メイドインアビス・新参の白笛の物語 作:七三式全自動駄文製造機
帰り道にも、我が半身たる副官と語らい、とりあえずは武力行使でのオースの併合は選択肢から削除した。我ながら単純明快でなおかつ確実な方法だと思ったのだが…
そも、我が祖国は西方随一の軍事国家である。
元をただせば、諸国の王、と呼ばれていた古王国からは『深き森の蛮族』と呼ばれ恐れられていた、全くの別文明人だ。
それが、長い時間をかけて文明開化し、新興国の弱みを補うために熱心に学問に励み学究を極め、今や、周辺諸国からの留学生を受け入れるまでに成長した。
生まれついての暴力の化身である部分を色濃く残しながら、勤勉な文明人としての学問を身に着けた新興国である。(西方諸国の歴史から鑑みれば、だが
例えば、我が祖国でたびたび宗教画のテーマとなる『聖祖母母子像』だが、これは他国で描かれる『聖母子像』に『神の子の母の母なる大地母神』が追加された形である。
遠い昔に我が国に布教伝道に訪れた宣教師は、賢明な事に、我が祖先が信仰していた神話をそっくり取り込んでひとつの物語に仕上げる、と云う大事業をやりおおせた。
中央に赤子を抱く聖母、その後ろに聖祖母。
そこまでは他の地域でも稀に見られる構図だ。
我が祖国だけにしか見られない構図として、聖祖母のすぐ後ろに屈強な騎士が剣を杖にして突き立てて彼方を睨み、赤子の前には穏やかな顔立ちの巡礼が多数の経典を広げている、というところだろうか……
騎士が示すのは『昼と日輪と光と人間の守護者たる戦争の神』であるハーン、巡礼は『夜と月と闇と動物の守護者たる知識の神』であるウルム。この二柱の神は双子の兄弟であり、聖祖母たる大地母神の息子である。二元論に従い、性格も思考もまるで逆だが、互いの弱点を補い合う仲の良い兄弟神だ。
話が随分と逸れたが、それが我が祖国を支える魂の背骨のようなものだ。
暴なき智は無力であり、理のない武は災いでしかない。
強く、逞しく、思慮深く、愚直なまでに信念を曲げない屈強な戦士の子孫。それが我々である。
信念に従うところに邪魔者が現れなば、力尽くで打ち倒して進路を開く。
暴力前提の脳味噌筋肉と呼ばば呼べ。
ともかく、私の提案は衝撃的にぶっ飛んだ思考ではないのである。
野営地に戻ると、情報収集に出していた者たちがてんでんばらばらに戻ってきた。
口頭で説明を聞くとその場で主観が混ざってしまう恐れがあるため、各々、報告書にまとめて提出するように命じる。
全てに目を通した後、重複する部分は信憑性を更に確認し、個別で拾ってきた情報は遠征軍の将校全てで討論して結論を出すことにする。
到着初日はこうして慌しく終わりを告げた。
明日以降は、ここを遠征軍の拠点とすべく、正確な測量と必要物資の算定を行うことになるだろう。
得体のしれない者たちの街に世話になることほど、遠征軍にとって不便かつ危険なことはない。たとえ軍閥化しようとも、他者の援助なしに活動できる拠点を持たねばならない。
町の者がどう反応するかはだいたい予測がつくが、各探窟家の冒険団がめいめい拠点を持っているのだ。我が軍は大所帯なのだから、それに見合う探窟基地を持つのは当然だろう。
文句が出た場合?
明確に言葉に出せば、またぞろ、暴力ありきの単純思考、とそしる者が出るだろう。
だが、冷静に考えてもらいたい。
我々は冒険家ではなく、軍隊である。
軍隊あるところ、暴力が存在するのは至極当然ではないか。
物騒な人の物騒なお国自慢と物騒な開き直りですw