か? こちらはゼロ(スザク)だ。定期連絡を忘れないでくれよ』

「悪い。色々やることがあってな」

 

 C.C.は一応、逃亡していないという意味で二日に一度、スザクへ定期連絡する事になっていた。C.C.自身忘れていたのだ。かなりテンパっていたと言えよう。時差からすれば日本は早朝のはずである。スザクはちゃんと寝ているのだろうか?

 

『支局へは顔を出せたのか?』

「ああ、問題ない。現状も特に目立つ事項はなかった。だが、少しでも怪しそうなところから調べてみることにする」

『そうか、わかった。よろしく頼む』

 

 おそらくスザクの所にも支局からのレポートが行っているのだろう。特に追及されることは無かった。

 

 『ではまた二日後に』「ああ」そう言って通話を終了する。

 C.C.は灯っていた部屋の明かりを切ると、チーズくんぬいぐるみを抱き締め二人掛けのローソファーへ寝そべりながら、再び窓から空に浮かぶ月の姿を静かに眺めていた。

 

 

 

 ルルーシュは月明かりの下、夜道を荷馬車で順調に西のニーム方面へ移動していた。日が暮れて少し経っていたが、立ち寄る予定の街の灯りが近付いており荷馬車を進めていた。

 そして街の郊外の住宅をいくつも通り過ぎた辺りまで来た時、ルルーシュは道に倒れ込んでいる人影を見つける。

 急ぎ荷馬車を止めて御者台を降り、薄暗い中をその人影の傍へ近付く。すると女の子がうつ伏せに倒れて苦しんでいるようだった。

 

「おい、どうした? 大丈夫か!」

 

 ルルーシュは膝を付いて彼女を抱き起し、少女の顔を覗き込む。薄暗いながら可愛い顔をした女の子に見えた。ルルーシュよりはまだいくつか年下だろう。

 

「……あ……ぁ……」

 

 彼女は苦しそうな表情で胸を両手で抑えたまま、うめく事しか出来ないようだった。

 だが、ずっと見開かれていた彼女の目を見た途端、ルルーシュは愕然となった。

 

「なに!?」

 

 

 

 

 

 彼女の目には―――虹彩周辺にあの赤い輪郭が煌めき浮かび上がっていた。

 

 

 

つづく

 

 

 




2015年02月03日 投稿
2015年02月04日 文章修正



 解説)『ラグナレクの接続』
 元は、ルルーシュの叔父でもあるV.V.と父シャルルが構想した「嘘のない世界」の構築計画だったが、V.V.はシャルルを二度騙していた事で、シャルルに致命傷の怪我の状態でコードを奪われ第一線から排除された。当初の計画では準備が整ったのち、V.V.がC.C.からコードを譲られて実行する手はずだったではないだろうか。
 しかし愛するマリアンヌの登場で、シャルルはV.V.に完全には従わなくなった。マリアンヌはC.C.からシャルルがコードを奪ったらV.V.からも奪い、強者で皇帝でもあるシャルルが実行者であるべきと説いていたのだろう。だがシャルルとしては兄のV.V.が先に嘘をつくまではかなり迷いがあったと思う。
 その想いや妬みの混ざったそれぞれの個人的な思惑が、V.V.とシャルルの関係を壊し『ラグナレクの接続』も本来の目的「嘘のない世界」から「自分に優しい世界」になってしまったのだろう。



 解説)虐殺皇女
 ルルーシュは結局、ギアスの暴走によって『自分の意図しない命令』をユーフェミアへ掛けてしまったことをスザクへ全く言い訳していない。
 自分にとっても一度は計画を大幅に変更しようと決めるほどの出来た可愛い妹で、親友の敬愛する皆に優しい人を奪ってしまったこの結果がすべてで、ユーフェミアの汚名の責任はあくまでの自分にあり、唯一無二の親友の怒り悲しみ憎しみをもすべて受けるのが、ギアスを持ち使ってきた自分への罰だと決めたのだろう。本当は二人に「すまない」と素直に謝りたかったと思うが、それすら甘えなのだと。
 結果論でいえば、悪名は残るがユーフェミアを日本人から隔離し、のちにジェレミアよりギアスを解除してもらえば、彼女は死なずに済んだかもしれない。だがやはり、正気に戻った時に自分の行った事実を知り、それと向き合わせるのは強い信念と優しい心を持った彼女には酷過ぎると思う。それは展開が鬱へしか向かない気がしますね。
 彼女が気付く前に、喧伝のために利用し死なせてやることしか出来なかったルルーシュの心中は、半泣きで本当に凄いことになっていたと思う。



 補足)『ゼロレクイエム』の計画詳細を三人で決めた
 ただC.C.は、ルルーシュの傍らでほぼ聞いていただけ。
 なお、『ラグナレクの接続』阻止直後のCの世界(思考エレベーター)では、ルルーシュ、スザクともに興奮気味で冷静さを欠いてしばらく睨み合っていたが、「皆が納得できる決着を必ず現実でつける」というルルーシュの言葉でスザクは剣を引き一度解散している。スザクの直感は、そのルルーシュの言葉には嘘がないと告げていたから。



 解説)『 』
 本人は忘れるのか隠してるけど―――『愛』かな。
 間違えても『ピザ欲の我慢』ではない。



 解説)期待と希望
 『期待』は自分以外に持つもので、『希望』は自分で持つものなり。
 例えば、ルルーシュにあんなことやこんなことをしてほしい、そして自分は暗い定めを吹き飛ばして早く魔女から人間に戻りたいなど。



 解説)ネオルネッサンス建築
 19世紀前半からヨーロッパで起こり、世界へ波及した建築様式。日本でもその様式は見られる。以前のルネサンス建築に基づきつつ、当時の新しい建築方式を取り込み昇華している。



 解説)対ギアス国際捜査組織『A-GIIO』のE.U.内にある支局
 一見不用心なように見える場所も、建物ごと軍が24時間監視している。
 また外壁側や主要な箇所のガラスはすべて防弾耐爆ガラス、エレベーターや区画ごとに監視カメラや静音遠隔銃、装甲シャッターに催眠ガス等まで設置されておりセキュリティーは十分と言える。



 解説)四世代KMFのグラスゴー
 ブリタニア製。
 踵部に接支点があり、横や後ろへ地面に平行に倒すように伸びた脚先に車輪付いたランドスピナーを装備することで劇的に機動力がUPし、世界で初めて実戦に投入されたKMF。
 日本侵攻にも使われた。

 解説)サザーランド
 ブリタニア製の第五世代KMFで、その場にて方向転換する超信地旋回も可能になっている。
 優秀な機体で、第六世代やフロートシステムが登場したあとでも、この機体用のフロートユニットも開発され各地の戦線で多く長く使われた。



 解説)ドリアーヌ・オージェ大尉
 元E.U.軍KMF部隊第62連隊第3大隊隊長。
 UNDER-HUNDREDのユーロピア正規軍精鋭部隊を率いていた。
 撃破したブリタニア軍KMF数は優に20を超えている。
 駆っていた機体がパンツァー・フンメルなだけに恐るべき戦績と言えよう。







 OPはやはり定番のCOLORSかな。



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