MUV-LUV ALTERNATIVE IF 〜 a save of all humanrace 〜 作:暁 巧
Episode 3 ―月詠side─
月詠(つくよみ) 真那(まな)
帝国斯衛軍の衛士。
己の原点へ帰り自分を見つめ直す為、京都へと向かっていた。
(「あの方と部下達に、たまには休むようにと、一日休暇をもらった。というより、取らされた……」)
機体整備の為、降りた地は──大阪。
ガラッと物音が…?
何か気配のする方へ行ってみると、そこにはBETAと……人!?
結局休む間もなく、戦いの日常へと……
だけど、お人好しのバカ者との出会いが月詠真那の日常を一変する!?
「……バカ者め」
◇10月22日
2:19 大阪 上空
(「ん? ……少し機体の調子が悪いか? あの辺りで降りて、機体のチェックを済まそう」)
戦術機の機動に少し異常を感じて、機体のチェック及び整備をしたのだが、これといって異常は見当たらなかった。
「……特に異常は見当たらんな」
ガラッ…。
「……何だ…? ………何かの気配がする……」
月詠は、気配のする方向へ歩き出した。
がらっ…。
(「音が大きくなった。やはり何かいるのか?」)
近づく先にいたのはBETAだったのだが、何か様子がおかしいことに気づいた。
(「何をしている?」)
「──…、がぁっ!!」
(「──!? こんなところに、人がいるのか!? みんな避難したのではないのか!」)
「くっ!」
月詠がBETAに向かって駆け出した。
「あ゛あ゛ぁ゛あ゛ーーーーっ!!!」
(「BETAめ! 人類を何だと思っている!!」)
風が吹き抜け、雲間から月が顔を出した。
月光が辺りを照らし、そこにいる男の姿を見てBETAに怒りを覚えた。
「今宵の月が、貴様の見る最後の月になろう」
刀を正眼に構え、朗々と謳う。 静かに、怒りを携えて………
男と視線が交わる。すると、男から笑みが零れた。
はじめは驚いていたようだったのだが、次第に嬉しいような、安心したような笑顔になっていった。
「──!」
「ハハッ……」
(「笑っている!? このような状況で!? …全く、どのような神経をしているのだ」)
──すぅっ……と、体中に冷たい空気を染み渡らせていく。
「たぁーーーっ!!」
月詠が駆け、上段から切り下ろす! BETAはよろめいたが傷は浅く、致命傷を避けたようだった。
(「これで、決める!」)
「危な…!『はあぁぁっ!!!!』……」
男が最後まで言い終える前に、よろめいた透きを逃さず、既に居合いの構えをとっていた。
「無限鬼道流(むげんきどうりゅう) 奥義、月の輪。
二度も月を拝ませてやったんだ──」
刀を鞘に納め終えて、
キンッ……と甲高い音を立てて、鍔(つば)と鞘(さや)がぶつかる。
「──感謝しろ」
鞘に納まる音と同時に、BETAが崩れ落ちた。
(「──そういえば……」)
「先ほど、何か言ったか?」
「はははっ♪ 月詠さん、カッコ良過ぎっ♪ ふふっ。ははっ! あ痛っ! 笑い過ぎた」
「──!?」
(「私を知っている? つまり、私の強さも知っていたから、あの状況で笑っていられたのか? だがしかし…………。考えて詮の無いことだ。とにかく、まずはこの者の手当てが必要だ」)
「立てるか?」
月詠が、手を差し伸べる……
「………」
(「何故(なにゆえ)この者は笑顔なのだ? わからぬ……」)
「立てるのかと聞いている」
「あ、はいっ! すみません」
(「全く。この者はバカ者なのだな」)
「抜かずに?」
「ここで抜いても、傷を広げてしまうだけだ。戦術機のところまで戻れば医療キットが積んであるから、応急措置が出来る」
「へぇ……」
(「この者は、ちゃんと話を聞いているのか?……」)
「ここからそう遠くない、急ぐぞ。残存するBETAがいないとは限らないからな」
月詠は伸ばしたその手を……
「ぁ……」
取れずに、体を突き飛ばされていた。
「くっ!……」
「貴様!! ──っ!?」
月詠は、今になって自分の置かれていた状況を理解した。
(「何をやっているのだ、私は! 生死の確認もせず、勝利したと思っていた。油断してどうする! 相手はBETAなんだぞ! 戦場で透きを見せるなど、殺してくれと頼んでいるようなものではないか!!」)
「あ゛あ゛ぁーーっ!!」
「───なっ!?」
月詠は、男の叫び声で我に返る。
男は月詠を突き飛ばし、左腕に刺さった鉄の棒を引き抜いてから、“まだ生きていた”BETA口の中に向かって突き刺した。
『月詠さんを喰らおうとしてんじゃねぇよ! お前は……これでも喰らっとけぇ゛!!』
止(とど)めをさすため、月詠が落とした刀を拾って構える。
だが満身創痍の体に疲労が蓄積して、刀を持つので精一杯だ。
……男の目から、涙が滲み出てきた。
『月詠さんは、……月詠真那は殺させないっ! 絶対に!!
──お前なんかにっ、、殺されて堪るかぁーーっ!!!!』
(「そなたは何故、そのような悲しい顔をするのだ……」)
男の刀を持つ手が、震えていた。かなり血を流している……限界が近いのだろう。
(「はっ…! 不味いっ!」)
その事に気がついた月詠は、勢い良く駆け出す。
(「あの状態では、刀を持つのがやっとだろう」)
───カチャッ……
月詠はそっ と、刀に手を添えて、その男を後ろから支えた。
「バカ者め」
刀を奪って月詠がBETAを倒しても良かったのだが、
(「ぼろぼろの体で、私を守るためにあれだけ戦い……諦めなかったのだ。最後まで戦わせてやらねば、一人の戦士として、男として、悔しいだろうからな。
それに──」)
月詠は、共に戦おうと力を貸すことにした。
(「私が力を貸さなくても、この者は負けなかっただろうな」)
この男と会ったばかりなのに……そう、思えた。
「安心して、私に身を委ねろ」
「はいっ!」
「……嬉しそうに応えるな、バカ者め……」
顔の近くでも聞こえるか聞こえないかの微かな声でつぶやく。
「えっ?」
男が聞き返すより早く、月詠は檄(げき)をとばす。
「来るぞ! 構えろっ!」
なぜだか月詠は笑みが零れそうになるが、それを堪えて敵を見据える。
『『おぉぉぉぉーーっ!!』』
雄叫びと共に、迫り来るBETAに向かって鋭く刀を振り下ろす。
──BETAを倒した後、月詠に身を預けるようにして、男は気を失った。
「ぁ…………よかった。息をしている」
月詠は自分の腑甲斐なさに憤りを感じていたが、今だけは、この男に助けられたことを感謝しながら、少しの間だけ抱きしめ続けた。
(「──私はきっと、
この時の光景を、
この者の顔を、
これから先、忘れることはないのだろう──」)
月明かりに照らされながら、月詠は口の端を緩め、軽く微笑む。
◇10月23日
5:48 静岡 上空
(「この者を早く治療せねば……。応急措置は済ませたが、左腕の出血が酷い。
だが、強化装備を着けてない状態での飛行は危険だ。まだトリアゾラムを使っていないから使用は出来るが………重度の加速度病になってからでは、遅い……。
この男が目を覚ますまで待つか? ──いや、そんなことをしている間に移動した方がいい。今この時だって、体力は低下していってるのだ」)
「はぁ……。厄介なことになった」
「………んっ、ハァッ……ここ、は……?」
(「起きたか」)
男は眠たい瞳を擦り続けていたが、まだ眠気は取れずに寝ぼけていた。
「…っぁ……」
──ぽにゅっ
頭の後ろから柔らかい感触が伝わって来る。それを枕にしようと少し体をずらして、頭を預けた。
「ここ、すっげー寝心地いい♪〜ふぁっぁ〜……おやすみぃ〜」
「……。……ああ」
「…? ………」
閉じていた目蓋を開けて、自分の置かれていた状況を確認する。
視線だけで、周りを見渡すと、
──ぽにゅっ
頭に当たっていたものが目に入る。
(「胸? ……誰の? ………あ。も、ももももしかして!? っつっ、月詠さんのおっプッ、い、っや、胸ぇ〜!?」)
「のぅわーっ!」
「何だ、耳元で大きな声を出すな」
いきなり起き上がろうとしたため、ベルトが傷口に食い込んだ。「いっ! たぁ!?」
「大丈夫だ。もうBETAはいない」
「あっ、いや、そういうわけじゃ……」
「?」
「何でもないです……」
「可笑しなやつだな」
(「言ったら殺され兼ねない、よね……?」)
男は今、月詠の膝の上に固定されている状態にある。怪我のことを気遣ってか、緩くあったが……
「顔が赤いが、大丈夫か? ……悪化したのではないのか?」
「ちがっ、…大丈夫……です」
「そうか。なら良かった」
(「途中で気づいた。迷惑かけてるし、心配かけてる……」)
「ホントにすみません。迷惑かけてばかりで、……ごめんなさい」
「? 何を言っている」
「あ、間違えた」
「間違えた??」
(「不思議そうな月詠さんもかわいいな…ってそんなこと考えてどうする! バカかオレは」)
「何を間違えたのだ?」
「あっ、すみません。えっと……」
出来るだけ体を月詠の方に向けて、まっすぐ、顔を、その瞳を見つめて……
「ありがとうございます!」
男は有りったけの思いを込めて、月詠へ感謝の言葉を告げた。
(「先に言われてしまったな……」)
「………」
「本当は、一番にこの気持ちを伝えるつもりでした」
(「礼を言う機会は、幾らでもあったというのに」)
「いや、こちらこそ礼を言うべきだ。ありがとう」
「ははっ。あ、いや、いいえ、どういたしまして」
「ところで、」
「はい」
「迷惑とは何だ?」
「あ〜……その、オレのせいで死にかけたから……っていうか……」
「なっ!?……」
この男に対してなのか、それとも月詠自信の腑甲斐なさに対してなのか、怒りが込み上げて来て抑え切れなくなり、言わずにはいられなかった。
「何を言っている! 貴様のせいではなかろう! 貴様のせいで死にかけたのではないっ! ……そなたの……そなたのおかげで助かったのだ!
そなたは戦った! 戦ったから、今の私があるのだ!! ……っはっ」
真那は息継ぎをしてからそのまま続ける。
「それに……国や民を守るのが、我等、斯衛(このえ)の使命! そのことに命を賭(と)して戦うのは、当然のことであろう!!」
男は突然の剣幕に驚きはしたが、月詠の気持ちが嬉しく、素直に礼を述べる。
「ありがとぉ。ええっと、……わかったよ。素直に感謝だけしとくわ」
「……ああ、そうしてくれ」
月詠自信あそこまで感情的になるとは思っておらず、自分でも驚いていた。
その原因の一端でもある男から提案がされる。
「で さ、今さらなんやけど、……自己紹介しません?」
その言葉で、お互いの自己紹介がまだだったことを月詠は思い出した。
月詠は、男の名前すら知らない。
「う、うむ、それもそうだな。では、まずは私から。
帝国斯衛軍 第19独立警備小隊隊長、月詠(つくよみ) 真那(まな)中尉だ。
──以上」
「あ、はい」
としか言えなかった。
「じゃあ、や……」
次はオレ! と意気込んでいたのだが、自身の名前を言うべきなのか悩んでいた。
(「いる可能性の名前を言うと、オレが2人いるとか、死人だとか言われたらたまらんなぁ〜。
じゃあ、名前を…いや、せめて名字だけでも…………よしっ!」)
「えぇっと、暁! 暁(あかつき) 巧(たくみ)です。好きな食べ物は、ハンバーグ、カレー、あと、甘いものも好きかな。────」
巧が熟考した後に、自己紹介をしていく。趣味なんかも、色々と添えて。
「私も、そういうことも言うべきだったか?」
「まぁ、その方が嬉しいかな。もっと仲良くなれるし、友達ってそういうもんでしょ? ってか、なってほしいなぁ〜って。まぁ、好ければ…ですけどね」
「友達? ……私がか?」
「あ、すみません。……嫌でした?」
「いや、」
「そっか……」
「そうではない! …そうではないのだ……」
月詠は、本当にそんな事微塵も考えていなかった。
その言葉を聞いて、巧も笑顔になる。
「なら良かった♪ んじゃ。友達になったんやから、お互いに敬語は無しで、な?「おい貴様! 勝手に話を進めるんじゃない!」──じゃあ……」
「ちょっと! 聞いているのか!?」
余りにもマイペースに会話を続ける巧に、真那は困惑する。
「“おい”でも、“貴様”でもない。巧やって、ま〜な♪」
「──!? っぐぅ」
真那は何かを言い返そうとしたが、ぐうの音しか出なかった。
「ん?」
「……ぜっ、善処する……」
「ははっ」
真那は、「この者と共にいるのは、困難を極めそうだ」と諦め混じりに回答した。
(「これほど未来(さき)が不安になることは、……初めてだな」)
巧は悪戯っぽい笑みを浮かべ、真那を問い詰めた。しどろもどろになりながらも答える真那を見て、心からの笑顔になる。
(「あれだけの事があったのに、笑えてる……。月詠真那のおかげや。本当に……」)
先程まで生身でBETAと戦って、真那自信悔しい思いをしたはずなのに、巧の笑顔を見てるとなんだか元気が出てくる気がして、つい、真那の表情も柔らかくなる。
(「嬉しそうな顔をするなというのに……バカ者め……」)
だから悪態を吐くのは、心の中で止(とど)めておいた。
その後趣味とか色々話をして、友達なんだからと名前で呼びあうことになった。巧は喜んで、真那は渋々という感じで。
だけど、時間が経つにつれて真那も巧と同じ目線で話すようになっていた。
「……最後に、“すきなもののはなし”……」
「ふふっ。また、その話ですか?」
真那は、呆れつつも巧のはなしに耳を傾けた。
「オレは、この“そら”がすきや。この地球(ほし)の空も、宇宙の宙(そら)も」
「はい……」
巧が真剣にはなしをしているんだと解って、真那ももっと真剣に、はなしを聞こうと思った。
「オレは、笑顔が大すきや。めっちゃすきや。
誰かが笑顔やったら、オレも嬉しくなる。友達とか、家族とか、仲間とか…………っ、……みんなっ、みんな守りたいっ! ……でも、オレには何の力も無い。
だけど、……だから! 強くなりたいっ! なりたいんや! だからっ!!」
巧が気づいた時には、目から涙が溢れそうになっていた。
「巧……」
慈愛に満ちた真那の声に、あたたかい笑顔に安心して、涙が流れる。
「戦っている時に言ったはずです。“安心して、私に身を委ねろ”と。私を信じてはくれないのですか?」
「そんなことない!」
「ならば、
──そなたのいのち、私にくれ」
真那の覚悟を込めた台詞に、吃(ども)りながら言葉を返す。
「ぉ、おぅ!」
「ははっ。気にしないでください。本当に命を取ろうというのではないので」
(「巧は、なぜか信じてくれている。私はそれに応えようと思った、この胸のあたたかい気持ちに従って。私の保てる限りの力を!」)
真那は、誓う。巧の力になろうと。
そう考えただけなのに、真那は何だか嬉しくなる。
「大丈夫やって。わかってる。……ぇっと……ありがとうな、本当に。今改めて言いたくなってん。
……本当は、今日一日怖かった。誰もいない、オレ独りなんだって」
「………」
真那は静かに言葉の先を促す。
「でも、真那が友達になってくれた。その友達が笑ってくれた。──だから……だから今日一日は最高の一日だった。そんで、ありがとうってこと」
「だった? 過去形が多いですね。怖い一日。これは、現在(いま)に活かせば良いんです。
私は、何度だって笑います。そして何度だって、最高の日は来ます」
真那は、悔しかった。
短い間ではあるが、巧は、いつも笑顔の人なんだと解った。
真那は、「あれだけの事があった後なのに、こんな眩しい、惹かれるような笑顔ができる人間などいるだろうか?」と考えた。
人は、普段やっていない事を咄嗟にするのは難しい。普段からやっていないとできないことだ。
(「本当に悲しい事だが、このご時世にあれだけの笑顔を絶やさない人間が他にいるだろうか?
巧の、そんな人の最高の一日が、こんな日であって良いはずが無い!」)
自分は、命を救われたのだと、真那は拳を握る。使命感のようなものが芽生えた気がした。
(「何(いず)れ近いうちに、心の奥底から「最高の一日だった」と言わせてみせる!」)
巧の一言が、真那の心に火を、──いや、燃え盛る炎を灯したようだった。
巧は真那の言葉により一層、笑顔が深まる。何度言っても足りない。「ありがとう」の言葉。言葉で足りないなら、行動で示そうと思った。
「それと──」
「それと……?」
「今日は始まったばかりですよ?」
真那は、笑顔で巧に指摘する。巧も笑顔で返す。
「細かいことは、気にしねぇんだよ!」
「やはり巧は、バカ者ですね」
真那のこの言葉をきっかけに、言い合いが始まる。
「なんか、バカバカ言い過ぎじゃね!?」
「そんなことありません」
「そーかぁ?」
「──バカ─」「──っだから─」「──どういう──」「──だよ」
「ふふっ」「ははっ」
真那と巧の言い合いを傍から見たら、従の仲の良い友達同士にしか見えない。
巧は、何かを埋めるように。真那も何かが埋まるのを感じながら。お互いに正反対の、けれども似た気持ちで。だけど、二人供が満たされて。
それは、闇と光のような、または、太陽と月のようなそんな関係にも見えた。
……気がつけば朝日が昇っていた。
結局、どれくらい話たのだろう。
巧だけでなく、真那にとっても貴重な時間になった。
巧も真那も楽しい時間が過ぎてゆくのは、とてもはやいと感じていた。
巧は、朝日に照らしだされる横浜基地を見ながら、明日から頑張ろうと誓った。
真那は、朝日に照らしだされる横浜基地を見ながら、これから頑張ろうと決めた。
───これから……。
◇◆あとがき?(笑)◆◇
ん〜。
違和感ないかな? 真那さま。試行錯誤の末、出来上がったんですが、なんか思った以上に真那さまとのフラグが立った気が…
厳しい月詠中尉は、もちろん。ほんわか優しい月詠さんも書いて行きたいと思います。
これからも、どうぞ宜しくお願い致します。