パウロ・グレイラット
嵐のようにやって来て、私の初めてを奪った相手だ。
そして同時に半ば誘拐のように、私を冒険者の世界に連れて行った男だ。
無理やりではあったが冒険者の世界は楽しかった。
信頼出来る仲間達ができ、その仲間達とSランク冒険者にまでなれたのだから。
けれど甲龍歴406年の夏、私の体に異変が起きた。
急な吐き気と食欲不振に襲われた。
いわゆる、つわりだ。
相手は1人しかいないパウロ・グレイラットだ。
妊娠の事を伝えた彼が行ったのは誠実な対応だった。
冒険者を辞め仕事を見つけ、国の辺境ではあるが家まで用意してくれたのだ。
そして甲龍歴407年の春頃に娘が産まれた。
名前をアイシャと名付けた。
アイシャはいわゆる天才だった。
二歳になる前には言葉を理解し、文字を書けるようになった。
冒険者を辞めた後も楽しい生活だった。
愛する夫と娘を育てられたのだから。
1つ言うのであれば、跡取り息子を産めなかった事ぐらいだった。
けれどそんな生活は続きはしなかった。
あれは甲龍歴410年の春頃だった。
パウロが3日間、仕事で家を離れると言い3日間家を離れた。
特に怪我もせずしっかり3日後に家に帰ってきた。
そこから、5ヶ月ほど経った日の朝
昔の冒険者仲間のゼニスが家を尋ねてきた。
彼女のお腹は大きくなっていて妊娠したのだとわかった。
「ゼニス、おめでとうございます」
私は彼女に抱きつき祝った。
けれど彼女とそれを見ていたパウロの顔は暗かった。
「す、すまない。リーリャそしてゼニス!」
彼がそんな言葉を発した。
「リーリャ、ご、ごめんなさい。パウロとーー」
ー
裏切られた。
いや、いつかはそんな日が来ると心ではわかっていた。
彼は仕事で家を空ける事が多々ある。
時には1週間ほど明ける時もある。
そんな日々が続いていると、彼が我慢できなくなる日が来るとわかっていた。
けれど処理をするとしても相手は娼婦だけだと言っていた。
私は許すつもりはなかった。
同時にパウロと信頼していたゼニスに裏切られたのだ、
当然そうするつもりだった。
けれど、ゼニスの話を聞いていると夜にパウロから襲いヤったのだと。
ゼニスは抵抗が出来なく、そのままされるがままにと。
彼女の話は嘘でない。
ゼニスは、保身の為に嘘をつく事などしないと私が一番知っていた。
私は、ゼニスに対して多少だけれど慈悲の心が生まれた。
そして同時にーー
「ゼニス、このままこの家にいなさい」
ゼニスはびっくりしていた。
もちろん隣にいるパウロも。
今となってもあの時、私はなぜあんな言葉を出したかはわからない。
けれど運命が決めたかのようにそんな言葉が出た。
ー
その日から我が家にゼニスが加わった。
治癒と解毒の魔術が使える人は珍しく、ゼニスは村の人々から歓迎されていた。
そしてあっという間に時は流れた。
ゼニスの出産の時期になり、双子の兄と妹が産まれた。
私は内心ホッとした。
義理とは言え家を継ぐ息子が生まれたからだ。
そしてゼニスがアイシャに愛情を注いでくれているのと同じようにーー
私はその2人を我が子のように愛情を注いで育てていくと決めた
長男のルーデウスは少し特別だった。
産まれた後すぐにも泣かず、みんなで慌てふためいたりした。
そしてパウロの血を継いでいるのがよく分かる好色な子供だった。
次女のノルンは普通の子だった。
ルーデウスとは違い赤子のようによく泣きよく寝て育った。
今となってはパウロとの関係も良好で、ゼニスとは姉妹のように仲良くなれた。
パウロの行動を肯定するわけではないけれど、今となっては私は正解の選択肢を引けたと思っている。