コードギアス ~黄昏のルルーシュ~ 作:カメル~ン
ブリタニアは第99代皇帝ルルーシュにより貴族制度を廃止したが、ここE.U.(ユーロピア共和国連合)にはまだその制度が色濃く残っていた。
E.U.は少し前まではブリタニアの7割ほどの力を持っていた。だが、神聖ブリタニア帝国との戦いで疲弊し、領土と勢力地域の大半を失い、加えて超合集国の誕生でイタリアとポーランド州が抜けてしまっていた。最近ブリタニアからの領土無条件返還により、フランスとスペイン、ポルトガル州等は復帰したが、世界へは以前の半分ほどの影響力も無くなっていた。
それでも貴族達は、変わらず栄華に耽っていた。
これまでの人民を顧みない、四十人会議が行ってきた政治や戦争、それがまだ続いて行く―――このまま許していていいのか?
そう考える一部の民主改革派の同志たちは、E.U.の貴族制度もブリタニア同様、廃止すべく崩壊させようと社会の裏で徐々に集まって来ていた。
それがE.U.改革連合、そしてその実行部隊となるのが通称『黄と緑の開放団』である。
それらを率いるは、フランス州の二十代の青年、マクシミリアン・アメデと仲間達。
その裾野は民間は元より政府関係、警察、軍内部へも及び、KMFに至る物資の持ち出しまでもが密かに行われていた。E.U.内での、軍関係の装備紛失の多くはこのE.U.改革連合配下の『黄と緑の開放団』に因るものであった。
彼らの計画は―――
定期的に行われるE.U.総会会議で集まる百四十人近い四十人会議メンバー全員の拘束又は殺害の上での民主化クーデターである。
そのために周辺や重要施設類を制圧する為のKMFを各所から集めていたのだ。一部軍も引き込む予定であるが、まず独自の部隊を用意する計画であった。
すでにKMFパンツァー・フンメルと機動兵器ガルドメアを三十余機は集めていたがより多く集めようとしていた。
そんな中、『黄と緑の開放団』の前へ不思議な男が現れる。
彼はある日、極秘で夜間に開いていた『黄と緑の開放団』の集会へいきなり『目に付く奇抜な衣装とピエロな仮面』で現れ、盗んで来たというKMFを買い取れと言ってきたのだ。声からまだ若い感じであった。彼が単身だったことと、その場にいた元ブリタニア軍のKMFパイロットが、稼働確認までして問題がないということで一応信用し現金を支払った。
当然、マクシミリアンらは配下にその後をつけさせたが、いとも簡単に撒かれてしまう。後をつけさせた者は何処で撒かれたのかすら「覚えていない」という。
その不思議な行為はその後も続き、不思議な彼から提供されたKMFはすでに五機にもなっていた。その男は組織に入る気は無いらしく、対価にいつも現金を要求して来た。それも機体の本来の価格からすれば数十分の一と格安だった。手元に置いておけない物なのでそれなりの纏まった金額なら良かったのだろう。
彼が毎回奇抜な服装と仮面が異なる理由や、個人でどうやってこれ程の物を盗み出して来れるのか全く分からなかった。
しかし、彼が六機目に盗み出したのが、量産前でE.U.極秘の新型試作試験機KMFフリードリヒだったことで事態は大きく水面下で動いたのだった。
◇ ◇ ◇
C.C.の『男性関係』が支局の共通の秘密になった次の日、C.C.は今日も街内の一画を探査した後、支局へ顔を出した。
探査は一応、窒息事件の被害者に関する場所を考慮検討されて行われている。断じて美味いピザの店のある地区が、重点的というわけではない。
すでに昼前だったが支局内へ入っていくと、ドリアーヌらが―――またニヤニヤとしていた。
それは『なぜか』昨日、C.C.の男(ルルーシュ)が昼間(病院の清掃業者を調べた後)にC.C.の部屋へ寄って行ったことを知っているからだ。
その時、C.C.はルルーシュの接近を感知して「用を思い出した」と言って突然不自然に部屋へ帰って行ったのを、ピンときたドリアーヌが「飲み物を買って来るねぇ」と少し遅れて後をつけたのだった。
(彼に足繁く通って貰えてぇ、ホントにC.C.さんはラブラブですねぇ~♪)
ドリアーヌはいつの間にか再び、迷彩服でヘルメットに枯れ草まで盛られた匍匐姿勢で、C.C.の部屋の建物傍の草陰へ潜み観察をしていた。本当に支局の仕事をして欲しいものである。
そうやってC.C.はまた、部屋へ通う男が立ち去るところを最後まで見られてしまっていたのだった。
C.C.は、「毎日羨ましいぃ~」のドリアーヌの言葉で皆のニヤニヤの理由に気付き、彼らの対応に溜息を吐きつつも深追いはせず、街の探査の報告と新しい情報の確認に入った。
その時に、青年ニルスからドイツ州内で起こった大胆な試作試験機KMFフリードリヒ盗難の話が出て来たのだった。C.C.は口にする。
「E.U.の新型試作機のKMFか」
本来なら極秘の内容だが、彼らの目的はギアス能力者の排除である。
ダニエルのおやじ曰く、警察の方へは『単に』KMFの盗難と捜索を重点的に強化し徹底しろと通達が降りて来ているという事だった。
青年ニルスからの報告では、政府や軍の上層部も本腰でその対応に乗り出す動きだと言う。まあ極秘兵器が奪われたのだ。当然の対応と思われる。
ドリアンヌからも、軍の兵器庫でも訓練後や移動、持ち出しの際のチェックが非常に厳重になって来てると報告を受けた。
最近でもKMFの紛失については時々、非常に大胆ながら全く目撃されていない件が数件報告されていた。それは、どう考えても正面から侵入しているのにも関わらず、気付かれない事は『有り得ない』状況だったというケースである。
(……不可能を可能にする―――それが『王の力』でもあるギアスなのだ)
C.C.は、このKMFフリードリヒ盗難と異質な数件についてそう確信していた。
港町マルセイユの街中を、ルルーシュはメレーヌを学校へ迎えに行くために車を走らせながら、窒息事件のギアスの能力者が見つからない事で考えを大きく改めようとしていた。
当初彼は、能力者は発見次第―――『全員即消す』つもりで考えていた。
彼とC.C.の最終目的は、ギアスと能力者の討滅なのだから。
だが、一人に掛かる手間と時間がどれほどか、それは予想を大きく超えるのではと思い始めていた。
ルルーシュ自身とC.C.の探索能力だけでは、やはりたった二人と少なく厳しい。
だからギアス能力者達の協力が、より多くのギアス能力者発見の為の探査に不可欠なのではないかと、今はそう考えるようになっていた。
そのために今だけは、可能な限り全員味方に引き入れる方向へ考えなければならない。
だが、対ギアス国際捜査組織 A-GIIOは、組織としての権限や装備は申し分ないが、本来の目的として『ギアス能力者討滅機関』の位置付けである。
そのためA-GIIOとは別にギアス能力者達を一時期集めておける『独自の組織』が必要ではないかと考え始めていた。
ルルーシュの中で―――新しい組織の構想が始まる。
そんな時、C.C.から携帯で『KMFフリードリヒ盗難の件』関連の連絡を受けた。
◇ ◇ ◇
『忘却のギアス』をもつ、オランダ州出身の青年ヨアヒム・スタンジェーはドイツ州より自らトレーラーを運転し、E.U.改革連合のフランス州内にある『黄と緑の開放団』の一派へ、三日前にドイツ州のKMF研究地下施設から盗み出したKMFを届けると連絡を入れ移送していた。
『黄と緑の開放団』から手を回されていたE.U.内の検問所では、彼の能力を使わなくても形式的な確認しか行われず、ほぼフリーパスで通行出来た。
夜も更けた頃、予定通りの時間と場所まで移送しKMFを運び込んだ。トレーラーを下りて来た彼の姿は、例の通り奇抜な服装に変わったデザインの形をした仮面を付けた姿をしていた。
手際よくKMFを引き渡し、約束の金の入ったジュラルミンケースを受け取ると、彼はトレーラーに乗り込んで引き上げていく。
だが『黄と緑の開放団』が再び追跡者を付けていた。
高速道路を飛ばしながら、バックミラーに映る少し離れてずっと付いて来る車を眺めていたヨアヒムは呟く。
「……こりないねぇ。じゃあ、忘れてもらいますかぁ。距離は二百(メートル)程でいいかなぁ」
そのままトレーラーを走らせる彼の仮面の中の瞳に、ギアスの『赤い翼の紋様』が浮かび上がる。
すると、追って来ていた車がすぐ次のインターチェンジで高速を降りて行った。
「これでよし、と」
彼はそのまま三十分程走り続け、高速を下りてからもしばらく走ると山の中の広い拓けた駐車スペースにKMFをも乗せられる大型トレーラーを止めた。
そして、トレーラーを下りたのだが……そこで初めて彼は気が付いた。
空から風を切るような音とエンジン音が近付いて来ているのに。
そして、あっという間になんと駐車スペースの空き地に―――ヘリが降りて来て着陸したのだ!
(チッ、空からもかよ。二百じゃ距離が足りなかったか。『忘れろ!』)
ヨアヒムは再び範囲結界系のギアスを起動する。
だが―――
「諦めろ、俺には通用しない。なるほど……お前のはそういうギアスか」
ヘリを操縦していたヤツはギアスの範囲内にいたにもかかわらず、平然と降りて来たのだった。
おまけに降りてきたソイツまでもがヨアヒム自身と同じような……だがスタイリッシュな仮面を付け、マントを身に羽織っていたのだった。
夜中であり、駐車スペースの端にある街灯からも離れており、正確な色までは判別できない。
ヨアヒムは、驚くと同時に焦っていた。
(そ、そんな馬鹿な!? 俺のギアスが効かないだと?)
同時に、思い出していた。この目の前の人物からのC感応と、ギアスをくれた者のことを。
ヨアヒムの派手な姿を見た瞬間にルルーシュは、C.C.の報告内容と合わせてこの男のギアスの大まかな全貌を把握していた。
狼狽えているヨアヒムの様子に、ルルーシュは畳み掛ける。
「一度で全員に掛けられる有効範囲の広い、範囲結界系か。その派手な『姿のイメージ』を相手に覚えさせ、その『姿のイメージ』に関連することを『命令的に』消したり忘れさせるギアスだな。本当は認識出来ていても、今の科学では脳の中の映像情報までは抜き出せないからな。『覚えていない』と言わせればいい」
「………」
ヨアヒムはこの現れた人物に問うた。
「お、お前は……V.V.様の……知り合いなのか。名は……?」
「そうだ。だから、我に従え。我が名は―――ファントム」
ルルーシュは、ヨアヒムの存在を意外な所から知ったのだった。
メレーヌの父の会社の資料を手伝いで整理していると最近、無駄に回送の車や船が多い事に気が付いたのだ。
それを集計してみると、いろいろと見えて来ていた。
メレーヌの父、レイナルド・リュヌルージュもE.U.改革連合へ密かに手を貸している一人であったのだ。回送のトラックや船と偽って、その連合所有の一部の物資を―――KMFの極秘輸送までも請け負っていた。
ここの駐車スペースとトレーラーは、リュヌルージュ社の所有するものであった。
大型トレーラーを回送で乗り回していたヨアヒムも下請けの会社の社員の一人だった。
当たりが付けば、あとはC感応を調べればいい。
彼のC感応は、結構離れていてもハッキリとルルーシュに感じ取れるものだった。彼はギアスまで使っていたので尚更であった。
ルルーシュは、青年ヨアヒムから『忘却のギアス』の能力を聞いた。
彼の『忘却のギアス』は、半径で一キロ強にもおよぶ最大有効範囲を持つ。
使用回数は、同一人物でも識別が付く限り何度でも可能。だが自分には無効だという。
効果は、能力者の記憶に存在する『イメージ(なので人数は複数も可)』に関連することを有効範囲内の相手に『命令的に』消したり忘れさせる。なので、記録映像等で見つけても気付けば『忘れるため』に、機械的にも消してくれる。記憶には残っているが、「知らない、覚えていない」と思考させ言わせるギアスである。
なので、特徴のある奇抜な印象に残る服装や仮面の方が効果が出やすい。逆に言うと明確でないと伝わらなくなり中途半端な事になる。
また、良く会う人に何度も掛ける場合には注意が必要。毎回仮面と衣装を変える必要がある。特に素顔を知られると「覚えてない」と言わせられるが、矛盾が発生しギアスの存在を知られることになりかねない。
ヨアヒムは、幼いころより『持ち出せそうにない物や、不可能な状況で盗んでみたい。それは見た者がその事を忘れてしまえばいいのだ』とずっと強く思い描いていた。
そんなある時、V.V.が現れたと言う。そして不思議な事に彼のその思いを全て知っており、ギアスを与えてくれるとこの能力が発現したという。
その三日後、ドイツ州東方のウッカーマルク地方の山中、KMF研究地下施設から再び―――残っていた試作試験機KMFフリードリヒ二機とも盗まれていた……。
確かに警備は増えており警戒も厳重だったが、ヨアヒムのギアスの前には通用しなかった。二人は警備の目の前を普通に歩いて通れたのだから。(ルルーシュはこのときファントムのかっこうではなく、ヨアヒムの衣装のように奇抜な仮面等を用意した)
この略奪の件だけならE.U.は崩壊へと向かいつつあると言って良かった。
何といっても、最初の盗難後も同じ場所に極秘兵器は置きっぱなしという失敗を仕出かしていたのだから。
ルルーシュは優秀そうなKMFを手に入れようと考えたが、半分『さすがにもう無いだろう』と思って行ってみると、二機がそのまま置かれていたという。
◇ ◇ ◇
三か月以上前は毎日が地獄だった。
「いつか、あいつらの首を絞めて、殺してやりたい」
そんな思いに日々浸っていたころ、あのお方……V.V.様は目の前へ現れた。
その時なぜか、こちらの事情を全て知っていた。神様みたいだった。
そしてこのギアスを授けてくれた。
発現したその能力は、『窒息のギアス』。
今の所、確認出来た能力の範囲は―――
目視(濃いサングラス程度なら眼鏡やガラス越し可、鏡反射含む)により、こちらが目を合わせれればギアスを掛けることが出来る。
有効範囲は直線距離で最大百メートル程度。
発動は時限式。
発動までの設定継続時間は今の所、最大ニか月半以上。(記録更新中)
日付と時間(人が思考認識できる時間表現)を設定すればいい。例えば『今年の五月十六日の朝十時から十二時まで』とか。もちろん『いますぐ十分間』や『日の出とともに死ぬまでか日が沈むまで』でも可能だった。ただ、時間感覚は各自の体内時計や感情にも影響される。(例えば一時間と設定しても苦しさのあまり、早く終わらせようという思考が体内時計を進め、十分間になったりする等も起こる可能性有り)
また、同じ人間に何度でも掛けられる。
そして自分にも有効。
これで十分完全犯罪が可能だった。
特殊な点として―――ギアス能力起動時以外にはC感応がほぼない。
そう、私の名はメレーヌ・リュヌルージュ。
これは誰にも知られてはいけない私の秘密……。
(私用で一週間も居ないルーク。どこへ行ったのかしら?……とても素敵な貴方にはV.V.様と同じ感応がしていたけれど、私が大量殺人者だと知られればきっと嫌われてしまう……だから言えなくてごめんなさい)
いかに有能なルルーシュでも、人知れず仕掛けられた後にずっと二ヵ月以上動きが全く無く、加えて感応すらほぼ無い為に、C.C.ですら傍に居合わせても気付かれない能力者は探しようが無かったのである。
つづく
最後にINTERLUDE↓
2015年02月28日 投稿
解説)百四十人近い四十人会議メンバー
イタリア州とポーランド州が脱退して超合集国に移っているため、二百人程いた頃から数が減っている。
解説)ヘリ
普通にルルーシュがチャーターした。
料金は結構掛かるが、ルルーシュが持つ隠し資金の総額は実は結構あった。
本来ルルーシュは、働かなくても全然困らない。
解説)窒息のギアスとメレーヌ
解決編はルルーシュへバレた時に(笑
INTERLUDE)C.C.とその部屋へ通う男
ルルーシュが昨日洗った洗濯物へアイロンを掛ける為、渡されていたC.C.の合鍵を使って彼女の部屋へ入った。
「遅かったな、『ルーク』」
中のローソファーに、半裸な下着を着たような格好で寝そべるC.C.からそんな声を掛けられた。
「……お前、本当に暇なんだな?」
ルルーシュは、そう彼女へ言いながら、「放っておけ」とC.C.の返す言葉を聞き流しつつ、干してある洗濯物をサッと籠へ集める。そして、ローソファーの傍らの机で、彼はアイロンをブラウスやスカート等へ手際よく丁寧に掛け始める。
だが、どうもオカシイ。
(昨日洗った中に、こんな派手な―――扇情的な下着はなかったように思うのだが……)
ルルーシュにはまだ、それら下着の一つ一つを鮮明に記憶しておきたいというゲスな気持ちは無かった。
そう、下着類が、些か布の小さく薄い感じの装飾が可愛らしいものに変わっていたのだった。もちろんこっそり変えたのはC.C.自身である。
「なぁ、C.C.、これ―――」
そう言って、低温でアイロンを掛けられ畳まれた可愛らしく……少しイヤラシイ紐式の桃色なフリルやリボンの付いたパンティを手の平に乗せて、ルルーシュはC.C.の方を向いた。
C.C.は少し緊張する。
(も、もしかしてこれが気に入ったから―――目の前で魅せながら履き替えろと?! そんな……でも……♡)
だが、続く彼の言葉は『非情に』冷静なものだった。
「――こんなに小さく薄いものだと、お前でも、風邪を引いてしまうのではないか?」
プッチーーーン。
「済んだら、早く帰れ!」
C.C.は怒り出していた。
ルルーシュは折角アイロンを当てて畳んでやってるのに、なぜなのか納得できない。
「ああ、言われるまでもない。終わったら帰る」
ルルーシュは、速やかにアイロンを掛け畳み終えるとC.C.の部屋を後にした。
外で、またしても最後までずっと見張っていたドリアーヌが一言漏らす。
「あららぁ、今日も早かったわねぇ~。……に、二十分?」