原作きよぽんよりチート。ただし転生特典でスキル剥奪済み 作:塾長
あ、さすがにハッキングは環境構築してやってるよ!(ここ重要)
世の中のハッキング描写ってガバガバ過ぎるし、ロジックのガバガバ穴をスキップする要素として使われがちよね。
あなたは「ゾス」をご存知だろうか?
ゾスとは某・ぴかぴか通信で用いられるワードであり、有り体に言えば「ブラックでも逝けます!」という意味だ。
ゾスせねばゲスすがすぐデスする……発狂せねばやってられないよね。さて、いまオレが何をやってるかわかるかな? そうだね、ゾスだね。圧倒的なゾス。
さて、時は転生直後、自室内。
「……やれるだけのことをやる、それだけか」
明日には高度育成高等学校に入学し、寮生活という名の監獄へとぶち込まれるわけだが。
その前に、やるべき準備は山ほどある。
「何事も、準備の段階で勝負は決まってる……だっけ?」
高育の入学案内の資料を開く。
原作にはなかったが……気になるところだ。持ち込まれた現金による取引や、物品による換金、通信機器の持ち込み関連はどうなっているのだろうか?
あと、荷物チェックなどは無さそうだ。仮にあったとしても、常識の範囲内の物であればペナルティはないとみていいだろう。
荷物を送れば自室に届くのか? それとも禁止されてしまうのか?原作知識があるとはいえ、この手の細かいレギュレーションの霧は深い。
高育に問い合わせたところ、「外部との通信に使わなければパソコンの持ち込みは可能」とのことだ。
あぁ、これ通信がガッツリ検閲されてんな。黒電話の国かな? そうに違いない。ちなみにスマホは持ち込み不可だった。涙で枕を濡らす。
「それにしても……はぁ、マジムカつく」
スキルは剥奪されたが、「原作知識そのもの」まで消されたわけではなかったのは不幸中の幸いだ。覚えておくべき大まかなプロットはしっかりと脳内から想起できた。
ただ、スキルそのものの実用的な肉付けや、中学以降の専門知識については、まるでモヤがかかったように思い出せない。
「大の大人が、経験と知識を引き継いで無双する……ってのが転生もののテンプレじゃないの? 自称神が与えたのはチートじゃなくて、ただの悪質なヘイトじゃん……」
ただ、唯一の嬉しい誤算としては、前世で受けた暴力による身体の不可逆的な傷や欠損がキレイさっぱり消えていたことぐらいか。
あれにはマジで悩まされていただけに、こればかりは素直にありがたい。
ガサゴソと紙を出し、今日すべきタスクを書き殴る。
・ラズベリーパイの調達
・ノートパソコン2台(MacBook & Let’s Note)
・USB式の無線ユニット
・256GBのUSBメモリ
・抜け落ちた知識を補完する書籍(100冊ほど)
・記憶術の再習得(最重要)
・Kali Linuxのインストール
・各種教材のUSB内へのローカル保存
幸いなことに、スキルとしての「やり方」は吹き飛んでいたが、「どの本を読んだのか」「どんな教材で学んだのか」というインデックス(索引)だけは脳の底から引っ張り出せた。
流石に、読んだ本のタイトル情報まで削除すべき不要メモリとは判定されなかったらしい。周辺知識や必要物品の記憶があるならば、まだやりようはある。
要するに、知識とは「頭に詰め込むこと」ではなく「外部から集めて運用すること」が重要なのだから。
飛車角歩金銀落ちってところか……えっ、キツくないですかこれ?(盛大な震え声)
ここから入れる保険ってあります? 死亡保険……?
オレ、下手すっと魂ごと消滅するんですがそれは?
まっ、香車が1枚あれば前方へゾスできるね。安心だぁ(乾いた笑い)
◇
物品の調達を秒で済ませたオレは、まず手始めに「記憶術」の再学習から取り組んだ。
イメージ化してルート・プレイスに置く。それを想起して日本語に変換する。それにより大量の情報を1度に覚えられる…と
「情報を視覚イメージに変換して、記憶の宮殿(場所)に置く。それをエビングハウスの忘却曲線に合わせて脳内でリピートし、血肉にする……と」
まずは手始めに『松田の数学Type100』と『Type60』をブチ込み、記憶術で片端から脳内に叩き込む。2冊合わせて3時間ってところか。
100、60の項目がある目次をイメージ化して、前世の通学路において行ぬ。小見出しを更に目次に貼りつけ解放手順なども追加する…と
ルートを脳内で3周する頃には、参考書の内容は脳内へとインストールされた。前世に比べて錬度はかなり低なってるものの戦えない範囲ではない。
そして問題と解答を高速回転で…
…………………ゾス学習中………………
「知識のロジック自体はすっ飛ばされてるけど、純粋な暗記作業ならゴリ押せる。なら、戦いようはあるさ」
サクッと目次、内容、定義・定理・公式を脳に焼き付け、高速で問題を音読し、脳内へとインストールされているかのチェック作業をする。
原作の2年生編1巻の時点で、綾小路が測度論(ルベグ積分)を解いて満点を叩き出していたな。
もちろん、ここもゾス。ギリギリの滑り込みセーフを狙って行く。キャンパスゼミは優秀なんじゃぁ(なお教授からのウケは悪いものとする)
続いて、本命のセットアップへ。
Kali Linux始動。
USER:kali
PASS:kali
蒼龍のディスプレイに光が宿り、ハッキング用OSが起動する。
sudo apt update
・・・
・・・
・・・
sudo apt upgrade
・・・
・・・
・・・
「……ふぅ。確かここ、地味に時間かかるんだよな」
調達したパソコンはMacBookとLet’s Noteの2台体制。
前者は高育内でのビジネス展開で使い、後者はもちろんハッキング……と言うより、学内システムの網の目を潜るためのツールとして使わせてもらう。
ハッキングなんてしたら、犯罪で即退学になるのでは……?
ノンノン。ゾスだよ君。ゾスが答えなのだよ。
「教育環境の構築と検証」という大義名分(名目)でアクセスすればいい。なにせあの学校は、ポイントで買えないものなどない狂った世界だ。ログさえ綺麗に残さなければ、学校側だって立件しようがない。
ペラペラと『Try Hack Meで学ぶ、7日でハッキング』『ホワイトハッカー入門』『Linuxの絵本』をざっくり、だが貪るように読み込んでいく。並行してYouTubeのハック攻略動画を倍速視聴。コマンドの羅列だけは、容赦なく記憶術で物理的に暗記だ。
並行して、ラズベリーパイにUSBドングル、そしてSIMをブチ込む。これで高育の監視網を通らない、完全独立した外部通信環境が確保できた。
絶対に、あの高度育成高等学校ってのはプロキシサーバーで生徒の通信をガッツリ監視している。それも黒電話の国ばりにギンギンにかっぴらいて。
「ま、と言っても所詮はお役所仕事のセキュリティってところか。監視カメラのファームウェアに雑魚な脆弱性が残ってたら、拝み倒してでも助かるんだけどな」
ゆくゆくは情報交換を目的としたクローズドなプラットフォームを作り、しれっとHTTP通信でサービスを提供させる。Wiresharkでパケットをキャプチャし、各生徒の端末とIPを紐付けて情報戦を有利に進め…
…まぁ、要するにそういうことだ!(説明がめんどくさい)
なんなら、USBを物理でぶっ刺すだけでスマホのデータをごっそり抜く手法もあるが、さすがに倫理的に……ね?
そもそも原作の時代背景を考えれば、致命的なセキュリティ上の脅威(ゼロデイや既知の脆弱性)なんかが記憶の片隅から掘り起こせれば、管理者の権限なんて奪い放題じゃん(もちろん該当の記憶はきれいに消されているが)。
ついでに各スキルの専門教材をOSINT(公開情報調査)により手当たり次第にかき集め、USBにガンガン保存して、寮の中で引きこもってインプットできるようにしておく。自力での再・復活プランとしてはこれで完璧だ。
検索ワードやハックの導き出し方そのものはスキル判定に引っかからなかったらしく、綺麗に残っていて助かった。
自称神のスキル剥奪の範囲、どんだけガバガバなんだよ。
まぁ、不完全情報で管理体制がザルな神なら納得か。あいつ、適当に範囲を適当に決めて記憶を消しやがったな(両手立ての中指)
――難しい? 説明ばかり? 理屈っぽい?
……つまりね、ゾス。すべてはゾスなんだよ(脳死)
勝ってもゾス、寝るまでゾス、最後に間に合うバスまでゾス。
学生生活は、常に遅刻する可能性に満ち溢れている。そこにこそ、ゾスの醍醐味があります。
君のやりたいゾスは何ですか?
「クソ神を……クソッタレなデバフ特典を押し付けたあの自称神をぶち殴りたいです」
君、名前は?
「一条、一条蓮です」
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「……初日から遅刻とは、いい度胸をしているようだな」
冷ややかな視線を向ける茶柱先生と、物珍しいものを見るようなDクラスメイトたちの嘲笑が目を――特に、池とブラックルーム山内のノンデリ発言が耳を盛大に蹂躙する。
なお、ガッツリ徹夜してハック環境構築に没頭した結果、盛大に寝坊して初日遅刻をぶかましたのは、また別の話だ。
主人公の読んだブックリストを示しておきます⏬
・平凡な私が全米記憶力選手権で7回優勝したテクニック
・松田の数学Type100
・松田の数学Type60
・ホワイトハッカー入門
・Try Hack Meで学ぶ7日でハッキング入門
・LINUXの絵本
ホワイトルームって、セキュリティ教育してなさそう。あと士官学校でやるようなカリキュラムとか、催眠術・記憶術・意識操作などなどの特殊スキルを学んだ描写がないんだよな。
知識がない側の考える天才ってヤツは常識の延長上にあるんでしょうかね?天才って言語化できない領域にいるってクラウゼヴィッツ先生が言ってました。