マズいことになってしまった。騎士団の男から書面を受け取ったアンナは、家に戻ったあと項垂れている……。
ロマーノ村の借入金10万ナールをマルコ村長に返済して決着がついたと思っていたが、マルコ村長がロマーノ村に、今度は決闘を仕掛けてきたのだ。騎士団に決闘を受理されてしまった以上、受けなければ俺の愛しい娘のエマが取られてしまう。それどころか、俺の村まで取られてしまうことだろう。
「ティナ、決闘の日時は何時と書いてある?」
「春の36日昼にバルナバ騎士団の詰所と書かれています……今日は春の31日なので残り5日間です……」
「不味いな……準備期間がほとんどない」
「お屋形さま、どうなってしまうのでしょうか?」
「安心しろ。俺が何とかする。ティナとジーナはアンナに付いていてやってくれ」
俺は自室にパピルスの帳面との格闘に向かう。俺の色摩はレベル8だ。盗賊なら格上のレベルでも、隙をつくことができれば撃破できることが、先の盗賊団との対決で分かっている。しかし、今回の決闘は盗賊以外との初めての対人戦だ。まず、今日は九階層のボスのハントアントでどの程度の周回が可能かを調べるべきだ。今の俺の資金は34万ナール。明日以降、装備を更新できるか。悠長に町の武器屋を巡れる時間があるのかどうか。あとはスキル結晶だが、これは朝の漁を中止にしてでも、村人に頑張ってもらうしかない。
「キャラクター再設定!」
BP:1
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1) 詠唱省略(2)
ワープ(1) パーティー項目解除(1) パーティージョブ設定(2)
武器 :山崩れの鉄剣(山滑剣:土属性)
頭装備 :革の帽子
胴装備 :硬革のジャケット
腕装備 :防毒の革手袋
脚装備 :硬革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
フィフスジョブ(15):色摩8 探索者 農夫 神官 剣士
MP回復速度上昇(1) 獲得経験値五倍(15)
必要経験値五分の一(15)
装備と防具は盗賊団から回収した装備としてボーナスポイントを捻出する。そして必要経験値五分の一(15)を追加して俺自身の経験値強化を図るが、今まで溜めていた分がどうなるのかは未知数だ。ボーナスポイント1は残しておいて、ほむらの銅剣を出せるようにしておく。あとは味方頼りだが、ハントアントの脚を全員で叩きまくればいいだろう。一旦は、これで今日の午後の時間を使うことにする。
原作主人公は、春の30日の段階で探索者レベルが30越えだったはずだ。今の俺は探索者レベル9。しかも主人公との成長差は約3倍。そして俺の初期ボーナスポイントは50、これが足枷となり経験値倍率をこれ以上あげられないのだ。原作主人公のように自分のレベルよりも低い階層で、ずっと芋り続けることは俺には許されない。
事のあらましをティナとジーナから聞いたであろう娘たちが駆けつけてくる。
「俺自身の修練を加速させたい。すまんが手伝ってくれるか?」
「アキラ様、私また……」
「エマ、安心しろ。次で全ての決着を必ずつけてやる。皆も厳しい修練になるだろうが、すまんが手伝ってくれないか?」
「アキラ様……」
「アキラさん、私も手伝います!」
「「にゃうーん」」「「きゃんきゃん」」
生理痛が始まっている狼人族のリーゼは奴隷のティナとジーナに預け、俺、エマとノラ、猫人族のジョゼとイリス、狼人族のエルザの6人で、既に攻略法の分かっているハントアントでレベルをあげる。ハントアントを45周回して、俺の色摩がレベル9、探索者がレベル10へと上がる。ドロップ品の蟻酸45個を持って帰宅した。
夕食後も娘たちが修練を手伝うというので言葉に甘えて、夕食後もハントアントの周回を行う。狼人族のリーゼの面倒を見るために、エルザには修練の参加を辞退させた。余り遅くまでやっても明日に影響が出る。夕食後のハントアントは30周回で切り上げた。ドロップ品の蟻酸28個、レアの猛毒針1本、色摩の禁欲攻撃で蟻のスキル結晶1つを持って帰宅した。皆疲れたのであろう、よく休んでくれ。
俺はアンナを連れて自分の家へと戻る。今日から決闘の日まで、夜はアンナと過ごしてやるつもりだ。カルロには悪いが村長家の居間で寝てもらう。
「アンナ、心配するな。俺が夜はついていてやる」
「旦那さま……」
春の31日夜半。所持金:金34銀104銅?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
春の32日。決闘の日まで残り4日。
「旦那さま、昨晩はご心配をおかけしました。昨日夜に、村人たちも迷宮に入ってくれたようです。杖とスキル結晶が届いております」
「そうか、ありがとうと伝えてくれ」
「はい、朝の漁を取りやめて、迷宮に入るように伝えておきます」
村人たちが4つ持ってきたスキル結晶を確認する。コボルトのスキル結晶は何個でも欲しい。
鑑定!
コボルトのスキル結晶(コボルト)
ワンド (ウドウッド)
人木のスキル結晶 (ウッド)
兎のスキル結晶 (ラビット)
油木のスキル結晶 (オリーブ)
スキル結晶を4つも持ってきたか。ウッドのスキル結晶とオリーブのスキル結晶は効果が分からないから、どこかで調べないといけない。ワンドはウドウッドのレアドロップ品の杖だが俺には必要ない。しかし、村人たちにもかなり無理をさせているかもしれない。
「すまんな。夜には必ず休むようにも伝えてくれ。無理をすれば必ず事故が起きるからな。それと俺の金袋から1200ナールずつを、スキル結晶を持ってきたパーティーにアンナから渡してやれ。メンバーで分配させてな」
「はい、お任せ下さい。旦那さま」
さて、今日はどうするか。バルナバの町の装備屋ではランク3までの装備しか取り扱っていない。武器だと銅、鉄、鋼鉄。防具だと皮、革、硬革、或いは金属鎧で鋼鉄までだ。銅の武器は1000、鉄の武器は2000、鋼鉄の武器は4000ナールだ。調達しに行くとしても午後になるか。
結局、午前中は狼人族の娘たちは休ませて、昨日と同様にハントアントの周回を行った。90周回できたが、疲労度を考えると午後にメンバーの入れ替えが必要になるだろう。俺の色摩がレベル10になる。レベルが階層に追いついたので、午後はもう一階層上げるべきだろう。十階層はチープシーフだ。ただの羊の魔物に後れをとることはないだろう。ドロップ品の蟻酸88個、レアの猛毒針1本、蟻のスキル結晶1つを持って帰宅した。毒系のドロップ品の置き場に注意をしないと不味いな。ロッコが買い取ってくれるか確認できるまでは、しばらくカルロに厳重管理をさせておく。
昼休憩後にバルナバの町の武器屋へと向かう。確か最初に武器屋を訪れた時に、武器屋の倉庫の中にスロット3の鋼鉄の剣が眠っていたはずだ。
「店主、店にある鋼鉄の剣はこれだけか?。それとダマスカス鋼製は無いのか?」
「これはこれは、旦那。ダマスカス鋼製なんて、こんな田舎町では誰も買いませんし、ドワーフのシグルド親方も作れませんからね。それにダマスカス鋼製を買えるのは、お貴族様や騎士団長クラス、或いは一流探索者だけです。鋼鉄の剣なら倉庫にまだあります。騎士団にも卸していますからね。ご覧になりますか?」
「ああ、すまない。手になじむ物が欲しくてな」
俺は、武器屋の倉庫にある鋼鉄の剣の在庫を見せてもらった。ダマスカス鋼の剣を入手するには、ドワーフ族の鍛冶師が大勢住んでいるドホナ、ドブロー辺りに行って調達した方がいいと言われた。まあそうだろうな、ここアイエナ地方は獣人の生活圏だからな。そして、武器屋の倉庫にまだあった。まだ売れずに残っていた。スロット3の鋼鉄の剣が。
鋼鉄の剣。一般向けに流通している武具では最高の、ランク3の両手剣だ。この上のランク4はダマスカス鋼製だが、一般向けの武器屋では取り扱っていない。鋼鉄の剣の最大スロット数は3。片手剣では鋼鉄製のレイピア、槍では鋼鉄の槍と最大スロット数は同様だ。素材は鉄のインゴットが3個、板3枚、革1枚、接着剤3個、ブランチが3本らしい。おそらく鉄と炭素をブランチで融合させて鋼を作るのだろう。革と接着剤は握りの部分だと思われる。鋼鉄の剣は一本4000ナール。鋼鉄の剣は、騎士団の騎士のメインウエポンだ。
「店主すまなかったな。この2本の鋼鉄の剣をもらいたい」
「わかりました。鋼鉄の剣を2本で8000ナールです」
俺は時間も惜しいので言い値で買い、金貨1枚を店主に支払って武器屋の絨毯からワープで帰宅した。
「ノラ、すまないが、この剣と結晶2つでスキル融合を頼む」
「はいアキラさん、やりますね……スキル結晶融合!」
鑑定!
強権の鋼鉄剣(両手剣):詠唱中断 空き 空き
「よくやった、ノラ。更に腕を上げたな。お前の親父に融合させた強権の鋼鉄剣と同じものができたぞ」
「アキラさん、私もお父さんに追いつきましたか?」
「ああ、自信を持て。俺の元で修練を積めば、更にその先を見せてやる」
俺はノラのお腹をさすって労った。ノラのプニプニのお腹がとても心地よく、ノラもとても気持ちよさそうだ。
「よし、今日から十階層の探索を2パーティーで始める。猫人族の子供たちも呼んでくれ」
生理痛の治まった狼人族のリーゼも復帰させ、集まったメンバー全員を十階層の入口の小部屋へとワープで送り込んだ。
■探索メンバー■
アキラ (男:27歳 人族) 色摩Lv10
エマ (女:14歳 人族) 巫女Lv7
ノラ (♀:14歳 ドワーフ) 鍛冶師Lv7
ジョゼ (♀:14歳 猫人族) 海女Lv6
イリス (♀:14歳 猫人族) 海女Lv6
リーゼ (♀:14歳 狼人族) 獣戦士Lv6
エルザ (♀:14歳 狼人族) 獣戦士Lv6
ロック (♂:12歳 猫人族) 漁師Lv5
ジュール(♂:12歳 猫人族) 漁師Lv5
ローズ (♀:13歳 猫人族) 探索者Lv6
アニエス(♀:13歳 猫人族) 探索者Lv6
■メンバー配置■
前衛 :俺のパーティーは5人。
ジョゼ:海女 リーゼ:獣戦士 イリス:海女
ノラ :鍛冶師 アキラ:色摩
後衛 :エマのパーティーは6人。
ローズ:探索者 エマ :巫女 アニエス:探索者
ロック:漁師 エルザ:獣戦士 ジュール:漁師
「キャラクター再設定!」
BP:3
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1) 詠唱省略(2)
ワープ(1) パーティー項目解除(1) パーティージョブ設定(2)
武器 :ほむらの銅剣
頭装備 :革の帽子
胴装備 :硬革のジャケット
腕装備 :防毒の革手袋
脚装備 :硬革の靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
フィフスジョブ(15):色摩10 探索者 農夫 神官 剣士
MP回復速度上昇(1) 腕力上昇(30)
十階層の雑魚はチープシープが最大4匹だが、狼人族のリーゼとエルザも復帰させている。名前がチープだから魔物部屋さえなければ大丈夫だろう。とはいえ迷宮を舐めるのは危険だからな。経験値倍率を全て切って腕力上昇(30)に割り当てる。
「メェ~、メェ~、メェ~、メェ~」
鑑定!
チープシープLv10(HP 1000)
チープシープLv10(HP 1000)
チープシープLv10(HP 1000)
チープシープLv10(HP 1000)
ほう、雑魚は角なしの羊か。チープな魔物だからな。毛がよく燃えそうだ。キャラクター設定は朝のまま、経験値重視でいいだろう。
「様子を見つつ、エマも火炎剣で前に出ろ、リーゼとエルザはビーストアタックを温存しておけ、俺も火炎剣で前に出る!」
火炎剣!、スラッシュ、スラッシュ。
(非表示 690、690ダメージ)
チープシープが煙となって消えた。(非表示 経験値1)
……
「チープシープは大丈夫そうだな。この階層もニートアントが出るから気を付けろよ」
「アキラ様、ヒツジがモフモフしてて可哀そう!」
「エマ、あれは魔物だぞ。あとで可愛い物を買ってやるから、ぶちのめせよ」
「はーい」
……
その後、脚を切ればいいニートアントではなく、エスケープゴートには手こずった。ワンパンできない限り、逃げ出して生命力が回復すると再び襲ってくる。なんとか夕食前にボス待機部屋までと辿り着いた。途中、狼人族の”鼻”で魔物部屋を回避したのも時間が掛かったが、安全とは引き替えられない。ドロップ品は羊の毛26束、毒針10針、山羊の毛2束だった。俺の農夫、剣士、神官がレベル9になり、ジョゼとイリスの海女がレベル7になる。
どうする、ボスのビープシープまでやっておくか。原作では確か、眠らされたら木の棒で味方を叩いて起こすとかの舐めた内容だった気がするが、必要か?あれ……。
「よし、様子見だが、ボスのビープシープに挑戦する。催眠スキルを使ってくるが、こちらには強権のシミターが2本あるからな。ジョゼとイリスが魔物のスキルを止めてくれ」
ノラが何か言いたそうだが、いつものようにボス攻略の配置で挑む。最後にノラがボス部屋に入ると扉が閉まり、ビープシープが実体化する。
「ビーーーーーーーー」
……
ドガッ。
何が起こった!?……俺はボス部屋の天井を見上げている……。
「アキラさん、魔物の突進をもらってました。早く起きてみんなを起こしてー」
なんだとっ。俺は攻撃を喰らったのか。辺りを見まわすとエマと獣戦士のリーゼも寝転がっている。まっ、マズい。次に海女のジョゼが狙われている……俺は全体手当てを掛けてから素早く起き上がる。
ドガッ。棒立ちのジョゼが吹っ飛ばされる。
こっ、こいつ、やらせるかよ。俺は欲望に炎をともす。娘たちをこれ以上やらせるかよー!。
禁欲攻撃!(非表示 禁欲倍率:10倍)
ドガガガガ、プシャー。
(非表示 2768ダメージ)
ビープシープは煙となって消えた。(非表示 経験値1)
娘たちはまだ、うずくまっている。……全体手当て……全体手当て!
どうやら俺も痛恨の一撃を喰らって、血反吐を吐いていたようだ。ビープシープの攻撃が貫通したのだ……ノラが全員を起こしに行く。そして俺の足首に巻いていた身代わりのミサンガが切れていることに気が付く。俺は身代わりがなければ、ビープシープの痛恨の一撃で死んでいたのだ。娘たちの怪我は、全体手当てで回復させたが、俺とエマ、リーゼとジョゼの4人の身代わりのミサンガを失ったことに、俺は恐怖した……舐めていたのは俺の方だった。原作のあの木の棒の警策が必要だったのか……俺は無言のまま、ドロップ品の羊の肉を拾い全員をワープで帰宅させた。
「アキラさん、ビープシープは実体化すると直ぐに、ビープ音を鳴らして近くにいる者を眠らせてきます」
「そっ、そうだったな。俺が迂闊だった。ノラは大丈夫だったのか?」
「はい、私は扉の前にいたから一部始終を見てました。魔物の魔法陣が出ずにビープ音でアキラさんたちは棒立ちになっていました。その後の突進で次々に……」
むっ、無詠唱の催眠スキルだ。魔物にも詠唱省略を使う奴がいたのか……その後は、俺の身代わりが切れるくらいの突進だ。おそらくクリティカル、そして催眠にかかった相手への攻撃は、大幅に攻撃倍率が上昇しているに違いない。防御貫通もしているかもしれない……。
「皆すまなかったな。今日は体をよく拭いて食事をしてから、ゆっくりと休んでくれ」
「アキラ様、まだ大丈夫です!」
「アキラさん、私もまだやれます!」
「「にゃうーん」」「「きゃうーん」」
夕食後に、俺は麻の貫頭衣を着せられ、月明かりのもと元カミーユの俺の家へとアンナに連れられていく。
俺は麻の貫頭衣を脱がされ寝床に寝かされると、恐怖に冷え切った俺の色摩Lv10を、アンナの色女Lv4が優しく包んでくれる……。
「旦那さま、今夜はアンナの中で、ゆっくりとお休み下さい……」
春の32日夜半。所持金:金33銀64銅?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
春の33日。決闘の日まで残り3日。
今日は原作でセリーが身請けされて主人公にやられてしまう日だ。俺にはドワーフのぽっちゃりノラがいるから悔しくなんてないぞ。
奴隷のティナとジーナに起こされた俺は、2人に腕組をされながら朝食へと連れられていく。俺は朝食を取りながら、昨日の反省をしていると、俺の持ち物の中にはビープシープのスキル攻撃を無効化する物があったことに気が付く。きっ、気づけよアホか……。
「ノラ、すまないが朝の鍛冶師の修練は、この装備とスキル結晶2つの融合で頼む」
「はい、やってみます……スキル結晶融合!」
「素晴らしい。強壮丸を飲んで、もう1回行けそうか?この装備とスキル結晶2つで……」
「はい、もう1回やってみますね……スキル結晶融合!」
「よくやった。俺のノラは何て素晴らしいんだ。これで昨日のビープシープに再挑戦できるぞ。ありがとう」
鑑定!
耐睡の硬革カチューシャ:催眠耐性 空き 空き
駿馬の硬革靴 :移動力増強 空き 空き
羊とコボルトで催眠耐性の耐睡、牛とコボルトで移動力増強の駿馬だ。羊のスキル結晶は全滅した騎士団から頂いた物だったが、すっかり忘れていた……。
俺は融合してできた装備が何なのかを教えながら、ノラのお腹をさすって労ってあげた。この娘は金の卵から羽化した俺の大切な宝物だ。
さて、硬革のカチューシャと硬革の靴は、先の盗賊団の女が装備していた物だ。なぜ、こんなに良い物を装備していたかは謎だが、ここでスキルを融合してしまう。まず、耐睡の硬革カチューシャだが、カチューシャならば全員で使いまわせるだろう。そして、駿馬の硬革靴は、いずれ足の遅いドワーフのノラに履かせる物で、中級ランク帯までは使えるだろう。
狼人族のリーゼの生理痛の治まったと思ったら、今度はエルザの生理痛が始まったらしい。今日はエルザをリーゼに見てもらい、猫人族の子供の招集もしない。残りのメンバーで再度ビープシープに挑む。
「これからビープシープに再挑戦する。まずは俺1人が魔物の顕現位置で戦う。お前らは俺が呼ぶまではボス部屋に入った入口手前で待機だ。呼ぶまで俺の元へ来るなよ」
「アキラさん、1人だと危険です」
「エマが全体手当てするね」
「ああ、危険は承知の上だ。何かあったらゲートを入口付近に開くから逃げろよ。俺は今日、駿馬の硬革靴を履いているからな。お前らなんか簡単にぶち抜くぞ!」
俺がビープシープの顕現位置に陣取り手を上げると、残りの娘たちが部屋に入り、後ろの方で扉の閉まる音が聞こえる。ビープシープが実体化を始める。
「ビーーーーーーーー」
鑑定!
ビープシープLv10(非表示 HP2000)
よく見るとビープシープは、角ありのビッグホーンだった。どうりで死にそうになった訳だ。よし、耐睡の硬革カチューシャを装備した今の俺に死角はない。カチューシャは女物だけど……喰らいやがれ、これが俺の考えた秘策だ!
「スラッシュ」ドガッ。
(非表示 ビープシープの詠唱を中断)
(非表示 アキラの攻撃:436ダメージ)
前面に陣取っていた俺の強権の鋼鉄剣がビープシープの身体にぶち当たり、ビープシープを押さえつけると、鳴り響いていたビープ音が鳴りやむ。
よっ、よし、剣をビープシープの身体に振れてさえいれば、こいつはずっとスキルを出そうとして固まっているのが確認できたぞ。俺は剣に力を込め、ビープシープの身体から剣が離れないように押さえつける。
「よし、お前ら、俺が抑えている間に、全員でビープシーフをタコ殴りにしろ!」
「はーい……火炎剣!」ボシュッ。
(非表示 エマの攻撃 :99ダメージ)
「にゃうーん」ザシュッ。
(非表示 ジョゼの攻撃:46ダメージ)
「にゃーーん」ザシュ。
(非表示 イリスの攻撃:44ダメージ)
「えーい!」ドスッ。
(非表示 ノラの攻撃 :98ダメージ)
……
ビープシープは煙となって消えた。(非表示 経験値1)
エマがドロップ品の羊の肉を拾ってくる。
うむ、ジョゼかイリスに抑え役を変わってもらってから、俺が切った方がいい気もするが危険だからな。初手スキル攻撃のボスは、スキルをキャンセルさせれば、スキルを再度使おうとしてハマるのが、ハントアントなどのボス戦で分かっている。ビープシープはそれに詠唱省略の催眠スキルが加わったタイプだ。道中の雑魚で出てきたら使えない攻略法だが、今はこれで経験値を稼ぐしかない。
俺はエマには頬を触ってやり、ノラにはお腹をさすってやり、ジョゼとイリスには腰をトントンとしてあげて労ってあげた。やる気になってくれたようだ。
「よくやった。これで安全にビープシープを倒せる。どんどん行くぞ。お前ら頼んだぞ!」
「キャラクター再設定!」
BP:3
キャラクター再設定(1)
鑑定(1) ジョブ設定(1) 詠唱短縮(1) 詠唱省略(2)
ワープ(1) パーティー項目解除(1) パーティージョブ設定(2)
武器 :強権の鋼鉄剣
頭装備 :耐睡の硬革カチューシャ
胴装備 :硬革のジャケット
腕装備 :防毒の革手袋
脚装備 :駿馬の硬革靴
装飾品 :身代わりのミサンガ
フィフスジョブ(15):色摩10 探索者 農夫 神官 剣士
MP回復速度上昇(1) 獲得経験値五倍(15)
必要経験値五分の一(15)
キャラクター設定を獲得経験値にまわして同じことを繰り返す。
……
ビープシープLv10(非表示 HP2000)
「スラッシュ」ドガッ。
(非表示 ビープシープの詠唱を中断)
(非表示 アキラの攻撃:193ダメージ)
……
途中でジョゼとイリスが抑え役をやりたいとエマに言ってきたが、今回は諦めてもらった。もう身代わりのミサンガの在庫がないので失敗が許されないのだ。72周回して午前の部は切り上げた。ドロップ品の羊の肉が70枚、レアドロップ品の羊皮紙が1枚、羊のスキル結晶が1つ手に入った。俺の探索者がレベル11になる。
ノラに修練の鍛冶でビープシープ戦で失ってしまったミサンガを量産させる。ミサンガを10個作らせて、空きスロットがあるものは2つ。レベルで空きスロットが付く確率が変わるのかは、まだ不明だ。午後は、午前と同様にビープシープを廻してレベルを1つ上げ、明日は初級階層の最後、十一階層のボスまで辿り着いておきたい。そこでレベル上げをするのが、俺の現状の最適解だろう。下の階層で芋っていてもレベルは上がらない。
「よし、午後の修練もビープシープをやるからな。俺が魔物を抑えて合図したら、お前らが前に来てぶっ叩け。頼んだぞ」
「エマの火炎剣は強いんだから!」
ジョゼとイリスが抑え役をやるというので午後はやらせてみることにした。俺はジョゼのカチューシャと俺の耐睡の硬革カチューシャを交換し、ほむらの銅剣を俺は取り出して握る。俺たちはビープシープを嵌め技で攻略し、夕食後も少しボス戦をして、90周回で切り上げた。ドロップ品は羊の肉88枚、羊皮紙1枚、羊のスキル結晶1つ。最後にホワイトキャタピラーを禁欲攻撃で倒して、芋虫のスキル結晶1つを補充した。俺の農夫、剣士、神官がレベル10、エマの巫女がレベル8になる。
持ち帰った羊の肉は全部で160枚くらいあり、ノラのアイテムボックスに100枚、俺のアイテムボックスに60枚収納して、明日アンナより村人に配らせる予定だ。
「アキラ様、お肉毎日食べられるね!」
「アキラさん、私のアイテムボックスが満杯です……」
「「にゃうーん」」「「きゃうーん」」
「肉ばっかり食うなよ。野菜も食えよ。臭くなるぞ」
俺は肉食獣の娘たちが喜んでるのを見てホッとする。今日もかなり無理をさせた……。
春の33日夜。所持金:金33銀64銅?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺は麻の貫頭衣を着て、月明かりのもと元カミーユの俺の家へとアンナを連れていく。アンナも精神力が大分回復したのだろう。足元が軽やかだ。
ズズズッ、ガラガラッ。入口の引き戸を開けると、月明かりに照らされたカルロと3匹の猫女と会敵した。ほう、2巡目の未亡人たちがまだ残っていたか……。
「アキラ様、僕、駄目って言ったんですが、マリーさんが我慢の限界だって……」
「ああ、カルロ。お前は部屋に戻って、一人で修行をしていろ。あとは俺に任せておけ!」
2巡目のマリー♀27歳、オロール♀26歳、クレール♀26歳か。パーンの肉を食ってから大分立っているからな。我慢の限界だったようだな。いいだろう、俺の色摩Lv10が相手をしてやる。
……
ブランチの透明な膜を装着した俺は、早々に3匹の猫女たちを討ち果たすと、ついにラスボスと対峙する。アンナ色女Lv4か、相手にとって不足はない。今日こそは、俺の色摩Lv10がどんな体位であっても討ち果たして見せるぞ。
……
なっ、なにいー。行為の最中にレベルアップしただとぉ。アンナ色女Lv4は獲得経験値五倍の効果で、行為の最中に色女Lv5にレベルアップしてしまったのである。どんだけ俺を倒して経験値を稼いだんだよ。いっ、いかん。俺の禁欲攻撃が負ける……俺の色摩は、今夜もまたアンナの色女に敗北した……。
「4人相手にお見事でございました。私の旦那様……」
春の33日夜半。所持金:金33銀64銅?