後多分結構失踪します。
「ルビコンが近い。そいつを起こしてくれ。」
もう4度目になる密航。
私はこの飛び降りる瞬間を何度も行ってきた。
ポッドのギリギリを掠める封鎖衛星の弾丸。...予定調和だ。
またポッドだけが墜落して...
ACは多少の損害こそあれど、無事。
LOADER 4。 私の機体であり、飼い主のウォルターから与えられた、最初の贈り物だ。
ここから私はグリッド125に着陸し、汚染市街に降下する。それから、『レイヴン』のライセンスを拾うのだ。
前の前前、さらに前では...
最初にウォルターの意思を継いだ。ラスティは私を「ルビコンを脅かす危険因子」と言った。
ルビコンを解放した。ラスティは私を、「ルビコンの解放者」と呼んでくれた。
でも、ウォルターとは、生きて帰れなかった。
コーラルをリリースした。
もう、どうにでもなってしまえと半ば自棄だった事を覚えている。
オールマインドに味方をしてウォルターと敵対しないはずもなく。
私は...
イグアスは、「お前に憧れた」と言ってくれた。
嬉しかった。 けれど、私は君に憧れていた。
自分を曝け出せる人。 私は最後まで、真に自分を曝け出す事は出来なかった。
これは4回目。
3つ以外に、道はあるんだろうか?
他の選択肢なんて私にはなかったように思える。
まるで、3つ中からしか選べないような。
その全てで、ウォルターは死んでしまった。
記憶を持っている事を打ち明けたら、何か変わっただろうか?
いや、多分、何も変わらない。
「リペアキットは...もう使ったようだな。」
うん、もう使ったよ。知ってる。
私はこれから汚染市街に降下するんだよね。
「621。お前には、これから汚染市街に降下してもらう。」
「カタパルトにアクセスしろ。」
わかった。
この衝撃にも、もう慣れっこだよ。
特有の衝撃に揺られ、ACが飛ぶ。
見慣れた風景だった。
あのヘリも、きっと、もう私の敵ではない。
「AC!?一体どこから...」
恨みはないんだ。でも、ごめん。
ライフルから何回が弾を発射し、パルスブレードで切り刻む。
MTが爆散する。
「あれだ。残骸にアクセスしろ。」
G7、ハークラー。なんでここに落ちてるのかはわからないけど...レッドガンのACだったんだろうね。
モンキー・ゴード。
トーマス・カーク。
この3つも、見慣れた。そして、どれも欲しい名義じゃない。
「...待て、621。反応をもう一つ検出した。」
「マーカー所法を送る。当たってみろ。」
...あれ?
この辺で一回、封鎖機構の巡回でヘリが来るはず。
何か、おかしい。
レイヴンのライセンスを拾う広場に行く。
「登録番号、Rb23 傭兵ランク圏内...むっ?!」
「621、退避しろ!」
ウォルターの焦った声が聞こえたから、QBを吹かして即座に離れる。
『...貴様だな。レイヴンを騙る愚か者め...!』
『貴様を『イレギュラー』と判断した。...即座に排除しなければならない...!!』
「...エクドロモイ、だと...?」
「...広域レーダーにまだ反応がある。...武装ヘリも来ているようだ。」
「............排除できるか。逃亡は難しい。」
えっ?
「どうやら奴らは友軍ではないようだ。恐らく勝手に出撃したのだろう。第三勢力判定...つまり、封鎖機構を追われているようだ。」
「互いの弾が当たる。上手く躱せ。」
えっ???
目の前には、ヨルゲン燃料基地で相対したエクドロモイ二機がいた。
その背後には、あの大型武装ヘリ。
...
やるしかないんだろう。
今回は、何かが違う。このチャンスを逃すわけにはいかない。
私は今一度覚悟を決め、一台目に突撃した。
『貴様さえ排除できれば...秩序は保たれるのだ...!』
怨嗟籠もった声で、遠隔スピーカーから声がする。
...もしかして、記憶があるのか?
だって、私はまだ何もしていない。
『武装ヘリの情報を掴んでおいて正解だった。もしや、と思い来てみれば...レイヴンの残骸とそこに群がるハゲワシがいるようじゃないか。』
『貴様を...排除する...!』
プラズマライフルに加え、レーザーパイルの一撃。さらに、上空からバズーカの砲撃にミサイル。
はっきり言って、きつい。
ここまでのミッションは今までの中で一個もなかった。
レッドガン部隊迎撃より、難しいと感じる。
「...!621、新たな機体反応だ。用心しろ。」
「...ACのようだ。それも、二機。」
まだ来るの?!
いまの私は名声も無ければ名義もない。
いわば、空っぽの状態のはずだ。なんでこんなへんぴな所にそんなに戦力を...?
『あ?ハークラーの仇討ちがてら土着共を蹴散らしにでも来たら...封鎖機構に、AC?』
『なんだ、テメエら。ここになんかあるって言ってるようなもんじゃねえか。』
『まずはそのお高く止まった機体からボロボロにしてやるよ。』
「...G5、イグアス、か?」
「何故レッドガン部隊のACがここに...それも、単騎だと...?」
『貴様は...企業勢力か。』
『我々を攻撃するより、先にこのACを攻撃しろ!こいつは...諸悪の根源なのだ...!』
『うるっせえな。俺は今苛ついてんだ。俺に命令すんじゃねえ!』
「もう一機も近づいてきているようだ。」
「...まだ離れているようだな。今のうちに封鎖機構の機体の撃墜を目指せ。」
もちろん。イグアスは...なんでこんなところに?
でも、都合がいい。なんでか知らないけど、エクドロモイに着々と攻撃をしてくれてる。
『テメェは...独立傭兵か?...』
ライセンスはまだ拾って、登録が終わってない。だから、多分私の正体はわからない。
ただ、まあ...無名だからわかった所でなんにもならないと思うけど。
パルスブレードを振るい、レーザーパイルを携えたエクドロモイを撃墜する。
『貴様...!レイヴン、貴様だけ...は...!!!!』
最後のあがきでパイルを無理やり起動したみたいだけど...それが仇となって、自爆してしまった。
『士長!クソッ、貴様!!』
『レイヴン?...テメェ、野良犬か?』
これ、イグアスも記憶あるみたい。
やばいかも。
『はっ。ちょうどいいぜ。おい、野良犬!こいつらさっさと落とすぞ!』
ごめんどういうこと??
何がどういう流れでそう言う事になったの???
私の事殺したいんじゃなかったの??????
『621、お前は...』
『?...なんだ、これは...621。少し...通信を切る。』
ウォルターが何故か通信を切った。
こんなこと、今まで一度もなかった。
ああ、もしかして。
皆、記憶があるのかもしれない。
もしかしたら、皆で協力して...ハッピーエンドを目指せるのかもしれない。
なんとなく、心がじーんとした。
その時だった。
ヘリの後ろから、見慣れたレーザーを振り回す音と、聞き慣れた声が聞こえて来た。
『やあ、レイヴン。それとも...いや、やめておこう。』
『戦友に成り得るかどうかは、今から判断してもらうことになる。』
スティールヘイズ。
青い色に塗られた機体が、私の方に向かってきた。
ヘリの残骸を背景にして。
『ヴェスパーか。何の用だよ、テメェ。よっぽど落とされたいみてえだな!』
『G5...レッドガンか。すまないが、今は交戦の意思がない。』
『封鎖機構も邪魔だ。一時停戦をしないか?』
『...』
『チッ。』
舌打ちこそ聞こえたが、攻撃をする素振りは無かった。
3機から袋叩きにされれば装甲の脆いエクドロモイは、すぐに落ちた。
『貴様...ら...!』
『さて、戦友。つもる話がたくさんあるだろう。』
『ここは解放戦線の拠点が近い。友軍識別タグを付与しよう。ついてきてくれ。』
『...あ?』
『ヴェスパーがなんで解放戦線だなんだとか言ってやがる。』
『私は解放戦線からスパイ行為をしていた。』
『...マジか。』
『包み隠さず言うんだな。』
『隠す意味がないだろう。どうせ、君も記憶があるんだろう?』
『そういうことかよ。もっと早く言え。』
やっぱり、記憶があるらしい。
「...621。」
あっ。
「一度そちらに迎え。こちらも準備をしなくてはいけない。恐らく敵意はないだろう。」
了解...っと。
『さて、戦友。』
『結論だけ言うぞ。アーキバス...もといヴェスパーは荒れに荒れている。』
『レッドガンは大して変わらねえ。』
『ミシガンの野郎が上手くやってるからな、多少はマトモだ。テメェら程じゃねえと思うぜ。』
『ついでに私は解放戦線のスパイという事が発覚しているからな、アーキバスからは追われているようだ。』
『だが、私のスティールヘイズにはアーキバス製品は使われていない。大して問題はないが...』
『順に説明しよう。』
『スネイルはついに過労で発狂したと思われて部下に拘束されているようだ。』
『フロイト...第一隊長は大して変わらない。強いていうなら、君ともう一度戦いたいそうだ、戦友。』
『オキーフもあまり変わらない。ホーキンスはスネイルを拘束する側に回り、メーテルリンクは3度も使い捨てにされて少し精神が錯乱しているようだ。スウィンバーンはいつにもまして小心気味になり、ペイターは...オキーフとホーキンスの事をずっと見ていた。どうやら過去の称号が忘れられないようだ。』
『レッドガンはミシガンの野郎はいつも通りだ。だが、あいつがいなけりゃあ今頃はナイルは大変な目に合ってただろうな。』
『ナイル、五花海はレッドガンの今後について話してる。五花海は寝返った時にレッドガンの脱出船を手配できないかしていたらしい。』
『ヴォルタだが、あいつも大して変わらん。』
『レッド。あいつは...若干不安定気味になった。テメェのせいだぞ、野良犬。』
『今はミシガンのセラピー...クソみてえなしごきの事だ。を受けてる。』
『との事だ。』
『どうやらそれぞれが知っている情報はそれぞれが生きていた地点までのようだ。』
『君は惑星を焼き、惑星を救い...』
『コーラルをリリースした。違うか?』
そうだ。
『そうだ。』
『COMボイスかよ。俺達とは話すつもりもねえってか?』
『いや...野良犬、テメエもしや発話機能がねえな?』
『チッ。これだから旧世代型は。』
『...生憎、既にアーキバスとの縁は切れている。新世代型を受けなおすのも難しいだろう。』
『これァおまけみてえな情報だが、記憶があんのは俺んところは番号付きだけだ。』
『どうやらそこは私の方もそうらしい。』
『解放戦線はフラットウェルが記憶を持っているようだ。』
『帥父だが...今はベイラムに捕虜として捕らえられてしまっている。ここは変わらないようだ。』
『悪かったな。』
『...アイスワームの時に比べて、丸くなったか?』
『色々あってな。』
『なるほど。コーラルをリリースという単語に聞き覚えがない。そこらに君達が一枚嚙んでいるんだろう。まあ、あまり深い事情は聴かないでおこう。』
なるほど。どうやらイグアスは私に本音をぶつけて随分とスッキリしてくれたらしい。
仇討ちも多分本当なんだろう。
『何を目指す?』
『レッドガンの生還。』
『惑星の解放。』
『俺達はある程度は道を同じくできそうだな、スパイ野郎。』
『どうやらそのようだ。そくざに撤収でもしてもらいたいところだが...』
『わかんだろ?上がうるっせえんだよ。ヴォルタを壁に行かせるような無能共がな。』
『キャノンヘッドか。タンクが壁を突破するのは...まあ難しいだろうな。なるほど、そこでか...』
『ひとまず、私は解放戦線に身を寄せる。何かあれば連絡を取り合おう。』
『秘密裏にな。テメェは敵対勢力だ。...テメェもだぞ、野良犬。』
『はい。』
『チッ。どっかで再手術でも...あ?耳鳴り野郎はどうした。』
『わからない。』
『耳鳴り...?』
『俺もちゃんとは知らねえがな。野良犬から聞いた方が早いと思うぜ。』
『コーラルの奔流の中に生まれる、意思ある変異波形の事。』
『.........まるでSFだな...』
『詳しくは技研の論文を共有しておく。』
『俺にも寄越せ。』
『はい。』
『チッ。俺はレッドガンに戻る。邪魔はするんじゃねえぞ。』
『ああ。君はどうする、戦友。』
『...ウォルターを助けたい。』
『ハンドラー・ウォルターの事か。...頑張ってくれ。としか、言えないな。』
『テメェはそう言うと思ってたぜ。ヘリが迎えにでも来てるんじゃねえか?』
『戦友。』
『君の言った事は、私と道を違える場合もあるだろう。だが、今君を排除するつもりはない。』
『もしその時が来れば、次は負けるつもりはない。』
「戻ったか、621。」
「...お前は、覚えているのか。」
「(コクリ)」
「お前には、数々の重責を押し付けたようだ。」
「...すまなかった。」
「(ブンブン)」
「だが、俺にもカーラにも、使命がある。」
「コーラルは焼かねばならない。」
「(...)」
「どうやらお前は...数々の選択をしたようだ。」
「とにかく、一度休め。明日...また話そう。カーラからも色々と連絡が来ている。」
「今のルビコンは混乱している。」
「レイヴンのライセンスだが...奪取はできたようだ。」
「これがお前の...ルビコンでの名義だ。」
「621。」
「(...コクリ)」