メイドインアビス・新参の白笛の物語 作:七三式全自動駄文製造機
―大丈夫だ。問題ない。
※CV:諏〇部順✖
ホフマンの隣に、気持ち、居心地悪そうに立つ将校に目を向ける。
ヴァルター・ローレンツ中佐。
跳びぬけた数学的才能を買われて『一代貴族』に列せられた、会計局のホープである。
「どうした?都の官衙でないと落ち着かないかね?」
冗談めかして問う。こういった類の人は、慣れない環境下では才能を100%発揮できないと聞いた事がある。それでは困る。大いに困る。
「あぁ、いえ!そんな事は―」
滑稽なほど慌てて、中佐はかぶりを振る。神経質そうな細面に、気の毒なくらい分厚い眼鏡をかけていた。モノクルを下げずに眼鏡をかけるのは、裕福な中産階級の特徴だ。
ローレンツという姓にも聞き覚えがある。古くからの商家で、西域でも指折りの大商人の家系。その子弟というのであれば、『神の再来』とも絶賛される会計能力も頷ける。
「ただ…陸海軍ともに知らぬ者のない名門の御当主に、こうして謁見するのは、初めての経験でありまして……申し訳ありません…」
委縮しきった表情で中佐が答えた瞬間、耳を塞ぎたくなるほどのホフマンの無遠慮な笑い声が場を制圧した。
声で制圧射撃できる者など、この地上にこの男以外にいないで欲しい。迷惑だ。
「ぶはははははは!!wそう縮こまるなって!お前さんはこの『仕事』にいなくちゃ困る人間なんだ!もっと図々しくてもいいんだぞ!」
確かに。
この一大事業を共に任されたのだ。後世、歴史に名を残す可能性も高い。堂々としていればいいと思う。
ばんばんと勢いよく背中を叩き、激励している。
やめろ。お前は仕事にかかる前に中佐を野戦病院送りにする気か?
いい加減静止しようかと思った瞬間、腹立たしい程の間合いの良さで『あの声』が割って入った。
「遠路ご苦労様です。あちらの天幕に淹れたてのコーヒーを用意しました。どうぞ」
腹立たしい。実に不愉快である。
不愉快すぎて『私は要らん。お茶にしてもらおう!』なぞと云いかけたが、口を開くのはやめた。
どうせ、そう言うのを見越して、お茶も用意しているに違いないのだ。
一瞬交わった視線はたちまち逸れ、気のせいか、軽い舌打ちさえ聞こえた気がする。うん、きっと気のせいだ。
愛想よく二人を天幕へ案内しながら、可愛げのない年寄りは私に向かってスキットルを差し出してきた。嫌味か!(# ゚Д゚)
「少々、顔色が宜しくありませんな。気付け薬をどうぞ」
腹立たしさが限界に達し、私は挑発されるままにスキットルをひったくり、一息に煽った。
強烈な酒精が喉を灼き、燃えるような衝撃が胃の腑へと流れ落ちる。
ふぅ、とため息をついて睨み返した場所に、既に奴の姿はなかった。
今回は少し短めです。
軍国の経理将校育成制度について触れたいと思いましたが、文章量が『二話分』になってしまうのでw