「お屋形さま、朝食の準備が整います。お起きになって下さいませ」
「いや、もう少しだけ寝かせてくれ。昨夜は凄すぎてな」
奴隷のティナが、俺が掛け布団がわりに掛けている麻の布を取り上げる。バサッ。
「お屋形さま、お洗濯がありますので麻の布はお持ちしますね、ジーナ、カルロ坊ちゃまはどう?」
「カルロ坊ちゃまは起きましたよ。お屋形様は、ティナ?」
素っ裸で寝ていた俺の息子が朝の光を浴びて屹立している。俺は目を覚ますと2人の奴隷、そしてカルロの視線が俺の息子に釘付けになっていて、娘たちが固まっているのに気が付く。みっ、見られたか。朝の俺の色摩Lv8を……。
「ああ、おはよう。ご苦労だな。今起きるぞ」
俺は頬を赤らめているティナとジーナに腕組みされながら連行されていく。カルロはトボトボと後ろをついてくる。カルロよ、早く一人前になれよ。
「アンナさまが仰られたように、お屋形さまのが、とても素敵でした。ねっ、ジーナ!」
「アンナさまが羨ましいです。私たちなんか、いつも男爵様と盗賊どもでしたし……」
「あらあら、ティナもジーナも早く旦那さまに気に入られるようにならないとね」
アンナもティナもジーナも、3人とも色女のジョブを持っているからな。そっち方面で気が合うのだろう。アンナは昼間に一人だけだったからな。ティナとジーナをアンナの奴隷にしたのは、結果的に話し相手が出来て良かったのかもしれない。
「今日は行商人が昼頃に来るからな。お前たちにも小遣いをやろう。俺の金袋から銀貨2枚ずつ配ってやれ」
「よろしいのですか、旦那さま」
「ああ、少しロッコにも稼がせてやらんとな。行商に来なくなられても困る」
元はロッコにドロップ品を2倍の値段で売りつけた金だ。俺とロッコで金を廻しているだけだからな。食事を取り、ノラの鍛冶の修練を終わらせる。
「俺は昼まで八階層のパーンで修練をする。俺の庇護下の者たちを集めろ」
集まった者たちに、アンナから1世帯銀貨4枚の褒美が渡される。俺の身内には朝のうちに銀貨2枚ずつの小遣いを与えてある。これでアンナの村長のメンツも保たれるだろう。今日は部隊編制の都合、巫女にジョブを変えたい者が2人いるので、俺の朝の修練に参加させる。この村に8人も巫女がいるなど、おかしな話だが、村のパーティーの安全度を考えればやむを得まい。
八階層のボスのパーンを人員を入れ替えながら、みっちりと70周回することができた。詠唱中断の強権のシミターが2本あるからパーンは最早俺のレベル上げの糧だ。
「アキラ様、また角が落ちてた」
「ほう、エマよ、それは以前にカルロに与えた装備品の水牛の角と同じく、男が装備する装飾品だな」
「えええ、カルロのおちんちんに嵌めてたやつ!前のはブカブカだったよ」
「そうだな、こちらの方が防御力があるだろう。何たってパーンの角だからな。帰ったらカルロに嵌めてやれ」
パーンはオスのヤギのビーストだからな。レアドロップは角なのだろう。これでカルロには、水牛の角と山羊の角の2本のちんこサックを与えることになる。これで男も上がるだろうし、財にもなるだろう。
俺たちはパーンでの修練を切り上げて帰宅する。山羊の肉を68個、山羊の角を1本、山羊のスキル結晶を1つ持って帰宅した。山羊の肉は精力増強効果があるので、女たちの喜びがハンパじゃない。しばらくはパーン狩りを行うことになるだろう。ノラの鍛冶師がレベル7になる。
春の30日昼。所持金:金34銀116銅?
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「旦那さま。行商人のロッコが到着しており、挨拶したいと申しております」
「ああ、こちらから出向こう。商いを滞らせると村人たちも困るだろう。村人たちにとっては、15日に1回の物資だからな」
俺は村の広場にいるロッコの元へと、アンナと共に向かう。
「やあ、ロッコ殿。遠路ご苦労であったな」
「これはこれは、アキラ様。頼まれていた物資をお持ちしております。ピーノ、あとは任せたぞ」
「ああ、村人たちが購入することだろう。よろしく頼む」
「ところで、お耳に届いておりますでしょうか?昨晩、私は耳にしたのですが……」
「なんだ、また町に盗賊団でも沸いたのか?」
「マルコ村の村長の事でございます。なんでも騎士団の方に何かを陳情したようでございます。マルコ村長は息子を迷宮で失ってから、余りいい噂を聞きませんからね」
しっ、しまった。マルコ村の事をすっかり忘れていた。俺はゲッツ盗賊団を壊滅させてから、マルコ村の情勢の事が、すっかり頭から抜けていたのだ。そもそもゲッツ盗賊団をけしかけてきたのは、マルコ村長だったかもしれないのにだ。
「マルコ村長の噂は俺も少しは聞いている。また何か進展があったら教えてくれると助かる」
「はい、これも商いでございます」
俺はロッコとの話を終わらせて、奴隷のティナとジーナの元へと向かう。よく考えれば俺は、奴隷の娘たちからも全てを聞き出していない。盗賊どものインテリジェンスカードを交換し、金が入ってしまった俺は、すっかりいい気になっていたのだ……。
「ティナ、ジーナ、聞きたい事がある。正直に教えてくれるか?」
「はいお屋形さま。私もジーナも、お屋形さまにこの身を盗賊からすくい上げて頂いたご恩があります。何なりとお申し付け下さい。そっ、その、私たちの身体がご希望でも……少し期待して……」
「いっ、いや、そちらは今はよい。マルコ村長とゲッツ盗賊団の関係だ。マルコ村で何か見たり聞いたりしたのか?」
「よくはわかりません。盗賊の男たちに村へ連れてこられ、可愛がった代金だと銀貨10枚を渡されました。私とジーナの他に、もう1人幹部以外の盗賊の女性がいたので、その方なら何かを知っていたかもしれませんが、もう死んでしまいました……ジーナは何か知ってる?」
「お屋形さま、ティナの言った通りです。私たちは、お屋敷から持ち出してしまった指輪を持っていたので、なんとか盗賊たちとの毎夜の伽でも耐えられましたが……」
「そうか、辛いことを思い出させてしまって悪かったな。少なくともマルコ村についてから、金銭を与えられたというのだな」
「はい、盗賊団の頭目とその女の方と幹部の方たちが、村長の館に行ったあとです。私とティナは小屋の中で待たされていました。その後に銀貨10枚を渡されて、全員で漁村に向かうと言われ、この村に連れてこられました」
「ああ、ありがとう。お前たちはアンナの奴隷になってしまったが、これからは俺が必ず守ってやる。すまんがアンナの言う事をよく聞いてやってくれ。いずれカルロが村長になった時に奴隷からも解放されるだろう。カルロの面倒もよく見てやってくれ」
「アンナさまとカルロ坊ちゃまの事はお任せ下さい、お屋形さま……私たちもお屋形さまの……」
さて、盗賊どもに廻された奴隷娘たちの色女のジョブについては一時保留だ。色女のジョブを取得してしまった者は、本人の意思とは別に、どうにもそっち方面への欲望が増大するのだろう。アンナを含めて色女3人に同時に襲われたら恐ろしいことになる。この奴隷の娘たちは盗賊の子種を孕んでいるだろうから、しばらくは保留だ。怖いもの見たさで試してみるのは余りにも危険すぎる。
まずは、マルコ村長だが、盗賊団への何らかの受け渡しがあったと見るべきだろう。俺がマルコ村長に渡したのは、借入金10ナールの他に、解放奴隷の狼人族の娘2人を引き取るときに発生した10万ナールだ。それが盗賊団へ流れたとも考えられる。ゲッツ盗賊団の装備が、盗賊にしては余りにも良すぎたのだ。
「ティナ、ジーナ、盗賊どもの装備についてだが何か知っているか?最初からあの装備だったのか?」
「頭目とその女の方の装備以外は、村に行ってから変わりました。頭目たちは変わっていないと思いますが、私たちには装備の事はわかりません」
「ああ、ありがとう。今日はこれくらいにしておこう。お前たちにも辛いことを思い出させるだけだからな」
俺は奴隷のティナとジーナを優しく抱きしめてやり仕事に戻らせた。その後は自室でパピルスの帳面との格闘をする。騎士団への探りは不可能だ。マルコ村との癒着もありえる。ではマルコ村への探りはどうだ。いや、今となってはこれも無理だろう。どちらもノコノコ探りに行くのは危険すぎる。行けてもマルコ村の迷宮内までだろう。しばらくは様子を見るしかないか、ロッコが町に戻ってから情報を聞くくらいか……。
さて、ロッコの馬車の荷台に、漁村の魚の干物などを積み込んで買い取らせた後だから、俺は迷宮に行くか。
「アキラ様、リーゼがお腹が痛くて気分が悪いって」
「アキラさん……お股から……」
「なんだと、エマ、全体手当ては掛けてやったのか?」
「はい、私やノラちゃんは、全体手当てで大丈夫なんだけど……私たちのお家にきて」
俺はエマとノラたちに連れられて、エマたち娘たちに与えた家へと向かう。狼人族固有の病気でもあるのか。家へ入ると若い娘たちの独特の女臭に俺は眩暈に襲われる。
「すごい匂いだぞ。男たちをこの家に絶対に入れるなよ。あと喚起もしろ」
「ええー。アキラ様のお家だからアキラ様以外は入れないよ。カルロも」
「私はアキラさんのお家に……遊びに行きたいです……」
俺は僧侶の手当てを狼人族のリーゼに掛けてやる。
「リーゼどうだ、痛みは治まったか?」
「きゃうーん」
どうやら俺は病気になったと勘違いしていた。つっ、月のものだ。子供だと思っていた娘たちは、どうやら既に女性だったのである。そりゃそうだ。この世界は15歳で成人して身体が完成する世界だ。インテリジェンスカードの制約で性への教育が成人するまで憚られているだけだ。アンナから聞いた話だが、うっかり未成人を襲うと罪人に落とされ、未成人同士が致しても両方とも罪人に落とされる。いわゆる淫行罪だ。俺が異世界に引き込まれて30日。なぜ今まで気がつかなかった……。
「エマやノラは大丈夫なのか?これがどういう事なのか、分かっているのか?」
「エマは、最近は全体手当てがあるから大丈夫」
「アキラさん……私は我慢できます……」
「エマは10歳くらいからだよ。病気じゃないから大丈夫ってお母さんが言ってた」
「アキラさん、……大人の女って何ですか……」
「にゃうーん」「きゃうーん」
しっ、しまったー。俺が説明するのか。アンナから説明させるか。俺は観念して娘たちに俺の分かる範囲の事を教えてやった。娘たちは14歳。いま知ろうが来年知ろうが同じことだ。15歳の成人まで俺が監督している娘たちだ。
「へえー、エマももう赤ちゃんが作れるんだね。アキラ様の赤ちゃんが欲しい」
「アキラさん……わたしもお願いします……」
「おっ、お前らにはまだ早い。早く成人しろ。盗賊に落とされてもしらんぞ」
この世界は、人とドワーフなど種族の違うものは子を成すことは出来ない。いわゆるハーフエルフなどは存在しないのだ。原作では種族の異なる者では受胎しないとアランの説明であったが、はたして本当だろうか。俺はアンナや猫人族との伽では、必ずブランチの透明な膜で避妊しているから確認は取れないし、責任もとれない。俺自体が本当に人なのかもわからない。単なるデジタルデータの可能性すらある。考えただけでもゾッとする……。
「お前らも身体の調子が悪かったら迷宮は必ず休めよ。怪我でもされて俺を悲しませないでくれよな」
「はーい。今夜は調子が悪くなる予定だから、アキラ様のお家で一緒に寝ます!」
「アキラさん……私も一緒に……」
「お前らは元気だからな。パーンの肉を取りに迷宮に行くぞ」
今日は狼人族のリーゼとエルザは休ませて迷宮へと向かう。少し時間がオーバーしてしまったが、パーンの周回は慣れてきて36周回できた。パーンは部屋の角に追い込まれると、魔法を使うためにバックステップしようとしても、後ろにはもう下がれないから嵌まってしまうのだ。延々とバックステップしようとするがキャンセルされ続けて、後はタコ殴りだ。山羊の肉35個と山羊のスキル結晶1つを禁欲攻撃で出して帰宅する。ノラのアイテムボックス100には、すでにギッシリと山羊の肉が詰まっているが、直ぐに食べられてしまうだろう。うちには肉食獣が沢山いる……。
春の30日夜。所持金:金34銀116銅?
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夕食のヤギ汁を食べてノラに鍛冶をさせてから、パピルスの帳面との格闘に勤しむ。
「旦那さま。ヤギの肉を食べてから、どうにも……今晩も宜しいでしょうか……」
「すまんな。今晩はエマたちが遊びに来るって聞かなくてな。明日では駄目か?」
「わかりました……」
アンナは寂しそうに家事をしに戻っていった。パーンだ、パーンの肉の精力増強効果だ。この肉は余りにも危険だ。俺の色摩Lv8にとっては、ただのヤギの肉だが……。
カルロを連れて俺の家へと戻る。カルロも悶々としているのだろう。直ぐに自分の部屋に戻っていった。パーンの角でも装着して一人で頑張るのだろう。
ズズズッ、ガラガラッ。
「アキラ様、来ちゃった」
「アキラさん、……私のお股が変です……」
「「グルグルグル……」」
パーンだ、パーンの肉の精力増強効果だ。猫人族のジョゼとイリスの喉の音が爆音だ……子供だと思っていた娘たちは、既に大人の女一歩手前だったのだ。パーンの肉の効果は本当に凄まじい……。
「俺はもう寝るからな。カルロとでも遊んでやれ。今頃パーンの角でも着けているだろうよ」
俺は寝床に逃げて寝ていたが、カルロの部屋でパーンの角で遊んだエマたちは、カルロで遊ぶのに飽きたのか俺の布団の中に入ってきた。
「アキラ様、赤ちゃんが欲しいです……」
俺は色摩Lv8。欲望を制御可能だから娘たちの誘惑には負けんさ。
春の30日夜半。所持金:金34銀116銅?
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「アキラ様、私たち自分の家へ戻りますね」
「ああ、俺はしょんべんがしたい」
エマたちは、朝に素っ裸で寝ている俺の色摩Lv8の朝立ちを見て、ビックリしながら、さんざん捏ねくっていたが、どうやら戻ってくれるようだ。俺を起こしに来た奴隷のティナとジーナも、まぎれて弄るのはやめてくれ。
「お屋形さま、お辛そうですので私たちがお静めいたしましょうか?」
「カルロのを手伝ってやってくれ。俺は食事に向かう」
外の木の根元に立ちションした俺は、ティナとジーナに息子を綺麗に拭かれた後に、腕組みされながら連行されていく。カルロもトボトボと後ろをついてくる。カルロは昨晩、パーンの角で散々おもちゃにされていたからな。
朝食を済ませノラの鍛冶を終わらせてから、朝の迷宮へと向かう。ノラのアイテムボックス内の100個のパーンの肉は村人たちに分配させた。パーンの肉を村人たちにも配ったから、漁師の妻たちの顔もツヤツヤだ。夜は夫に満足させてもらえたのだろう。漁師たちにも更に精力がついて、新たな命が芽吹くことになるだろうよ。
「今日は、これから九階層の攻略に入る。雑魚は蟻のニートアントが最大4体だ。毒を持っているからな。接敵するメンバーは6つある防毒の革手袋を装備しろ」
全員分の防毒装備はない。この階層の蟻のスキル結晶を入手しないと装備に防毒スキルがつけられないからだ。ボス部屋までは、2パーティーで向かうので、無茶をしなければ毒消し丸で足りるだろう。部隊編制はパーンの階層の時と同じで、俺のパーティーが前衛で接敵。エマのパーティーが後方からの急襲から守る隊列だ。昨日、生理が始まった狼人族のリーゼはアンナに預けてあるから、今日は狼人族のエルザの”鼻”が頼りだ。
■メンバー配置■
前衛 :俺のパーティーは5人。
ジョゼ:海女 エルザ:獣戦士 イリス:海女
ノラ :鍛冶師 アキラ:色摩
後衛 :エマのパーティーは5人。
ローズ:探索者 アニエス:探索者
ロック:漁師 エマ :巫女 ジュール:漁師
「キャラクター再設定!」
BP:0
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1)
ワープ(1)
武器一 (1):ほむらの銅剣
頭装備 :革の帽子
胴装備 :硬革のジャケット
腕装備 :防毒の革手袋
脚装備 :硬革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
シックスジョブ(31):色摩8 探索者 農夫 神官 剣士 錬金術師
腕力上昇(20)
防具は盗賊から剥ぎ取った硬革装備にしてボーナスポイントを捻出し、シックスジョブ(31)にして錬金術師をセット。メッキを使っていく。後は戦いながら腕力の調整が必要だろう。
「ギギギッ、ギギギッ、ギギギッ」
鑑定!
ニートアントLv9(非表示 HP900)
ニートアントLv9(非表示 HP900)
ニートアントLv9(非表示 HP900)
ニートアントが3匹だ。単なるデカい蟻だが、こいつは毒を持っている。地上の虫系魔物は火が弱点のはずだが、この大きさの蟻のパワーは侮れないぞ。
「ニートアントは蜘蛛の時と同じで脚を狙え。行くぞ。火炎剣!」
「スラッシュ!」バコッバコッ。
(非表示 脚2本にヒット)
(非表示 456、455ダメージ
ニートアントは煙となって消えた。(非表示 経験値2)
「横から脚を狙え、前にいると噛まれて、毒を喰らったら死ぬぞ!」
……
猫人族のジョゼとイリスがドロップ品の毒針を3つ拾ってくるが、毒針の先がこちらを狙っている。
「うわっ、危なっ。先をこっちに向けないでな。そおっと渡してくれな……」
どっ、毒針は危なすぎる。一歩間違えれば娘たちに殺されるところだぞ。俺だって毒が付いている毒針の先端は手で持ちたくないからな。そう、毒針は小さすぎて手袋を外さないと持てないのだ。そして猫人族の”目”がないと、鑑定スキルがない限り見つけるのは困難だ。ジョゼとイリスに、よく言っておかないと拾うときに毒になるぞ。
「ジョゼ、イリス、これは毒針だからな。持つ時と渡す時に気をつけるのだぞ、エマ訳せ!」
「アキラ様、ジョゼもイリスも聞くだけなら、ほぼ意味が分かるようになったよ」
「「アキラサマ、ぷるにゃーん」」
「そうか、ブラヒム語がもう分かるようになったのか。偉いぞ!」
俺はジョゼとイリスの腰をトントンとしてあげるとシュルリと尻尾を絡ませてくる。ああ、なんと愛おしいのだ。俺の猫人族の娘は。
猫人族の女。固有ジョブは海女だ。男は漁師、女は海女だが、おそらく差異はないと思われる。猫人族の種族固有の超感覚は”目”だ。網膜の後ろにタペタムという反射板が備わっている、まんま猫だ。夜中に俺の元へ伽にやってくる猫人族の女たちの目は、ギラリと光って獲物の俺を狙っている。そう、優れた暗視能力が備わっている。迷宮では、この目を利用して毎日、黒魔結晶を拾ってくる。素晴らしい。そして最も素晴らしいのは、この程よい太さの尻尾だ。俺はもう、このシュルリとされる尻尾の虜だ。息子をシュルリとされると、何も考えられなくなってしまう。ただ、尻尾を逆撫でると怒られてしまうから注意が必要だ。更に気になるのは耳だ。人間の耳の位置に何があるのか気になるだろうが、実際は何もない。そんなのは髪を坊主にしない限り些末な問題だ。耳の中を綿棒で綺麗にしてあげたいが残念ながらこの世界には綿棒は存在しない。固有スキルは対水生強化だが、まだ活躍の場面は余りない。一撃必殺は無いが、このあと水生魔物が出る階層で活躍してくれるだろう。パーティー効果の、体力中上昇、HP小上昇、腕力小上昇といるだけで俺を守ってくれる素晴らしい娘たちだ。
その後のエルザの”鼻”の匂い感知では、この階層に魔物部屋は無さそうである。魔物部屋と毒とのコンボは危険だからホッとした。下の階層も一度、狼人族の”鼻”で調べさせた方がいいかもしれない。毒も接敵メンバーには、防毒装備があるので毒になった者を出さないでボス待機部屋へと辿り着いた。ここまでのドロップ品は、ニートアントの毒針が26個、エスケープゴートの山羊の毛が10束、スパイスパイダーのドロップ品はナシ。
「よし、まだ昼までには時間がありそうだから、ボス戦も熟しておくぞ。ボスはハントアントだ。ニートアントの強化された魔物だからな。絶対に前に立つなよ。盾で防いでもパワー負けして死ぬぞ。脚を狙え!」
ノラ以外を魔物出現位置に配置し、ノラに最後にボス部屋に入ってもらう、いつもの戦術だ。ノラがボス部屋に入ると扉が閉まって、魔物が実体化する。
鑑定!
ハントアントLv9(非表示 HP1800)
「うっ、凶暴な肉アリか。足元に魔法陣が出たぞ。毒針ではなく蟻酸を飛ばしてくるぞ。横から脚を斬れ。エルザ、ビーストアタックだ!」
「火炎剣!スラッシュ」、バコッ。
(非表示 456ダメージ)
蟻がでか過ぎて、俺の攻撃は脚1本だけだ……。
「……ビーストアタック」、ドガザシュ。
(非表示 クリティカルヒット)
(非表示 1309ダメージ)
エルザのビーストアタックでも届かないか……。
ドシュッ。
(非表示 54ダメージ)
(非表示 経験値3)
ジョゼの強権のシミターの攻撃でハントアントは煙となって消えた。
ジョゼがドロップ品の蟻酸を拾ってくる。
くっ、俺のほむらの銅剣が、そろそろ限界に近づいている。エルザのビーストアタックでも一撃には届かない……そしてドロップ品は蟻酸か。酸だから透明な膜で覆われてなければ大変なことになるぞ。危険物は全てアイテムボックスにしまった。
ハントアントの毒はおそらく蟻酸を飛ばすスキル攻撃だろうが、俺たちの防具は耐毒ではなく防毒だから一段性能が落ちる。危険すぎるか……だがジョゼとイリスに持たせてある詠唱中断の強権のシミターならスキル攻撃は抑えられるとも言える。どうする、周回してみるか……俺たちは十階層に抜けてからワープゲート繋いでボス待機部屋へと戻る。
「エマ、すまんが、もう一度今のメンバーで試したい。待っていてくれるか?」
「はい、ローズとお喋りしてますね」
「よし、もう一度同じメンバーで行くぞ。エルザのビーストアタックはナシだ。行くぞ!」
もし俺の考えが正しければ、ビーストアタックを使わなくても行けるはずだ。最悪は俺の禁欲攻撃もある。行けるはずだ。再びボス部屋へと踊り込む。
ハントアントLv9(非表示 HP1800)
「ジョゼ、イリス、足元に魔法陣が出たぞ。脚を斬り続けろ!」
ジョゼの攻撃。バキッ。
(非表示 ハントアントのスキル攻撃がキャンセル)
(非表示 54ダメージ)
イリスの攻撃。バキッ。
(非表示 ハントアントのスキル攻撃がキャンセル)
(非表示 54ダメージ)
……
あっ、ハントアントの初手のスキル攻撃がキャンセルされてハマったぞ。延々とスキル攻撃をしようとしている……思った通りだ。初手スキル攻撃の魔物は、詠唱中断の強権武器で容易にハマってしまう……ハントアントの攻略法が分かってしまった。ボス部屋限定で、顕現して必ず新品の場合、初手スキル攻撃の魔物だけはハマるのだろう。道中の魔物は無理だろうが、初手がスキル攻撃で糸のホワイトキャタピラーにも有効だろう。ホワイトキャタピラーを周回している時に気が付かなかった……これで蟻のスキル結晶も捻り出すことができるぞ。
「よし、全員で脚を一本ずつ斬り続けろ!」
……
俺はメンバーを入れ替えながら全員に体験させ、ハントアントを10回周回してドロップ品の蟻酸10個を持って帰宅した。
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昼にノラに鍛冶をさせていると、奴隷の娘たちが慌てて駆け寄ってくる。
「お屋形さま、騎士団の方がお越しになっています。アンナさまが対応に向かっていますが、急いでお越し下さい」
「なんだと。なぜ騎士団が今頃来る。迷宮の件か……急いでいく」
俺は急いで広場にいるアンナの元へと向かうと、馬に乗った男とアンナが向き合っている。
鑑定!
エラルド・グランディ(男:35歳) 騎士Lv38
武器 :妨害の鋼鉄剣
防具 :防火の鋼鉄鎧 防毒の硬革手袋 頑丈の硬革ブーツ
装飾品:身代わりのミサンガ
うっ、家名持ちの騎士Lv38かよ。しかもスキル装備だぞ……。
「誰だお前は、俺は村長のアンナと話をしておる」
「騎士さま、こちらは我が村を盗賊団からお救い頂いた方です」
「むっ、貴様のインテリジェンスカードを確認させてもらうぞ」
俺は騎士と揉めないように黙ってインテリジェンスカードの確認をさせた。
「ほう、貴様は家名持ちで自由民か。貴様がこの村の用心棒だな。村長のアンナにも申したが、マルコ村の村長より、この村の村長アンナへの決闘の申し入れが出ておる。俺は今回の決闘を仕切らせてもらうバルナバ騎士団のエラルドだ。自由民の貴様はしばらく黙っておけよ」
「待って下さい。女の私に決闘なんて出来ません!」
俺のファーストジョブは色摩にしてあるが、それは気にしないのか。まあジョブは単なる職業だからな。それよりも決闘だとぉ。一体何が起こっている……。
「マルコ村の村長マルコは、ロマーノ村に貶められたから決闘で勝敗をつけると申しておるぞ。決闘は帝国民において勝敗を決める正当な権利だからな。これは村と村との戦いでもあるが、住民を抗争に巻き込まないための正当な処置であると騎士団も判断した。住民通しの諍いに発展されてもらっては領主様も困るからな」
「そんな。どうして……」
村と村との戦いだとぉ。違うだろ。マルコ村の村長が一方的にけしかけているだけだろう。余りにも突飛過ぎて話が頭に入ってこないぞ。盗賊団をけしかけたのは奴の方ではないのか。それとも騎士団の奴らも金で買われて、すでにグルか……。
「村長アンナよ。マルコ村の村長マルコは、お前の娘を掛けて勝負すると申しておる。お前はマルコ村の村長に何を求める。村長マルコ側が出すものは何でもよいと申しておるぞ。村長マルコに何を求めるのか、決闘の日時までに決めておけ。それと決闘の代理人は6人まで出すことができる。お前が直接戦わずともよい。決闘の代理人を探しておくことだ。そこの自由民の貴様でもよいぞ。これは村と村を代表する家同士の戦いだと心しておくのだな。日時や詳しい事は、この書面に書かれておる。必ず指定の日時に騎士団詰所に出頭せよ。来なくば負けを認めたことになる。よいな、では俺は騎士団詰所に戻るからな。不明な事があれば騎士団詰所まで聞きに来い」
騎士は散々語って書面を渡したあとに、馬に乗ってバルナバの町へと戻っていった。
「旦那さま。私、どうすれば……」
「安心しろ、アンナたちは俺の家族も同然だ。俺が何とかしてやる」
泣き崩れ落ちるアンナを抱いて、俺は奴隷のティナとジーナと共に家へと戻っていく。俺の力で守りきれるのか……。
春の31日昼。所持金:金34銀116銅?