感想や評価してくださった方ありがとうございます。
凄く嬉しかったです!
投稿済みの話修正してると意欲低下凄かったので新しいのは出来るだけ読みやすくなる様にしていく形にさせてもらいます。
やっぱり先の話考える方が楽しいので^^;
筆弱な完全ど素人ですが少しずつブラッシュアップされていくと思いますので宜しくお願いします。
第一部は連投出来ましましたが
第二部からは本当に1話/1~3日になると思います。
ストックチャージの為に3日間更新お休みします
次回11/4 19:01
第一幕 鴉は尸魂界に生きる
第一部 死して、なお
第11話 帰る場所
「うちは」
「はい」
教官に呼ばれ、イタチは顔を上げた。
机の上には先日提出した進路希望調査が置かれている。
「四番隊志望。これで間違いないな?」
「はい」
短く答える。
それだけのやり取りだったが近くにいた生徒たちが僅かに反応した。
「四番隊?」
「うちはが?」
声を潜めてはいるが聞こえている。無理もないのかもしれない。
斬術、白打、歩法、鬼道。どれも高い評価を受けている。そのうえ現世実習でも虚を相手に高い戦闘能力を見せていた。だからこそ、別の隊を予想していた者も多かったのだろう。
「意外だな」
一人の生徒が言った。
「てっきり戦闘が多い隊に行くのかと思ってた」
「俺も」
「なんで四番隊なんだ?」
イタチは少し考える。
「回道に興味があるので」
「……それだけ?」
「ああ」
「うちはらしいと言えば、うちはらしいけど……」
相手はまだ何か言いたそうだったが、教官が手を叩いた。
「ほら、そこまでだ。進路は本人が決めるものだ。次!」
別の名前が呼ばれる。イタチは席へ戻った。
四番隊。
それが自分で選んだ次の場所だった。
◇
数日後。
イタチは第四番隊の隊舎を訪れていた。案内された部屋の前で足を止める。
「失礼します」
「どうぞ」
穏やかな女性の声が返ってきた。戸を開ける。
長い黒髪を前で編んだ女性が静かに座っていた。
柔らかな表情。穏やかな佇まい。
(……この人が四番隊隊長)
感じる霊圧は霊術院の教官たちとは明らかに違う。これまでに出会った京楽 春水や浮竹 十四郎とは、また違った印象だった。
「初めまして」
女性が微笑む。
「四番隊隊長、卯ノ花 烈です」
「うちは イタチです。本日はよろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
促されイタチは向かいへ座った。
卯ノ花は手元の書類へ視線を落とす。
「二年間の成績はどれも非常に優秀ですね。斬術、白打、歩法、鬼道……」
ゆっくりと頁をめくる。
「一年目の時点で早期卒業の話もあったそうですね」
「はい」
「それを断ってもう一年残った」
「学びたいことがありましたので」
「その一つが回道ですか?」
「はい」
卯ノ花は書類から顔を上げた。
「少し意外でした」
「意外ですか」
「ええ。あなたの戦闘能力については霊術院から高い評価を受けています。そのあなたが四番隊を第一に希望した」
柔らかな口調のまま、卯ノ花は問いかける。
「理由を聞いても?」
「…………」
イタチは少し考えた。
教官や同級生には回道に興味があるとだけ答えた。それも嘘ではない。しかしそれだけでもなかった。
「戦闘という意味での敵を倒す戦い方についてはある程度は分かっているつもりです」
卯ノ花は何も言わず、続きを待つ。
「ですが、“人を癒す”という守るための戦い方を俺はまだ知りません」
戦うことなら知っている。敵を見つける方法も。殺す方法も。誰かを守るために自分の手を汚す方法も。
前の人生で嫌というほど学んだ。
「大切なものを支え、助けられる力を学びたいと思います」
静寂。
卯ノ花はしばらくイタチを見ていた。やがてその表情が僅かに和らぐ。
「……そうですか」
「はい」
「分かりました」
卯ノ花は書類を閉じた。
「それでは少し見せてもらいましょうか」
「あなたが二年間で学んだものを」
◇
場所を移した。そこは四番隊の治療所の一室だった。
寝台の上には一人の隊士が横になっている。腕には浅い切創があり、訓練中に負ったものらしい。
「この程度でしたら回道で問題なく治療できます」
卯ノ花が言う。
「やってみてください」
「はい」
イタチは隊士の横へ立ち、傷を見る。
そして眼が赤く染まった。
三つの勾玉が浮かぶ。
写輪眼。
傷の状態。流れる霊力。周囲の組織。そこへ自分の霊力を流した際に起こる変化。
一つずつ観察する。手を翳して回道を始める。
急がない。必要な場所へ、必要な量だけ。
霊力を細かく制御しながら傷を閉じていく。
やがて。
「終わりました」
イタチが手を離すと傷は綺麗に塞がっていた。
「…………」
卯ノ花が患部を見る。
「綺麗ですね」
「ありがとうございます」
「霊力の制御も正確です。霊術院で学んだ範囲についてはよく身についています」
卯ノ花はそう言うとイタチを見る。
「では質問です」
「はい」
「この隊士が同時に腹部にも傷を負っていたとします」
卯ノ花が腹部を示す。
「外から見える傷は小さい。しかし内側で出血している可能性がある。どちらから治療しますか?」
イタチは僅かに目を細めた。
「腹部の状態を確認します」
「なぜです?」
「外から見える傷だけでは損傷の程度を判断できません。内側の損傷が重ければそちらを優先する必要があります」
「ではその確認方法は?」
「…………」
答えようとして止まる。
霊力の流れを見ることはできる。異常を探すこともできる。しかしそれだけで全ての損傷を正確に診断できるとは限らない。
何より。
(情報が足りない)
「今の俺では確実な方法を知りません」
卯ノ花は静かに頷いた。
「はい」
反応はそれだけだった。そして続ける。
「ではその状態の隊士が三人、同時に運ばれてきたら?」
「…………」
「全員が傷の場所も重さも違います。使える人員も限られている。その時何を基準に誰から診ますか?」
イタチは答えられなかった。条件だけならいくつかの判断はできる。しかし。
「実際の状態を確認しなければ判断できません」
「そうですね」
卯ノ花は微笑んだ。
「それでいいのです」
「…………」
「分からないことを分かったつもりにならない。それも人を治す者には必要なことです」
卯ノ花は先ほど治療した腕を見る。
「あなたの回道はとても正確です。霊力制御については霊術院を卒業する者として十分以上でしょう」
そして再びイタチを見る。
「ですが人を治すということは回道を上手に使うことだけではありません」
「はい」
「何が起きているのかを見極めること。誰を先に治療するのかを判断すること。治療中の変化に気づくこと。そして自分一人で治療できない時に誰へ何を頼むのか」
知らないことばかりだった。イタチは静かに頷く。
「学びたいと思います」
「ええ」
卯ノ花の笑みが少し深くなった。
「守るための闘いを学ぶには四番隊は最もふさわしい隊と言えるでしょう」
「…………」
「四番隊を志す理由は人それぞれです」
穏やかな声で卯ノ花は続ける。
「戦いを得意としないからこの隊を選ぶ者もいます。それも決して間違ったことではありません」
「ですがあなたは戦う力を持ちながら守るための別の力を求めてここへ来た」
卯ノ花は静かに微笑んだ。
「その志を私はとても嬉しく思います」
「天才と呼ばれるあなたならきっとここで多くのことを学べるでしょう」
「はい」
卯ノ花は手元の書類へ何かを書き込んだ。
「卒業後、あなたを四番隊へ迎えます」
筆が止まる。
「“第七席”として」
イタチが僅かに目を見開いた。
「“七席”ですか」
「不満ですか?」
「いえ。予想していなかっただけです」
「回道や治療についてはこれから学ぶことが多いでしょう」
卯ノ花は穏やかに続ける。
「ですがあなたが既に身につけているものまで無かったことにする必要はありません」
「…………」
「これからも学んでください。四番隊で」
「はい」
「期待していますよ。うちは七席」
イタチは頭を下げた。
「宜しくお願いします。卯ノ花隊長」
◇
そして卒業の日を迎えた。
二年間過ごした霊術院。入学した頃には知らなかったことを随分と知った。知らなかった技術を学び、知らなかった人々と出会った。
卒業式を終え、イタチは校舎を出る。
多くの生徒たちが家族や知人と言葉を交わしていた。その中を歩いていると。
「よう」
聞き覚えのある声がした。足が止まる。
「源三さん」
「おう」
人混みの少し離れた場所。源三が立っていた。三年前とそれほど変わらない姿で。
「手紙寄越したのはお前だろ」
「はい」
「来てやったぞ」
ぶっきらぼうに言う。だが、わざわざここまで足を運んでくれたことがその態度とは合っていなかった。
「ありがとうございます」
「暇だったから来ただけだって」
「……そうでしたか」
源三が鼻を鳴らす。
「卒業するんだってな」
「はい」
「そうか」
少しだけ間があった。
「……おめでとう」
「ありがとうございます」
「礼はいらねえ、お前が頑張っただけだろ」
「言わせてください」
「ったく」
面倒そうに言いながらも源三の口元は僅かに緩んでいた。そして何でもないことのように言う。
「団子食いに行くか」
イタチも僅かに目元を緩めた。
「はい」
◇
団子は変わらず甘かった。
「で」
源三が団子を一本手にしたまま尋ねる。
「これからどうすんだ?」
「護廷十三隊に入ります」
「それは知ってる。どこだ?」
「四番隊です」
「四番隊?」
「主に傷ついた隊士の治療や救護を行う隊です」
「ほう」
源三は団子を一つ口へ運ぶ。
「人を治すのか」
「これから学びます」
「そうか」
それ以上は聞かなかった。イタチもそれ以上は話さない。
二人で団子を食べる。
それだけで十分だった。
やがて皿が空になる。店を出る頃には空が夕暮れに染まり始めていた。
「では、俺はそろそろ」
「おう」
イタチが歩き出す。
「イタチ」
数歩進んだところで呼び止められ振り返る。
「はい」
源三は少しだけ視線を逸らした。
「……たまには顔出しに帰ってこいよ」
「…………」
一瞬、イタチは言葉を失った。
帰ってこい。
その言葉が、胸の奥に静かに落ちる。
かつて帰る場所だった里は、もう遠い。
父も、母も、サスケも、今の自分には会いに行くことすらできない。
目の前にいる老人を見る。
三年間暮らした家。何度も食べた団子。自分を拾い、何も聞かずに居場所を与えてくれた人。
いつの間にか、ここにも帰れる場所が出来ていた。
「…………」
イタチは僅かに目元を細めた。
「行ってきます」
源三が笑う。
「おう。行ってこい」
卯ノ花 烈
護廷十三隊・四番隊隊長。
長い黒髪を前で編んだ、穏やかで柔和な雰囲気の女性。
高い治療技術と回道の腕を持ち、治療・救護を担う四番隊を率いている。
物腰は常に落ち着いており、隊員たちからの信頼も厚い。
京楽 春水や浮竹 十四郎と同じく、長きにわたり護廷十三隊を支えてきた古参の隊長の一人。
柔らかな笑みを絶やさない一方、その佇まいには長い年月を生きてきた隊長としての底知れなさも感じさせる。