コードギアス ~黄昏のルルーシュ~   作:カメル~ン

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DOOR 04 漆黒の歪(ひず)み

 

 

 

 稀代の天才科学者達は、当代にも数名存在する。

 世間知らずで無垢だった若鳥な工学者ニーナ・アインシュタイン。

 優しい変人技術者、ロイド・アスプルンド。

 気分屋ながら人情家な女性技術者、ラクシャータ・チャウラー。

 彼らの名はその才能により世界へ轟き、皆の明日へ輝かしい光を放っていた。

 

 そして一方で、闇に溶け込み表に殆ど出ない者もいたのだ。

 

 彼の才能は、研究への方向の度合いと共に次元が違っていた。

 ギアス嚮団で名乗っていた名は、K・ファットマン。名前に反して体は細く背は高い。

 そう、思考エレベーターやギアスキャンセラー等を設計開発し実現化した人物である。年齢と経歴は一切不明、自らのすべての過去データを消去している。

 嚮団でも彼の処理能力は並みのコンピューター以上ではと評されていて、10桁数字で10回分の『四則演算』を、並列で同時に10問、それを1分以内に回答するという離れ技を平然と成した。普通、回答をキーボードへ打ち込む時間だけで制限時間は終わってしまうだろう。

 簡単に言うと彼の脳の中の思考速度と身体反応速度が圧倒的に早いのだ。

 彼曰く、問題を見ると即座に答えが浮かんでくるという。また周りの人間の動きが常にかなりスローに見えているという。

 そんな特別な彼は残念な事に―――冷酷に満ちたマッドサイエンティストだった。

 非人道的な兵装や科学研究が大好きだった。

 人体実験が大好きだった。

 人間が苦しむところを見るのが大好きだった。

 

 そして人間が死ぬほど憎み合うところを見るのも―――『当然』大好きだった。

 

 世界には、平和が気に入らない人間も存在するのだ。

 だが、彼は人の上に立つのは好きでは無かった。

 そんなことよりも、より長い時間研究していたかったのだ。

 あの『ラグナレクの接続』についても、全人類が他人へ思考をさらけ出す状態になったとしても、自分用のダミー思考を用意できる『システム開発管理者』の自分には関係ないと内心割り切っていた。

 なのでギアス嚮団という、閉鎖された漆黒の場所を提供してくれていたV.V.にとても協力的だった。

 彼がギアスの種類の中で特に興味があったのは、『範囲結界系』と『操作型』や『命令型』、そして『強制型』だ。より多くの人間を滅びの業火へと叩き込めるからだ。

 ギアスをキャンセル出来るという事は原因の解析にほぼ到達しているということである。

 彼が研究開発しているものの中でまだ実現化していない物がいくつかあった。

 それらの開発コードは『G-Armament(G兵装)』と呼ばれていた。

 

 

 

 その一つは―――通称『ギアス砲』である。

 

 

 

 だが、それを搭載した戦略KMFギアリスを設計中にギアス嚮団は黒の騎士団に襲われた。

 ファットマンは崩落した瓦礫の圧殺により死亡となっている。

 しかし、彼の遺体は体格に対して一部分量しか確認されていない―――。

 

 

 

                ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ギアスに掛かっていた少女メレーヌを助けて、あれから十日弱経った。

 ルルーシュの服装は酪農家風の服装からスーツ姿に代わり、乗り物も荷馬車からセダンタイプの車へと変わっていた。もちろん『ルーク』は国際免許を取得済の青年だ。

 

 ルルーシュである『ルーク』はメレーヌの父親、彼女と同じ赤毛をしているレイナルドに引き止められていた。

 レイナルドはフランス南部で物流の一翼を預かる大手の会社を経営していた。戦時中でも物資が多く移動する為に、必要な倉庫や海と陸の運送は景気の良い業種だった。

 病院へ居た時に仕事中だったルルーシュだが、後から車でやってきたレイナルドの部下の手配した配送屋が、ルルーシュに変わって馬もろとも荷馬車ごとトレーラーへ乗せ、配送と返却に向かってくれた。

 その間に何故かルルーシュ用に新品の着替えまで用意されていた。そのスーツへ着替えると、見違えたルルーシュの姿にメレーヌは見惚れ、頬が微妙に赤いようだった。そしてルルーシュは彼女と両親らと一緒にリムジンへ乗せられて、リュヌルージュ家へと連れ去られていた。

 レイナルドは、ルルーシュの予想通り礼を尽くす人物だったのだ。

 所見で邪険にされていれば、その目は無かったのだが、身なりに構わず礼儀正しい握手を求められた事からそういう人物だと睨んでいた。彼は手袋も外して握手をしてくれていたから。

 ルルーシュは車の中で『ルーク』として、飛び級で大学を卒業した簡単な経歴と、出身がブリタニアだとレイナルドらへ告げる。歴史を軽視する『破壊皇帝』に賛同できずE.U.へ来たという偽の理由も付け加えていた。

 レイナルドは、ブリタニア人としてE.U.で働くルークは、先ほどの姿からも仕事を当然冷遇されていると考えた。

 彼の会社はユーロ・ブリタニアからも仕事を受けていた事もあり感情的にはかなり中立な立場、そしてE.U.が禁止していたブリタニアへの貿易を完全に再開した話を重視していた。

 

(ふむ、ブリタニアとはブリタニア人の担当の方が交渉もし易い……か)

 

 その場は「そうか大変だったな」と告げるレイナルドだったが、マルセイユの郊外に構える大きな邸宅へ帰宅後、お礼の晩餐の席で『ルーク』へ話し出す。

 

「ルーク君、どうかな? 私の仕事を少し手伝ってくれないか」

 

 その父の言葉に、メレーヌは嬉しそうにルークの顔を見る。彼女の横に居た妹や弟は余りいい顔をしていなかったが。

 ルルーシュは予想していた言葉に、『わざと』少し驚いた顔をして答えた。

 

「えっ、よろしいのですか? そのご厚意……正直とても助かります」

 

 そう控えめに返していた。

 次の日から、客人待遇ながら本部事務所で雑務の手伝いを始める。間もなく得意先との何冊もある取引決算資料で間違えが発覚したがそれがどこなのかが不明で、部長らを初め十数人が数時間騒然としていたところを、雑用だったルルーシュが僅か10分足らずで見つけ出したり、別の日には過去の取引の件で、損害賠償も有り得る難題な不祥事が発生。その担当や部長らが別件で出張して不在だったが、「行ってきましょうか?」と代わりに雑用のルルーシュが客先へ出向いて理路整然と穏便に処理するなど、他にも数々の問題を『雑用の立場』で解決。

 かつて対E.U.戦で、ブリタニア軍側の軍師を務めたほどの能力を持つ彼にすれば、造作もなく当然の結果と言えるか。

 その華麗な手際と能力の高さは、本部事務所でも数日で有名になった。

 そしてそれは、レイナルドの耳にもすぐ届いてきた。

 いずれも会社にとって小さくない損失になる問題だったのだ。

 

「うぅん、素晴らしい青年だな、彼は。会社にとっても恩人になってしまったな。少しだけ、彼の人となりと仕事ぶりを見たかっただけなのだが、余計な心配だったようだな」

 

 そして数日後、レイナルドの秘書の一人となり、メレーヌの送迎を日課とするようになっていた。

 雲が少し多い晴れ間の中、ルルーシュは学校から帰宅する車を走らせる。

 

「メレーヌ、今日はどうだった?」

 

 本来なら『お嬢様』と呼ぶところだが、彼女の父であり社長のレイナルドから普通に呼びたまえと許可が出ていた。メレーヌからも言われていたのかもしれない。

 おまけにルルーシュは邸宅の離れの建屋の一室を与えられ、秘書ながらほぼ客人として逗留していた。自由時間もかなり有り、動きやすい位置であった。

 

「はい、勉強の方もつつがなく。今日も友人らとも楽しく話が出来て有意義に過ごせました」

 

 バックミラー越しに垣間見える彼女の表情は、穏やかに微笑んでいる。

 メレーヌが通っている学校名はラシーズといった。『リセ(中等教育後期)』と呼ばれる、日本で言うと高等教育になる段階の普通教育課程の学校だ。Premièreと呼ばれる学年で二年生にあたる。

 彼女の送り迎えはすでに八日目になっていた。

 あのギアスを受けた次の日は大事を取って休んだが、それ以降、ギアス能力者を探し通学に際して、率先してルルーシュが車で毎日送迎していた。メレーヌが放課後に友人らと会うと言うときも、用が済むまで少し離れた所に車で控えていた。ルルーシュはその為にリュヌルージュ家にいるのだ。

 毎日学校へ付いた際も周辺を感知するが、特に怪しいものは感じなかった。

 ルルーシュにしてみればメレーヌは『囮』なのだ。ハッキリ言ってギアス能力者さえ見つかれば、彼女の生死は二の次と言っていい。『アイツの事』が優先するのだ。もちろんメレーヌと知り合い、一宿一飯の恩も有るので最善は心掛けるつもりではいる。

 ここでルルーシュの携帯が鳴る。C.C.(アイツ)だ。携帯をハンドレス形にして一応は出る。しかし、「悪い、今仕事中だ」と言ってすぐに切った。C.C.の用件は予想出来たからだ。

 

「ルーク、お知り合いの方ですか?」

「ああ、あの荷馬車で荷物を運んだ時に、ヒッチハイクで乗せてあげたやつなんだ。ピザ好きの暇なやつで、だから時々掛けて来る」

「……時々、会ったりとか?」

「いや、下ろす時に別れてから会ってはいない」

「そうですか」

 

 前方の交差点の赤信号に、ルルーシュは車をゆっくりと止めた。

 すると、なにやら馴染みのある感応と、いけないモノが目に入って来た。

 横線しかないフランスの横断歩道を渡る一人の女が、ルルーシュらの車の前でこちらを向いて立ち止まった。

 左手にピザの箱、髪は艶やかな黄緑の髪を風に軽く靡かせて、右手でピザをむさぼりながらC.C.が、ルルーシュの顔をフロントガラス越しに見降ろし目線で仁王立ちしていた。先日とは少し違うが乙女な服装をしている。

 

(また……待ち伏せか……)

 

 その姿を見るルルーシュの表情は―――引きつっていた。

 

 

 

「相変わらず奇抜な行動力だけは認めよう。で、C.C.……どういうつもりだ」

「こちらが聞きたい。明日で十日目なんだが?」

 

 どうやら彼女は一人暮らしが早くも限界らしい。だが甘やかしに応じるつもりはない。

 ルルーシュは先にメレーヌを家まで送って引き返し、待たせていたC.C.を拾って駐車場のある店に入る途中で問答していた。すでに、ピザは食い尽くされ、箱はゴミ箱へ処分されていたようだ。すでに手には持っていなかった。

 

(コイツ、不老不死でなければ、体が絶対ピザっていたはずだ……)

 

 二人は周りを確認し、少し奥にある見通しのいい人気(ひとけ)の薄いテーブルを陣取り、飲み物を頼む。

 ここ、マルセイユはC.C.らがいるエクサン・プロヴァンスから南へ20kmほどの距離にあった。彼女は鉄道で来たらしい。

 これまでもメレーヌに掛けられていたギアスの件で、度々携帯で連絡を取り合っていた。

 あの『感知』するために必要な微弱なC感応の件も、慣れれば大丈夫だと言う。まあ慣れるのにどれほど掛かったかは忘れたらしいが。それほど慣れるまでの期間は短かったと思いたい。

 そして―――C.C.側で調べていた報告書で気になった件の一つ、『異常な死に方が路上で10件ほど確認されている』事項が今回の件に当てはまりそうだという。

 それらはいずれも窒息死らしい。だが、首を絞められた形跡がいずれもないという。刑事事件としてはどれも行き詰っているとのことだ。当然だろう、恐らく自分の意志で窒息しているのだから。目撃者がいる場合は、いずれも急に倒れて亡くなるまで苦しんでいたという事らしい。毒物も検出されない限り、医学的には突発性の『異常死』に行きついてしまう事だろう。

 再度C.C.と確認する。

 

「それらの人物関係は?」

「もちろん洗っている。単独もあるが、半分程は知人らで固まっているようだ」

 

 警察はこの段階で事件性について『恨み』の意図は見えるが毒物のような証拠もなく、アリバイも全員にあり『突然死』という扱いにせざるを得なかった。

 

「C.C.、その死んだ順番は?」

「最初は同じ日の、ほぼ同時刻に知人ら四人が―――其々違う場所で死んでいる。その次も知人らがおのおの別の場所で二人ほぼ同時にと続いている………やっかいな、ギアスだな」

「そうだな」

 

 そして、最新の死亡者のリストデータを確認する。彼らの概ねの性別を除き、職業、年齢、発見場所はさまざまだった。だが、10分程の差で同時刻帯は何組かある。そして、新しい不審な死のケースで、病院に運び込まれた後ではなく、元からの入院患者が二人いる。いずれも違う病院だった。

 

「C.C.、ギアスの特徴や犯人像は見えて来たぞ」

「ほう」

「別々の場所で大体同時刻となれば、『時限式』しかないだろう。そして死んでる人数からおそらく、同じ場所で選別し直接目を合わせた者達だろう。範囲系なら自分以外が全部死んで、すぐに誰かバレる恐れがあるからな。そして、メレーヌの入院している友人が手紙を書く事を知っていると挙げた人物らで言えば臨時の医師か看護師辺り。そして見落として抜けているのがあるとすれば―――外来患者だ。他の病院に出入りしても不自然じゃないとすれば病院に用のある者と分かる姿でないと入りにくはずだ。白衣もしくは包帯や松葉杖を使う人間。……あと死んだ知人らの職業、年齢がバラバラとなると―――なにかの会かクラブ関連か」

「そうだ、知人らはトレーニングジムやテニスの会等が同じようだ」

「能力者はそれに入っている者か、交流や関連のある者というところ―――でいいのか」

「ん? どうしたルーク」

 

 ルルーシュは一つ引っかかる事があった。

 

(……メレーヌのケース。誘いに手紙を使う凝りようはなんだ? なにかまだ足りない情報が……)

 

 ルルーシュはここで結論を出すのを一旦保留する。

 

「C.C.、まだいくつか調べることがあるようだ。今日はこの辺にしよ―――」

「そうは行くか、いつ引っ越してくる?」

 

 ルルーシュはそれに答えず時計を見る。時刻は午後四時過ぎだった。

 彼は、「いつ越して来るんだ」と食って掛かってくるC.C.を車へ押し込むと、急ぎ発進し道を走り出した。

 

「メレーヌといったか……可愛い娘だな」

「自分の部屋は整理整頓するというし、素直だからな」

「……」

 

 目的地はもちろん、エクサン・プロヴァンスにあるC.C.の部屋だ。

 車を着け見上げると、四階建ての白レンガの壁でおしゃれな建物だった。

 階段を上り、最上階の玄関扉の前に立ち、ゆっくりとその白い小奇麗な扉を開ける。

 が、そこは期待を裏切らない予想通りに見事な―――

 

 ゴミ屋敷状態だった。

 

 『十日という時間はお前には永遠に近いほど長いのか』『積めばいいと言うものではない』そんな名言が飛び出していた。

 ルルーシュは、立ちはだかる山を躱しつつ、ズカズカと部屋へ入りながらこの状況を予想し、先ほどリュヌルージュ家に戻った時に調達して来ていた巨大なゴミ袋を分別種類ごとに開き、凄い勢いで部屋中のごみを分別する。

 ルルーシュの処理能力が無駄にフル活用されているシーンと言えよう。

 10分ほどで脱ぎ捨てていたC.C.の洗濯物を分類し、洗濯開始。

 その後、30分で他のごみを分類し所定の廃棄場へ移動。20分でバストイレキッチン清掃、20分で掃除機、拭き掃除完了。

 最後に洗濯物を干して掃除を終了する。時刻は午後六時過ぎだった。

 この間、もちろんC.C.は二人掛けのローソファーに座り、笑顔でルルーシュを時折横目で伺いながら『チーズくんぬいぐるみ』を横にお茶を飲んで寛いでテレビを見ていた。

 そして、ようやく落ち着いたルルーシュへ『然りげ無く』言う。

 

「なぁルーク、一緒にゆっくり食事でもして、泊まって行くか?」

「いや、言っただろう? 明日も早くから調べる事や、仕事もある」

「……そうか」

「じゃあな」

 

 ルルーシュは早々と玄関で、C.C.に見送られる形で扉を閉めて去る。

 

「(ルルーシュ、)私は少し頑張ったのだぞ……」

 

 僅かに目線を落とし、寂しげに小声でつぶやいたC.C.だったが、すぐに呼び鈴がなる。

 扉を開けると、ルルーシュだった。

 

「合いカギを寄越せ。明日、暇な時に洗濯物へアイロンを掛けておいてやる」

 

 ルルーシュも結構それなりに気を使っていた。

 

 

 

                ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ルルーシュが助けた少女メレーヌへギアスを掛けたその人物は、ずっと待っていた。

 そう、V.V.様からの指示を。

 どうしようもなかったこの怒り憎しみ恨みを、法に触れずに晴らすことが出来る『王の力』であるギアスをくれた方からの指示を、ずっと楽しみに。

 

(ああ、憂さをも晴らせる!)

 

 しかし、三ヵ月以上経過しても動きが全く無かった。連絡が完全に途絶えたのだ。こちらから連絡を取ろうとしても連絡先のIDへは接続されなかった。

 世界は新皇帝になっていたルルーシュ率いる神聖ブリタニア軍が、超合集国との超勢力同士のにらみ合いで最終戦争に突入するのではという混沌とした状況だった。

 強烈な終わりへの不安が人々を覆っていく。

 そして。

 

(また……裏切られた―――)

 

 もう限界だった。

 その人物は自分で動き出していた。思うがままに。

 『王の力』を使って。

 まず、怒りの根源になった者。そして、それらに加担していた仲の良いもの達。あげくは、関係が無かったにも関わらず割り込んで来た者達や、おこぼれ的に関係をむさぼっていた者達へと犠牲者は徐々に広がって行った。

 ただ、最後は人として誰にもあげたくない大切な者をと決めている。

 

 

 

                ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ルルーシュの運転する車が、C.C.の部屋のある白レンガな建物の道脇に並ぶ駐車スペースから静かに走り去る。

 その様子に息をひそめて、建物傍の草むらの中から静観している者がいた。それも匍匐姿勢にて。さらにその服装は、何故か迷彩服で完全武装と言っていい。間もなく覗き込んでいた軍用の赤外線夜間対応双眼鏡を目元からずらした。

 その者の名は―――ドリアーヌ・オージェ大尉。対ギアス国際捜査組織 A-GIIO フランス支局のおとぼけ軍人娘である。

 彼女は興奮気味に呟いた。

 

「こ、これはぁ、スクーーープッ!」

 

 「プ」の部分で思わずちょっとだけ唾が飛んでしまっていた。

 

「なんとC.C.さんにぃ、尽くすタイプの若い元気な『男』がぁ!」

 

 言い方が微妙に卑猥である。そして大変な誤解(尽くすタイプ発言)がある。

 この子の若さ故か……。

 

「わざわざ掃除にぃ……そしてなんと言ってもぉ乙女のパンツまで洗っちゃう『洗濯』までもぉ! こ、これはタダれた……いぇ、ただならぬ関係ですぅ」

 

 ドリアーヌは、忘れていた必要なものを取りに支局から近くの部屋へ戻ろうとしたときに、車から(足早に)降りる二人を見かけたのだ。

 気が付くとドリアーヌは速攻で軍用の迷彩服に着替えていた。

 その後も途中、ゴミ袋を持って、何度も甲斐甲斐しくテキパキと運び出て来る男の姿や洗濯物を干す所を確認していたのだ。

 そしてじっと見始めて一時間半が経過していた。まさに、仕事しろと言いたい行為である。

 だが彼女はやめられなかったのだ!

 

 全てを見てしまった彼女は、颯爽とその場を走り去る。そして迷彩服のまま―――支局へと全力で向かっていた。

 

「関係はそっとしておきたいですがぁ、皆に報告だけはぁ♪ でもぉ彼、早いお帰りでしたねぇ。ま、まさかぁ……すぐに終わっちゃッタノかなぁ? はっあぅ、イヤだわぁ、私ッたらぁ!」

 

 ドリアーヌは、いろいろズレながらの意味深な言葉を連発していた。

 

 

 

 C.C.は何も知らずに明日を迎える。

 そして、ルルーシュにも……C.C.を見たメレーヌが屋敷で待っている。

 

 

 

つづく

 

 

 




2015年02月13日 投稿
2015年02月14日 文章追加



 解説)ギアスキャンセラー
 ギアス嚮団内で、ファットマン教授が禿頭のバトレー・アスプリウス将軍へ提供し、ジェレミアの左目に搭載された。不意に思考へギアス影響を受けた場合でも、感知すると思考をホールドし、一秒程度で内部警告と自動解除する機能もある。意識的に連続で範囲結界内を解除し続けられるため、ギアス能力者にとっては天敵な機能である。
 ただし、調整等が困難を極め、上手く思考とリンクし機能する確率はかなり低く、現状で正常動作するのはジェレミアだけである。



 解説)世界の車と交通規則
 イギリス以外のヨーロッパ、南米ほぼ全域、北アフリカ、中東、ロシア、中国、韓国、台湾、フィリピン、アメリカ、カナダは左ハンドル・右側通行。
 イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、インド洋周り(中東とマダガスカル以外)は日本と同じ右ハンドル・左側通行。



 解説)フランスの教育制度
 9月に新学期を迎える。
 義務教育は原則として6歳ごろから16歳ごろまで。
 小学校から生徒の成績により、落第や留年、飛び級の制度がある。
 初等教育は5年間。コレージュ(中等教育前期)は4年間。
 コレージュ修了時には、国家資格である中等教育修了資格証書(Brevet)を受け取る。
 そして日本の高校3年間に相当するが、リセ(中等教育後期)。
 ここで大学を目指すための普通教育課程、工業の専門的な知識を身に着けるための工業高校、そしてパンや製菓などの専門知識を身に着けるための職業高校に別れる。
 大学入学資格試験であるバカロレアがあり、合格すると行きたい大学の学部に願書を出し入学許可をもらう。日本のように大学別の入学試験は無い。
 ただし、各大学に定員があり、当然上位からの入学となる。
 そして大学に並ぶ、グランゼコールというエリート学校がいくつかある。







 ルルーシュのスーツ姿の挿絵が欲しいかな。
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