目が覚めると、俺は金袋内の金貨の枚数を数える。しっかりと金貨が24枚あって安堵する。夢じゃない……と言うことは昨日の尻尾の感触も夢ではないのだろう。
ノラの朝の修行で皮装備を5つ作らせたがスロット付きは無かった。
俺は今日の昼間にマルコ村への借入金の10万ナールをアンナに返済させる。これでアンナもエマも救われ、問題ごとの1つが片付くだろう。
昨日、マルコ村の迷宮で、迷宮に飲まれた騎士団のその後の動向が気になる。俺は飲まれた者たちの物を、パーンを倒して全て頂戴してしまっていた。そして迷宮前の案内役の探索者に三階層に案内させたため、俺の動きもやつには知られている。迂闊だったか……。マルコ村の今後の動向もも気になるので、少し探りを入れた方がいいだろう。俺は早朝にマルコ村の迷宮に探りを入れることにした。
朝はマルコ村の迷宮に行ってくると言うと、結局、娘たちもついてきてしまった。俺は迷宮前の案内役探索者に声を掛けると聞き返しくる。
「ああ、凄腕のあんたか。どうだった、パーンは?」
「俺もパーンまで行ってみたが、何もなかったようだぞ。道中にうじゃうじゃエスケープゴートが湧いていたから、誰かが先行してたんじゃないのか?」
「そうか、わかった。騎士団が来たら報告しておくか。なに、情報料で小遣い稼ぎさ」
「ところで、今日、騎士団はまだ来てないのか?」
「ああ、迷宮に飲まれた者が出たとなると、隊長の責任問題なんだろうよ」
「だろうな。何か動きや情報があったら俺にも教えてくれよ」
俺は案内役探索者に銀貨を2枚握らせると村の様子も教えてくれる。
「そうだな。他の探索者に聞いた話だが、村の者たちも迷宮から帰ってきてないらしいぞ」
「ほう、別の迷宮にでも行ったんじゃないのか?」
「いや、なんでも帰ってきていないパーティーには、村長の息子と狼人族の奴隷が混ざっていたらしいぞ。村長の息子の奴隷たちも何人か殉死したらしいからな。間違いないらしい」
「奴隷が殉死か、そいつは怖いな。俺もこの村で活動できないと困るからな。揉め事は勘弁だな」
「ああ、物騒になってきたぜ」
俺は、更に案内役の探索者に銀貨を2枚握らせたが、他に情報は出てこなかったので、再び迷宮内に入っていく。この男は俺のことをペラペラと喋るだろう。これは不味い事になってきたな。確かに村長の護衛には、鉄の剣を装備していた狼人族の奴隷がいた。迷宮に飲まれたのは、あいつらか……俺は迷宮の小部屋から自宅にワープゲートを繋いで帰宅した。
迷宮前の案内役探索者の話をエマも聞いていたので、アンナにも話したのだろう。アンナが話を聞いてくる。
「マルコ村長の息子さんのファビオさんも亡くなったのですか?」
「ああ、どうやらそうらしいな。奴隷ともども迷宮に飲み込まれたらしい。奴隷がドロップ品をくすねるのが嫌だったんだろうな。自分もついて行って一緒にお陀仏さ。金が入っていい気になって迷宮探索を舐めていたんだろうよ。自分の息子も奴隷も亡くなって、まさしく因果応報だな」
「そうですか、大丈夫でしょうか……」
「心配するな。また俺がついて行くさ。10万ナールを返して証文をもらえば、それで終了さ」
「ありがとうございます。旦那さまに何か言いがかりを付けてきて、決闘にでもならないか私は心配です」
けっ、決闘だとぉ。あるのか。いや、それも十分考えられるか。部外者の俺がしゃしゃり出ていけば、どんな言いがかりをつけられるか、わかったもんじゃない。マルコ村長も息子と奴隷を失って損失も出しているから、理性を失っている可能性も否定できない。どうする、返済の期限までには、まだ時間もある。先延ばしにすべきか。今日片付けるべきか。その時、震えるエマが座っている俺に対面座位で抱きついてくる。俺はやさしくエマの髪を撫でてやるとエマの震えは治まっていく。そうだな、今日エマの心配事を片付けてやろう。借金の方にエマを取られてたまるか。
「今日の昼間にマルコ村に行って、予定通りに前村長の借入金の10万ナールを返すぞ。アンナはそのつもりでいろ。マルコ村までは昼に俺の移動魔法で行く」
「はい、旦那さま」
「よし、昼まで俺たちは迷宮探索だ。準備をしろ!」
俺は英雄になれなかった単なる探索者だから、万が一、トラブルが発生した時のために少しでもレベルを上げておきたい。
家にいるとあれこれ考えてしまうから迷宮に逃げてきている。ロマーノ村の迷宮の七階層の雑魚はスパイスパイダーだ。地上型の大土蜘蛛。毒のあるタランチュラだ。
「蜘蛛は毒があるからな。毒になったと感じたら毒消し丸を直ぐ飲めよ。雑魚はスパイスパイダー、グリーンキャタピラー、ミノだ。芋虫の糸に巻かれて蜘蛛に毒を受ければ死ぬぞ」
「アキラさん、今日は手袋が違いますね」
「ああ、この革の手袋には防毒がついている。お前たち全員にも配ったものだから安心しろ」
「アきラ様のいつもの水色の手袋、素敵なのに……」
エマよ、そう言うな。あれは単なる水色のゴム手袋だ。チキンな俺は、今日は防毒の革手袋だ。
「キャラクター再設定!」
BP:0
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1)
ワープ(1)
武器一 (1):ほむらの銅剣
頭装備一(1):防水の皮帽子(水色のスイムキャップ)
胴装備一(1):頑丈の皮鎧
胴装備 :防毒の革手袋
足装備一(1):防水の皮靴 (水色の風呂用のゴム靴)
装飾品一(1):防水のマント(水色の雨ガッパ)
フィフスジョブ(15):探索者6 色摩 農夫 僧侶 剣士
MP回復速度上昇(1) 腕力上昇(29)
ボーナス初期装備のゴム手袋を消して防毒の革手袋を装備。精神は毒耐性に影響があるはずだから色摩と僧侶で精神上昇のパーティー効果を得る。色摩は精神中上昇、僧侶は精神小上昇だ。獲得経験値を切って腕力上昇(29)、農夫と剣士で腕力小上昇も得ておく。
「カサッ、カサッ」
スパイスパイダーLv7(非表示 HP700)
スパイスパイダーLv7(非表示 HP700)
毒のあるタランチュラが2匹だ。七階層は最大3匹出るから注意だぞ。地上タイプの虫は火が弱点のはずだ。狙うのは脚でいい。
火炎剣!、スラッシュ。ザクッ、ザクッ。
(非表示 363、363ダメージ 脚2本にヒット)
スパイスパイダーが煙となって消えた。(非表示 経験値1)
「エマ、脚を狙え。何本か同時に切り付けろ!」
「はーい。アキラ様……火炎剣!」
ザクッ、ザクッ。エマの攻撃が脚2本にヒット。
(非表示 61、60ダメージ 脚2本にヒット)
「よし、あとは俺がやる!」
スラッシュ。ザクッ、ザクッ。
(非表示 363、362ダメージ 脚2本にヒット)
スパイスパイダーが煙となって消えた。(非表示 経験値1)
ジョゼとイリスがドロップ品を探しているが、猫人族の”目”をもってしても見つからなかった。
「XXXXX」
「アキラ様、ドロップ品が無いって!」
「アキラさん、スパイスパイダーのドロップ品はレア以外出ないそうです」
「らしいな。さっさとボス部屋まで向かうぞ!」
……
「XXXXXXX」
「アキラ様、ノラちゃんが毒!」
「なんだと、エマは全体手当てだ。今行く」
ドワーフのノラの素早さは、俺のパーティー内では格段に劣る。ドワーフが攻撃を回避すのは基本不可能だ。必中の毒のスキル攻撃でもあったのか。それとも毒は蓄積タイプで徐々に蓄積していたのか……そして俺は課金魔法のパーティライゼイションは使えない……。
素早さは圧倒的に猫人族、その次の俺とエマは似たようなもんだ。そして更に遅くなってドワーフのぽっちゃりノラだ。俺には英雄の敏捷中上昇はない……狼人族の獣戦士のパーティー効果が必要か……だが今は逡巡している時間はない。
火炎剣!、スラッシュ。ザクッ、ザクッ。
(非表示 362、363ダメージ 脚2本にヒット)
スパイスパイダーが煙となって消えた。(非表示 経験値1)
「ノラ、大丈夫か?」
「アキラさん……わたし……」
「待ってろ。今毒消し丸を飲ませてやる」
ノラには、初めての口付けがおっさんの俺になってしまうが、命には変えられない……俺はノラを抱き起こすと毒消し丸と水筒の水を口に含み、ノラの唇へと俺の唇を重ねる。お互いの舌が絡みつき、喉の奥まで毒消し丸と水を流し込んでやった。やっ、やってしまった。俺はノラを抱きかかえてやると、目の前に見える中間部屋へと運んでやる。他の娘たちも俺の後からついてくる。いつもならエマが騒ぎそうだが、ノラの命が掛かっているからな。
「ノラ、気分はどうだ?」
「アキラさん……わたしもう……」
俺は艶やかなノラの髪をやさしく撫でてやると、ぽっちゃりノラは頬を赤らめて俺に抱きついてきた。ドワーフのノラには加速のブーツが必要だろう。回避率上昇も、敏捷上昇もだ。
「ノラちゃん、よかったね。アキラ様、私にもチューして!」
「お前が毒になったらな。わざと毒蜘蛛の攻撃に当たるなよ!」
エマは本当にやりかねないからな……俺はアイテムボックスから牛とコボルトのスキル結晶を出すとノラに訊ねる。
「ノラ、お前の履いている靴に、この結晶を融合しろ」
「アキラさん、私の靴でなく自分の物に使ってください」
「ノラよ。お前の命がなにより大切だからな。俺のためにも融合してくれ」
ぽっちゃりノラは、金のなる金の卵から羽化した俺の大切なものだ。こんなところで失う訳にはいかない。強壮丸を飲ませてからノラの靴を脱がせ、スキル結晶2つと共に手に持たせる。俺の両手でノラを抱きしめてやると決心がついたようだ。
「アキラさんわかりました。やってみます……スキル結晶融合!」
眩い光が放たれるとノラの革の靴に美しい輝きが溢れ出す。
鑑定!
駿馬の革靴(脚装備) スキル:移動力増強 (空き)
(非表示 移動力増強:会敵時に移動速度が2倍になる)
「アキラさん、私、やりました!」
「凄いこの靴、ピカピカだ!」
「ああ、駿馬の革靴だ。お前の鍛冶師の才能は本物だぞ。自信を持て!」
俺は中間部屋で娘たちを色々な体位で抱っこさせられたが、腕力上昇に29ポイントも割り振っているから、どんな体位でも余裕さ……。
ノラが毒になるアクシデントがあったが無事にボス待機部屋前に到着した。全部で9回会敵したが、ノラの戦闘時の移動速度が俺程度まで上昇したので安堵する。ジョゼとイリスの海女がレベル3になる。そしてドロップ品はグリーンキャタピラーの糸7個とミノの皮3枚だけ……今回の教訓は、スキル結晶は、もう少し良い装備に付けようと思って、ケチってはいけないということだ……。
「よし、ボス前まで辿り着いたからボスに挑んで午前中の修練は終わりとする。ボスはスパイススパイダーだ。雑魚のスパイスパイダーと名前が似てるから間違えるなよ。脚を斬れ!」
俺は七階層のボス部屋に踊り込む。ノラ以外の全員の配置が完了したら、最後にノラをボス部屋に入れさせる。扉が閉まり魔物が実体化する。
スパイススパイダーLv7(非表示 HP1400)
毒のあるタランチュラが更に大きくなった魔物だ。原作では一撃だ。一発で石化したとかのいわゆる雑魚ボス。毒があるだけ。俺たちは脚を斬って終わろう。
火炎剣!、スラッシュ。
(非表示 脚4本にヒット)
(非表示 363、363,362、363ダメージ)
スパイススパイダーは煙となって消えた。(非表示 経験値1)
ジョゼがペッパーを拾って渡してくる。俺は、ようやく胡椒を手に入れた喜びに打ち震えると娘たちが寄ってくる。貧しい村だから胡椒も無かったからな。
「アキラ様、それ何?」
「これは胡椒だ。このペッパーで肉が更にうまくなるぞ!」
春の17日昼。所持金:金24銀185銅?
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ノラは毒にもなってしまったので鍛冶師の修行は休ませたかったが、身代わり装備がもう1つ欲しいので、お願いして融合してもらった。ミサンガの代わりに、アンナにいつも着けさせている皮のカチューシャに融合してもらう。なんてノラは良い子なんだ。
そして身代わりを融合して、美しい若草色に変わった身代わりの皮カチューシャをアンナに装備させてあげる。
「アンナ、身代わりの皮カチューシャだ。もしもの時に装備者の身代わりになってくれる。これだけは毎日装備しておけよ」
「旦那さま。よろしいのですか?」
「ああ、何かあった時に俺も悔やみきれんからな」
アンナ (女:31歳 人族) 村長Lv3
武器 :ダガー
防具 :身代わりの皮カチューシャ
防具 :ローブ 皮のミトン 皮の靴
装飾品 :村長の指輪
「今日はこれから、前村長の借入金の10万ナールを叩き返しに行くからな。俺のパーティーにアンナは入れ。用意しろ」
「アキラ様、僕は……」
「カルロは村長のアンナの代わりに留守番だ。村を仕切っておけよ」
俺、エマ、ノラ、ジョゼ、イリス、アンナの6人でパーティーを編成する。
さて、俺のパーティーは猫人族の海女2人がいるから、万が一でも耐えられるだろう。海女はHP小上昇と体力中上昇。身代わり装備もあるしな。
マルコ村の迷宮前の案内役探索者には会いたくないので、村の近くにワープゲートを繋いで移動した。ここからは歩いて村まで向かう。マルコ村の入口で止められるが、アンナが村長の指輪を見せると素通り、既に探索者どもがマルコ村に来ているから、治安の面ではどうしようもないわな。うちの村もこうなるから探索者どもは入れたくない。
村の中央当たりの井戸で狼人族の娘たちが水を汲んでいる。ふにゃーんとした犬耳の前回も見かけた娘だ。時折泣いているので、こき使われているのだろう。泣いているのでエマたちが声をかけに行った。バーナ語だからドワーフのノラにはわからんだろうが、うちの娘たちは本当にやさしい良い娘たちだ。
鑑定!
リーゼ (♀:14歳) 村人Lv5
エルザ (♀:14歳) 村人Lv5
ほう、前回見かけたときは、たしか奴隷だったようだが解放でもされたのか。エマたちが戻ってくると、狼人族の娘たち2人は、会釈をして水桶を持って村長宅へと運んでいく。
「アキラ様、あの娘たち、お父さんとお母さんが迷宮から帰ってきてないんだって」
「ああ、迷宮に飲まれた奴隷たちの娘か、可哀想にな」
「アキラ様、何とかしてあげて!」
「いや、今日はお前を何とかしに来たんだぞ」
今日はアンナとエマを何とかしないといけない。狼人族の娘たちを可哀想だとは思うが、今の俺には、そんな余力はない。そんなのは英雄の仕事だ……俺は英雄になれなかった単なる探索者だ……俺は唇を噛み締める。
「さあ、マルコ村長のところに行って、借入金を返済して問題を片付けよう」
「はい、旦那さま」
マルコ村長の屋敷に到着すると屋敷内はざわついている。マルコ村長の息子が迷宮に飲まれて、そうなっているだろうと思って午後に来たのだがな。アンナが用件を伝えると前回の部屋へと案内される。事前に護衛は2人までにしてくれと言われたので、猫人族のジョゼとイリスの腰をトントンしてあげ外で待機させた。ジョゼとイリス以外の武器は俺のアイテムボックスにしまってある。
「ああ、お前たちであったか。今日は何用じゃ。この間アンナに話した件かの。儂は今忙しいのじゃ。はよいたせ」
アンナとエマが椅子に座らされ、護衛の俺とノラはその後ろで立ちんぼだ。今回は屋敷の外に追い出される訳にはいかない。椅子の前にでると3人掛けの椅子のアンナの左隣にドガっと腰を降ろす。そして腰のポーチから金貨10枚の入った金袋を取り出す。俺の探索者レベルは6、アイテムボックスの数は6個×6種だ。金貨なんぞ入れてたら、直ぐに一杯になる。
おもむろに金袋をテーブルに置くと、チャリッと中に入った金貨の音が鳴る。アンナの言葉を遮ると俺自らがマルコ村長との交渉に乗り出す。
鑑定!
マルコ (男:64歳) 村長Lv18
装備 :ローブ サンダル 村長の指輪
「ここに10万ナールある。アンナの父親の借入金の証文と交換だ!」
「なんじゃとっ。お主が肩代わりするというのか。しかもこの短期間でじゃと!」
「さあな。アンナが期限内に金を返しさえすれば、誰が払おうと問題はなかろう。さあ証文と交換だ。そちらも今、金が必要であろう」
「くっ、この村の状況を知っておったのか……」
そう、この村長は息子が迷宮に飲まれて死んだことで、息子の奴隷についていた者たちが全て一緒に殉死してしまったのだ。奴隷相続の契約を怠ったのだろう。或いは孫が成人するまでと思ってケチったのか。
「……わっ、わかった。証文と交換しよう」
マルコ村長が自ら証文を取りに行く。奴隷たちの一部は息子と一緒に殉死してしまっただろうからな。村長が証文を取りに行っている間に、俺はちらりと入口の方を見ると、先ほど井戸端で泣いていたであろう、ふにゃーんとした犬耳の召使いの娘たち2人が立っている。召使いか……前回は奴隷だったのに、この娘たちは主人と一緒に殉死せず、解放されたのか。まあ、ここで召使いをしていれば飯と住む所に困ることは無いだろうよ。
……
「ああ、たしかに証文は受け取った。清算ができたことでアンナとエマの件はこれで終了だな」
「まっ、待つのじゃ!」
「なんだ。まだ何かあるのか。清算はできたはずだぞ。まだ何か必要なのか?」
「そっ、そこの娘どもをお主に買い取ってもらいたい」
「ほう、見たところ娘たちは成人前のようだが、いいのか、未成年の奴隷売買だぞ!」
俺はこの狼人族の娘たちが14歳の未成年だと知っている。その時、色摩をつけた俺の欲望が燃え上る……人の弱みにつけ込んでタダで手に入れたい、狼人族を……。
「だっ、大丈夫じゃ。未成年の奴隷売買は禁止されておるが、今あの娘たちは未成年だが奴隷ではない。未成年の帝国民は奴隷商人には売れないが、帝国民が自分たちの意思でお主の元に行ったところで問題はあるまい」
「ほう、未成年ならお前のところで面倒をみて、かわりに仕事をさせればよいではないか。未成年なら人頭税も掛からんだろう。それに成年したらお前が売っぱらえばよいではないか。村長なら奴隷にも落とせるだろう?」
「1人10万ナールでどうじゃ。あの娘たちをお主の元へ行くように、儂が口を聞いてやる」
「XXXXXXXXX!、XXXXXXXXX!」
こっ、こいつ。金か、やはり今、金が必要なのか。犯罪ギリギリのところをついてきたぞ。何か抜け道があるのか。俺は奴隷を持ったことがないから紳士の取引の説明を奴隷商人から受けていないぞ。ちらりと入口の方を見ると縋るような娘たちの視線が俺に刺さる。俺の視線と狼人族の娘やちの視線が交わる。その時、背後のぽっちゃりノラのずんぐりとした両手が俺の両方の肩にやさしく乗せられる……ああ、バーナ語のわからないノラも娘たちを救ってあげたいのだ……ぽっちゃりノラの、なんて可愛いことか。俺はノラの手に自分の片方の手を添え、アンナの太ももにも手を添える。
しっ、しまったー。すでに10万ナールを渡した後だから金貨がない。俺の資金は金貨14枚の14万ナール……課金スキルの3割引きなんて俺には無いぞ……。
「そうだな。2人で10万ナールなら考えてみようではないか。今、金がいるんだろう」
「むっ、2人で15万ナールでどうじゃ?」
ほう、下げてきたな。今、金がいるのだろう。だが、俺の資金は14万ナールだ。俺は狼人族の娘たちをちらりと見るが強気に出るしかない……。
「俺は一向に困らんからな。2人で10万ナールは譲れない。それ以上は出すつもりはない」
「わっ、わかった。儂が2人で10万ナールで、その娘たちに口を聞いてやる。はよ金を出さんか」
しっ、しまったー。俺はリュックから金袋を出している時に、自分の今のパーティーに6人がいることに気がつく。どうする誰をパーティーから外すか。猫人族の海女2人は外したくないが、やむを得ないか……俺は小声でエマに指示をするとエマが退席していった。リュックから金貨を取り出している振りをして時間を稼ぐ。エマが猫人族2人に伝えたのだろう。パーティー効果で薄っすらと見えるエマが手を振っている。
「待て、娘たちを俺のパーティーに入れるのが先だ。金貨10枚はこの袋に入っている」
「わかったのじゃ、はよせい!」
「……パーティー編成!。よし、いいだろう。金袋は確認してくれ。俺たちはこれで失礼する!」
俺もマルコ村長も鑑定上の身分では異常はない。このスキームはお互いに許されるのだろう。よく考えると、やってはいけないことの何かに引っ掛かって、俺自身が奴隷身分にでもなっていたらと思うと、俺はブルリと震えた。あっ、怪しい取引はやめといたほうがいいぞ。
俺は全員を連れて村長の屋敷から足早にでる。一刻も早くこの場から立ち去りたい。外に出ると猫人族の娘たちの尻尾がシュルリと俺の両腕に絡みつく。今この猫人族の娘たちは、俺のパーティーから外れている。迷宮から帰還するのはやめておいた方がいいだろう。俺たち総勢8人は足早にマルコ村を出る。
「村を出たら、直ぐに来た時の場所からロマーノ村に帰るからな」
俺はマルコ村の外のワープゲートを開ける場所から、アンナ、狼人族の娘を先に帰してから全員を帰宅させた。
やった、やったぞー。狼人族ゲットイベントを何か知らんが10万ナールでクリアしたぞ。いや待て待て。俺はリュックの中の金袋の中身を見ると、そこには金貨4枚しか入ってなかった……俺の資金は4万ナール。まだ焦る時間じゃない。
春の17日昼過ぎ。所持金:金4銀185銅?
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「旦那さま、ありがとうございました。見事な交渉でした」
「アキラ様、素敵。ありがとう!」
「アキラさん……わたしも……」
「ああ、これでアンナもエマも安心だろう。他に借入金は無いだろうな」
「無いと思います……」
全員に抱きつかれた俺だが、俺を含めて9人のところに更に2人だ。どうすんだこれ……。
「そうだな。アンナはこの娘たちから事情を聞いてやれ。俺のパーティーは町の雑貨屋に行ってくる。着の身着のままだろうからな。肌着とかが必要だろう」
俺はパーティーメンバー全員を冒険者ギルドの絨毯前に送り込む。そういえば、行商人の問屋にも行かないとな。大切な商館への伝手だ。いや待てよ。俺は今、金貨4枚しか持っていないぞ……行商人の問屋へは見られないように雑貨屋、衣服屋を廻って、必要だと思う物を娘たちに選ばせる。銀貨だけは100枚以上あるからな。狼人族の娘の物と一緒に好きな物を買っていいぞ。買い物をして俺たちは帰宅した。
「アンナ、どうだ。狼人族の娘たちの事情は聞き出せたのか?俺はバーナ語がわからんからな」
「はい、旦那さま。後ほどご説明します」
「寝る所をどうするか考えておいてくれ。俺は一度、狼人族の娘をつれて迷宮に行ってくる。エマ、狼人族の娘を連れてこい」
娘たち全員が集まったところで気がついた。娘は全員で6人もいる。不味いことになったな。差をつけたりすると女の戦いが始まるぞ……今日は毒を受けたノラには少し休んでもらうか。他の娘たちにはパーティーから外す理由がない……。
「ノラ、今日は毒も受けたしな。大事を取って家で少し休んでいてくれ。アンナ、ノラに料理でも教えてやれ。今日はペッパーもあるからな。夜は兎の肉でシェーマ焼きでも食べよう」
「はい、旦那さま。お任せください」
ノラを抱きしめてから午後は少し休ませる。ドワーフ料理のボルシチでも作れるようになってな。リーゼとエルザの適性検査が終わったら迎えにくる。
「よし、リーゼとエルザの適性を見るからな。俺のパーティーに入ってくれ。エマ訳せ」
狼人族の娘のリーゼ(14歳)とエルザ(14歳)は、村人Lv5の他に農夫Lv1しか持っていない。こき使われていたから年齢の割には、村人のレベルが高いのだろう。他は農夫Lv1だけだ。これでは体が弱すぎる。ワンチャン戦闘が未経験なら盗賊団を倒して英雄を取得できる目もあるだろうが、それはそれで、英雄を取得できていない俺が可哀そうすぎる……。
俺はリーゼとエルザに革装備を着けさせ、ノラ以外の娘たちを迷宮に連れて行く。一階層のコボルトを経験させた後に、ボスのコボルトケンプファーを剣で倒させて戦士と剣士を取得させ、パンチで倒させて僧侶を取得させる。二階層ボスのウドウッドを俺が倒して、リーフをそれぞれに拾わせる。探索者は迷宮に入った段階で取得だ。その後に、滝に連れて行き、エマ主導で神官を修得させる。エマに滝で裸に剥かれてビックリしていたが、うちでは巫女の修行の一環だ。そして獣戦士の取得条件は娘たちに聞いてもわからない……。
滝からワープで帰宅した後に、リーゼとエルザをアンナに預けて、俺はノラをパーティーに入れてから肉を取りに行く。それと身代わりの芋虫のスキル結晶も必要だ。カルロの部隊と鉢合わせしたが先に行かせてから、三階層のラピッドラビット周回を11回行い、兎の肉を11個集めた。最後に六階層のホワイトキャタピラーを禁欲攻撃でスキル結晶を狙ってみたが、今の俺の欲望は金貨だった……。
春の17日夜。所持金:金4銀172銅?
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夕飯はスパイススパイダーでペッパーが手に入ったので、狼人族の娘たちに頼み、菜園の何かの葉っぱを使ったシェーマ焼きっぽいものを作ってもらった。シェーマの味はピリ辛系ということだが香味野菜が違ったのだろうか。シェーマの葉っぱが何なのかは、そのうち狼人族の娘たちが教えてくれるだろう。夕食後にノラに身代わりのミサンガを1つ作ってもらうと、芋虫のスキル結晶の在庫が無くなった。
「旦那さま、狼人族の娘たちのお部屋がありません……」
「ああ、元5人家族の家に11人いるからな。やはりそうだよな……」
俺は自室でのパピルスの帳面との格闘をやめて居間にでる。カルロの部屋も取り上げて、今は居間で寝ている。よく異世界ものにある、ポーン、土魔法とか建築スキルで家ができたー。とかの家の建築とか家の拡張とか、そんなのは漫画だけの世界だ。俺の金貨もたったの4枚だ……。
今日は、狼人族の娘たちをカミーユとクロエのいる部屋に寝かせて、俺は麻の貫頭衣を着て、アンナとカミーユとクロエを誘い、月明かりのもと隣の元カミーユの家の俺の家へと連れていく。シュルリと黒い尻尾が俺の両腕に絡みつく。まあ、今日はこれしかないよな……俺の色摩の欲望は、今は金貨だ。
……
女盛りの31歳たちの女の欲望を受け止め、ブランチの透明な膜を身につけた俺は、彼女たちを満足させるまで禁欲攻撃を放つ。連続での禁欲攻撃の使用は禁欲倍率が0倍だ!
本当に禁欲攻撃を人に放つと殺しちゃうから注意が必要だ。
春の17日夜半。所持金:金4銀172銅?