ある日魔術の練習(笑)に終止符が打たれた。
いつも通り2階の空き部屋で練習をしていた時のことだ。
俺は扉から見ている人影に気づく事が出来なかった。
最近は練習に慣れて、部屋の近くを確認するのを怠っていたからだ。
「ルーデウス君、何をしてるのかな〜?」
後ろからアイシャの声が聞こえた。
ただただびっくりした。
最初は背後霊でもついたかと思った。
けれど後ろには確かにアイシャがいた。
そして俺の手には魔術で作り上げた、粘土があった。
俺は魔術のことを隠し切るのは無理だと判断した。
俺は諦めが早い男なのだ。
「アイシャお姉ちゃん、ごめんなさい…」
俺は反射的に謝ってしまったが、謝る必要はあったのだろうか?
前世から染みついている悪い癖である。
すると、素直に言ったからだろうか、アイシャは目を輝かせた。
「お母さん達、ルーデウス君が魔術使ってる〜!」
そして、アイシャが大声でゼニス達を呼んだ。
「ちょっ、アイシャお姉ちゃん!」
別に謝ったからと隠したりはしてくれないらしい。
全く厳しいお姉ちゃんだぜ。
「アイシャ本当なんですか!?」
「アイシャ本当なの!?」
アイシャの声を聞いた2人が声を出しながら、ドスドスと階段をかけ登ってきた。
「ほら見てこの土、この辺じゃ取れない粘土だよ」
アイシャは俺が手に持っていた粘土を奪い取りゼニス達に見せた。
「確かに、この辺では取れない粘土ですね」
「アイシャが作ったわけじゃないのよね?」
「嘘なんてつかないよ。本当にルーデウス君が作ったの」
俺以外の三人以外がそう話していると、一度部屋から出て行ってしまった。
少し経ち三人は部屋に戻ってきた。
「三人で話し合った結果、
ルーデウス君には私と一緒にロキシー先生の授業を受けてもらう事になりました〜!」
アイシャは部屋に戻った途端そう言い、1人でパチパチと拍手をし始めた。
「うん…!」
俺はアイシャの言葉に元気よく返事をした。
ロキシーの授業には前々から興味があったのだ。
今まではアイシャの授業を横から聞くだけだったが、これからは授業を受ける事が出来るのだ。
今までのように隠れて魔術の練習をしなくてよくなるのだ。
大きな進歩になるだろう。
「ルーデウス、しっかりとロキシー先生の授業を聞くようにしなさい」
「ルディ、ロキシーちゃんを困らせないようにね」
2人は俺にそう言い下に戻って行った。
「ルーデウス君、それでどうやって詠唱なしで魔術を発動するの?」
アイシャは周りに誰もいなくなった事を確認すると俺に質問をしてきた。
アイシャが言っているのは無詠唱のことか。
やっぱり詠唱なしで魔術を発動するのは特別なんだろうか?
まあ、とりあえず説明だけしとくか。
「体中から魔力が指先に集まっていく感じ。あれを詠唱しないでやってみて。魔力が集まってきたな、と思ったら、使おうと思っていた魔術を思い浮かべて、手の先から絞り出す感じかな」
俺は一通り説明はした。
だが上手く伝わっただろうか。
いや、説明はしたんだ後はアイシャの努力次第と思っておこう。
「そんな方法があるんだ。ルーデウス君ありがとうね」
説明を聞き終わったアイシャはそう言い残すと、自分の手を見つめ部屋から出て行った。
その日から数日、アイシャも無詠唱魔術を習得していた。
ー
「貴方達2人には驚かされてばかりです」
初めての授業の日、庭に集められた俺はロキシーそう言われた。
因みに隣には見学のアイシャがいる。
いつもと逆の立場だ。
「『ありがとうございます』」
俺たち2人でロキシーに言葉を返す。
「無詠唱魔術なんて選ばれた天才だけが出来る域だとと思ってましたよ。
それをこうも簡単に子供の貴方達が習得するとは」
俺たちは誉められ…てるんだよな?
「まあ、授業と関係ない話はここまでです。
魔術についての説明は……要りませんよね。早速、魔術を見せてください。
まずは詠唱ありで水弾をお願いします」
まずは水弾か…やべ詠唱忘れてるわ。
「ロキシー先生、詠唱なんでしたっけ?」
「『汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール』です」
言われてみればそんな詠唱だった気がしてきた。
長い間詠唱してないと詠唱を忘れてしまうな。
まあ、とりあえず水弾を詠唱しよう。
「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」
俺は水弾を詠唱をし放った。
水弾は真っ直ぐ進み立っている的に命中した。
「ルーデウス君、流石!」
「良い感じですね。次は無詠唱でお願いします」
次はロキシーにそう言われた。
俺は姿勢を整えー
「ではいきます」
一言タイミングを伝える為に言い水弾を無詠唱で放った。
もちろん、これもしっかりと的に直撃した。
「何度か見たことはありますがやっぱり凄いですね。あとルディ魔力量は大丈夫ですか?」
まだ水弾二発しか放っていない、余裕である。
「まだまだ大丈夫です」
「そうですか、よくわかりました。
これはルディも鍛え甲斐がありそうですね」
ロキシーは小さくそう呟き笑っていた。