荒くなる息ごと飲み込むように女の口を自らの口で覆いながら、少年はその柔らかい腿の肉を撫で上げる。下着の裾に指がかからない程度に、しかし、もう少しで届きそうな程度に。口の中で女の舌がわななく。焦点が定まらないほど近くにあるその顔をまつげでくすぐる。少年の背をつかむ女の指が力む。少年が好んで着る漢服がクシャリと歪む。少し顔を離したところで、大いに空気を吸って上下する女の横隔膜の動きに手を添え、服を剥ぎ取る。下着だけの姿になった女にまたがりながら、自分もまた着ているシャツを脱ごうとボタンに手をかけた。その手に女の手が重なった。
「ね、制服でしてみない」
コートスタンドにかけられている制服のジャケットを横目で指し、女は提案した。少年は少し驚いたように目を丸くする。しかしすぐにその目を細める。少し目尻を下げる。ぐにゃりと歪んだ隻眼に熱が宿る。
「先生にそんな趣味があったなんて」
閨事はいつも受身である女からの提案に高ぶりを隠さない少年は、マットレスのスプリングをきしませながらベッドから降りた。制服を取りに行く。遅くまで友人たちと出かけていたという少年は、今夜は制服のまま女の部屋をおとなった。外出着のままベッドに入るタイプでない少年は女の部屋のバスルームで軽くシャワーを浴び着替えを済ませている。こういうことは度々あるため、女の部屋には少年の着替えがいくつか備えてあるのだ。しかし、今日は、この脱ぎ捨てられた制服にもう一度、出番がやってきたらしい。
ハンガーから制服のジャケットを手に取り、少年は女を振り返る。下着姿でベッドに横たわる女を見て、何事かを思い付いたらしい少年は口の端をゆるく釣りあげた。そして、女を手招く。どうぞこちらへ、慇懃にお辞儀をしてカウチへ誘う。女はベッドから足を下ろし、ミュールをつっかけ少年の元へ向かった。ワインレッドの下着に赤いマノロ・ブラニクだけ身につけた女の肩に制服がかけられる。
「あなたにこんな趣味があったなんて」
二人は笑いながら顔を寄せ合う。唇を重ねながらカウチに倒れ込む。先ほどとは逆に今度は女が少年にまたがった。すでに熱を帯びている少年の下腹部にわざと乗り掛かる。触れ合った場所に圧力をかけるように、少年は制服の裾から手を差し入れ女の腰を強く掴んだ。片手で肋骨を数え下着の上から胸をまさぐり、もう片手は腰に添えながら擬似的な動きを何度か繰り返す。制服に覆われた肩が小さく震えるのを見て、少年は上半身を起こした。女が倒れて行かないよう背中に手を添え、そのまま下着のホックをはずし、胸の肉にやわく歯を立てる。その核心へ吸い付く。少年の丸い頭蓋に湿度ある溜息を吐きながら女は言う。
「制服を着るたび、制服を見るたび、思い出して」
私とのセックスを。第二ボタンと第三ボタンの間にある乳首に吸い付いたことを。入れば一番下のボタンより奥まで届くことも。
学校生活を楽しんでいる少年へ、祝福もあれば、ジェラシーもある。女は、少年が夢中になっている学校や友人とのつながりの証である制服に小さな復讐を企てたのだった。制服が肩から落ちないよう腕は少年の肩ではなく腰へ回した女が見せた復讐心、そのいじらしさに少年は言葉を失う。この歳上の、いつも冷静な、いつも自分を子供扱いする、この”先生”がまさか悋気を抱くとは。高揚して紅潮した頬がたわむ。自分の言葉で興奮する男の顔を見下ろしながら、どこか恥ずかしそうに微笑んでいる女にかぶりつきカウチの上へ押し倒す。舌を吸い、乳房をつかみ、あと一枚しか残っていない下着の中へ手を差し入れる。
「思い出して。あなたの匂いに包まれながらスると、私がこんなになっちゃうことも」
お呪い。女はもう下敷きになっているだけの制服ジャケットのカラーを手繰り寄せ、その内側にキスをした。
-
♪ luv「脳におまじないなme」