持たざる者の異世界迷宮でハーレムを   作:@ペロ

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003 バルナバの町

アイエナ地方バルナバ男爵領ロマーノ村。

ロマーノ村の東には海が広がる。北方は山脈が連なり人々の北への通行をさまたげる。

 

アイエナ地方は獣人族の生活圏だが、領主は主に人族らしい。

狼人族は戦闘民族、猫人族は海岸沿いに住み着き、朝に漁をして昼はまったり過ごす。どちらの種族も領地を治めるのには向かないらしい。

 

これから向かうバルナバの町は、バルナバ男爵が治めている町だ。バルナバの町から更に南の方へ向かうと城塞都市アイエナに辿り着くそうだが、まだアンナさんは行ったことがないと話してくれた。

 

村を出てしばらく進むと周りには農地が広がり始めた。これから春小麦でも撒くのだろうか。

 

「アキラ様、バルナバの町が見えてきました」

 

農地の遥か先に沢山の建物が見え始めた。柵があるくらいで町自体は壁で覆われてないのだろう。ロバと荷車は進む。

 

「入市税とか、身分の検めは必要ないのか?」

「はい、荷物の乗り入れ以外は、冒険者の移動魔法で直接町の中に来ますからね」

 

なるほど、冒険者の移動魔法のフィールドウォークがある以上、外からの町への侵入を防ぐことは不可能だ。盗賊も冒険者にフィールドウォークで送ってもらえば、中に入り放題だからな。いちいち全員のインテリジェンスカードの操作をしていたら、騎士のMPも足りるわけがないか。騎士団も無駄なことはしないのだろう。

 

町の入口らしき場所で、騎士見習いのような人物とアンナさんが会話をして、町の中へと進む。これから騎士団の詰所に向かう。

 

「アキラ様、騎士団に到着しましたが、先にロバと荷車を預けてきます」

「ああ、この金袋を渡しておくから必要なら使ってくれ」

「ありがとうございます。ここでしばらくお待ち下さい」

 

俺は荷台から降りる。娘のエマは俺に付き添って、アンナさんとカルロはロバを預けに行くようだ。

 

「エマはこの町に来たことがあるのか?」

「はい、何回か連れてきてもらってますが、どこに何があるのかはわからないです」

 

エマと他愛もない話をしていると、アンナさんたちが戻ってきた。

 

「お待たせしました。入口の騎士にインテリジェンスカードの確認をしてもらって、騎士団詰所のロビーに入りましょう」

 

俺たちは入口の見習い騎士のような男の元へ向かう。アンナさんが騎士と話をする。

 

「どのようなご用件ですか?」

「はい、盗賊のインテリジェンスカードの提出と村長の引継ぎの件でお話があります」

「わかりました。それではインテリジェンスカードを確認します」

 

「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」

 

「確認しました。盗賊はいませんね。詰所の中の者に用件を伝えて下さい」

 

俺たちは全員左手を出し身分を確認されたうえで、詰所のロビーに入る。

 

「俺は盗賊のカードの引き換えをエマと行うから、村長の件の相談はアンナさんとカルロでしてきてくれ。さっき渡した金袋は必要に応じて使ってくれ。それと交換した後に探索者ギルドに行ってくるから、要件が終わったら探索者ギルドで待ち合わせよう。パーティーを組んでいるから、どこら辺にいるかはお互いにわかるからな」

「わかりました」

 

アンナさんと分かれて、盗賊のカードの確認を騎士に依頼すると受付けらしき所を指示された。

 

「盗賊団を討ち取ったので、盗賊のインテリジェンスの提出をしたいのだが、ここで宜しいか?」

「盗賊のカードをお出し下さい。確認します」

 

俺は昨日アンナさんから渡されたカードの入った袋から、12枚のカードを取り出して渡すと、受付の者は奥へと消えた。

 

「ゲイル盗賊団ですね。二人に懸賞金が賭けられています。他の者には賞金が賭けられていないので1枚100ナールですね。盗賊団はどこで出ましたか?」

 

エマは泣きそうだが、俺はロマーノ村の顛末を簡単に話した。調書を取った受付は納得したのか金袋を渡してきた。

 

「これがその賞金です。ゲイル盗賊団の一味はまだいますので、見つけたら騎士団に報告して下さい」

「ああ、わかった」

 

俺は賞金の金袋を受け取ると、エマと一緒に騎士団詰所の外に出た。アンナさんたちは、まだ掛かるのだろう。パーティー編成で見える二人には動きはない。

 

「エマ、探索者ギルドがどこかわかるか?」

「この先に見える看板がそうだと思います。聞いてきますね」

 

エマが手招きしているので、そちらに向かった。中に入るとどうやら、探索者ギルドと冒険者ギルドは併設のようだ。左の壁の絨毯に黒い壁が現れて、ときおり人の集団が出てくる。奥にはカウンターがあり猫人族が受付をしているので、エマを伴いそちらに向かう。

 

「ここで薬は買えるのか?」

「下級の丸薬は取り揃えていますよ。お兄さん素敵な装備ですね」

「ありがとう、ところで傷薬と疲労回復薬と魔結晶が欲しいのだが」

「お兄さんは初めての方ですかね。滋養丸と強壮丸は60ナール、黒魔結晶は10ナールですよ。何個欲しいの?」

「うーん。滋養丸と強壮丸を30個ずつ、黒魔結晶は10個頼む」

 

60×30+60×30+10×10だけど、銀貨は面倒なので懸賞金袋から金貨一枚をトレイに出す。

 

「げっ、金貨……わかったわ。ちょっと待っててね」

 

カルクのない受付の猫ちゃんは、奥で数を数えるのだろう。しばらく待つと丸薬と魔結晶とお釣りをトレイ二つに乗せてきた。

 

「次からは銀貨を丁度でお願いね。こっちが滋養丸で、こっちが強壮丸ね」

 

しっ、しまった。入れる袋が無かった。だが俺には初期装備の水色の防水のマントがある。マントを脱いで袋っぽくすると、丸薬と硬貨をまとめて、ざらっと中に入れる。エマがこちらを見ているが持たせるのも危険だろう。俺は品物と硬貨を詰め込んだ水色のマントを肩に担ぐと、猫ちゃんに尋ねる。

 

「この辺に雑貨屋はあるか。入れ物を買いたい」

「ええ、出て右に真っ直ぐ行くとあるわよ」

 

受付の猫ちゃんはニコニコしている。完全に覚えられたかもしれないが些末な問題だ。

一度ワープで村長宅に戻るか迷ったが、俺は手を振って探索者ギルドを後にする。

 

「エマ、雑貨屋だ。袋が欲しい。あと欲しい物があれば遠慮なく言え」

「私も猫ちゃんのマークのズボンが欲しいです」

 

俺のピューマのハーフパンツを指さして言う。残念だったな。多分売っていないぞ。

 

「ああ、あとで服屋にも寄ろう」

 

ギルドを出た俺とエマは、少し先の雑貨屋に入る。とりあえずリュックと硬貨を入れる袋、薬を入れる袋が二つ必要だ。

 

「背嚢と袋が欲しいのだが、取り扱っているか?」

「ええ、あちらにありますよ」

 

店主が教えてくれたので、俺は大きめのリュックと皮のポーチ、エマには自分で選ばせる。エマが選んでいる間に麻袋2つと金袋を選ぶ。袋などの入れ物は何個も必要だが、全員揃ったら、また後で買いに来よう。ちなみに3割引きとかの課金スキルは俺にはないぞ。

 

「店主、全部でいくらだ」

「大きいリュックとリュックとポーチ二つ、小さい麻袋二つと皮の金袋ですね。全部で180ナールですね。よろしいですか」

「その麻袋と皮の金袋はいくらだ」

「小さい麻袋は一つ5ナール、金袋は一つ10ナールです」

「わかった、では麻袋二つと金袋を一つ追加で、全部で200ナールにしよう」

 

店主が驚いているが、商人のカルクが無くてもそれくらいの計算はできるぞ。銅貨が面倒だから、銀貨二枚にしたかっただけだ。俺は店主に銀貨二枚を渡す。

 

「少し、その場所を借りたいがよろしいか?」

「はい、大丈夫です」

 

俺は店の隅で荷物整理を始めた。水色のマントを開いて、エマにそれぞれの薬を麻袋に入れさせる。薬を入れた麻袋二つ、黒魔結晶、懸賞金の金袋は俺のリュックにしまう。空の麻袋はエマのリュックに入れ、皮の金袋にお釣りの銀貨を入れ、最後に銀貨5枚ずつを俺とエマのポーチへ入れておく。

 

「ポーチに入れた銀貨5枚は、お前に預けておく」

「こんなにいいの!」

「ああ、まだ買い物はするからな」

 

さて、次は防具屋を見ておきたい。店主に場所を訪ねて雑貨屋を後にする。防具屋では品揃えを確認する。アンナさんとカルロには、まだ動きがない。

 

鑑定!空きスロットのある物は見当たらないというか品数が少ない。在庫は奥にあるのだろうか。

 

「ほう、皮のカチューシャとかあるのか」

「そちらは防御力がありませんが、獣人の女性に好まれています」

「エマにどうだ」

「アキラ様、いいの!」

「店主、皮のカチューシャはいくらだ」

「素材が皮一つなので、80ナールですね」

「ほう、そうか。皮装備の在庫は、まだあるのか。少しまとまって買いたいのだが」

「ええ、奥の倉庫にございます」

 

冷やかしかもしれないのに、さすがに倉庫は物色できないよな。一応聞いてみる。

 

「皮装備一式をパーティー分の6セット購入しようと思ってな。皮のカチューシャ、皮の帽子、皮の鎧、皮のジャケット、皮の手袋、皮のミトン、皮の靴、木の盾を各6点ずつ見たいのが、店頭には数が無いので、どうすればよいか?」

「わかりました。倉庫に用意させましょう。おいお前、聞いたな。倉庫に案内してあげろ」

「悪いな。お邪魔するぞ」

 

俺とエマは奥の部屋へと案内される。スロット付きがあれば入手しておきたいところだが、期待はしない。どうやら各10点くらいずつ在庫があるようだ。

 

鑑定!

皮のカチューシャ(空き)

皮の帽子(空き)

皮の鎧(空き)

皮のジャケット(空き)

皮の手袋(空き)

皮のミトン(空き)

皮の靴(空き)

木の盾(空き)

 

それぞれ、空きスロット付きの物を見つけた。スロット付きは10分の1程度の確率だからな。一つ二つの在庫はあるだろう。それよりも倉庫の木箱の中に大量のミサンガが入っている。マジか……。

 

鑑定!

ミサンガ(空き)

 

あった。鍛冶師の練習用で売り物にならないはずのミサンガが。練習様に大量に毎日作られるミサンガがどこに消えるのか謎だったが、あるところにはあるのだろう。

 

「ミサンガか、エマにどうだ。これは売り物かね?」

「ええ、こちらのミサンガは、身代わりのミサンガではありませんが、ごくまれに女性の方が買って行かれます。素材の糸の売値が10ナール、買値が40ナールですが、鍛冶師の方から20ナールで売ってくれと頼まれました。まあ、ただのミサンガに皮の靴と同じ80ナールを出す人は、いませんからね」

 

ほう、素材の売値10ナール、買値40ナール、鍛冶師が絡むとその2倍ということか。これはいいことを聞いた。俺はミサンガの空きスロット付きを物色する。

 

「ミサンガのよさそうな物も追加で何個か選ばせてもらうぞ」

「ええ、ミサンガの防御力は全くないですよ」

「なに、女子供への土産だ」

 

さて、選んだ装備を店主の方へ持ってきてもらう。革装備にもスロット付きを見つけたが、値段を聞いて今回はやめておいた……所詮、村のガキ共に着せる装備だからな。

 

・皮のカチューシャ  80×6点

・皮の帽子      80×6点

・皮の鎧      800×4点

・皮のジャケット 1000×2点

・皮の手袋     120×6点

・皮のミトン     80×6点

・皮の靴       80×1点

・木の盾     1000×6点

・ミサンガ     20×30点

 

しめて13560だ。金貨が飛んでいくので、ちと高すぎる。値引きスキルは無いが交渉してみるか。

 

「店主、全部でいくらだ」

「ええと……全部で13560ナールですね」

「ほう、ちとまからんかね。あるいは、何かサービスして欲しいところだな」

「ご勘弁を。あまり相場を変えてしまうと、ギルドから目を付けられてしまいます。では13000ナールではどうでしょう」

「わかった。これも付けてくれれば、その値段でいいだろう」

 

俺は目の前の革のカチューシャ(空き)(空き)を手に取る。

 

「旦那には敵いません。革のカチューシャは640ナールですが、13000ナールでお付けしましょう」

「よかったな、エマ。この革のカチューシャはお前にやろう」

「ありがとう。アキラ様」

「店主、荷車で来ていてな。あとで取りに来ることは可能か?」

「旦那が冒険者なら、店先に掛けてある絨毯を使用しては。盗賊が危ないですからね」

「ふむ、そうさせてもらおうか」

 

俺はリュックから13000ナールを出して店主に支払う。エマに小声で話す。

 

「エマ、余計なことは何も聞くなよ」

 

店先に掛けてある絨毯に、村の馬小屋へのワープゲートを繋げる。ゲートは無事に繋げることができた。あとは荷物を持って二人で通れるかだ。

 

「エマ、すまないが、装備品を持ってゲートを潜ってくれ」

「わかりました、アキラ様」

 

エマは、おそるおそるゲートを潜って消える。MPは大丈夫そうだな。俺も荷物を持ってゲートを潜る。馬小屋には困惑した表情のエマが突っ立っている。

 

「荷物を小屋においてから町に戻るぞ。何も聞くなよ」

「アキラ様!」

 

荷物を小屋において、再び防具屋にエマとワープで戻る。

 

「店主、武器はここでも扱っているのか?」

「はい、隣の店ですが、手前どもの武器屋です」

「では、武器も見せてもらおうか」

 

俺は武器屋に入り鑑定する。見回して固まっている俺を見てエマは困惑するが、気にするな。鑑定は情報量が多いのだ。

 

「店主、シミターはいくらだ」

「シミターは2000ナールですね」

「高いな。一つ下の武器だと何だ」

「サーベルですね。1000ナールです」

「ふむ、では銅の槍はいくらだ」

「銅製の迷宮武器は、1000ナールですね」

「わかった。サーベルを6本貰おう。在庫はあるか」

「倉庫にありますので、こちらへお越し下さい」

 

俺は武器屋の倉庫にも、またもや案内される。鑑定で武器を物色する。スロット付きのレイピアとかも見えるが資金に余裕はない。サーベル(空き)を2本、素のサーベルを4本

選ぶ。

 

「では、サーベル6本を貰おうか。このダガー(空き)を1本付けてくれないか」

「旦那には敵いません。サーベル6本とダガーで6000ナールで結構です」

「うむ、いい買い物ができた」

 

俺はリュックの金袋から銀貨60枚を出して、店主に支払う。懸賞金の金袋は金貨15枚になってしまった……武器を店先の絨毯からワープゲートで馬小屋横の小屋へとエマと運ぶ。

 

「店主よ、また寄らせてもらおう」

 

俺たちは武器屋をあとにする。どうやらアンナさんは探索者ギルドに移動したようだ。

 

「エマ、アンナさんとカルロは探索者ギルドにいるようだ。そちらに向かうぞ」

「わかりました」

 

探索者ギルドでアンナさんと合流する。

 

「詳しい話はあとにして、必要な物の買い出しをしよう。俺の服や生活用品も買っておきたい。お前たちの必要な物も、遠慮なく言うようにな」

「アキラ様ありがとうございます。帰りの時間もありますので、アキラ様の物だけで大丈夫です」

 

うむ、俺には替えのパンツが必要だ。歯ブラシとタオルのような物と靴下もか。あと水筒も。雑貨屋と服屋で適当に見繕ってもらう。かぼちゃパンツでもいいのさ。

 

雑貨屋で、小さな木の桶、オリーブオイル、コイチの実、シュクレの枝、麻の布、綿の布、革の水袋を6個を購入。アンナさんたちも何か手にしているので、皮の金袋にある銀貨21枚からまとめて払う。

 

衣服屋で、かぼちゃパンツ、肌着、靴下、貫頭衣を3つずつ購入。アンナさんたちの分も

まとめて皮の金袋から支払う。アンナさんにも金袋を渡してあるので、あとで銅貨以外の清算が必要だ。さて、ロバの所へ戻るか。飲み水もどこかで汲みたいところだ。

 

商館に寄る時間など全く無かったな……村人の奴隷イベントも発生していないので伝手もないしな……ロクサーヌ相当の奴隷には60万ナール必要だ。今の資金は20万ナール程度……。

 

「そろそろ、戻るとしようか」

「はい、ロバを預けてある所で、水を汲んで帰りましょう」

「アキラ様、果物が食べたい」

「そうだな、エマとカルロで、この金袋で買ってきてくれ。キュピコか?肉串とかも買ってきていいぞ。帰りに食べよう」

 

俺は金袋をエマに渡すと、エマとカルロは屋台の出店に走っていく。俺とアンナさんは、ロバの所へ向かう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

帰りはお花摘みを一回して、ギリギリ暗くなる前にロマーノ村へと到着した。盗賊が出る以上、俺だけワープで帰るわけにも行かない……。

 

「ギリギリ村へ戻れたな」

「アキラ様、今日はありがとうございました。カルロはロバを馬小屋に入れてきなさい」

「また連れてってね、アキラ様」

 

エマが無邪気に言う。ワープを見せてしまったからな、しょうがない。

 

さて、夕食の時間まで硬貨を整理するか。アイテムボックスの金貨3枚と銀貨3枚を取り出す。懸賞金の金袋の残りは金貨15枚。銀貨は全部で37枚か。

 

「金貨18枚の18万ナールか……」

 

エマに銀貨5枚渡したから、アンナさんとカルロにも5枚ずつ渡すか。購入した予備の金袋に5枚ずつ突っ込む。アンナさんの金袋には銅貨もジャラっと流し込む。

 

今日の第一目標のかぼちゃパンツの購入は達成した。俺は初期装備を解除して、購入した麻の貫頭衣に着替える。ちゃんとした一張羅は高いのだ。これから夏だし部屋着は麻の貫頭衣で十分だ。

 

「貧しい現地人と一緒だわ、これ」

 

次の目標はレベリングと並行して風呂。ボーナス魔法の自爆攻撃のない俺には、魔法使いの取得は難易度が高すぎる。どこかに温泉が沸いてないだろうか。とにかく村人も綺麗にしないと、シラミとかの吸血昆虫の餌食だ……。

 

「アキラ様、お食事の用意ができたよ」

 

エマが呼びにくる。金袋をアンナさんとカルロに渡して食事をとる。カルロはエマから聞いたのだろう。嬉しそうに頭を下げる。そして今日の食事も魚である。肉だ肉。肉の階層まで早く行かなければ……俺は決心する。兎が出る階層までさっさとあがろう。

 

食事を終えたあと、エマとカルロは後片付けを始めた。大体のあらましは帰りに聞いていたが、アンナさんに村長の件を再確認する。

 

「村長の引継ぎの件はどうだ」

「はい、カルロが成人するまでは、私が村長代理をすることになりました。村長の指輪は私が身に付けました。村長の証である指輪は任命時に下賜される物です」

「村人を食べさせていかないといけないからな、大変だな」

 

ふむ、騎士の任命は単なるスキルだ。悪徳騎士にいくらでも村長を作られてしまうからな。ジョブとは別に、なにか証になる物が必要なのだろう。

 

鑑定!

アンナ(女:31歳)

村長Lv1

装備:サンダル 村長の指輪

 

村長 :体力小上昇

スキル:インテリジェンスカード操作

 

「はい、カルロが成人するまで、ご助力をお願いします。アキラ様」

「ロマーノ村の迷宮はどうなのだ、騎士団は来てくれるのか?」

「騎士団は都会の近くに出来た迷宮が優先です。こんな田舎の迷宮は後回しだと言われました。村人たちでなんとか凌ぐようにと……探索者に依頼しても、こんな辺鄙な場所は嫌煙されるでしょう」

「ふむ、探索終了宣言も出てないだろうし、そもそも迷宮の情報自体も出ていないだろう」

 

騎士団が動かない間は、一般にはロマーノ村の迷宮の存在自体を秘匿した方がいいだろう。探索者や盗賊どもが寄ってくると、面倒ごとが発生して村の治安が悪くなる。そして俺のレベル上げの邪魔にもなる。

 

「村人たちの状況はどうなのだ。生活の出来ない者はいるのか。流石に全員の面倒は見られないぞ」

「はい、漁師の夫を亡くした妻たちは私の除いて9人です。漁に出られる家は干物などを作って売れば、人頭税を払っても、いままで通りの貧しい生活はできるでしょう」

 

自由民の俺の人頭税は10万ナール、成人していない帝国民は一人3万ナール。9人か、アンナさんを含めて10人、村を救うには人頭税が30万ナール必要だ。駄目だ、この村は既に詰んでいる……。

 

「今年成人するものは、いるのか?」

「はい、15歳未満は人頭税が免除されますが、亡くなった漁師の娘にも14歳の者がおります」

 

俺は大きくため息を吐いて思案する。逃げるか……片付けを終えたエマたちが戻って席に着く。

 

「アキラ様お願い、私たちを助けて。私も14歳です。嫁ぐ所もありません……アキラ様はこの村の英雄です。無理なら……私たちをアキラ様の奴隷にして」

「エマ、無理を言ってはいけませんよ」

 

席についたエマに懇願されるが、俺は英雄ジョブになれなかった偽物だ……それに仮に村人を奴隷にするとしても初年度の奴隷は3万ナール必要だ。この娘を見捨てることが俺にできるのか……エマには、まだ時間がある。

 

「よし、しばらくはロマーノ村の迷宮を秘匿するぞ。迷宮には俺が入ってやる。それとな、迷宮には俺が許可した階層まで女子供も入ってもらうぞ」

「わかりました。でも私たちには迷宮装備がありません」

「ああ、迷宮装備は今日、町で揃えてきた。エマにはつき合わせたから知っているだろう」

「アキラ様の移動魔法で小屋に運んだんだよ!」

「エマ、武器屋でも言ったが、俺がいいと言ったこと以外、何も聞くな、何も言うなよ。まあ、何が良くて何が悪いのか言ってないからな」

「ごめんなさい」

「俺には移動魔法が使える。村人以外には、この事は話すなよ。村の者には、いずれバレることだからな。もし村人以外が移動魔法のことを知った場合は、俺は村から移動魔法で逃げることになるぞ」

「アキラ様、私たちはどうすればよいのでしょうか」

「ふむ、明日の漁が終わった後の昼過ぎに、未亡人たちと10歳以上の女子供を集めろ。適性を見てやる」

「私でも何かできますか?」

「エマもカルロも村人だろう、経験不足だな。さて今日は晩いから続きは明日にしよう。パーティーはこのまま組んでおくぞ」

「はい、お湯の準備は出来ておりますのでお持ち下さい」

 

アンナさんたち家族で、まだ話をするようだが俺は話しを打ち切って、お湯を持って部屋に逃げる。これからのこと、俺のことを家族で共有するのだろう。俺のことを知られたって、どうってことはない。逃げればいいだけだからな。この村は俺が逃げれば破綻する。

素っ裸になって、清拭、洗濯、アイテムの整理、片付けを済ませる。綺麗なかぼちゃパンツを装着して、俺は思案する。綺麗なパンツのなんと素晴らしいことか。

さて、金貨は18枚、これは俺の人頭税に使うので、これ以上減るのはマズい。稼ぐ手段は、結晶化促進、盗賊狩り、儲かる何か。どれも今の俺には難易度が高い。それと奴隷だ。タダで猫人族を一人厳選できるかもしれないのは僥倖だろうか。それよりもドワーフを手に入れるのが最優先事項だろうか。タル体系、ぽっちゃりでもいいから落ちてないか……町の防具屋にミサンガを卸していた鍛冶師を、防具屋の伝手で頼ってみるか。

 

俺は今日揃えた装備の分配を考えてみる。村長家の装備も使わせてもらおう。

 

アンナさんは村長Lv1なので迷宮には連れていけない。村長が村にいないとおかしなことにもなる。

武具 :ダガー

装備 :皮のカチューシャ ローブ 皮の靴 村長の指輪

 

エマは村人Lv3。しばらくは俺の後ろでアイテム拾いでもさせるか。既にワープも見せてしまっているので、ワープでボス周回を見せても今更だ。

武具 :ほむらのレイピア 木の盾

装備 :革のカチューシャ 皮のジャケット 皮の手袋 皮の靴 ミサンガ

 

カルロは村人Lv2なので迷宮には連れていけないだろう。アンナさんの手伝いだ。

武具 :シミター 木の盾

装備 :皮の帽子 皮の鎧 皮の手袋 皮の靴 ミサンガ

 

猫人族を連れていく場合は、こうなるだろう。階層の安全が確保できれば、俺のためのスキル結晶集めをさせたい。

武具 :サーベル 木の盾

装備 :皮のカチューシャ 皮の鎧 皮のミトン 皮の靴 ミサンガ

 

「アキラ様、今よろしいでしょうか」

「ああ、アンナさんか、何か話があるのか」

 

俺は引き戸を開けたときに気づいた。かぼちパンツしか履いていない。アンナさんは頬を赤らめながら見つめてきた。亭主が死んだばかりとは言え、アンナさんは女盛りの31歳。しかも色摩の女性版の色女ジョブ持ちだ。俺の心臓が高鳴る。俺はこの世界では、まだ新品の童貞だ。そして男盛りの27歳だ。

 

「アキラ様、私のことはどのようにされても構いません。私をアキラ様のものにして下さい」

 

アンナさんが麻の貫頭衣を脱ごうとする。アロルドが亡くなったばかりで寂しいのかもしれない。俺はアンナさんの乳房を見て、ゴクリと喉を鳴らす。待て、取り返しのつかないことになるぞ。俺自身に言い聞かせる。

 

「ア、アンナ、アロルドが亡くなったばかりだからな。アンナの事も悪いようにはしない。この近くに川や滝は無いのか?あとは温泉がある場所とかもな」

「私のことは、お嫌いでしょうか?」

 

俺は苦し紛れに神官用の滝や温泉が無いかを尋ね、アンナさんに貫頭衣を着せる。

 

「川や滝は北の山地側に行けばありますが、迷宮が出来てからは魔物が出るので近づけません」

「わかった。アンナのことも大切に思っている。時期が来るまでしばらく待て……」

 

俺はアンナさんを何とか追い返す。据え膳食わねばなんとやら……俺は今日、このまま眠れるのだろうか……。

俺は水色の防水のマントに包まり横になった。

 

春の3日。所持金:金18銀27

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