早朝。俺は昨日の猫人族の盗賊化事件の確認をとるために、件の未亡人を呼び出してもらった。漁の手伝いもあるだろうが、朝っぱらからすまんな。待っている間にノラに朝のお勤めの防具製造をしてもらう。今日はミサンガ(空き)を出してもらいたい。
「……防具製造!。どうでしょう。今回のはアキラさんのお眼鏡にかないますか?」
「ほう、今作ったのは素晴らしい出来だな。また腕を上げたな、ノラ」
「よかったね、ノラちゃん」
ぽちゃりノラを立たせて優しく抱きしめてやる。まあエマもくっついてくるのだが。製造を1回するたびに強壮丸1つを与え宥めつつ、7個目のミサンガで当たりがでた。売値10ナールの糸7個と買値60ナールの強壮丸7個、ミサンガ(空き)は490ナールだ。町の防具屋に行って、また倉庫の在庫を漁らせてもらいたい。ミサンガ(空き)が出来たので、ついでにもう1つ身代わりのミサンガを作ってもらった。これで俺の分も一応確保できた。あとアンナの分も必要だが、彼女は村長の指輪を装備しているので、おいおいとしよう。
「旦那さま、ミレーヌが来ました」
鑑定!
ミレーヌ(♀:30歳) 盗賊Lv1
装備 :サンダル ミサンガ
盗賊 :敏捷小上昇
スキル:盗み確率アップ(※筆者の妄想)
ぐっ、やはりか……ドロップ品は全て俺の物というパーティー全員の理解の中で、探索者Lv2の彼女は良かれと思って、兎の肉をアイテムボックスに収納してしまったのだ。兎の肉は鮮度の問題もあるから、そうなるよな……。
「わかった。ありがとう。朝からご苦労だったな」
俺はエマに余計なことを言わせずに訳させた。盗賊の彼女の尻尾がうねうねと動いている。朝から勘違いさせたかもしれないが、まだ内容自体は伝えない。
「よし、朝は少し別の修練をする。来てもらったミレーヌにも参加してもらう」
俺は、アンナ以外の全員に装備を付けさせると三階層のボス待機部屋へとワープで送りこむ。この中でミレーヌだけには、昨晩のアイテムボックスから飛び出してしまう現象については教えていない。キャラクター再設定は、ワンパンしたいので腕力上昇に振る。
「キャラクター再設定!」
BP:0
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1) 詠唱省略(2)
ワープ(1) パーティー項目解除(1) パーティージョブ設定(2)
武器一 (1):ほむらの銅剣
頭装備一(1):防水の皮帽子(水色のスイムキャップ)
胴装備一(1):頑丈の皮鎧
腕装備一(1):防水の皮手袋(水色のゴム手袋)
足装備一(1):防水の皮靴 (水色の風呂用のゴム靴)
装飾品一(1):防水のマント(水色の雨ガッパ)
フォースジョブ(7):探索者6 色摩 農夫 剣士
MP回復速度上昇(1) 腕力上昇(31)
まずは、俺、エマ、ノラ、カルロ、ジョゼ、そしてミレーヌで実験を行う。他の者たちは待機部屋で待機させて、俺たちはボス部屋に踊り込む。
ラピッドラビットLv3(非表示 HP300)
火炎剣!スラッシュ。
(非表示 ……316ダメージ)
ラピッドラビットが煙となって消えた。
ドロップ品をエマが勝手に拾って、俺が見てない時にミレーヌの前でアイテムボックスにしまうと、アイテムボックスから入れたはずの兎の肉が飛び出した。
「うわっ、兎の肉が飛び出した。アキラ様」
やっ、やはりな。兎の肉を俺が受け取りエマのジョブを確認すると、盗賊になっている。俺が指示しなくても順番にミレーヌの前でアイテムボックスに兎の肉をしまってみろと、ミレーヌ以外には全員に伝えておいたのだ。
ミレーヌには兎の肉は俺の物という認識だ。俺の物を許可なく勝手にアイテムボックスにしまったからか、パーティー内のミレーヌに勝手に取ってしまったと判定されたのだろう。良かれと思ってやっても第三者がどう判定するかはわからない。ミレーヌも不思議がっているが、状況を全く理解していない。
俺は順番に全員、ボスを倒した後の兎の肉を、俺が見てない時にミレーヌの前で勝手にアイテムボックスにしまう実験をさせた。
ミレーヌが俺の許可があってしまっていると思えば失敗だが、勝手に取って収納したと判定されたようで、全員に盗賊ジョブをつけることに成功した。アイテムボックスへ収納するドロップ品の取り扱いはシビアなのだろう。俺も自分以外のパーティーに入った場合に、アイテムボックスの取り扱いには細心の注意が必要だろう。
パーティーのドロップアイテム分配の問題だからな。ソロの冒険者が行うアイテム運搬の仕事とかでは大丈夫なのだろうよ。ギルドで講習を受けてない俺にはわからんがな……。
「アキラ様、なんか体が軽い!」
「私もいつも以上に……動ける……」
「さて、修練は終わったからな。そろそろ全員で帰るぞ」
だろうな。俺も体が異様に軽いからな。俺以外全員盗賊の盗賊団パーティーだ。
ワープで帰宅した俺は全員のジョブを元に戻す。ミレーヌへの説明はカミーユたちからさせた。カミーユとクロエにも自分でやらせたから、パーティーを組んでいる時に、ドロップ品を勝手にアイテムボックスにしまうと盗賊に落ちてしまうプロセスを理解できただろう。
「アキラ様、なんか体が重くなった……」
「お前は、いつも兎の肉を食い過ぎだ。肉ばっか食ってると臭くなるぞ」
「アキラ様は、いつも私の好きな匂いなの!」
俺は猫人族パーティーの未亡人たちを集めると盗賊になっている物を探索者ジョブに戻す。昨日は兎の肉がドロップだったからな。パーティーを組んでいた者以外は、ほぼ全員だ。カミーユとクロエから、猫人族のパーティーに認知させる。それ以外に探索者にしてしまった妻たちは、迷宮に行ってなければ大丈夫だと思うが、午後に集めて確認を行うこととした。
猫人族を仕切るのは将来の村長のカルロだからな。ドロップ品は最後に一度全部集めさせてから、アンナから褒美として配分させよう。そういう認識で全員に共有させて漁の手伝いに戻させた。
俺は午前中に余計な時間を使ってしまったので、午前中はどうするか居間で椅子に座ってお茶を飲んで思案していた。早く上の階層に上がって俺自身を強化したい。金も欲しい。するとカミーユとクロエが近づいてきた。2人のにゃろーんとした黒い尻尾が俺の腕に絡みつく。すでに関係を持ってしまったし、腰もトントンしてしまった間柄だ。川遊びで体も洗ってやったりもしたし、尻尾もニギニギしてしまったしな。この尻尾で股間を握られ、シュルリとされた時は、マジでどうにかなってしまいそうだった。
「アキラサマ、オネガイ」
「カミーユ、なっ、なんだ。まだ昼間だぞ」
アンナも近づいてきて訳してくれたが、どうやらパーティーを増やすのに人員を増やしたいようだ。ほう、一度兎の肉を食べたからには毎日でも食べたいよな。まあ気持ちは分かるが、百戦錬磨の31歳3人に囲まれると、さすがの俺もたじろぐ。にゃろーんとした尻尾でスリスリしないでくれ。
「カッ、カルロ、どうだ装備の余りはあるのか。調べてこい」
「片手剣と盾と鎧が足りません」
むっ、そうだよな。足りない部位を毎日作っていないしな。しかも、その部位は買うと高い。帽子は余っているが、獣人の女性は耳が気になるのかカチューシャを好む。そして皮の鎧は800ナール、皮を10枚分必要な値段だ。流石に、まだノラに製造させる訳にもいくまい。消費MPが心配だ。さらに武器と盾は、もっとも安い物で1000ナールだ。素材はもっと上層でしか取れない。何人増やしたいのかアンナに聞いてもらうと、どうやら2人増やしたいということだ。4人ずつの3パーティーだが三階層までは4人でもいいだろう。
やっ、やってしまった。俺は金貨を崩してしまったのだ。マズい、金貨は15枚になってしまった……サーベル2本、木の盾2枚、皮の鎧1点、皮のカチューシャ2点、皮の靴2点しめて5120ナール。5000ナールにサービスしてもらった上で、店頭にある、空きのあるミサンガを2つ貰ってきた。雑貨屋で手鍋、探索者ギルドで在庫の乏しい強壮丸も買って帰宅した。
「カルロ、これで追加の2人分の装備が揃ったはずだ。後はお前が采配しろ」
「はい、ミレーヌさんとソフィーさんの子供たちから、コボルトで教育がしたいそうです」
「子供だとぉ。仕方ないか。10歳以上で大人がついている場合でのコボルトの階層限定だぞ。わかったな!」
「はい、任せておいて下さい」
よくよく聞いてみると、どうやらコボルトナイフも欲しいようだ。
コボルトナイフ。武器としてみると全く威力がないが、こいつは確かに有用だ。俺も最近は髭剃り用のナイフとして愛用している。きちんと防具を装備さえしていれば、おそらくダメージは最大1だ。アンナにも家事用として1本渡してある。迷宮素材の透明な膜を切り裂いて外すのにも使う。もちろんブランチの透明な膜を綺麗に剥いて避妊具にするのにも使っている。俺は、このあいだ川遊びに行った時に、ついコボルトナイフで、ノラの脇のムダ毛を石鹸とコボルトナイフで綺麗に剃ってあげたのだ。恥ずかしがっていたがノラはドワーフだからな。もちろんエマにもねだられたし、アンナの目がギラリとしたのも覚えている。俺も気が緩んでいたのだろう、それを彼女たちも見ていたのだ。やっ、やらかした。アンナから採取命令が出てないだろうな。コボルトナイフを集めれば俺に剃ってもらえるとか思ってないよね……コボルトナイフ。そう、これはムダ毛処理用の安全カミソリだ。
まだ昼までに時間があるので、コイチの実のふすまとシェルパウダーと手鍋をカルロに渡して、カルロ主導で石鹸を猫人族たちに作らせておく。これで家の者たちの錬金術師の修得も終わりだ。他の者たちにもカルロ主導でやらせよう。
俺は空き時間を利用して、マルコ村の迷宮に行くことにする。丁度前回、猫人族の海女ジョブを取得していた時に、一階層のボス待機部屋前まで辿り着いていたのだ。少しボス戦をして珊瑚のスキル結晶でも狙ってみたい。珊瑚のスキル結晶は麻痺なので、この先必要にもなるだろう。
「よし、昼までまだ時間があるからな。俺のパーティーはマルコ村の迷宮に行く。準備しろ!」
ワープゲートをボス待機部屋に繋ぐのは、他の探索者に見られるリスクはあるが、わざわざマルコ村の迷宮に遠征してきている探索者たちが、一階層をやっていても金にも修練にもならないとも言える。冒険者に送ってもらってまで一階層をやっていたら大赤字だからだ。楽観的か。一旦、迷宮一階層の入口にワープゲートを繋いで移動する。外に出て、少し入口の小遣い稼ぎの探索者に状況を聞いてみるか。俺たちは迷宮入口から、一旦外に出た。
「やあ、今はどんな感じだ?」
「ああ、この間の凄腕装備の探索者だな。大変なことになったみたいだぞ」
「何かあったのか?」
「いやな。何でも騎士団の第2パーティーが戻って来てないらしいぞ。今騎士団の第1パーティーは、町の騎士団詰所に報告に戻ったらしい」
「ほう、迷宮に飲まれたのか?」
「ああ、おそらくそうだろうな」
「何階層かの目星はついているのか?」
「おそらくだが、騎士団の第2パーティーが修練してたのはパーンの階層らしぞ。探索安全宣言も出ていた階層だからな。万が一、やられるとしたらボスのパーンだろうよ」
「パーンか……詠唱妨害が間に合わなかったか……」
「他の探索者たちもパーンはリスクがあるから避けるからな。今日はまだ、三階層に送った奴はいない。行ってみるか?」
「なるほどな。俺が様子を見て来てもいいだろうな。俺だけ三階層に案内してくれるか?」
「三階層は1人なら300ナールだな」
「ああ、俺のパーティーを解散して、俺だけそちらのパーティーに入ろう」
俺は自分のパーティーを解散して入口の探索者に銀貨3枚を渡し、探索者のパーティーに入って三階層まで送ってもらう。追加100ナールで中間部屋まで行けるということなので、銀貨1枚を渡して中間部屋まで行くことができた。そして入口まで戻ってから自分のパーティーを編成しなおす。
「あんたなら大丈夫だろうが、低階層とはいえ相手はパーンだ。挑むなら気をつけろよ」
「ああ、見に行くだけだ。無理はしないさ」
俺たちは入口の小部屋に入ってから、三階層の中間部屋までワープゲートを繋いで移動する。
「アキラさん、パーンは強敵です。私も戦ったことがありません……」
「だろうな。ボス部屋まで行って、中の様子を見るだけだ。安心しろ」
「アキラ様、パーンて何?」
「パーンはおっかないぞ。食われちまうぞ」
俺はエマを、からかいながらボス部屋を目指す。
マルコ村の迷宮三階層の雑魚は、エスケープゴートで山羊の魔物だ。
エスケープゴートLv3(非表示 HP152/300)
エスケープゴートLv3(非表示 HP155/300)
火炎剣!、ラッシュ。
(非表示 167ダメージ)
エスケープゴートが煙となって消えた。(非表示 経験値1)
「アキラさん凄い。一撃だ!」
むっ、今の俺だと一発でいけるか。エマはどうだ?
火炎剣!、ドシュッ。
(非表示 58ダメージ)
エスケープゴートは逃げ出した。
「アキラ様、山羊の魔物が逃げちゃった……」
「アキラさん、エスケープゴートは途中で逃げちゃいますから倒すのが難しいです……」
「ああ、生命力が半分になると逃げ出すと聞いてるな。俺が倒すからお前たちは魔物が逃げない様に囲むだけにしてくれ」
ノラが、俺が倒したエスケープゴートのドロップ品の山羊の糸を拾って渡してくる。
その後ボス待機部屋まで、エスケープゴートは至る所に、うじゃうじゃといた。他の探索者たちが倒しきれなかった魔物が逃げた後に、体力が半分まで回復すると再び襲ってくるのだろう。チープシーフとコラーゲンコーラルも出現したので、マルコ村の迷宮は一階層は珊瑚、二階層は羊、三階層は山羊のパーンだ。ドロップ品は山羊の毛が15個、羊の毛が4個、コーラルゼラチン2個だった。俺の戦士ジョブがレベル5になる。
ボス部屋は扉が開いていてボスが既に出現している。
「ほう、ボス部屋の中に出現しているのが見えるな。あれがパーンか」
「アキラさん、私、始めてみました……」
「エマも初めて!」
「エマとジョゼとイリスは当然初めてだろう。ノラは戦ったことがないのか?」
「はい、お父さんに行かないように言われてました。殺されると……」
「だろうな、装備もかなり落ちてるから、誰かが迷宮に飲まれたな」
「パーンはやはり怖いです……」
「エマは大丈夫!」
「エマなんて、パーンに食われちまうぞ!」
パーンは半人半妖のビーストで、両角が生えている人型で2本足だ。足は羊の足で蹄もあるので後ろに蹴りを入れてくると見るべきだろう。そして両腕に蹄はなく、こぶしで殴り掛かってくるのだろう。後は全体魔法を撃たれ、それを喰らったら一撃死かどうか……。
どうする。行くべきか。落ちてる物も欲しい気がする。周りには誰もいない。通路にも誰もいなかった。これはパーンイベントを達成する千載一遇のチャンスか。俺の欲望が燃え上る。最悪ワープで逃げきれるか……その時、俺の両腕にジョゼとイリスの尻尾が、それぞれシュルリと絡みついてくる……そう、この娘たちは俺に行けと尻尾で言っているのだ。俺はジョゼとイリスの腰を両方の手でそれぞれトントンとしてやると、とても嬉しそうに微笑む。いい娘たちだ。その瞬間、俺の震えも治まり迷いも消えた。
「キャラクター再設定!」
BP:0
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1)
ワープ(1)
武器一 (1):ほむらの銅剣
頭装備一(1):防水の皮帽子(水色のスイムキャップ)
胴装備一(1):頑丈の皮鎧
腕装備一(1):防水の皮手袋(水色のゴム手袋)
足装備一(1):防水の皮靴 (水色の風呂用のゴム靴)
装飾品一(1):防水のマント(水色の雨ガッパ)
フィフスジョブ(15):探索者6 色摩 神官 農夫 剣士
MP回復速度上昇(1) 腕力上昇(28)
フィフスジョブに緊急全体回復用に神官をセット、農夫と剣士で腕力上昇も得る。獲得経験値を全て切って、残りのポイントを全て腕力上昇に割り振る。
エマは神官、ノラは鍛冶師の腕力中上昇、ジョゼとイリスは海女、それぞれ腕力小上昇だ。
「よし、これからパーンに挑戦する。ノラは俺たちがボスの傍に布陣したら、最後に部屋に入ってくれ。俺は左前から切りつける。エマは右からだ。ジョゼとイリスは後ろからだ。魔物の蹴りに注意しろ。エマ訳せ!」
十分に言い聞かせてから、俺たちはノラ以外がボス部屋へと踊り込む。魔物は実体化しているが、まだ半透明だ。全員の配置が完了したので、震えるノラにボス部屋に入るように指示する。出し惜しみはナシだ。
震えるノラがボス部屋に入ると後ろで扉が閉まり、パーンが半透明から徐々に色見を帯びてくる。俺は火炎剣に炎をともすと、それを見たエマもまたレイピアに炎をともす。行くぞ、一気に行く。
パーンLv3(非表示 HP88/600)
禁欲攻撃!俺の欲望が燃え上る。俺の娘たちはやらせんぞー!
ズガガガガー。プシャー。
(非表示 712ダメージ 禁欲倍率5倍)
俺のほむらの銅剣が、すでにボコボコのパーンの胴体にめり込み爆発した。
「アキラさん凄い。パーンが……」
「アキラ様、素敵!」
「XXXXX!」
娘たちが一斉に俺に抱きついてきてハッとする。やっ、やったぞ。俺はかぼちゃパンツの中の不快感に襲われているが、そんなのは些末な問題だ。俺は娘たちをパーンから守りきったのだ。
「お前たち、大事はないか?」
「凄い、パーンが爆発しました!」
「アキラ様は凄いんだから!」
イリスがドロップ品の山羊の肉を拾ってくる。やっ、山羊の肉か。そういえばパーンを倒す時の俺の欲望は、娘たちを守ることだったな……。
しかし賢者タイムの俺は頭が良くまわる。よく考えればパーンは全滅した者たちの攻撃で、既に瀕死状態だったのだ……。
「アキラ様、何か一杯落ちてますよ!」
「アキラさん、落ちている装備品は、次にボスを倒した人の戦利品です!」
「おお、そうだったな。すまんが全員で集めて持ってきてくれ」
凄い量の戦利品だ。少しだけ鑑定したが妨害の銅剣とかもある。少なくても2パーティー分の装備だ。最初に全滅した探索者たちの後に騎士団も入って、それも全滅か。恐ろしいなパーンは……戦利品は帰ってからゆっくり鑑定しよう。とりあえず今直ぐにこの場を離れたい。
俺はアイテムボックスの中身をリュックに移してから、戦利品をアイテムボックスに突っ込んでいく。当然入りきらないから、ノラのアイテムボックスにも入れさせてもらう。落ちている亡くなった者の魔結晶はエマのリュックへと放り込む。硬貨も全てだ。そして、入りきらない物は全員で抱えて持つ。落ちている衣服なども全てだ。証拠は全て残したくない。ボス部屋から四階層に出ないでワープで直接帰宅しよう。仮にボス部屋を出て、四階層の入口に誰かがいたらトラブルになるかもしれない。騎士団との揉め事も勘弁願いたい。
ボス部屋から直接ワープで帰宅した俺たちは戦利品を並べる。すでに昼は大幅に過ぎている。キュピコでも食べて落ち着いた後に、ゆっくりと検分したいところだ。
「旦那さま、凄い量の装備品ですね。それとお着替えの方も……」
「ああ、すまないが何か食べた後で構わないから、装備品を綺麗にしてくれないか?」
「はい、手の空いている者を集めて拭かせておきます。旦那さまのものは私が……」
「よっ、よろしく頼む」
俺は自室でアンナにかぼちゃパンツを脱がされて息子を綺麗に拭かれると綺麗なパンツに履き替えた。もう受け入れよう、パンツが全てを物語っている。俺は迷宮でパンツを汚すような男だが、アンナは頬を赤らめながら、丁寧に息子を拭いてくれている。
まだ迷宮に飲み込まれてなかった衣服、リュック、ポーチなどは全て回収させたので、カルロに命じて全てを検めさせる。硬貨、魔結晶、丸薬、ドロップ品などの金目の物を回収させると、衣服などは全てロマーノ村の七階層の入口に投棄させ、足が着くものは処分しておいた。アンナにまだ使えますと言われたが全て投棄させ火炎剣で焼却した。投棄した物は、そのうち人知れず迷宮に吸収されるだろう。
探索者ジョブのアイテムボックスに入っていた物は死体と共に迷宮に飲まれただろうが、回収品は、金貨9枚、銀貨168枚、滋養丸28個、強壮丸32個、毒消し丸33個。スキル結晶は、なんと3つで、珊瑚、羊、山羊が各1個ずつだ。銅貨は全てアンナの金袋に入れたので後で分配するなどの采配は任せた。やっ、やったぞ。何か知らんが入手した硬貨は10万ナール以上だ。俺は感激の余り打ち震えた。これでアンナに対するマルコ村の件の片が付く……。
回収した魔結晶は、紫魔結晶が11個と黒魔結晶が2個。黒魔結晶はボス部屋に最初から落ちていたものだろうか。紫魔結晶の11個から推測するに、おそらく2パーティーの全部で11人がパーンに敗北したのだろう。おっ、恐ろしすぎるなパーンは……。
「旦那さま、装備品の清掃が終わりました。ご検分をお願いします」
「ああ、ありがとう。清掃に参加してくれた者には褒美をやろう。俺の銀袋から銀貨1枚ずつをアンナから配ってやれ。先ほど渡した銅貨もアンナの裁量でな」
装備品の清掃メンバーは、俺のパーティーと未亡人たちだから銀貨15枚だろう。銅貨は村人にでも配ってくれ。細かく言わなくても村長のアンナは、うまくやれるはずだから任せよう。
さて、装備品で目に付くのは、妨害の武器と防毒の革手袋だ。そして防具は全て革製だ。防毒の革手袋の数は6点。おそらく騎士団の修練部隊の支給品ではないだろうか。6人いたとすれば辻褄があう。装備品から推察するに11人が迷宮に飲まれたのだろう。
装備品の内訳だが、妨害の鉄剣2点、妨害の銅剣5点、妨害の銅槍1点、鉄の槍1点、シミター2点、鉄の盾2点、革の帽子6点、革の鎧6点、革のジャケット5点、防毒の革手袋6点、革の手袋5点、革の靴11点だ。もちろん空きスロット付きもある。やっ、やったぞ。この中で防毒の革手袋は直ぐに使える。他も皮から革装備にアップグレードできる。俺の見立てでは装備にマークが入っていたり、何か目印になるようなところもない。これはそのまま装備しても問題ないだろう。揉め事は嫌だからな。そして、これで七階層の毒蜘蛛にも挑めるぞ。それにしても、迷宮は命を対価に富を獲る場所だが、敗亡して飲み込まれるのは、恐ろしすぎる……。
「アキラさん、妨害装備ですか?」
「ああ、そうだ。これなどは詠唱中断の強権でなく、全て詠唱妨害の妨害だな」
「パーンは妨害装備6人でも、負けちゃうんですね」
「いや、俺が推察するに騎士団の修練部隊の詠唱妨害は5人だったのであろうよ。槍や片手剣は普通の装備だからな。僧侶とか探索者の物だろうよ」
「アキラさん、お分かりになるんですね」
「アキラ様は何でも分かるのよ!」
俺は娘たちと抱擁してから、カルロを連れて自室に戻り、パピルスの帳面と格闘する。誰に何を装備させるか考えねばならない。装備も増えたので拠点防衛部隊と教育用部隊も組織せねばならない。カルロに調整と管理を丸投げする。俺は忙しいからな。
俺のパーティーは防毒が手に入ったので、明日から七階層の毒蜘蛛に挑戦しペッパーを手に入れたい。
アキラ(男:27歳 人族) 色摩Lv4
武器 :ほむらの銅剣
頭装備一:防水の皮帽子(水色のスイムキャップ)
胴装備一:頑丈の皮鎧
腕装備一:防水の皮手袋(水色のゴム手袋)
足装備一:防水の皮靴 (水色の風呂用のゴム靴)
装飾品一:防水のマント(水色の雨ガッパ)
エマ (女:14歳 人族) 巫女Lv5
武器 :ほむらのレイピア 木の盾
防具 :革のカチューシャ
防具 :革のジャケット 防毒の革手袋 革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
ノラ (♀:14歳 ドワーフ) 鍛冶師Lv4
武器 :鉄の槍
防具 :革の帽子
防具 :革のジャケット 防毒の革手袋 革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
ジョゼ(♀:14歳 猫人族) 海女Lv2
武器 :シミター 木の盾
防具 :皮のカチューシャ
防具 :革の鎧 防毒の革手袋 革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
イリス(♀:14歳 猫人族) 海女Lv2
武器 :シミター 木の盾
防具 :皮のカチューシャ
防具 :革の鎧 防毒の革手袋 革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
装備がタダで第2ランクの革装備と武器へとアップグレードできたのは僥倖だろう。
俺もそろそろ、ボーナス初期装備の掃除用装備を改めなければならないが、周りから見ると凄い装備に見えるらしいので、拍付けのためになかなか脱げないでいる……どうなってんだよ異世界は……。
春の16日夜。所持金:金24銀189銅?
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俺は夕食をとり、ノラに皮1枚を渡して皮のカチューシャを作ってもらうと、パピルスの帳面との格闘があるので急いで自室に籠る。
ズズズッ、ガラッ。引き戸が開けられる。
「旦那さま、お洗濯物をお持ちしました」
「アンナか、ありがとう。今日で資金に目途がついたからな。懸案だったマルコ村の件は、直ぐに解決できるから安心しろ!」
「ありがとうございます」
アンナが俺に抱きついてくる。最近は娘たちと抱きついてばかりだからな。娘たちの手前では、アンナは俺と抱擁するのは恥ずかしいのだろう。
「旦那さま、本日はお時間ありますでしょうか?」
「ああ、帳面での作業は今終わったからな。何だ?」
俺は麻の貫頭衣を着せられ、月明かりのもと隣の元カミーユの俺の家へと連れていかれる。カミーユとクロエは、何故か玄関で名残惜しそうに尻尾をゆらゆらとさせている。ほう、教育が行き届いているな。
俺の家へと着くと、中には朝見た盗賊になっていた猫人族2人が裸で待っていた。にゃろーんとした黒い尻尾がランプの灯りに照らされて、ゆらゆらと揺れている。いっ、いや、俺はもう驚かんぞ。
俺はアンナに後ろからしっかりと掴まれているので、すでにパワー負けしている。そして猫人族2人の尻尾が俺の息子をシュルリと捕まえる。
「旦那さま、床の用意が出来ております。女の喜びをお与え下さい」
俺は、息子を猫人族2人の尻尾に掴まれて床まで案内されると、アンナにブランチの透明な膜を装着される。アンナは猫人族2人に装着の仕方を教えているのだろう。うむ、教育は重要だな。
……
猫人族の尻尾はシュルリ、シュルリと俺の息子を愉しませる。
……
その夜、また俺は違う女性たちと一つになり、そして猫人族の尻尾の素晴らしさを知った……
春の16日夜半。所持金:金24銀189銅?