メイドインアビス・新参の白笛の物語   作:七三式全自動駄文製造機

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せいときょう は なかま を よんだ!
なかま が あらわれた!



第七回

 港に接岸するのは輸送船だけである。

護衛艦はやや沖合に投錨。上陸人員は輸送船に乗り換えて上陸させる。

 

 港に直接接岸できないでもないが、何が起こるかわからないし、万一、当たりゴスタン(接岸時に衝突するミス・艦長にとって大きな経歴上の汚点となる)でも起こしたら軍国の恥である。

ピーピーヒューヒューとサイドパイプ(ボースンコールとも称する海軍独特の号笛)

の音が鳴り渡り、無数の人影がめいめい、ひとまとまりになって動く。実に活況である。

 

 そうこうするうち、輸送船団の指揮官が二人、私のもとに歩み寄ってくる。

お互い見知った顔だ。何しろ、軍国の軍事組織の士官階級は貴族出身者が圧倒的に多い。

海商王国発祥の『民権主義』なる思想が西方諸国全体で流行っているから、将来的には爵位を持たぬ中産階級からも数多くの将校が登場するのだろうが。

 

 貴族階級に多い、軍隊の士官は貴族階級に限定すべし、との意見に対しては私は反対だ。

古い時代ならともかく、現代では中産階級であろうと、都市の工場労働者の子だろうと、農村の農夫の子だろうと、学究省の定めた一定レベルの教育や体育を受けている。

人材の『素材』としての質は変わらないと云える。

ならば、可能な限りの才能を磨き上げ、かつ、拾い上げるのが、国家として最も適切な方策だろう。無駄遣いは何事においても赦されるものではない。況してや、軍国の柱たる軍隊の存立に関わってくる問題でもある。

 

 やや気掛かりなのは、貴族階級なら当たり前に持ちえた『国家への揺るがぬ忠誠心』や『死を恐れない敢闘精神』のほうは大丈夫だろうか?という危惧。

技術技能は継承できても、精神性が失われてしまっては困る。

…………やめよう。私は軍政には権限がないし、なにより、この先、祖国に戻ることは金輪際ないのだから。

将来の心配は、長年軍務卿を務める彼に任せておけば大丈夫だろう。

 

 脳内に沸いた揺らぎは、聞き覚えのある大声で吹き飛ばされた。

「久しぶりだな、今度はこの大穴の探検だと?お前さんも苦労なこった」

船乗りは嵐の中だろうと砲声とどろく戦場だろうとお構いなしに会話する人種だ。

ゆえに、彼らの声はとても大きいうえに、どんな騒音にもかき消されないという不思議な特徴を持つ。おまけに、その無遠慮な大声には無自覚ときている。

「ここは戦場ではないぞ、もう少し声を絞りたまえ」

 

 我が家のすぐ隣(と云っても、宿場町を馬車で乗り継いで一週間はかかる距離だが)で生まれ育った、フリートリッヒ・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン少将。

海軍士官としては随分と大柄で、こやつ一人乗り組むだけで水兵一人分の余剰重量になるのではないかと思える。

 

 子供の頃にお互い、何度か遊びに行った記憶がよみがえる。

我が家はやや内陸なため、私は海を知らなかった。

或る時、父に連れられて隣の伯爵領に行ったのだが、その時に知り合ったのが彼である。

広がる海を遥かに臨む丘の上で、休憩停車し、窓を開けて風景を眺めていた時のことだ。

いきなり声をかけられて御者が反応した。

話しかけてきたのが、その伯爵領の御曹司様だったからだ。

「海をみるのは初めてか?お前も船乗りになったらいつでも見れるぞ!」

御者は微笑みながら、我々が乗る後室の窓を引き開け、如何致しますか?と父に尋ねる。

「ちょうどいい。ホフマン邸まで乗せてやりなさい」

と父は鷹揚に応え、ややあって、少年が後室に乗り込んできた。

その頃から既に体格は大きく、私よりも幾つも年上かと思ったが、年齢を聞くと、なんと私よりも3つも年下らしい。何を食べればそんなに大きくなるのか・・・?

ホフマン少年は非常におしゃべりで陽気な子供だった。

活力が尽きることを知らないタフマンぶりは、当時から変わらないと云える。

お互いに三十路の半ばを越えて、少しくたびれかけた年回りだというのに、だ。

 

 

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