メイドインアビス・新参の白笛の物語 作:七三式全自動駄文製造機
いよいよ大所帯になります。(16倍当社比w
増援要請から2週間経過。
電信の返答に従えば、今日にも増援部隊が到着するはずである。
面倒な同行者がいないことを祈りつつ、祖国の方角へ望遠鏡をかざす。
―いた、来た。
大型の蒸気軍艦を先頭に、でっぷりと太った船体の輸送船団が続く。
どうやら、他国艦隊の妨害は受けておらず、また、挑発行為を兼ねた様子見艦隊は随伴していないようだ。
私の予測では、海商王国の輸送船団あたりならくっついてくるかと思っていたのだが。
あの国はともかく吝い。
他国の艦隊であろうと、護衛艦代わりに張り付いてくる事も多いのだとか。
まあ、曲がりなりにも通商協定を結んでいる友邦だし、くっついてくるのは構わないのだが、世間様の衆目を集める手伝いはして欲しくない。
我が軍団は飽く迄もアビス攻略を目指す探検隊であり、間違っても切り取り勝手放題の略奪者ではないのである。
ふと脳内に『どの口が吐かしますか』と聞こえた気がしたが(コイツ…直接脳内に…!?)、隣を見ても我が優秀無比な副官は何の反応も示さなかった。
眉間に軽く皺を寄せ、近頃流行り始めた双眼鏡をのぞき込んでいる。
双眼鏡は確かに便利である。
望遠鏡よりも遥かに高い解像度を有し、画像のピント合わせも指先でダイヤルを回すだけと来ている。
だが、あまりにも高価ではある。
性能よりも利便性で、私は使い慣れた望遠鏡を推す。
伸ばして畳んで大きさも重さもそれなり、専用の負い革つきケースに入れておけば、どこに行くにも邪魔にならない携帯性の良さ。
一体、いつ、どこで、どの商会に発注したものやら。
オースに来る前には持っていなかったので、遠征が決定してすぐに手に入れたに違いない。
「随分とご立派な老眼鏡だな?いったい幾らしたのかね?」
精一杯意地悪く尋ねると、双眼鏡から目を離し、にたりと笑う。
かつてこれほど、憎たらしい笑顔を見たことがあるだろうか?否、断じてない。
「海商王国のさる商会に頼んであつらえてもらいました。代価はざっと金貨2万枚」
「暴利ではないのかね?いくら何でも高すぎる」
「確かに、私も最初はそう思ったのですがね」
覗いてごらんなさい、とばかりに差し出してくる。
勧められるままに覗き込み、思わず体を仰け反らせるようにして顔を離した。
鮮明すぎる。
よく、「手を伸ばせば触れられるような」と云う表現があるが、これはそれそのものである。
文字通り、目の前にあるかのような鮮明さと拡大率なのだ。
「どうです?金貨2万枚の値打ちはあるのでは?」
・・・・・・認めざるを得ない。
この性能で金貨2万枚は、或いは安いのかもしれない。
「それがですな・・・」
ひょいと私の手元から双眼鏡を取り上げ、接眼部にある小さなレバーを引き、再び差し出してくる。
「もう一度どうぞ」
言われるままに覗き込み、思わずうめき声が漏れる。
まるで照準儀のような十字線が追加され、相手との距離まで表示されている。
距離を示す数字は定まりなく変動し、海上でゆったりと揺れながら接近する先頭艦の距離を正確無比に示しているのだろう。どうやっているかは想像すらできないが、間違っても当て推量な数字ではあるまい。
まさか、軍国の光学技術者以外にこんなシロモノを造り出せる者がいたとは驚きだ。
「どうやら、レンズやからくりは軍国のものだそうですが、それに加えて、神聖王国の魔術師の秘法も使われているのだとか」
「ほほぅ・・・」
「閣下が驚かれたのは二度目のそれでしょう。私も最初、我が目を疑いました」
「こいつは凄い発明だな。こんなものが量産されたら、戦争の様相が一変するだろう」
「量産は不可能なのでは?科学的なものならいざ知らず」
「それを何とか量産して欲しいものだ」