春の14日早朝、重苦しい朝だ。
昨夜アンナと格闘をすませた俺は、朝食をとる前からパピルスの帳面と格闘している。隣村のマルコ村長から亡くなったロマーノ村長が借りた借入額は10万ナール。返済期限は春の30日。そして担保はエマだ。俺の現在の資金は金貨16枚。
俺の魔結晶は青魔結晶になったばかりだ。途中で結晶化促進二倍にしてたので、ここまでに何匹倒したかはわからない。そして、こいつを黄色まで育てれば10万ナールだが、俺はBPが初期設定の50しかないから、結晶化促進六十四倍(63)は使えない。結晶化促進三十ニ倍(31)でコボルトケンプファーを倒しまくった場合、黄魔結晶までいけるのだろうか。俺は商人ジョブをセットして答えを導き出す。
黄魔結晶は魔物10万匹と聞いている。仮に雑魚の魔素を1としボスの魔素を2とした場合、コボルトケンプファーを10万÷2匹÷32倍で1563匹必要だ。春の30日までは15日あるので1日105体のコボルトケンプファーを俺が倒せばいい計算だ。1日8時間周回したとして、1時間に13体倒せばいいのか。あっ、あれ行けそうだけど。15日間もやりたくねー。
俺のボーナス初期装備を誰かに売りつけて金を頂いたあとに、ボーナス装備のポイントを消す手法も取れる可能性もあるが、なんらかのペナルティーが発生するのも怖い。万が一、俺が奴隷に落とされた場合、まだ騎士のジョブがないから自力復活が不可能になる。こっ、怖すぎる……。
朝食の時間になったので、俺の妄想は一旦先送りにして、ここまでとしよう。まだ時間はあるが、問題が雪だるま式に積みあがっていく……。
椅子に腰かけた俺にエマが対面座位で抱きついてくる。俺はエマの頭をやさしく撫でてやる。
「安心しろ。大丈夫だ。期限までに俺がなんとかしてやる」
「アキラ様……」
「そうだな。明日は春の15日で行商人が来るのだろう。村の者どもにも小遣いをやらねばな」
俺の金袋には銀貨が90枚くらい入っている。1世帯銀貨4枚で1人辺り100ナール。銀貨80枚無くなるが、村人も行商人が来た時に、これで何か買えるだろうよ。
「アンナ、この金袋の銀貨を、村人への褒美として配ってやれ」
「ありがとうございます。旦那さま」
アンナにも昨日言い聞かせたから大丈夫だろう。俺はノラの朝の修行に、皮1枚を渡して皮のカチューシャを作らせる。今日からカルロが俺のパーティーから抜けるので、代わりに猫人族の村人を入れるつもりだ。
「カルロ、昨日言った通り、お前は今日から猫人族のパーティーを仕切れ。猫人族のメンバーとカミーユとクロエの娘を呼んでこい。娘たちは俺が迷宮で鍛える」
カルロが猫人族たちを呼びに行く。たしかカミーユの娘がジョゼでクロエの娘がイリスだったはずだ。ともに14歳であとがない。猫人族メンバーの午前の漁の手伝いは、今日は休みにさせて迷宮探索を加速させる。
鑑定!
ジョゼ(♀:14歳) 村人Lv4
イリス(♀:14歳) 村人Lv4
装備1:サーベル 木の盾
防具1:皮のカチューシャ 皮のジャケット 皮のミトン 皮の靴 身代わりミサンガ
さて、今回から俺のパーティーに入れる2人だが、装備はこれで慣らしておこう。様子を見て両手剣にする可能性もある。早く海女にして俺の攻撃倍率を上げたい。今日は迷宮初体験なので、エマとノラの身代わりのミサンガを借りておこう。事故があるとまずい。
「今日は猫人族パーティーに兎の三階層に挑戦させる。全員レベル2以上になったからな」
総勢15名の3パーティーを一階層のボス待機部屋にワープで送り込む。ジョゼとイリスは初体験だが親のカミーユとクロエが躾けるだろう。まずは初心者用のコボルトケンプファーだ。
まずは猫人族のメンバー全員に僧侶のジョブを取らせる。全員を一旦村人にして、俺が2回切って、あとはパンチで倒させる。これを9回。次に全員を村人のまま、俺が2回切ってから、あとは剣で倒させ、戦士と剣士を取得させる。これも9回、これで猫人族のメンバー全員に、戦士、剣士、僧侶のジョブがついたことになる。基本能力があがり安全度が更に高まるだろう。あとは猫人族の錬金術師だが、これはおいおいだ。石鹸作り用のシェルパウダーが買うと160ナールと高い……猫人族のジョブを戻してラピッドラビット行ってみるか。
エマに言って猫人族に確認させると、確かに身体スペックが上がっているように感じると言っているので、やはり待機ジョブも少なからず影響があるのだろう。
全員を三階層のボス待機部屋にワープで送り込む。猫人族にラピッドラビットを俺のパーティーで体験させる。猫人族がラピッドラビットを倒せるようになれば、俺が肉を取りに行かなくていいのだ。
「よし、新加入のジョブとイリスは危ないから、待機部屋で待たせておけ。他の猫人族メンバーは俺が3人ずつ体験させる」
エマに説明させて、俺のパーティーに3人を入れてボス部屋に踊り込む。一度ガチでやるのを見てみるか。俺の神官とエマの巫女もあるしな。
ラピッドラビットLv3(非表示 HP600)
結果としてはガチでやらせても問題なさそうである。なぜなら、猫人族は素族特性で人族より目がいいのである。俊敏性も違いすぎる……。
エマに聞くと、もう大丈夫と言うので元のパーティーで、それぞれラピッドラビットをやらせたが戦えたので安堵する。ドロップの兎の肉は、それぞれ落ち帰ってくれ。
「よし、猫人族メンバーでの三階層の探索を許可しよう。今日入手した肉はそれぞれで食べて良いぞ。あと安全にな」
カルロに訳させてから、あとの三階層の探索はカルロに仕切らせる。そしてダンジョンウォークで三階層の入口に移動させた。2パーティーの10人でスローラビット問題だからないだろう。魔物部屋もないしな。
「よし、俺たちは六階層の修練に行くぞ。ジョゼとイリスは、今日は防御に徹しろよ」
エマに訳させて、俺たちは六階層のボス待機部屋にワープで移動する。メンバーは俺と、エマとノラ、猫人族の村人のジョゼとイリス。ノラに囮をやってもらう。
ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)
プシャー。(初手 魔物のスキル攻撃:糸)
火炎剣!……ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
(非表示 ……114、113、113ダメージ)
ホワイトキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値3)
ジョゼにドロップ品の絹の糸を拾わせる。
「どうだ、ジョゼとイリスは、迷宮でやっていけそうか?」
エマに聞かせると大丈夫とのことだが、まだ村人Lv4な。今日は身代わりミサンガがあるから、ガッツリやっても大丈夫だろう。
ホワイトキャタピラーの周回を全部で10回やって、ジョゼとイリスが村人Lv5になったので、切り上げてワープで帰宅する。ドロップ品の絹の糸。芋虫のスキル結晶が切実に欲しいぞ……。
カルロが既に戻っていた。どうやら中間部屋までは行けたようだ。スローラビットの兎の毛皮を10枚渡してくる。兎の肉は猫人族が落ち帰ったようだな。
「カルロどうだった。三階層の探索は?」
「あい、2パーティーでスローラビットですから、僕は見てるだけです……」
「そっ、そうか。カミーユとクロエによく聞いて、お前も男にしてもらえよ!」
カミーユとクロエは31歳の百戦錬磨の未亡人だ。これでカルロも一皮むけるだろう。
「エマは、ジョゼとイリスと仲が良かったよな?」
「はいアキラ様」
「しばらく家で預かってもよいか。わざわざ呼びに行くの大変だからな」
「アキラ様、私の部屋でノラちゃんとジョゼとイリスの4人で寝られるよ」
「ノラもそれでいいか?」
「アキラさん、私はバーナ語が……」
「ああ、お互い喋れるように練習してくれると俺も助かる」
「はい、がんばりますね。アキラさん」
「……と言う訳だアンナ。ジョゼとイリスは家で預かって教育もするぞ」
「畏まりました。旦那さま。カミーユとクロエもこちらに来させたら如何でしょうか?」
「いや、寝るとこがないだろう」
「旦那様、来てもらった方が私も朝から指示しやすいので。カミーユとクロエも旦那さまのものですからね」
ア、アンナの目が光った。なんか企んでる。怖い……。
「そっ、そうか。アンナの良いように任せる。この家は村長家だからな。家長はアンナだ」
「人が一杯になって楽しみだね。アキラ様」
俺は怖いから、それ以上何も聞かずにノラを呼んで自室に逃げた。ノラには昼の鍛冶師の仕事で皮1枚の皮のカチューシャの製造をしてもらう。防具の生産が追いつかない。
よし、あとは俺のパーティーに海女を作って、俺の攻撃倍率を上げるだけだ。
春の14日昼。所持金:金16銀10銅?
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明日の春の15日に行商人が来るので、アンナから村人たちへ1世帯当たり銀貨4枚の金一封を渡させる。これで何かものが買えるだろう。
「アンナ、村人を集めて1家族当たり銀貨4枚で頼むぞ。アンナから褒美として出せよ」
「畏まりました、旦那さま」
お昼にカミーユとジョゼ、クロエとイリスも村長家へ移ってきて、カミーユとクロエは、カルロの部屋に入り、カルロは居間で寝ることに決まった。カミーユの家は俺のプレイルーム、クロエの家は俺の倉庫で話がついたようだ。カルロが何か夜に一人でしたい場合は、俺の接収した倉庫に行ってやってくれ。お前が倉庫管理だからな。
カミーユとクロエは俺と会話するのにブラヒム語を習いたいそうだから、それも将来の村長のカルロが担当だ。
これで俺が養うのは、アンナ、エマ、カルロ、ノラ、カミーユ、ジョゼ、クロエ、イリスの8人。どうしてこうなった……。
「よし、午後の俺のパーティーは、シルバーキャタピラーでの修練だ。スキル結晶を出しておきたい。カルロは猫人族たちと三階層の続きだ。少し早めに切り上げて川遊びに行くからな。戻ったら未亡人たちも集めておけ。滝での修行も行う」
午前もやったが村人Lv5になったジョゼとイリスには、コボルトケンプファーで戦士、剣士、僧侶を取得させて、二階層ボスのウドウッドでは、リーフを拾わせて薬草採取士も取らせる。巫女は今日の夕方に滝の修行をやらせ、明日の朝に漁を手伝わせて、海女が取れれば、俺も次の階層に進んでもいいだろう。次の七階層はスパイスパイダーがいたからな。ついに毒が登場する。状態異常耐性の精神力を上げておきたい。今日はジョゼとイリスは、剣士にでもしておくか。パーティー効果で俺のパワーも増すはずだ。
「よし、ジョゼとイリスの試練は終わった。これから午後の修練を始めるぞ」
ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)
プシャー。(初手 魔物のスキル攻撃:糸)
「火炎剣!」
(非表示 ……61、61、61ダメージ)
「火炎剣!」……ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
(非表示 ……169、170、169ダメージ)
ホワイトキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値3)
ジョゼがドロップ品の絹の糸を拾ってくる。
つっ、強くなったぞ。ジョゼとイリスを剣士にして加えたパーティー効果か……。
「アキラ様、エマの火炎剣も強い!」
「ほう、エマも感じるか。このまま周回を続けけるぞ。スキル結晶が欲しい」
その後、周回7回目で、ついに俺の探索者のレベルが6になる。ジョゼとイリスの剣士もレベル2になった。
そして周回11回目で、俺の色摩がレベル4に上がり、数回16回目に念願の芋虫のスキル結晶を入手した。まあ100匹倒せば出るか1パーセントドロップなら……。
周回40目にジョゼとイリスの剣士もレベル3になったので、ここまでにしよう。
俺は最後に禁欲攻撃を爆発させる。
「よし、最後の1回をやって、終わりにするぞ。終わったら川遊びだ!」
「アキラ様、早く終わらそう!」
ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)
プシャー。(初手 魔物のスキル攻撃:糸)
火炎剣!禁欲攻撃!俺の欲求は高まっている。スキル結晶もう1個出しやがれ!
ズチュチュチュチュッ。プシャー。
(非表示 1555ダメージ 禁欲倍率10倍)
俺のほむらの銅剣がホワイトキャタピラーにめり込み爆発した。
(非表示 経験値3)
「す、凄い、一撃だ……」
ノラが驚いているが、ふう。俺の中の何かがパンツの中で何か飛び散った気がしたが大爆発はしていない。これならアンナに怒られなくてすむかも。修行の成果だ!
くんくんくん。
「XXXXXXXXX」
「アキラ様、ジョゼたちが何か匂いがするって。エマも嗅ぐ!」
やっ、やべっ、猫人族たちに気づかれたか。この猫は目だけじゃなくて鼻も利くのか……。ノラがドロップ品の芋虫のスキル結晶を持って抱きついてくる。また出やがった。スキル結晶が。これは毎日スキル結晶が確定するぞ。
「そっ、そうか。今日はもうこれで帰るぞ。俺の欲しい物が2個も出たからな」
今日は兎の肉をとらないでワープで帰宅した。多分カルロの部隊が持って来るだろう。
夕方に川遊びに行く人数は14人。多すぎて子供たちは勘弁してもらい、手鍋の石鹸モドキを持ってワープで3回川に送る。まだ巫女を取っていない猫人族の未亡人とジョゼとイリスを岩場の滝へ送る。修行の仕方はカミーユたちに任せて、参加者全員に巫女を取らせた。火炎剣で温めた川遊びを終えて、さっぱりして帰宅する。
明日は午前中の漁で海女ジョブを取らせ、行商人が来るから商人ジョブも全員に持取らせる。明日の予定もみっちりなんで、夜のお勤めは勘弁してもらって寝た。
春の14日夜。所持金:金16銀10銅?
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早朝にノラに皮のカチューシャを作らせてから、エマとノラと腕を組んで村の浜に初めて来ている。ほう、地引網か。この貧しい村の全員が船を持ってるわけではないからな。
「エマ、この浜では何が取れるんだ」
「アキラ様、ロクスラー、バギジ、ヘミチャナ、って知ってる?」
「アキラさん、ロクスラーはマスモドキです」
「いや、知らんな」
「アキラ様、うちの村では全部干物!」
「ああ、いつも焼いて食ってるやつか」
「女たちの朝は干物作り。エマも時々やります」
「猫人族のいつものメンバーに、ちょっと網を引くのを手伝わせろ。修練をやらせたい」
「アキラさん、私もやりますね」
「ああ、ノラはドワーフの力で網を破らないように、ほどほどにな」
俺も網を引くのも網から魚を外すのも手伝ってみたが、ジョブは生えてこなかった。漁師と海女は猫人族の種族固有ジョブだ。原作のミリアは、村人Lv5だ。ということは村人Lv5は確定でいいだろう。
なっ、なにいー。猫人族が村人Lv5で漁をしても漁師、海女は取れないだと……。
エマに村の男の漁師に聞きに行かせたら迷宮には入っていないそうだ。
なっ、なんだと。猫人族の男たちは、浜に時々出る珊瑚の魔物を槍で叩いて倒しているらしい。コラーゲンコーラルか。あの丸っこい岩みたいなの……あれは水生魔物か……。
俺は俺のパーティーのメンバーを浜から帰させ、迷宮に行くことにする。なに時間はかからんさ。パーティーを組んでマルコの迷宮の一階層の入口の小部屋にワープする。もし、一般の探索者に見られても、外の入口から入ったと思われるだけで、俺のワープはバレないさ。また都合よくマルコの迷宮の一階層に水生魔物が出るんだわ。
「ここがマルコの迷宮の一階層だ。丸い岩みたいな魔物のコラーゲンコーラルだ。すまんが、一発叩いたら後にジョゼが倒してくれ」
「ゴロッゴロッ」
コラーゲンコーラルLv1(非表示 HP100)
ラッシュ。
(非表示 97ダメージ)
「いいぞジョゼ。突進に気をつけて倒せ」
エマが訳して説明する。
ガギッ。
(非表示 22ダメージ)
コラーゲンコーラルは煙となって消えた。
ジョゼが海女のジョブを取得した。俺はバーナ語が喋れないので、労いの意味でジョゼの背中の下をトントンと叩いてあげると、ジョゼの尻尾が俺の腕に絡みつく。
あっ、いけね。やらかしたわ。エマに怒られた。猫人族の尻尾の上の辺りを触るのは求愛行動だった。
次に会敵したコラーゲンコーラルでイリスも同様に海女のジョブを取得した。ジョゼにトントンしたからイリスにもしない訳にはいかない。トントンしたら、またエマに怒られた。
コラーゲンコーラルのドロップ品のコーラルゼラチン2個入手した。
漁師/海女:体力中上昇 HP小上昇 腕力小上昇
スキル :対水生強化
猫人族が村人Lv5で水生魔物を倒す。
俺はマルコの迷宮からワープでロマーロ村まで帰還し、俺の猫人族のメンバーにも海女を取らせてたらいい時間になった。
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村の入口付近で昼寝している、いつもの猫人族の少年が騒いでる。
「XXXXXXXXX!」
「旦那さま。行商人が来たようです」
「ようやく来たか。行商人はこの時間に来て帰れるのか?」
「うちの村からは魚の干物を買っていただいております。荷台に乗せるのも、さほど時間は掛かりませんから、日暮れまでには町まで帰れるでしょう」
「ああ、俺もすぐ出よう」
俺は外に出て村の入口を確認すると、行商人が荷馬車でロマーノ村の入口に来ていた。2人組みだ。おそらく親子なのだ。
鑑定!
ロッコ(男:31歳) 商人Lv6
装備 :木の鎧 皮のミトン 皮の靴
ピーノ(男:16歳) 商人Lv1
装備 :木の鎧 皮のミトン 皮の靴
村長のアンナが行商人の対応に行った。盗賊じゃないから俺は見ていた。この小太りの商人の名前はロッコだ。ビッカーではないが、商人イベントが来てしまったか。俺の心臓は高鳴る。商館まで繋がっていてくれよ。
村人たちが集まって来て買い物を始めている。村人たちの対応は息子がするようだ。商人に成りたてだが、親父としては息子に経験を積ませるつもりなのだろう。村人たちには、小遣いを1人100ナール程度やったから、まあ買い物を楽しんでくれ。この村にとっては15日に1度の物資だからな。
俺は、アンナの傍に近づくと、親父の方の商人に話しかける。
「やあ、ご苦労であったな。道中は安全に来られましたかな」
「はい、村長のアンナさんに聞きましたが、こちらの村が大変難儀だったようで……」
「ああ、盗賊団が出ましてな。成敗はしましたが、残念ながら犠牲が出てしまってな」
「顛末は今、アンナさんにお聞きしました。ところで貴方様の身なりは、高貴な出の方の雰囲気が感じられます。失礼があっては申し訳ありません」
「これは失礼、名乗っておりませんでしたな。私はアキラと申します。しがない迷宮探索者ですよ。なに昔、アロルドに世話になっておりましてな。此度恩義のあるアンナへの助力と思い、しばらくこちらの村に逗留させてもらっている」
「わたくしは商人のロッコでございます。今回は息子とこちらに来させていただいております」
俺も脈略もない嘘が次々出てきて、自分で笑いそうになる。もうこのまま行ったれ……。
「帰りはどちらの方まで行かれますかな?」
「手前どもは、バルナバの町で問屋を営んでおります。探索者ギルドの先の雑貨屋の隣でございます」
「ほう、バルナバの町に赴いた時にでも、寄らせてもらおう」
「これはこれは、ところで、ここに来る途中の林にグミスライムを見かけましたのでご報告を」
「ほう、グミスライムですか。そちらは私の方で討滅しておきましょう。帰りが危ないですからな」
俺は、エマたちを呼んで村の入口から出て、道沿いの林に向かう。林に中にグミスライムが出ただと。どういうことだ。イベントか。
「エマ、グミスライムがいたらしいぞ。火炎剣で始末するぞ。お前は林を燃やすなよ」
「任せてよアキラ様!」
「アキラさん、グミスライムには物理攻撃が……」
「お前たちは、囲むだけで防御に徹しろよ」
「ニュニュッ」
鑑定!
グミスライムLv1(非表示 HP100)
やはり迷宮外はレベル1か。
火炎剣!、ラッシュ。
(非表示 193ダメージ)
グミスライムは煙となって消えた。
ノラがドロップ品のスライムスターチを拾ってくる。
「アキラさん凄い、グミスライムが一撃だ!」
「やつは火が弱点だな、エマは林を火事にさせるなよ」
「はーい」
「よし、この林を少し見回るぞ、気をつけて魔物を探せ!」
俺たちは猫人族のジョゼとイリスたちの目で発見した魔物を駆除した。迷宮外の魔物はレベル1だしな……全部でグミスライムを3匹とスローラビットを3匹駆除した。
「ご苦労だったな。村の手伝いに戻ってくれ」
「はーい」
荷台に魚の干物を積み込んでいる商人たちに声を掛ける。そろそろ帰るのだろう。
「林の中のいた魔物どもは、私の方で全て駆除しましたぞ」
「これはこれは、グミスライムを討伐できるとは。さぞかし名のある迷宮探索者のようで……」
「いやいや、装備のおかげですよ」
やっ、やったか。商人イベントをやり切ったか。これで次回町に行った時にロッコの問屋によれば、商館への繋ぎを作ってくれるかもしれない。俺が今、いきなり商館に行っても、変な恰好のおじさんだから、碌な奴隷を見せてくれないからな。
しっ、しまったー。金貨がなかった。俺の今の手持ちは16万ナール……。
春の15日昼。所持金:金16銀10銅?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
昼はノラにミサンガと芋虫のスキル結晶を融合させて、身代わりのミサンガを手に入れる。ドワーフのぽっちゃりノラは本当にいい子だ。
行商人との取引で、村人Lv5の者たちの、商人ジョブの取得も全員できたのでジョブを戻しておく。
「キャラクター再設定!」
BP:0
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1)
ワープ(1)
武器一 (1):ほむらの銅剣
頭装備一(1):防水の皮帽子(水色のスイムキャップ)
胴装備一(1):頑丈の皮鎧
腕装備一(1):防水の皮手袋(水色のゴム手袋)
足装備一(1):防水の皮靴 (水色の風呂用のゴム靴)
装飾品一(1):防水のマント(水色の雨ガッパ)
フィフスジョブ(15):探索者6 色摩 戦士 農夫 剣士
MP回復速度上昇(1) 獲得経験値五倍(15)
腕力上昇(13)
「買い物も楽しんだだろうからな、午後の修練を行うぞ。あと1つ芋虫を出したら上の階層に進むぞ」
ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)
プシャー。(初手 魔物のスキル攻撃:糸)
「火炎剣!」……ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
(非表示 ……235、235、235ダメージ)
ホワイトキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値3)
イリスがドロップ品の絹の糸を拾ってくる。
猫人族2人の海女ジョブのパーティー効果で、ほぼ5発までパワーが上がったぞ。
俺はホワイトキャタピラーを40周回して絹の糸を37個と真綿3個を手に入れた
エマが飽きたんで切り上げる。最後は禁欲攻撃で締めくくって、芋虫のスキル結晶を1つ手に入れたてワープで帰宅した。
ノラに芋虫のスキル結晶で身代わりのミサンガを作成するが、ミサンガ(空き)の在庫が無くなってしまった。明日からノラにミサンガの作成もさせるしかない。
明日は七階層に上がって蜘蛛に挑戦してみるか。毒耐性防具がないが……。
春の15日夜。所持金:金16銀10銅?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この家の人員が9人になったので、食事は全員で座ることができなくなった。俺、アンナ、エマ、カルロ、ノラが食事を取った後に、猫人族の4人が食事を取ることになっている。主人だからということで俺はずっと座っている。猫人族たちの食事作法はあまり見れたもんじゃないが、まあこの村は貧しいからな。アンナが躾けているから、そのうちマシになるのだろう。
食事の後にカルロに今日の猫人族の探索進捗状況を訊ねる。
「カルロ、今日の三階層の探索はどうだった。ラピッドラビットは問題なかったのか?」
「はい、僕は盾で防いでただけでしたが、猫人族の方がアイテムボックスに兎の肉をしまうと、その方のアイテムボックスの中身が全部飛び出してきました。どういうことでしょうか?。その後アイテムボックスが開かなくなってしまったようです」
しっ、しまったー。アイテムボックスから勝手に物が飛び出す現象は、とっ、盗賊化だ。元探索者のノラに、菜園のキュピコを盗ませたときに起きた現象だ。
俺の猫人族ファームの猫人族は全てもぐりのジョブについている。ギルドを通していないから説明も受けていない。盗賊になってしまうような、やってはいけない事の理解がないのだ。
「ノラ、探索者になって探索者ギルドに登録したときに、何か説明を受けたのか?」
「はい、やってはいけない事の説明は受けました。特に迷宮ドロップ品です。ドロップ品を勝手にとって、アイテムボックスにしまうと盗賊になると聞きました。パーティー全員の合意が必要です」
「俺も勝手に拾って入れてるぞ」
「アキラさんは、パーティー全員がドロップ品はアキラさんの物と思ってますから大丈夫ですよ」
「そっ、そうか」
事の顛末がわかった俺は、今日は一人で考える重要な事があると言って、自室に戻って思案する。アンナたちの夜のお誘いは煙に巻いてだ……。
明日の朝、俺が勝手に探索者にした村人たち全員の確認が必要となる。夜に未亡人たちを呼び出すと、夜のお誘いかと思われて大変なことになるからだ……こっ、怖い。
春の15日夜半。所持金:金16銀10銅?