持たざる者の異世界迷宮でハーレムを   作:@ペロ

9 / 13
009 身代わりのミサンガ

「すまんがノラ、キュピコが食べたくなった。菜園から5個くらい、もいできてくれないか?菜園の場所は知っているだろ」

「はい、エマちゃんに教えてもらってます」

「アキラ様、私も行って採ってくるよ!」

「エマとカルロはアンナの炊事の手伝いだ。エマは何も聞くな、これは命令だ。ノラはビックリするなよ。これはノラの修練だからな」

「はい……」「はーい」

 

しばらくすると、猫人族の少年に連れられてノラが帰ってきた。

 

「XXXXXXXXX!」

 

「アキラさん、一体何なのでしょう。キュピコを採っていたら、この子に捲し立てられて連れて来られました。あとアイテムボックスの中身が勝手に全部飛び出して、開かなくなりました」

「ほう、エマ、ノラは大切な俺の客人だからな。猫人族の少年に説明してやれ。あとで皆にも紹介してやろう」

「XXXXXXXXX」

 

猫人族の少年は、エマの説明に納得して帰っていった、また昼寝でもするのだろう。

ノラは勝手にキュピコをもいでいたところを、猫人族の少年に発見されて連行されてきたわけだ。俺はノラの足の遅さが気になっていた。ドワーフ族は種族補正で力が強い代わりに足が遅いのだろう。この欠点をなんとか克服出来ないか、まあテストだ。

 

「ノラ、どうだ。体が軽くなった気がしないか?」

「本当だ。アキラさん、いつもより体が軽くなった気がします」

「ほう、これではどうだ?」

 

俺は、ぽっちゃりノラのファーストジョブを鍛冶師Lv2に戻す。

 

「はい、変わらず、体が軽いです」

「そうか、では、これでノラの修練は終了だ」

「よかったね、ノラちゃん。アキラ様は凄いんだから!」

 

そう、俺はドワーフのノラに盗賊ジョブを付けたのだ。このぽっちゃり娘は、すでに俺のものだからな。盗賊ジョブ持ちになるが、まあ許してくれ。俺のパーティージョブ設定なら盗賊からも救いあげることが可能だ。ノラは大切な金を生む金の卵だ。最後まで責任は持つさ。奴隷になったら、まだ俺には救えないから注意が必要だ。そして驚くべきことは、盗賊ジョブを待機ジョブにまわしても、素早さ的なものは体に継承されるようだ。ノラの言うことが本当なら盗賊のレベルを上げれば更に早くなるかもしれない……他の者たちにも盗賊ジョブを付けてあげたいが、今の家族同然の村では無理だろう。村八分になっても困る。仮に町でスリをさせると本当に捕まる恐れもある。一旦はこの検証で終了とする。

 

ノラは菜園のキュピコ複数をもいで盗んだことで、農夫Lv1と盗賊Lv1を獲得した。

不思議体験が続くノラだが余り気にはしていない。まあドワーフだからな。興味のあること以外は気にならないのだろう。ただ、興味のあることはエマと結託してくるから注意が必要だ。

 

「さて、キュピコも食ったし、午後の修練に行くぞ」

「旦那さま、昨日のカミーユとクロエたちの探索で、塩や小麦粉、ナイフやブランチ以外に、このような物などが出ております……私はブランチを指示したのですが……」

「ほう、スキル結晶と魔結晶ではないか。何か褒美をやらんとな」

「はい、私には物の価値がわかりませんので……」

 

やっ、やはり、アンナはブランチの採取命令を出していたか……アンナ、カミーユ、クロエは31歳の女盛りだ。すでに行為をしてしまっている。このままではブランチの透明な膜の避妊具集めに注力してしまう。これは歯止めが効かんぞ……。

 

「そっ、そうだな。褒美については少し値付けをしよう。未亡人たちの励みにもなるだろう」

「アキラさん、その結晶の色はコボルトのスキル結晶です。すっ、凄い!」

「ほう、ノラにもわかるか。鍛冶師になったばかりだが凄腕になりつつあるな」

「ありがとうございます。コボルトのスキル結晶はオークションで5000ナール程度と聞いてます。ただオークションではなく、商人への直接の売値は4分の1程度ですね」

「そうだな。コボルトのスキル結晶の褒美は1200ナールとしようか。6人なら1人200ナールだな」

「はいアキラさん、妥当な値段だと思います」

 

俺は金袋を覗くと銀貨が足りないことに気付いた。エマとノラも行くとうるさいが無視して急いで町で金貨を崩してくる。探索者ギルドの受付の猫ちゃんに強壮丸10個に金貨を出して、また怒られたが些細な問題だ。金貨が16枚になってしまったが急いで村に戻る。

 

「アンナ、この金袋から1人200ナールずつ6人に褒美をやれ。村長のアンナから渡すんだぞ」

「アキラさん凄い、王様みたいです!」

「アキラ様は凄いんだから村の英雄だよ!」

 

午後の探索で集まってきた未亡人たち6人に、アンナから臨時の褒美をとらせた。これで村長のアンナのメンツも保てるだろうし、未亡人たちの探索の励みにもなるだろう。俺の欲しいのはスキル結晶だぞ。ブランチを覆っている透明な膜じゃないからな。そろそろ未亡人たちの探索の慣らしが終わるから、後でドロップ品の全てに値付けしよう。

 

「旦那さま、それと今の探索している未亡人6人以外にも、他に迷宮に入りたい未亡人がおります」

「そうだな、漁師の旦那の亡くなった未亡人は、あと3人いたな。装備が余っているか確認しよう」

 

俺は納屋の装備をカルロたちに持ってこさせて確認する。パーティーを2部隊にするか。二階層までなんで4人編成でいいだろう。31歳のカミーユとクロエは巫女。ここはパーティーを分けといた方がいいだろう。また結託して2人の猫人族に迫られても困る。まあ最終的に村人を仕切るのは次期村長のカルロだからな。今は適当にパーティーを分けておくか。急遽、足りない装備のカチューシャ、手袋と靴を武器屋の絨毯にワープして買ってくる。ノラに作らせてもいいが、ぶっ倒れられても困るのだ。

 

PT1:31歳の巫女カミーユ隊長、あとは探索者3人。

PT2:31歳の巫女クロエ隊長 、あとは探索者4人。

 

装備1:サーベル 木の盾

防具1:皮のカチューシャ 皮の鎧 皮のミトン 皮の靴 ミサンガ

装備2:銅の剣

防具2:皮のカチューシャ 皮の鎧 皮の手袋 皮の靴 ミサンガ

 

決定権は俺にあるが、片手剣の盾持ち2人、他は両手剣で折り合いがついた。あとは任せたぞ。次からの皮装備はノラに作らせるからな。

 

「アンナ、村長として、うまく采配してくれよ。それと安全にな」

「ありがとうございます。旦那さま。カミーユとクロエから夜の話を聞いて、皆楽しみに夜の順番を待っております。お気を付けていってらっしゃいませ」

 

なっ、なんだとぉ。夜の順番だとぉ。どうなってんだよ異世界は。俺は急いで迷宮に逃げた……。

 

「よし、ゴタゴタして余計な時間をくったが、今日は六階層の探索をなんとか終わらせるぞ。グリーンキャタピラーが最大3匹出るぞ。糸を吐いて拘束してくるからな。拘束されたら助けてやれよ。死ぬぞ!」

「アキラさん、グリーンキャタピラーのスキルの糸は詠唱中断がないと防げません。私の槍には詠唱遅延もついていません」

「そうだな、盾持ちのエマとカルロは、魔物の下に魔法陣が現れたら盾で糸を食い止めろ。俺は手早く魔物を倒す。経験者のノラは臨機応変に頼むぞ」

「任せてよ。アキラ様」

 

「ズズズプシャッ、ブモォ」

 

「鑑定!」

グリーンキャタピラーLv6(非表示 HP600)

ミノLv6        (非表示 HP600)

 

「地上の虫系の魔物も火に弱いはずだ。俺は芋虫に行く。エマは牛に行け。火炎剣!」

 

ラッシュ、ラッシュ。

(非表示 113、114)

S字歩行中に叩き込めるのは2発か。芋虫がS字で後ろ脚に力が入った時が危険だ。飛び掛かりが来るか。たっ、立ち上がったぞ。マズい、カルロを狙っている。

 

「芋虫の魔法陣が出たぞ。カルロ盾で防げ。糸が来るぞ!」

 

ブッシャー。

 

「アキラ様、助けてー」

カルロが糸に拘束される。芋虫のスキルの糸は有効距離なら必中かよ‥‥俺は糸を吐いて無防備な芋虫にラッシュを叩き込む。

 

ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

(非表示 113、114、113、113ダメージ)

グリーンキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値2)

カルロを拘束していた糸も消える。俺はエマが抑えているミノの援護にまわる。

 

「エマ、後のミノは任せろ!」

 

……ラッシュ、ラッシュ。

(非表示 113、113ダメージ)

ミノは煙となって消えた。(非表示 経験値2)

ドロップ品はエマとノラに拾わせる。カルロは腰を抜かしているからだ。俺はカルロを起こすと声をかける。

 

「カルロ、大丈夫だったか?」

「アキラ様、ノラさんの方を見ていて、盾が間に合いませんでした」

「お前、さてはノラの尻でも見ていたな」

「ノラさんが来てから気になっちゃって……」

 

ほう、お前もぽっちゃりが好きか。エマも村の猫人族も体は貧相だからな。ムッチリなのが気になるのかもしれない。ただな、お前にノラはやらん。手を出されても困る。あれは俺の金の成る金の卵だ。カルロには適当な女をあてがわないといけないか。まだ剥けてない12歳だけどな。

 

「お前、気を抜いてると死ぬぞ。男を見せろ!」

 

俺はカルロに発破をかけるとドロップ品を受け取って通路を進む。

3回会敵して中間部屋に辿り着く。グリーンキャタピラーが2匹以上はやっかいだ。偶々俺に糸の攻撃が来なかったとも言えるが、魔物のスキル攻撃は近くにいる者は狙わないとも言える。まあ、糸で狙われたのはカルロなのだが、魔物のスキルや魔法は対象の距離が離れている場合に使うのではないか。近くは飛び掛かればいいからな。

 

「どうだ、グリーンキャタピラーの糸は?」

「エマは狙われなかったよ」

「私は狙われましたが、カルロが守ってくれた」

「ほう、男を見せたではないか、カルロ。水牛の角の似合う男に一歩前進だな」

 

ノラに言われてカルロは恥ずかしそうだが、糸は盾で受けろよ……。

 

「どうだ、ボス待機部屋まで行っておきたいが、まだ行けそうか?」

「エマは大丈夫。アキラ様の匂いについて行く」

「私も……アキラさんが気になって……」

「僕もノラさんについて行きます!」

 

しっ、色摩か。色摩の弊害か。こいつらおかしいぞ。今の俺の欲求は芋虫のスキル結晶に全振りのはずだ。しかし、まだ暴発していないからな。なるべくボス戦まで溜めておきたい。

お前ら、ここは命のやり取りをする迷宮だぞ。俺がやるしかない。

 

「よっ、よし、ボス部屋まで行くからな。お前ら気を抜くなよ。死ぬぞ!」

「はーい」

 

そこから4回会敵してボス待機部屋に辿り着く。ドロップは糸と皮だ。いい時間だろうが、1回ボスを見ておきたい。グリーンキャタピラーは距離が離れている場合に、スキルの糸を使うでいいだろう。接近戦で敵の前にいなければ、飛び掛かりも当たらないので安全ということになる。ボスが実体化する前に接近しておきたい。

 

「さて、一度ボスのホワイトキャタピラーと戦っておきたいがどうだ?」

「アキラ様、終わったらお肉にいこう!」

「私もお肉がいいです……」

「僕もお肉……」

「よし、終わったら肉を取りに行くぞ。とにかく芋虫の後ろにまわり込め。遠くにいると糸を吐かれるぞ」

 

俺たちはボス部屋に踊り込む。足の遅いノラは先頭で入ってもらい、とにかく接近して有利な位置取りだ。

 

「鑑定!」

ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)

 

プシャー。

 

しっ、しまった。カルロを最後に入れたから、いきなり糸を喰らいやがった。ホワイトキャタピラーの初手はスキルの糸かよ。

 

「エマ、カルロのところへ行け。火炎剣!」

 

禁欲攻撃!俺の欲望は限界まで高まっているはずだ。

ブチュチュチュッ。

(非表示 915ダメージ 禁欲倍率10倍)

俺のほむらの銅剣がホワイトキャタピラーにめり込み、ノックバックで後ずさる。ふう。何かが抜けてパンツが不快になったが、まだ倒せたわけではない。俺は動きの止まったホワイトキャタピラーにラッシュを叩き込む。

 

ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

(非表示 114、113、113ダメージ)

ホワイトキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値4)

ノラが光るものを持って走ってくる。エマもカルロをそっちのけで俺に抱きついてくる。

 

「アキラ様、素敵!」

「アキラさん凄い……私も、もごもご……」

「ああ、強敵だったな。俺の全てのパワーをつぎ込んだぞ」

 

俺はパンツを濡らして娘たち2人に抱きつかれて立ち尽くす。抜けた、完全に何かが抜けた。ノラの手に握られているスキル結晶のことなど、どうでもよくなっていた……。

 

俺は賢者タイムに右手に握られているスキル結晶を見る。ほう、芋虫のスキル結晶が出たか。魔物と戦う前の俺の欲求は、芋虫のスキル結晶だったはず。もしかしたら禁欲攻撃の倍率を上げていけば、欲望の分だけ、欲しいドロップ品が手に入るのかもしれない。次に試せるのは明日の夕方だ。いずれにしても、これで身代わりのミサンガが作れるだろう。

そしてホワイトキャタピラーの攻略法も見えた。初手はスキルの糸だ。実体化する前に有利な位置取りをし、囮が最後に入室する。囮に向かって糸を吐いている時に全員でフルボッコにする。これでいけるはずだ。

 

俺はパンツを濡らしながら、三階層のラピッドラビットと5回戦って、兎の肉を5個回収して帰宅する。俺の戦士がレベル3になる。

 

帰宅した俺は外にある桶で火炎剣でお湯を作り、そそくさと自室に戻り、清拭してかぼちゃパンツを履き替える。この夢精したような、かぼちゃパンツはどうするか……俺は迷宮にワープして捨てた。全ての無機物は迷宮に捨てれば吸収される……。

 

夕食後は、娘たちがギャアギャアとうるさいがスキル結晶の融合に挑戦する。俺はアイテムボックスから芋虫のスキル結晶を取り出す。キャラクター再設定で、経験値倍率を全て外して、シックスジョブ(31)し、俺には神官をセット、アンナも神官にする。

 

アキラ:探索者 色摩 戦士 僧侶 剣士 神官

アンナ:神官

エマ :神官

ノラ :鍛冶師

カルロ:村人

 

これでMPが足りるか。カルロを外して猫人族の巫女2人を呼んだ方がいいか。もしスキル融合でノラのMPが切れた場合は、口移しで強壮丸を飲ませる必要がある。俺には課金魔法のパーティライゼイションはない……。

 

「ノラ、ここに芋虫のスキル結晶がある。お前には自分の作ったミサンガを渡したはずだ。スキル融合に挑戦してみるか?」

「いいのですかアキラさん。スキル融合は気分が悪くなって亡くなる者もいると聞いています。私でも大丈夫でしょうか?」

「そうだな。俺はお前には才能があると思っているぞ。お前は才能のある鍛冶師になりたいのではないのか?」

 

ノラは逡巡する。迷いがあるのだろう。俺は強壮丸を2つ取り出し、緊急用に1つを口に含んでおく。ノラの手の平に芋虫のスキル結晶を握らせ、俺も手を添えると力強い返事が帰ってくる。覚悟を決めたのだろう。

 

「わかりましたアキラさん。挑戦します!」

 

ノラはミサンガ(空き)と芋虫のスキル結晶を握りしめると詠唱を始める。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、スキル結晶融合!」

 

ノラの詠唱で、握りしめている手の隙間から眩い光が放たれる。俺は薄目で見ていたが、他の者たちは、また光の直撃をうけて慄いている。学習しろよ……。

 

「アキラさん。やっ、やりました!」

 

興奮の収まらなノラに、俺は手に持っていた強壮丸を1粒飲ませる。

 

鑑定!

身代わりのミサンガ(装飾品) スキル:身代わり

 

「よくやった。お前は今日から才能のある鍛冶師の仲間入りだ。おめでとう!」

「ありがとうございます。アキラさんのおかげです!」

「良かったね。ノラちゃん。アキラ様に任せておけば、なんでも叶っちゃうんだから!」

 

ふう、英雄のMP中上昇のない俺でも、スキル融合イベントをやりきったぞ。これが色摩の力だ。色摩にはMP小上昇もある。俺の金を生む金の卵は無事に羽化したのだ。

 

「その身代わりのミサンガは記念にお前が装備しておけ。俺には水色のマントがあるからな。これから全員分の身代わりのミサンガを作るからな。精進しろよ」

「アキラさん、私……」

「エマも!」

 

ふう、娘たちに抱きつかれると俺も熱くなる。色摩の影響か、それとも、ぽっちゃりドワーフの体温が高いからなのか……まあ、まんざらでもないか……。

 

春の11日夜。所持金:金16銀88銅?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

アキラ:探索者 色摩 戦士 僧侶 剣士 商人

 

俺は今、シックスジョブ(31)に商人のジョブを付けて自室でパピルスの帳面と格闘している。町の雑貨屋で、葦のペンとパピルスの束を買っておいた。資金管理、ドロップ品の出入庫、装備の在庫管理、予定表などが俺の脳内では限界になったためだ。事務処理ができる秘書が欲しい……。

 

ズズズッ、ガラッ。引き戸が開けられる。鍵なんてものはない。

 

「アキラ様、エマ来ちゃった!」

「私も……もごもご……」

「俺は今、とても忙しいぞ」

 

灯りのランプを用意しているのは俺の部屋だけだ。自分たちの部屋は暗いのだろう。さんざん俺の寝床でダベッていたが、俺がパピルスの帳面と格闘していると諦めて帰ってくれた。女子高生かよ。俺の部屋をたまり場にするのはやめてくれ……娘たちにやらせるか。いや、やらせるならカルロか。あいつは将来の村長だ。村人Lv5にしたら商人にするか。この世界の人物は電卓替わりの商人のカルクがないと、乗算、除算ができないのだ。教育がされてない。九九からやらせるか。いや、俺にはそんな時間はないのだ。

 

ズズズッ、ガラッ。またも引き戸が開けられる。鍵なんてものはない。

 

「旦那さま、よろしいでしょうか?」

「ああ、なんだアンナか」

 

パピルスの帳面と格闘している俺に後ろから抱きついてくる。ああ、そういえば今日は娘たちとスキル融合した後に抱擁してたからな。アンナも寂しいのだろうよ。

 

「そういえば、算術の得意な者は、この漁村にいないのか。子供でもいいぞ」

「計算ですか、次に行商人が来るのは4日後の春の15日です」

 

やはり、いないか。どこかで算術や知識に秀でた人物を見つけてくる必要があるか……鍛冶師を入手できた今、次に欲しい人材は、目、鼻、耳、地図、算術、知識に秀でたものだ。

目は猫人族でどうとでもなるだろう。鼻は狼人族だったが、耳の兎人族でも代用は効くはずだ。地図、算術、知識に秀でた者がやっかいだ。貴族の娘か貴族の侍女を手に入れられるのか。

 

「この村に地図を書けるような人物はいないのか?」

「猫人族は感覚派ですからね。私もですが自分の興味以外は厳しいですね」

 

だろうな。今のアンナと猫人族の未亡人たちはブランチ集めに夢中だ。ブランチが入口の土間に山のように積んである。ブランチの透明な膜は避妊具として使う時まで、必要以上に剥くなとは言ってある。透明な膜を剥いたブランチは、すぐに駄目になってしまうからだ。皮の売価は10ナール。ブランチの売価は15ナール。ブランチは鍛冶師の金属装備の製造に使うから高めの設定だ。

 

「旦那さま、カミーユの家を空けさせました。カミーユの家はクロエの家で一緒に生活させる事となりました。本人たちも了承済みです。カミーユとクロエの家族は旦那さまのものですからね」

「ほう、一軒空くのか、倉庫にでもするのか?」

「はい、カミーユの家は旦那さまのものです。よろしければ見に行きますか?」

「今からか?」

 

アンナと目が合うとアンナの目がギラリと光る。うっ、なんか怖い……舌なめずりもして……。

 

俺は麻の貫頭衣を着せられ、月明かりのもと隣のカミーユの家に連れて行かれる。まっ、待て、前回もこんな感じだったぞ。

 

……

 

俺は元カミーユの家でパピルスの帳面との格闘からアンナとの格闘に移行した。そこで気が付く。アンナの身体能力は高い。なぜなら俺の腕力上昇のポイントを外すと、馬乗りになったアンナの腕力に勝てないで押し倒されるからだ。

 

俺がパワー負けするだとぉ……。

 

そう、前回は弱い振りをしていたのだ。俺はカード上では27歳だが、転移11日では実質0歳児と一緒だ。この世界の俺は27年間何も経験していないのだ。百戦錬磨の31歳に素の能力で劣っているのだ。

 

……

 

色摩をつけているのに俺が負けるだとぉ……。

試しにアンナにつけてみた色女Lv1のジョブに俺の色摩Lv2は敗北した。

 

……

 

その日俺は、元カミーユの家という自分の家を手に入れたが、俺は周りの未亡人たちから狙われている。ここで1人で寝るのは怖すぎる……どうなってんだよ異世界は……。

 

春の11日夜半。所持金:金16銀88銅?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

驚愕の事実が判明した。

 

素のパワーは、人族のアンナ31歳、ドワーフのノラ14歳、俺、エマ14歳、カルロ12歳の順だ。年齢或いは種族補正。そりゃそうだよな。俺はインテリジェンスカードでは27歳だが、今は実質15歳程度ということになる。俺はポイントのリセマラをしていない初期設定のポンコツだ。ボーナスポイントを能力上昇に振ってなければ、おそらく猫人族の未亡人たちにも、敗北するだろう……。

 

「アンナ、すまんが貰った俺の家を掃除しといてもらえるか?」

「はい、心得ております。ブランチの在庫も移動して綺麗にさせておきます」

 

アンナの目がギラリと光る。こっ、怖いよ……。

 

「ほどほどにな……」

「カミーユさんのお家でしょ。エマも一緒に住む」

「いや、お前にはまだ早い。修練が終わって成人したらな」

 

「よし、迷宮に修練に行く前に、ノラは鍛冶師の修練だ。朝昼晩の3回行うぞ」

「アキラさん、ミサンガですか?」

「いや、ミサンガの修練は終わりだ。皮装備から行くぞ」

 

鍛冶師の作ったミサンガは市場を探せば出ていることがわかっている。俺はすでに6つの空きスロットつきのミサンガを持っている。まずは俺の猫人ファームの皮装備の拡充だ。皮装備でも一式揃えると1080ナールもする。皮のジャケットにすれば1280ナールだ。俺は売値10ナールのミノの皮をノラに渡す。皮の靴は買値が80ナール。強壮丸は1粒60ナールだ。皮装備を作るのに強壮丸は使いたくない。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、防具製造!」

 

「アキラさん、もう皮の靴が作れた!」

「よくやったな、ノラ、体調が大丈夫なら朝の防具製造の修練は終わりだ。お前は装備を作るのに必要な素材は、どこまで知っているのか?」

「私でも、もう皮装備が作れるんですね。それと知ってるのはミサンガに必要な糸だけです……」

 

やはりか。親父のシグルドに聞くか。いや、まだ親父には報告したくないというか鍛冶師ギルドに行って転職もさせてもいない。ノラはまだ、もぐりの鍛冶師だ。

 

「ノラ、鍛冶師ギルドはどこにあるのだ。あとは転職に必要な代金もだな」

「バルナバの町には鍛冶師ギルドがないので、隣のカリストの町だと聞いてます。行ったことはないです。転職料は1万ナールだと聞いてます」

 

うっ、転職に金貨1枚必要か。どうりでノラの親父が、金、金、言ってたわけだ。タダで鍛冶師に転職させてくれるなら人に頼むわな。他にも教本代とか掛からないだろうな?

あと、どこかで次の町に行っておく必要もある。今町に行くと言うと、こいつら全員行くと騒ぎ出して面倒なことにもなるから、こっそり抜け出して行っておく必要もある。それとMPも心配だから行く前に少しレベルも上げておきたい。MP不足でぶっ倒れるからだ。しっ、知らない町に1人で行くのは怖い。俺には介助が必要だ……。

 

「そっ、そうか。わかった。鍛冶師ギルドに行くのは、今しばらく修練してからにするか。迷宮に行くぞ!」

 

魔物が実体化する前に、俺は右、エマは左、ノラは後ろの出現位置についている。最後にカルロがボス部屋に入室する。初期配置を調整して一気に仕留めるこの戦法は、ボス部屋の基本パターンの一つにするべきだろう。

 

ホワイトキャタピラーLv6(非表示 HP1200)

 

プシャー。(初手 魔物のスキル攻撃:糸)

 

「カルロ、盾で防げ。喰らうなよ!」

 

火炎剣!……ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。

(非表示 ……114、113、113ダメージ)

ホワイトキャタピラーは煙となって消えた。(非表示 経験値4)

ノラがドロップ品の絹の糸を俺の元に持ってくる。

 

「だいぶ慣れたな。カルロも囮役が上手くなったではないか」

「はい、僕も攻撃に参加したいです……」

「これは、いい盾の修練になるだろうよ。精進しろよ」

 

ホワイトキャタピラーの攻略法がわかった俺たちは、その後18回目の周回でレアドロップ品の真綿(妄想)を入手。エマは飽きてきただろうが、俺は芋虫のスキル結晶が欲しいんじゃい。俺の芋虫のスキル結晶への欲求は、全て色摩に注がれる。

 

「アキラ様が匂いだってきた。素敵!」

「すっ、凄い!」

「ああ、まだまだ、こいつで修練するぞ!」

 

そして38回のホワイトキャタピラー周回で、念願の芋虫のスキル結晶を捻りだす。

 

「すっ、凄い。またスキル結晶です!」

「やっ、やったぞ。これでエマにも身代わりのミサンガをやれるぞ!」

「やったー。エマは桃色のミサンガがいいな」

 

桃色か。ミサンガにトカゲを融合すれば赤っぽくなるだろうがな。それでは意味が無いぞ。素のミサンガは白色だが、芋虫を融合した身代わりのミサンガは、黄緑と言うか若草色になる。まあ手首に装備しているとバレるだろう。足首に装備すれば切れたのがわからないから悩みどころだ。

 

ここで、俺の色摩とノラの鍛冶師がレベル3になり、カルロが念願の村人Lv5になる。午後はカルロのジョブの変更が必要になるだろう。

帰宅した俺は、さっそくノラに強壮丸を1粒渡して、芋虫のスキル結晶をミサンガに融合させる。

 

「今ぞ来ませる御心の、言祝ぐ蔭の天地の、スキル結晶融合!」

 

「よくやったノラ。この身代わりのミサンガは、エマへの褒美だ!」

「うん、この色も素敵!アキラ様ありがとう」

「アキラさん、私も……もごもご……」

 

俺は娘たちに抱きつかれるのだった。

俺への感謝なのか、色摩の影響なのか。見ていたアンナの目がギラリと光る……。

 

春の12日昼。所持金:金16銀88銅?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。